SABOTENSのお散歩、本日は東京・代田橋編です。今回のお散歩はフリーライターの名嘉山 直哉(なかやま・なおや)さんをゲストにお迎えしました。名嘉山さんは、立ち食いそば・うどんチェーン店である「名代 富士そば」を全店制覇し、各店の特徴を記録し続ける「富士そばライター」としても活動しています。
地元の方々の輪投げ大会に混ぜていただいたり、公園遊具を満喫したり。どこかのどかな雰囲気ただよう代田橋をのんびりと楽しみました。
ご近所さんの輪投げ大会に参戦!
名嘉山さんと待ち合わせたのは、京王線の代田橋駅。SABOTENSの藤田さん(よっちゃん)は、後から合流予定ということで、先にお散歩スタートです。
村田:名嘉山さん、本日はよろしくお願いします!
細野:名嘉山さんが沖縄出身なので、今日のお散歩は「沖縄タウン 杉並和泉明店街」がある代田橋にしてみました。
村田:おお〜沖縄タウン!名嘉山さんは、代田橋には来たことありますか?
名嘉山:ないですね。
細野:沖縄感はありますか?
名嘉山:そういえばこころなしか潮の香りが……
村田:潮の香り(笑)。
富士そば全店を制覇し、ブログ「富士そば原理主義」で、各店の定番メニューから変わったメニューまで紹介している名嘉山さん。さっそく駅前商店街でお蕎麦屋さんを発見し、自ずと富士そばトークがはじまります。
村田:名嘉山さんは、富士そば全店舗制覇されたそうですね。いまはどのくらいの頻度で行かれてるんですか?
名嘉山:週4くらいですね。
村田:週4! 結構なハイペースで。
名嘉山:意識せずとも行くようになってしまうんです。
村田:見つけたら吸い込まれるように。
名嘉山:そうそう。
村田:名嘉山さんの書かれた記事「珍そば・オブ・ザ・イヤー2023(文春オンライン)」を読みました。「富士そばって、こんなにメニューのバリエーションがあるんだ!」とびっくりします。
これだけのチェーン店で、各店舗の個性が出たメニューがあるっていいですね。エスカルゴのそばとか、イタリアンっぽいものとか、アジアンっぽいものとか。
左から「ガパオそば (武蔵境店)」、「海鮮火鍋そば(代々木八幡店)」、「蕎麦リアン(明治通り店)」
名嘉山:チェーン店っぽくないですよね。
村田:会社としても、店舗によって違うメニューを出すのはOKなんですね。
名嘉山:むしろ「どんどんやって」と推奨しているようです。店長さんが一番お客さんの好みを分かっているので。
村田:お店ごとの判断に委ねているんですね。名嘉山さん的には、スタンダードなものよりも変わったメニューを試したいですか?
名嘉山:そうですね。珍しいメニューのほうがおもしろいですよね。店によって、必ずしもあるわけではないので。
村田:数多ある富士そばの中で、名嘉山さんが好きな店舗はありますか?
名嘉山:新宿の三光町店ですね。ユニークなメニューが多いです。お店の方が犬好きで、愛犬の写真を店内に貼りまくってるんです。
村田:そういうのもアリなんですね(笑)。
名嘉山:どこまで自由なんだ、と思って。
村田:変わったメニューでいうと、どんなものが?
名嘉山:2020年頃にバズったメニューでは、「いくら風タピオカ漬け丼」っていうのがありました。
村田:タピオカ漬け丼……!
名嘉山:いくらっぽく見せるために、醤油に漬けたタピオカをご飯に乗せて、いくら丼のように食べるっていう。
村田:どんな味でしたか?
名嘉山:……醤油かけご飯の味でした。
村田:チャレンジングなメニューですね。
名嘉山:おもしろがって食べる人が多くて、売上もよかったようです。当時、タピオカも流行っていましたし。
村田:たしかに。流行ってましたよね。
名嘉山:タピオカ漬け丼の後はあまり聞かなくなったので、ブームにとどめを刺したんだと思います(笑)。
村田:タピオカよ、ここまできたかって(笑)。まさか、新宿でタピオカブームが終焉を遂げたとは。
富士そばトークに花を咲かせていたところ、路地の一角に神社を発見しました。
村田:あ、稲荷神社だ。
細野:神社だ、神社だ。
境内に向かう小道の向こうから、賑やかな声が聞こえてきます。近づいてみると、ご近所さんらしき方々が集まって輪投げ大会が行われていました。
ご挨拶してみたところ、「遊んでいく?」とお誘いいただき、急遽参戦!
数字が書かれた的に向かって輪っかを投げ、輪が入った数字が点数になるというルール。
最初は、名嘉山さんです。
1投目で見事命中!「素質あるんじゃない?」という声が観客席から上がります。8点ゲットです。
お次は筆者・村田がチャレンジ。いざ投げてみたところ、なんと15点ゲット!やったー。「初めてなのに、すごい」というコメントまでいただいちゃいました。
続いて、我らがエース・ゆきえちゃん。「がんばれ、がんばれ」という応援の声が上がります。惜しくもハマらず。残念!
その後、ご参加者の方々が投げている様子を見ていると、スポスポとハマることハマること。さすが、ベテラン。御礼をいい、会場を後にしました。急遽参加させていただき、ありがとうございました!
村田:輪投げに仲間入りできるとは。小道の向こうにあんな世界が広がっているなんて、想像していなかったな。
細野:よかったねえ。
村田:お隣の神社は、のんびりした雰囲気。いたるところに鉢植えがぎっしりだ。
名嘉山:園芸がすごいですね。ご近所の方がやっているんですかね。
村田:手が入っている感じがしますね。
神社の境内を散策していると背後から、輪投げがハマる音と歓声が聞こえてきます。
名嘉山:歓声が上がってる。何があったんだろう。
村田:もしやパーフェクト達成した人が出た……!?
代田橋の沖縄
神社を後にし、沖縄タウンに向かってゆるゆると歩き始めます。
村田:名嘉山さんご自身は、お散歩は好きですか?
名嘉山:散歩は好きです。富士そばは各駅ごとにあることも多いので、電車に乗るよりも歩いていくことがありますね。
村田:私はお散歩では街角の園芸や植物に注目していますが、名嘉山さんは歩いている時につい注目しちゃうものってありますか?
名嘉山:たまに食堂のメニューが変になってるもの、あるじゃないですか。「コカコラー」とか「ジュスー」とか。そういうのは味があって好きですね。
村田:私も、多国籍料理屋さんの店頭とかで、ちょっとたどたどしい日本語で一生懸命書かれたメニューの文字、ぐっときてしまいます。
しばらく歩いていたら、見えてきました!「沖縄タウン 和泉明店街」。
「沖縄タウン」と書かれたゲートをくぐると、道沿いに沖縄料理屋さんや沖縄の食品を取り扱うお店などが並んでいます。
細野:お昼は沖縄料理が食べたいねえ。名嘉山さんは、沖縄に帰ったら絶対に食べるものはありますか?
名嘉山:沖縄そばは定番ですね。こっちではまず食べないので。
細野:沖縄、いきたいなあ。
村田:案内図だ。お店の名前がゆらゆら動くんだ。
名嘉山:店舗がいつ抜けても、増えても大丈夫なようにでしょうか。
村田:なるほど! 貼り替えるだけでいいですもんね。効率がいい。あ、「来夢来人(*)」もありますね。
名嘉山:ひと街一軒、来夢来人。
村田:どんなまちにも、来夢来人。
*来夢来人とは…ライムライトの当て字。バーやスナックなどの店名に多い。小柳ルミ子のヒット曲「来夢来人」でも知られる。その店名の多さから、2010年に「タモリ倶楽部」(テレビ朝日)で全国各地の来夢来人のママが集結する「スナック来夢来人サミット」が放送された。
沖縄タウンのメインストリートから、脇道へと抜けて歩いてみます。
村田:わー、ししおどしがある。凝ってますねえ。大規模につくりこんでいる。
細野:ゴーヤも育ててるよ。
名嘉山:路上園芸って、自分のものでありながら、人にも半分見せていますよね。
村田:お店屋さんの前で、お客さんや前を通る人に楽しんでもらいたい、と鉢植えを置いている方もいらっしゃいますよね。
名嘉山:うちの母親も、60歳を過ぎてから本腰入れて園芸をやるようになって。
村田:そうなんですね。
名嘉山:歳を重ねるとやりたくなるみたいです。
村田:時間をかけられるというのもあるし。
名嘉山:生命にふれたいというのもありそうですよね。子どもも大きくなって手を離れたし。
村田:手をかけるだけ、大きく育ったり、実をつけたりするものが身近にあると、やりがいもありますよね。
名嘉山:たまに、出窓にぬいぐるみを飾っているおうち、あるじゃないですか。あれって、ぬいぐるみの顔が外を向いてますよね。
村田:たしかに! たいてい窓の外を向いてますよね。たまに窓をぎっしり覆うように置いてあったり。
名嘉山:きっとそれも、道ゆく人に向けてのギャラリー感覚なんですよね。
村田:ぬいぐるみ以外にも、写真を外に向けて貼っているおうちもありますよね。猫とか犬の写真とか、お花の写真とか。ああいうの、いいなあと思いますね。
細野:お、「茶のみ友達を紹介」だって。
村田:なにこれ!
名嘉山:まじめなお見合いの会なんでしょうか。
名嘉山:アートを感じる。
村田:「出車」が抜けちゃったのか。
細野:植わってたのか。
村田:ヘルメットが鎖でどこかにつながってる。引っ張るとどうなるんだろう。
細野:どういう仕組み?
村田:ピタゴラスイッチみたいな現象が起こったりして。
村田:このイラスト、かわいい。どういう世界観なんでしょう。
名嘉山:テレビ越しに親子が対面している。
村田:ちょっと切ないですね。コロナ禍でなかなか帰省できない時に、Zoomで親と喋るシーンを彷彿とさせる。
名嘉山:予言してましたね。
村田:数年前の世界を。
ここで、SABOTENSよっちゃんも無事に合流! 沖縄タウンにある「島のれん」さんで、沖縄料理をいただくことにしました。
名嘉山さん曰く「沖縄らしくスパムを使ったゴーヤチャンプルー」や、定番の沖縄そばをいただきました。
そばとじゅーしーセット(980円)とゴーヤーちゃんぷるー定食(1,000円)を頼みました。
村田:「名嘉山」という名字は、沖縄に多いんですか?
名嘉山:親戚以外で見たことはないですね。電話で漢字表記を説明するのが難しいんです。居酒屋で居合わせた人と話す時、僕が沖縄出身だというと「具志堅さん」「金城さん」とか、変わった名前だって期待されるんですよ。「なかやま」って名乗ると、がっくりされるんです(笑)。
村田:漢字で書くと難しいのに。
名嘉山:その説明が面倒くさくて。いつも、あの時間はなんなんだろうって思っちゃいます。
村田:名嘉山さんの親族あるあるかもしれないですね。
藤田:高校のとき、沖縄に修学旅行にいったんです。クラスで一人だけ、でっかいシーサーの陶器の置物を買って。
名嘉山:シブいですねえ。
藤田:シーサーを対で買ったら、とんでもなく荷物が大きくなって、クラス中に笑われちゃいました。でも母には「でかした」っていわれましたね。
村田:お母さんはわかってくれた。
名嘉山:シーサーはまだいるんですか?
藤田:はい。うちの玄関をちゃんと守ってくれています。
名嘉山:ときどき、家の門の前にシーサーを置いているおうち、見かけますよね。
村田:よっちゃんみたいに、沖縄から頑張って持って帰ってきた人もいるかもしれない(笑)。「あんた、なんでこんなの買ってきたの」って家族にいわれたりしながら。
平日昼間に公園で遊ぶ、白昼夢のような時間
腹ごしらえも済んで、お散歩後半戦スタート。京王線の線路をわたって、反対側をしばらく歩いていくと、小さな橋を発見。玉川上水にかかる「ゆずり橋」というスポットでした。
村田:ここはなんだろう。不思議なスポットだ。ハンドルのついた車止めがある。
藤田:子どもの時に遊んだら楽しかっただろうな。
村田:ハンドルにつかまって、延々ぐるぐる周っちゃいそう。
村田:これは水道管を使った照明なんだって。玉川上水ゆかりのものなのかな。
藤田:あ、下にいくと水路があるよ。
村田:玉川上水の一部が見えるのかな。すごい!
藤田:いってみようか。
細野:わー、ダンジョン感がある!
村田:段になっていて。コンサートホールみたいなつくりだね。
名嘉山:ベンチまでありますね。
村田:リサイタルできるかも。私と名嘉山さんで「どうも〜」って漫才やりましょうか。
細野:壁に「龍」って書いてある。
村田:もしや、辰年にちなんで「龍」なのかな。
名嘉山:今年書いたんですかね。
村田:毎年、干支に合わせて律儀に書き換えていたりして。
藤田:いいね(笑)。
暗渠(あんきょ)化された玉川上水の一部は、緑道にもなっています。緑道上には公園遊具やベンチ。犬の散歩をしている人もいて、のんびりした雰囲気です。
ふと、緑道の一角にあった地図を眺めていたところ、気になる名前の公園を発見。
村田:「大原GoGo公園」っていう公園がある!イケイケな名前だね。
藤田:ちょっといってみたい。
細野:いってみようか。
村田:GoGo感はないね。割と整然としている。
名嘉山:アスレチックみたいな遊具がありますね。
村田:「ツイストスタンド」だって!やってみようかな。
公園遊具を見たら、試してみずにはいられないSABOTENS。
村田:なかなかいいです! 肩甲骨のあたりが伸びて気持ちいい。
名嘉山:おお、いいですね。無心になれる。
村田:お顔も「無」になってます(笑)。
名嘉山:向かいの家の人と目が合うと、気まずいかも(笑)。
藤田:気持ちいい!
名嘉山:浮遊感がありますよね。
細野:スカートが揺れてるのがいいね。
村田:こっちは「高齢者対応健康器具」だって! 足つぼマッサージができるのか。うわ、結構効く!
藤田:歩いている姿が、サカナクションかなにかのPVみたいだよ。
村田:実際には足つぼやってるけど(笑)。その先につながってるのは、バランス平均台!
名嘉山:「お年寄り版・SASUKE」みたいですね。
村田:いいキャッチコピー!
藤田:92歳からのSASUKE。
階段を富士塚気分で登頂したり……
足を伸ばせる器具で遊んだり……
すっかりGoGo公園に魅了されてしまった私たち。公園を思う存分満喫した後、今日のお散歩を振り返りました。
村田:今日はありがとうございました。
名嘉山:こちらこそ、ありがとうございました。いろいろな意味で、白昼夢のような時間でした。
村田:そうですよね。平日の昼間から輪投げをしたり、公園遊具で遊びまくるという。
名嘉山:楽しかったです。いろんな目線が加わると、普段見えていなかったものに気づけますね。一人ではできない体験でした。
細野:今年一発目のお散歩ということで、皆さん今年の目標はなんでしょう。
名嘉山:富士そばに関していうと、もう一回全店を巡っているところなんです。長く活動していると、何がおもしろかったのか、どこにぐっとくるのか麻痺してきませんか。
村田:そうですよね、何度も話していると、癖で同じようなことをいってしまったり。
名嘉山:もっと初心に戻らないとなって。どうしても店の数が限られていたりと世界が狭いので、刺激に慣れちゃうんですよね。いま、魅力を再発見しているところです。
村田:素晴らしい。
藤田:私自身、前までは「おもしろい」と思ったことを発信しようとしていたけど、いまはなかなかできていなくて。名嘉山さんがいうように、慣れって怖いですよね。私も今年は、落ちもんに違うアプローチでトライして、なにかの形にまとめたいな。
村田:私も、名嘉山さんがいっていたように……
藤田:名嘉山さんの言葉、みんな刺さりまくりだね(笑)。
村田:本当に。嘘偽りない言葉で、なにがおもしろいのかをあらためて考えて、それをアウトプットしたいな。初心に戻って、それぞれ頑張りましょう。名嘉山さん、最後にいい言葉をありがとうございました。
最後は、あっちゃんと一緒に記念撮影。名嘉山さん、ご一緒していただきありがとうございました〜!
本日の一コマ漫画
イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)