村田 あやこ
村田(あやちゃん)/記事を描いた人
村田 あやこ / Murata Ayako
ライター
お散歩や路上園芸などのテーマを中心に、インタビュー記事やコラムを執筆。著書に『た のしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。「散歩の達人」等で連載中。お散歩ユニットSABOTENSとしても活動。
藤田 泰実
藤田(よっちゃん)/イラストを描いた人
藤田 泰実 / Fujita Yoshimi
落ちもん写真収集家
グラフィックデザイナー/イラストレーター/落ちもん写真収集家。茨城生まれ、埼玉育 育ち。多摩美術大学造形表現学部卒。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍しながら、路上に落ちているものから人間の背景や余韻、人間味を感じ取り、そこから妄想してタイトルをつけストーリーを作り出す「落ちもん写真収集家」として活動。落とし物は人間ドラマという発想が注目され、テレビやラジオなどにも出演。
細野 由季恵
細野(ゆきえちゃん)/撮影・編集した人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

SABOTENSのまちのミカタ。今回の舞台は、東京・御徒町です。取材日は2023年12月28日。お正月まで、あと数日となった年の瀬ムード漂う御徒町を歩きました。

2023年を漢字一文字で表すと……?

村田:今日は御徒町です。

藤田:年末感があるね。

細野:年末の景気のいい雰囲気を味わえたらいいな。

村田:去年と比べるとコロナ禍もようやく落ち着いて、にぎわいが戻ってきた感じだね。

細野:今日は歩きながら「師走ポイント」を探そう。師走ポイントを見つけたら10点です。

村田:やったー!

村田:はい!ファースト師走、見つけました。「謹賀新年」と、お休みの知らせ。

細野:年末って、みんな休みモードになるのがいいよねえ。

藤田:クリスマスが終わった瞬間、世の中一斉に年末モードになるよね。

細野:ふたりは年末年始、毎年恒例の行事はあるの?

藤田:年越しそばを食べるくらいかなあ。

村田:私もそば食べたり、うどんを食べたり。

藤田:うどんも食べるんだ。

村田:九州の実家では、そばよりもうどんを食べてたから、その名残で。

藤田:この飾り、良くない?

村田:装テン(装飾テント)が細長い。

細野:白い飾り、レストランにあるペーパーナプキンみたい。

村田:担々麺とかを食べる時に、服につかないようにする、あのエプロンに似てる。

藤田:あ、猫ちゃん!

村田:わー、なんで待ってるんだろう。どうしたの。

藤田:ご飯が食べたいのかな。

村田:あ、お店の人がご飯を出してくれてる!

藤田:そうか、ご飯待っていたのか。偉い。

細野:ご飯もらえるのが分かるんだね。

村田:よかったね。

商店街を歩いていると突然、神棚や縁起の良さそうな何かが当たるガチャガチャスポットを見つけました

村田:ひやー、あと少しで2024年かあ。

藤田:あやちゃん、今年はどんな年でした?

村田:バッタバタだったけど、いろいろなことができていい一年でした。

藤田:今年を漢字一文字で表すと。

村田:「肩」かなあ。それか「凝」。肩凝りに悩んで整体をジプシーした一年だった。

藤田:あはは(笑)。来年はよくなるといいね。

村田:来年は運動をちゃんとしよう。

藤田:じゃあ来年は「運」だね。

村田:よっちゃんはどうだった?

藤田:人生の岐路だったよ。激動だったな。

村田:そうだよね! 結婚もして。今年を一文字で表すと?

藤田:「結」です。

村田:まさに。

藤田:ゆきえちゃんはどうだった?

細野:大変なこともあったけど、最後の方になるに従って楽しいことがいっぱいあったよ。

村田:よかった! 今年を一文字で表すと?

細野:一文字で表すと……「猫」!

村田:そうだね、おいどん(飼い猫)がきたもんね。これで私たちみんな、猫と暮らしてるね。

石のまち・御徒町

村田:御徒町には、石とか宝石のお店が多いよねえ。前に、よっちゃんと石屋さんに入ったことがあったよね。

藤田:あ、このお店だ!

村田:そうそう、ここだ!入ってみよう。

クリスタル・ワールド御徒町店(東京都台東区上野5丁目16−9 サンエイビル 1階&2階)さん。本店は京都なのだとか!

御徒町駅すぐのところにある、クリスタル・ワールドさん。鉱物や化石、隕石、天然石など、多種多様な「石」を取り扱うお店です。

村田:いろんな種類の石がある。

藤田:それぞれ色が違うね。一つひとつ形が違うのも楽しい。

細野:石はいいねえ。

村田:なんでこんな色になるのか、不思議な石もあるね。

藤田:自然にこんな色や形になるなんて、すごいね。

藤田:値段もお手頃。

村田:アクセサリーにすると良さそうな石、たくさんあるね。

細野:立方体の石もある。ピアスをつくろうかなあ。

藤田:いいね!じゃあ私は、尖った石で矢じり(矢の先端、突き刺さる部分)をつくろうかなあ。

村田:いいね。肉とか切ったりして。

細野:角煮みたいな石もある!

村田:「豚肉石」っていう名前なんだ(笑)。

細野:豚バラだ。

村田:恐竜の化石がある!

クリスタル・ワールドさん:これは本物で、売っているんです。

藤田:売ってるんですね。

村田:126万円……!

クリスタル・ワールドさん:お安い方なんですよ。「宝くじが当たったら買いに来ます」というお客様もいらっしゃいますね。

クリスタル・ワールドさん:それぞれの石に対する「石言葉」っていうのがあるんです。

村田:「体力改善」「ストレス解消」。

藤田:「物事を成功に持っていく」。

村田:「あれこれ悩まず全身で生きる」。これもいいな。石言葉から選ぶのも楽しいですね。

クリスタル・ワールドさん:石言葉を見て石を選んで、アクセサリーをつくる方もいらっしゃいます。

村田:いいですね!

藤田:なんか石見てたらお腹へってきた。

村田:なんで(笑)。おいしそうに見えたの?

商店街の上にある神社で、気になる落ちもんを発見

思い思いの石を購入した後は、上野方面へ。アメ横は買い物に訪れる人々や外国人観光客など、たくさんの人でにぎわっています。

細野:人に飲み込まれていく……

藤田:アメ横は混んでるね。

村田:みんな年末のお買い物かな。

藤田:今度こういう場所で、「1000円で、お互いにプレゼントを渡し合う」っていうお買い物企画してみたいな。

村田:楽しそう!それぞれに似合う一着を探してみたいな。

細野:鉄火丼にアイスに……美味しそうなお店がいっぱいあるな。

藤田:アイスって、不思議と寒くても食べたくなるよね。

村田:あ、神社があるよ!

藤田:さっき電車の中から見えた神社だ!入ってみよう。

アメ横の商店街の上にある寺院「摩利支天 徳大寺(台東区上野4丁目6−2)」。江戸時代初期に創建された、400年近い歴史を持つ日蓮宗のお寺です。摩利支天は、「気力・体力・財力」を与え、「厄を除き、福を招き、運を開く」という、霊験あらたかな守護神であると伝えられているそう。
立地は商店街の上という、おもしろいつくりが特徴で、お店の前で飛び交う「かまぼこセット1000円!安いよ〜」「栗きんとんあるよ!」といったにぎやかな声を聞きながら、階段を登っていきます。

村田:スポーツ上達祈願に、勝守に、いろんなお守りがあるね。「ぼけ封じのお守り」なんていうのまで売ってる。

藤田:認知症予防かな。来年は辰年だから、私は龍の置物を買おう。

村田:いいね。

村田:敷地の一角には、お稲荷様もある。

藤田:縁結び地蔵尊だ。お参りしていこう。ご縁だからな、仕事は。

村田:本当に。フリーランスだと、人の縁で仕事が広がっていくよね。

藤田:来年もいいご縁がありますように。よろしくお願いします。

村田:よろしくお願いします!

お参りを済ませたら、今年最後のおみくじを引きます。

藤田:私は……「吉」だ!よかった。「時を考えて、早くあらため進むが良い。人と人と互いに力を合わせてすれば時あり」だって。みんなの力を借りて生きよう。

村田:周りの人が助けてくれるってことだね。私も「吉」だ。「碁に白黒の石が置いてあるように吉凶はないが、努力あれば後にはすべて良くなる」だって。「遅れれば利なし」。早くやれってことかな。

藤田:SABOTENSふたりとも「早くやれ」っていうことが書いてあるね。早めに早めにやろう、いろいろと。

細野:私は「大吉」だ!

村田:おおー、みんないい運勢でよかった。

細野:「太陽を手に取る相あり。志の達せられること、意のまま。しかし、運強く、身の及ばないことあり。身を辞すること謙虚なれば、幸せ必ずきたり」って。

藤田:いいことが書いてあるね!太陽の力を借りてって……植物のように光合成をしながら生きればいいのかな。

藤田:それにしても、エントリエのお散歩のとき、毎回晴れてるね。

村田:歩くときは、必ず晴れてるもんね。よかったよかった。来年もきっと、いいお散歩ができるでしょう。

「年末にお参りできてよかったね」といいながら帰ろうとしたところ、気になる落ちもんを発見したよっちゃん。

藤田:うわ!!!

藤田:かつらが落ちてる!!

細野:すごい落とし物だ。カラスの羽かと思った。

藤田:2023年最後の最後に、すごいものを見つけてしまった。かつらの落ちもん、いつか遭遇してみたいと思っていたから、いま夢が叶った(笑)。

どんな人が落としたのか?と、妄想しつつお寺を後にすると、後方から爆笑する女性の声が。

藤田:あの女の子が「私の前髪」だって。爆笑してる。

村田:主が現れた……!おしゃれ用のヘアウィッグなのか。見つかってよかった。

衝撃的な落ちもんとの遭遇に興奮冷めやらぬまま、摩利支天を後にし、ふたたびアメ横へと繰り出します。

村田:通路沿いにいろんなお店がぎっしり並んでる。

藤田:台湾の夜市っぽい感じだね。

村田:昼間だけど、もう飲み屋さんも開いてるんだね。忘年会をする人たちで賑わってる。

藤田:私たちもどこかに入って一杯やる?

村田:いいね、忘年しよう!

村田:昆虫食が売ってる!タガメサイダーもある。美味しいよね、タガメサイダー。

藤田:確かに!前飲んだら美味しかった。

村田:上野のお店のガチャガチャだ。みはし(上野公園近くにあるあんみつ屋さん)もある!

藤田:アメ横のキーホルダー、かわいいな。

村田:確かに。一番かわいい。

プロも通う御徒町駅前の魚介専門店 「吉池」(東京都台東区上野三丁目)

再び御徒町方面にしばらく歩いていくと、「吉池」が見えてきました。新鮮な魚介類や加工品が豊富な、老舗のスーパーです。

村田:吉池、楽しいよねえ。海苔の佃煮だけでもたくさん種類があって。行ってみない?

藤田:ここ、いいよねえ!ここで買い物して帰ろう。

年末の楽しい雰囲気を満喫し、お散歩スタート時に話した「年末ポイント」のことはすっかり忘れていた三人。みかんや焼き芋など、思い思いの品を買ってお開きとなりました。

本日の一コマ漫画

イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)

こころに残る御徒町の風景

村田のミカタ:この日の戦利品、石に焼き芋にみかん。
藤田のミカタ:藤田の戦利品