第35回目のゲストはビカクシダ専門メディア「月刊ビカクシダ」を運営する、ライターのタナカエリさんです。


タナカエリさん。メディア「月刊ビカクシダ」編集長。東京のマンションで、謎の植物「ビカクシダ」を研究している。文章作成・カメラマン・SNSマーケティングで肥料代を稼ぐWEBライター。映画とサウナがご褒美。

ちょっと変わった形のシダ植物「ビカクシダ」に魅了され、2019年5月からビカクシダ専門メディア「月刊ビカクシダ」を運営される、ライターのタナカエリさん。
初心者でもわかりやすく育て方のポイントや、イベントレポートなどを発信されています。
ビカクシダに惹かれた理由や、初心者でもおすすめの品種などを伺いました。

※この日の取材はリモートにて。ビカクシダに囲まれた素敵なお部屋からご登場いただきました。

 

ダイナミックに変化する植物「ビカクシダ」って?

――ビカクシダとは、そもそもどういう植物なんでしょうか?

タナカさん:水を貯めるための「貯水葉」(ちょすいよう)と、胞子をつける「胞子葉」(ほうしよう)という二種類の葉が身体についていている、ユニークな形をしたシダ植物です。

貯水葉は雨水をキャッチして貯める、タンクのような役目をしています。光合成をメインで行っているのは胞子葉で、太陽の光をたくさん浴びるために広がっています。太陽に向かって生えるので、太陽の位置が変わると、一日で葉の傾きが変わることもあります。

▷出典:『超マニアフェスタの超パンフレット』(マニアフェスタ事務局)

――ユニークな形と仕組み! 見ていて飽きなそうですね。

タナカさん:目に見える変化が大きく、動物に近い感覚です。以前とあるイベントで表に出していたビカクシダが、イベント開催中の二日間で15cmも胞子葉を伸ばしたことがありました。

▷イベント会場で15cmも成長したビカクシダ「スパーバム」

――ダイナミック! ビカクシダは世界中でどのぐらい種類があるんですか?

タナカさん:原種は18種類ですが、そこから交配させた品種は数千。亜種も含めるとわからないくらい、たくさん種類がありますね。

貯水葉と胞子葉があるという点はどの品種も共通ですが、葉の形や、表面の凹凸などは品種ごとに大きく違いがあります。

――ご自宅では、何株くらいビカクシダを育てていらっしゃるんですか?

タナカさん:10株くらいです。

――すごい!

タナカさん:これでも全然少ないほうなんです。ビカクシダにハマっている人は、大体20〜30株くらいは育てていらっしゃいますね。

――ハマると増やしたくなってしまう世界なんでしょうか?

タナカさん:収集癖の世界なんだと思います。品種ごとに、乾燥に強いものや弱いものなどがあり、それを見極めながら育てていく。経験値を積み重ねるといろいろな品種が育てられるようになるのが楽しくて、ハマってしまうんです。

――目に見える変化が如実に分かると、手応えもありそうですね。

タナカさん:育て方の効果がすぐに現れるのが楽しいですね。

ビカクシダに魅せられ、ビギナーにもわかりやすい情報発信をはじめる

▷ビカクシダ専門メディア「月刊ビカクシダ」

――ビカクシダにはまったきっかけはなんでしょうか?

タナカさん:SNSの画像検索で偶然目にして、その姿かたちに惹かれました。何だこれは! って。現物を見てみたくなり、東京で年に2、3回開催されるビカクシダのイベントに行ったり、ネットで調べて購入し、自分でも育てはじめました。

――確かにユニークな形ですね。タナカさんは2019年5月から「月刊ビカクシダ」というビカクシダ専門メディアも運営されていますよね。このサイトをはじめたきっかけは?

タナカさん:ビカクシダに出会った当初、副業ライターから専業ライターになったばかりで、駆け出しの仕事がない時期でした。なにかライターとして武器になるものがほしいと思っていたときに、出会ったのがビカクシダ。これだ、と。

フリーランスになるにあたり、地方に住みながらフリーランスとしてのスキルを身につける「田舎フリーランス養成講座というセミナーに参加し、その講座中にサイトもTwitterも立ち上げました。

――最初からビカクシダに特化していたんですか?

タナカさん:はい。講座中に、ビカクシダという素材をどう活かし発信していくか、色々とアドバイスをいただきながら整えていきました。

▷「月刊ビカクシダ」では、初心者でも分かりやすく育て方などを解説した記事が並ぶ

――「月刊ビカクシダ」では、初心者にも分かりやすく丁寧に育て方が解説されていますよね。サムネイルや本文はビジュアル的にもわかりやすくて。そういった点もこだわっていらっしゃるんでしょうか?

タナカさん:スマホで記事を読むときって、サッとスクロールして読むことが多いですよね。そのため、文字もデザインの一部として、短く刺さる言葉で書いたほうが、読む方も楽なんじゃないかと思っています。直感的なわかりやすさを大切にして、余計な情報は削って極力シンプルにし、読む方が疲れないように、という点を心がけています。

――これから育てたい人にとっては、わかりやすく書かれていると自分でも育ててみようかな、と思えますね。

タナカさん:育てる敷居を低くしたい。ビカクシダは、安いものだと1000円くらいで買えてしまうのですが、高価なビカクシダを見て買うのを辞めてしまう人もすごくたくさんいらっしゃいます。私が育てているビカクシダは、小さい状態で買って大きくしたものばかり。

初心者でも気軽に買えるし育てられるんですよ、とアピールしたいですね。

――初心者におすすめの品種はありますか?

タナカさん:「ビフルカツム」という品種は、安く手に入り丈夫ですね。日光も水やりもそこまで必要なく、ある程度放っておいても育つのでおすすめです。

育てるのが楽なので、美容室やアパレルショップなどのインテリアとしても、よく置かれています。

ビギナーでも育てやすい「ビフルカツム」

――おすすめの入手方法は?

タナカさん:初心者の方は、ホームセンターで1000円程度のものを買うのが良いかもしれないですね。雑貨屋さんで売っているものは、かわいい器に入っていたり苔玉仕様になっていたりするので、インテリアとして楽しみたい方にはおすすめです。

――1万円以上出して枯れちゃったらショックですよね。

タナカさん:私はちょっと金銭感覚がおかしくなっているので、ビカクシダが1万円だと「安い!」と思わず買ってしまいます。300円のキャベツは高くて買わないのに(笑)

丁寧でわかりやすい発信で
ビカクシダファンの裾野を広げたい

https://twitter.com/peri_ireq/status/1252150930549600258?s=20

――この間のゴールデンウィークには、オンラインでビカクシダを販売するイベントも行い、盛り上がっていましたよね。やってみようと思ったきっかけは?

タナカさん:友だちから、ビカクシダを自分でも育ててみたいと相談されたことがきっかけです。外出自粛で家にいる時間が長くなり、「家に植物がほしいんだけど、ホームセンターが閉まっているので購入できない。どこで買ったらいいの?」と言われて。

知り合いの農園さんに、初心者向けで育てやすいビカクシダを売っていただけないか相談し、オンラインで販売することにしました。

――ステイホーム中で、自宅の環境に目が向いた時期なのも追い風になりましたね。反響も大きそうでしたね。

タナカさん:Webライターをしていると、宣伝も仕事になってきます。サイトやSNSがポートフォリオのような存在で、このイベント期間中にこれだけのTweet数があり、これだけ記事が閲覧され、売れましたという資料を提示すると、それがお仕事につながったりするんですよ。そのため、丁寧でわかりやすい発信にも力を入れています。

――今後やってみたいことはありますか?

タナカさん:今年の目標は、全国の植物園に行き、そこで出会ったビカクシダを記事にする、ということなんです。

――楽しそう!

タナカさん:コロナウイルスの影響で一時中断。まだ落ち着かない状況ですが、様子を見ながら発信していきたいと思っています。先日は、渋谷にある「渋谷区ふれあい植物センター」へ行ってきました

▷渋谷区ふれあい植物センターのビカクシダ

タナカさん:スタッフの方がとてもユニークで、世界観がすごく、植物園界の秘宝館のような空間でした(笑)。

――ビカクシダに注目すると、植物園をまた違った角度から楽しめそうですね。今後のレポートも楽しみにしています!

おうちのビカクシダのレイアウトにこだわっているタナカさん。

朝、目覚めた瞬間、ジャングルのように繁ったビカクシダが目に入る瞬間、「よし、今日も頑張ろう」と幸せを感じるそうです。

●インタビュー・文 / 村田あやこ
●編集 / 細野 由季恵