DUCK SEIRO
記事を書いた人
DUCK SEIRO
家に住む人
2022年、エントリエに念願のリノベーションを依頼。2023年1月に完成。 夫・長男・娘+おいどんという猫と一緒に住んでいます。好きなものは、鴨せいろ。

これまでの人生で、動物と一緒に暮らしたことがなかった。だからか、どちらかというと自分より小さな生き物は「きらい」だと思っていた。

友人の家で動物を見かけても、どう接したらいいかわからない。だって予想に反して柔らかかったり固かったりするから、どこを触ればいいのかと戸惑う。走って飛びついてくるのに、喜んでいるのか怒っているのか伝わってこない。道を歩いているだけで、犬におしっこを引っ掛けられたり吠えられたりした経験も、この気持ちに拍車をかけた。

それでも「ペットは家族だ」という言葉を聞くと、気安く「犬」や「猫」と呼ぶのも躊躇われた。だから、わたしなりの気遣いで「ワンコさん」とか「ニャンさん」と呼んでいた。今思えば、それが正解だったかどうかもわからないけど。

そんな私の人生に、突然「おいどん」がやってきた。ホームセンターにあるペットショップの横を通りかかったときに、偶然目が合った白色にすこしグレーの毛が混じったの猫だ。手をクロスしたまま、じっと座り、丸い目でこちらを見つめる姿に、「神様かな」と思った。

家に帰っても気になってしまい、次の日もその次の日も、何度も足を運ぶうちに、まったく予定外のタイミングで迎え入れることになった(生体価格3万3千円に諸費用数万円。支払いながら、この金額にどんな価値があるのかと悩み、少し寝込んだ)。

▶︎最近では、人間に見えてきたおいどん。名前の由来は、松本零士の漫画『男おいどん』から。

おいどんと過ごしてみると、「ただ、いるだけでいい」とはこういうことかと思い知らされた。表情や仕草、鳴き声、生活リズム。言葉はないけれど、確実に何かを訴えてくる様子。時間を一緒に過ごすことで、少しずつ、理解できた気がしてきた。

そういえば、子どももきらいだった。突然大きな声を出したり、わがままに見えたりするから。でも自分が子どもを産み、一緒に過ごす時間を重ねる中で行動の裏側にある理由を前よりは理解できるようになった。

関係性の中で築かれるもの、ほんのすこし関わり方を間違えるだけで壊れてしまうような繊細さや純粋さ。知れば知るほど、この存在を尊重せずにはいられない。

わからないことを「きらい」として無関心でいたり遠ざけてきたけれど、結局自分の世界を狭めてしまうだけだった。精神的な余裕や年齢も関係するかもしれない。自分だけがいちばんの小さな小さな世界で、他者を理解する余裕がなかったのかもしれない。でもわからないことを恐れ、わからなさに目を背けていては触れられるはずのものにも触れられなくなる。「わからなさ」は「きらい」ではないと、自覚的でいよう。

余談だけど、小学校の頃ザリガニの赤ちゃんをもらい飼育していたことがある。けれど、1年ほどお世話をしたのにもかかわらず、ザリガニは小さくて、透明なままだった。赤く立派なザリガニになることを期待していたわたしは、とうとういやになって庭に生き埋めにしたことがあった。その日の夜に見た「巨大化したザリガニに襲われる夢」と同じ夢を、まだたまに見ている。

今ならどうしていたかな、と最近考えている。


▷「家族が家族じゃなくなる家」を設計した人はこちら

鈴木 栄弥
設計営業・ウェブマガジン編集長

鈴木 栄弥 / Suzuki Emi

エイミー

2級建築士、カラーコーディネーター、福祉住環境コーディネーター、ファイナンシャルプランナー

静岡県富士市出身、1990.7.27生まれ。
日本女子大学 家政学部 住居学科 卒業。

小学生の頃から間取りやミニチュアが好きで、建築模型がつくりたい! と、建築士になることが夢に。
ビルや建物ではなく、人が住む家のことを中心に学びたいと思い、住居学科で学び、
「人が楽しく暮らす住まいをつくりたい」という思いで就職しました。
現在は、エントリエで設計営業 兼 マガジン編集長として所属。お気軽に「エイミー」と呼んでください!

わたしの手掛けるお家は、どれも決まったテイストはありません。
住まい手の体温を感じられるテイストに仕上げることが得意です!

●全国ジェルコデザインリフォームコンテスト
2023年 リビングダイニング部門 全国最優秀賞 受賞
2020年 一般社団法人住宅リフォーム推進協議会会⾧賞 受賞
2020年 個室部門 全国優秀賞 受賞
2019年 リビングダイニング部門 全国優秀賞 受賞

●ジェルコ関東甲信越支部リフォームコンテスト
2022年 デザイン部門 キッチン賞 受賞
2021年 デザイン部門 優秀賞 受賞
2020年 デザイン部門 優秀賞 受賞

●RoomClip全国理想の住まいコンテスト
2022年 1000万円以上部門 全国最優秀賞 受賞
2021年 500万円以下部門 特別賞 受賞
2020年 500万円以下部門 全国優秀賞 受賞

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