エイミーことエントリエ編集長の鈴木 栄弥が見つけた気になる人を訪ねて、自分らしい暮らし方や生き方のヒントをいただいてしまおうというこのシリーズ。第10回目のゲストは、自宅をアトリエに、オリジナル作品をつくりながら暮らしを楽しむ松隈 無憂樹さんです。
自分と受け手が
胸キュンする瞬間を探って
松隈無憂樹(まつくま むうじゅ)さん。1985年、東京八王子生まれ。5歳で北海道へ引っ越してから大学入学までを札幌で過ごす。東京造形大学造形学部絵画科に進学・卒業。若手アーティストの発掘・育成を目的とした現代美術の展覧会「アートアワード東京」では、佐藤直樹賞を受賞。現在は黒猫とともに自宅兼アトリエで作品制作に取り組んでいる。
*松隈さんのポートフォリオサイトはこちら
【http://mujumooo9.wixsite.com/matsukuma-muuju-hp】
作家として
いま大切にしていること
松隈さんは現在、どんな活動をされているんですか?
松隈さん:絵画や立体物、ジュエリーをつくっています。活動の中には、「こういうものをつくってほしい」と依頼されてつくることもありますが、指示されることがそもそも少ないので、基本的には「そのときやりたいことをやる」を軸に制作しています。
すごい独特な世界観。
作品づくりのコンセプトなどは事前に決めるんですか?
松隈さん:コンセプトはあまりないんですよね……。気の赴くまま、実験的にやったものが作品になる感じ。はじめからガチガチに計画をして、「ここをこうする」っていうのはなくて。
どちらかというと作品をつくっていく過程で「ここにこれを足したら、もっと良くなりそう」っていう発想で完成に近づいていくというか。そういう、感覚的なリアクションの積み重ねで作品ができていく感じです。
自然と絵を
描きつづけてきた
昔から絵を描くのは好きだったんですか?
松隈さん:好きでした!いつから好きだったのか覚えてないんですけど、とにかく小さな頃から描いてましたね。上手いとか下手とかは分かってなかったけど、まわりの友だちが褒めてくれたときに「自分って絵がうまいほうなのかな」って。何かをマネして描くのも好きだったから友だちに「この漫画のキャラクター描いて!」という、リクエストに応じたりもしていました。
絵を仕事にしようと思ったキッカケは?
松隈さん:キッカケというよりも、極自然に、「絵を描いて生きていく」という感覚がありました。本当に、日々絵を描いてばかり。それで高校を卒業するタイミングで、母親に絵を描きたいって話したら、「それじゃ美大にいく?」って言ってくれて。絵を描くこと以外の仕事は無理だって、親も感じていたのだと思います(笑)。
自分が「胸キュン」するものを
受け手はどう感じるのか
10代から絵を描き続けるなかで、作品との向き合い方は変化していますか?
松隈さん:10代の頃は、はじめに「こうする!」って決めてつくることもありました。ひとつつくるのに、100のことを考えながら取り組んでいたんです。不思議と大学にはいってからは、「ひとつの作品ではひとつのことを考えてつくろう」って思うようになりました。
すごく作品と向き合っている感じ。
松隈さん:うーん、本音をいえば、ちょっとふざけてつくっている部分もあるくらい(笑)。ストイックな時代もあったけど今はどんどんラフになってきていて。
作品をつくるうえで、こだわっていることはありますか?
松隈さん:手法ひとつとっても、この画材はこう使わなきゃとか、この画材で描き続ける……みたいなこともあまりないかな。実験を重ねて、油絵とパステルを混ぜて使うこともあるのですが、そのとき描きたいものにフィットする材料を使っています。
いつも探っているのは、どんな「胸キュン」を起こせるかどうかということ。好きとか、いいなって思う作品は胸がキュンとするんですよね。その感覚は、「かっこいい!」とか「うまい!」とかより記憶に残る。
胸キュン……!自分の作品を目にする人にもその感覚を味わってほしいですか?
松隈さん:そうですね。見てる人がいいなと感じてくれれば良いですね。あとは、受け手の視点で、感じてもらえることもおもしろいなと思います。
だから作品を通して追体験をさせるというより、受け手ならではの再発見してほしいな。私が気づいていない絵のなかにある言葉やおもしろみが、多分そこにあって。見てくれた人がそういう発見をしてもらえることに喜びを感じますね。
最近、自宅兼アトリエにしたのはどうして?
松隈さん:単純に飼い猫に広い部屋を与えたかったから(笑)。前の家は、ネコがダメだったんですけど下に住んでいるおじいちゃんが騒いでも全然大丈夫な人で甘えさせてもらってたんです。でもそのおじいちゃんが引っ越して別の人に変わってしまって。
あとは、都心から離れてもいいからもっと気ままに生活したいとは思ってたかな。仕事と生活ってきっちり分けたい人もいますけど、私の場合は生活と作品をつくる場所が近いほうが都合がいい。気が赴くままに作業できるので自宅兼アトリエのここが気に入っています。
見てくれた人に
サプライズをあげたい
これから先の松隈さんの活動の展望を教えてください!
松隈さん:ひとつはもっともっと作品づくりのなかで「胸キュン」を高めていきたい。そうやって自分が楽しむこと。もうひとつは、期待されていることや望まれているであろうことに答えているわけではないけど……これまで私の作品をずっと見てきてくれた人たちに「今度はこうきたか」というサプライズをあげたいなって。
作品を見てもらったときに、新鮮な感情が芽生えたり、愉快だなと思ってもらえたりしたらうれしいな。自分が移ろいでいく気分やスタイルを受け手の感覚で楽しんでもらえるといいなと思います。
「古家具が、なんか好きなんですよね」と、松隈さん。もちろん新しいものもいいけれど、古いものも手を入れて、大切に、その人ならではの生活に染め直すこと。そんな松隈さんのやさしい感覚とentrieのコンセプトに共通点を見つけて、嬉しくなりました!
エントリエショールームにて
松隈無憂樹さんの作品を展示販売します!
エントリエショールームにて
松隈無憂樹さんの作品を展示しております。
(水曜日定休*10時~18時)
ぜひお越しになってご覧下さい。(聖蹟桜ヶ丘駅より徒歩2分)
事前のご注文・ご質問はこちらまでお願いいたします。
info@entrie.net
●文 すだ あゆみ
1984年東京都生まれ、横浜市在住のママライター。活字中毒で図書館と本屋が最高の癒しスポット。すき焼きの春菊が苦手。ここ数年、筋トレにはまっている。
●編集 細野 由季恵