SABOTENSのお散歩、今回は東京・五反田編! Webメディア「デイリーポータルZ」などで活躍するライターの小堺丸子さんをゲストにお迎えしました。ビルの上から生えた植物を「ビル毛」と呼んで鑑賞する小堺さん。いつもは地べたばかりを見ているSABOTENSですが、今日は上空のビル屋上を見上げながら、五反田のまちを歩きました。
五反田が詰まったビル毛に、産毛……いい感じの「毛」を探す
村田:今日はJR五反田駅から出発! ゲストはライターの小堺丸子さんです。五反田を選んだのは小堺さんの案だそうですが、なぜでしょう?
小堺:私はですね、お笑い芸人のさらば青春の光が大好きで。
村田:おお、さらば青春の光と言えば五反田……!
小堺:そう。事務所も五反田にあるんですよ。
村田:私もさらば青春の光のYouTubeチャンネルをよく見ています。事務所は、YouTubeにもよく登場する川沿いのマンションですよね。
小堺:そうそう。それが一番の理由なんですが、実は五反田って、あまりじっくり歩いたことはなくて。
村田:今日は聖地巡礼気分で、五反田をめぐりましょう。
藤田:会えるといいですね!
小堺さんは、ビルの屋上に髪の毛のように生えた木を「ビル毛」と呼んで鑑賞しています。「ビル毛探し」も、今日のお散歩の目的のひとつ!
細野:今日は、小堺さんと一緒に「ビル毛」を探したいです。
藤田:「ビル毛」は小堺さんが命名したんですか?
小堺:以前、私がライターとして参加しているデイリーポータルZの編集の方に、「こういうのが面白い」って写真を送ったら、命名してくれたんです。五反田でも見つかるといいな。
村田:いいですね。ビル毛のありそうな方にいきましょう。
藤田:いってみましょう!
村田:このお散歩はいつも「こっちの道が良さそう」という嗅覚だけで歩くんです。
小堺:五反田の怪しいエリアにも行ってみたいです。
藤田:昼と夜では印象が違いそうですね。
村田:お、レトロなタバコ屋さん発見。なんだか雰囲気が出てきました。お店の看板の上は、まっさらな「無言板(画像上の白い看板)」だ。ちょうど今『無言板アート入門(楠見清、ちくま文庫,2023)』という本を読んでいるので、つい目が行ってしまいます。
藤田:無言板に、時々サイズが合わないポスターが貼られてることがあるよね。
村田:あるある。板に対して、ちんまりしたサイズの紙が貼られていたり。
藤田:あれを見るたびに、「誤植なんじゃないか」とドキドキしちゃう。
村田:デザイナー目線だ(笑)。
村田:見て、すごいよこれ! マンホールの上にまで模様がある。わざわざ舗装に合わせて描いたのかな。
藤田:マンホールが擬態してる……!
小堺:自然に馴染んでますね。
藤田:こっちもだよ!
村田:ほんとだ! わざわざ自力で塗ったんだね。素晴らしい。
細野:ビル毛、探そうとすると意外とないですね。
小堺:近づかないと、なかなか見られなくて。
細野:……あ、あれは!
村田:お、第一ビル毛発見!
小堺:ああ、これはいいわ。よく見えるわ。
村田:いいですねえ。ビルのオーナーさんが屋上庭園を楽しんでいるのかな。
藤田:1階のお店の入口にある木もいい。
小堺:やっぱり下にお店があると楽しいですね。
村田:1階が焼きとんやさん。雀荘やバー、スナックも入ってる。
小堺:五反田が詰まってる。
村田:ナイスビル毛。
歩き進めていくと、次なるビル毛を発見。
小堺:あ、駅の上にちょっと草が生えてる。
村田:ほんのりちょびっと生えてる。
小堺:勝手に生えちゃったのかな。
藤田:あれは……「産毛」?
細野:本当だ、産毛だ(笑)
1000円自販機でリベンジだ!
段々と、商業施設や飲食店が密集する賑やかな雰囲気になってきました。
藤田:五反田って、予想以上に大きいまちだ。もっとこぢんまりしたイメージだった。
細野:向こうの方にはタワマンも見える。
小堺:雑多な感じがしますね。高さといい。
村田:いろんな業態のビルが渾然一体となってますね。
細野:ダンジョン感。
村田:見て、向こう側のビルの隙間に、こんもり木が茂ってる。切り立った塀の上に建物があるよ。後で見に行ってみたいな。
小堺:隙間っていいですねえ。
村田:隙間の奥に何か見えると、ワクワクしますね。
小堺:前に一度、五反田をウロウロしたことがあって。確かに上から見下ろせる場所がありましたね。
村田:意外と坂道が潜んでいるのかも。
村田:「ゆうらく通り」っていう看板があるね。
藤田:楽しそうな道!
村田:歓楽街なのかな。飲食店も多いね。
村田:え! 壁から生えてる!
小堺:本当だ。種が潜り込んだのかな。
村田:この居酒屋では、狸が溶岩みたいなものの中に埋め込まれてる。
藤田:悪さをした狸たちが固められてるのかも。
藤田:見て、1000円の自動販売機。
細野:この自動販売機、息子と娘が私のいないところでやったことがあって。出てきたのが「東京オリンピック 2020」のマークがついたポーチだった。
村田:うわー……
細野:すごいかわいそうでさ。でもいい教訓になった。
藤田:私も一度やったことがある。
村田:なにが出たの?
藤田:蜘蛛のラジコンが出たよ。
細野:ちょっと楽しそう。
藤田:とても楽しかったよ。
村田:電気で動くものだと、ちょっとうれしいね。
小堺:じゃあ、じゃんけんで負けた人が試してみますか。
全員:最初はグー、じゃんけんほい!
村田:うわー、勝ってしまった!
細野:ギャー!負けた!
村田:よし、じゃあゆきえちゃん、お子さんのリベンジだ。
村田:「夢の世界へスタート!お好きなボタンを押してください。」だって。
細野:どれにしよう。
藤田:ゆきえちゃんがピンとくるほうで。
村田:お、出てきた!夢の扉がオープンだ! 持った感じはどうですか?
細野:うわ、タオルっぽい……。絶対タオルだ……。
藤田:ピカチュウ……
小堺:またポーチ。
村田:あ、でも便利グッズだよ! ペットボトルとか入れられる。
藤田:これからの時期、使えるよ!
細野:写真、撮ってもらってもいいですか?
村田:はい、チーズ。……ゆきえちゃんが笑ってない。
藤田:でも記事の撮れ高はひとつできたよ!
村田:フリとオチはばっちりだったよ。
細野:慰められてる。
※編集後記/残念な顔をする細野を見たやさしい村田さん。このあと、しっかりとカンパしてくれたのでした
坂の上は別世界
藤田:あ、先生! ビル毛を見つけました!
小堺:素晴らしいです。
藤田:発見して褒められると嬉しいね(笑)
小堺:五反田は、ビル毛を撮るとホテルが入ってきますね。
細野:あ、ここにもビル毛!
小堺:これ、いいですね。
村田:建物の白とグリーンの組み合わせが爽やか。高いビルに囲まれている感じが、可愛らしい。
ビル毛からビル毛へといざなわれながら駅周辺の歓楽街を抜けると、閑静な住宅地が現れました。
村田:向こうの方までなだらかな坂道が続いてる。抜け感がありますね。
藤田:よーし、みんなで向こうまで走ろう!
村田:地獄のランニング(笑)
藤田:全員HPが0になってしまう。
村田:立派なモミジ。木陰が気持ちいい。
小堺:五反田にも結構、緑がありますね。
村田:こっちの方は初めて来ました。
藤田:さっき通ったエリアとは雰囲気が全然違うね。
村田:あ、向こうにいい感じの階段!
小堺:行こう行こう。
村田:うわー、階段の上からまちを見下ろせる。
藤田:坂の上は天界みたい。豪邸ばかりだ。
村田:松濤とか、あのへんを彷彿とさせるね。聖と俗が入り交じるまち・五反田。
細野:あ、あれは「屋根毛」?いいですねえ。
村田:後ろのクスノキも立派。
細野:品川区の保存樹っていう看板があるよ。
村田:家を覆いそうなくらい大きいね。
村田:あ、また階段がある。登った先は細い道。階段を登るたびにどんどん雰囲気が変わるね。
藤田:迷路みたいだね。おもしろい。
小堺:来ようと思っても、もう来られなさそう。
村田:犬のフン放置禁止の看板。うんちが汗かいてる。
小堺:「ダメ!」って怒られちゃったから。
藤田:このうんちって、どういう気持なんだろうね。
村田:「ごめん、出ちゃった」。
細野:もしも、うんちに気持ちがあったなら。
村田:「もしもピアノが弾けたなら」みたいな(笑)
村田:こっちの看板は、また別の絵柄。犬をお散歩する人が多いエリアなのかな。
藤田:なかなか見ないタイプだね。
村田:人間はピクトグラムなのに、犬とうんちは写実的。
小堺:こういう看板に登場する犬の種類を調べてみたら、おもしろそう。
村田:たしかに、どういう犬種が多いんだろう。
藤田:図鑑みたいにすると楽しそうです。
つい出てしまう、おばちゃん仕草
細野:SABOTENSと小堺さんは、元から知り合い?
藤田:SABOTENSの著書(執筆 村田、イラスト 藤田)『はみだす緑(2022,雷鳥社)』の出版記念の展示を見に来てくださって、初めてお話して。それで次に急にトークイベントに誘うという(笑)
村田:そうそう!いきなり出版記念のトークイベントのゲストとして声をかけてしまいました。その節はありがとうございました。
細野:小堺さんは、歩いているときに路上園芸を見ますか?
小堺:村田さんと知り合うまでは単なる日常風景だったんですが、話を聞いてから注目するようになりました。
細野:いろんな視点を持っている人と歩くと、視野が広がりますよね。
村田:私もビル毛の話を聞いてから、上を見て探しちゃうようになりました。
小堺:それでぶつかって「ごめんなさい」が増えちゃう。
村田:そう。今日も上空に気を取られて、何度もみんなにぶつかっては謝って。よっちゃんとはいつも仲良しなのに、ぶつかった時とおつりのやり取りの時だけなぜか他人行儀になっちゃう。
藤田:手とかグーにしちゃって。
村田:「もう受け取れない、いいのいいの」って。おばちゃんが出ちゃう。
細野:前のお散歩で、アメのあげ合いもしてたよね。「いいから、いいから」って。
藤田:寒い日にホッカイロをあげたり。
村田:おばちゃん、いろいろ携行しがち。
小堺:わかる。
藤田:ぶつかって謝る時はおばちゃんなんだけど、一人でくしゃみをする時は「申し訳ない」って、おじさんが出てきちゃう。
村田:手刀を切って、急に武士みたいになってね。
村田:あの木、かわいい。ライトの周りだけくり抜かれてる。
小堺:かつらみたい。
藤田:(何かを思いついたように)あやちゃんさ、植物でかつら作ったら?
小堺:ああ、素敵かもしれない。
村田:ビル毛の人間版。どんな髪型がいいかなあ。
藤田:盆栽みたいに少しずつ育てていって。
村田:自分で育てるタイプなのか。
小堺:超時間がかかる。
藤田:一生に1個。
しばらく歩いていくと駅前からつながる大通りに出ました。通り沿いには高いビルが軒を連ねています。
小堺:あ、ビル毛!
村田:隣の建物も変わったデザイン。
藤田:埴輪みたい。
藤田:あそこの階段、いいんじゃないですか?
村田:手すりと柵は、人が登るためのものなのかな。どうですか、あそこに登ってみるの。
小堺:こわい!どこからどう行くのかも分からない。
細野:ここは一つ、合成の力で。
細野:こんなにビルに注目したこと、これまでなかったな。
小堺:あらためていいビルが多いなって思います。ビル毛を見ていると。
ラッキービル毛に、独裁国家のようなビル毛。多種多様すぎる五反田のビル毛
藤田:あ、神社がある。鯉のぼりも飾ってあるよ。行ってみようか。
村田:「雉子神社」だって。立派な神社だね。
村田:手を洗うところが、ガラスケースを開けるタイプだ。初めて見た。
細野:アイスのケースみたいだね。
この日は子どもの日の少し前。境内には立派な鯉のぼりが飾られていました。
境内一角でおみくじも発見。見つけるとつい引かずにはいられないSABOTENS。おもわず吸い寄せられます。
藤田:いろんな色のおみくじが入ってる。よし、私は黄色。
村田:私は……緑だ。
小堺:私は水色!
村田:みんな違う色。結果は何でしょう。
藤田:私は、小吉です。
小堺:私は、吉です!
村田:私は、大吉だ!やったー。「今は勝負に出る時」だって。
小堺:じゃあ、また1000円の自動販売機にいきましょうよ。
村田:もう一個ポーチがあたったりして。
神社を後にした一行。最初にビルとビルの隙間から見えた、木々がこんもり茂る場所を目指して歩きます。
細野:大通りから1本小道に入ると、全然雰囲気が変わるね。
小堺:鳥のさえずりが聞こえる。
村田:こんな桜並木があるなんて。木漏れ日が気持ちいい。あ、公園もある。
小堺:鉄棒がありますよ。
村田:やってみますか。
鉄棒で遊んでいたら、公園を囲むビルの上に、ビル毛を発見。
細野:あ、ビル毛発見!
村田:どこどこ? ほんとだ! ほんのりとささやかなビル毛。
小堺:チョロ毛だ。
藤田:最後にビル毛を発見しました。
村田:ラッキービル毛。
公園を後にしようと一歩出ると、向こうの方に整然と並ぶビル毛(?)も発見。来たときは気づきませんでした。なんだか軍隊のようにピシッと揃っています。
小堺:すごい!ちょっと待って!
細野:あれは何でしょうか?
村田:ドームみたいなのもある。
小堺:狙って生やしているのは普段あまり撮らないんですが、ここまでくるとアリです。
藤田:ルールの厳しい独裁国家の建物みたい。
小堺:悪いやつがいそうな(笑)
ビル毛はまちの景観を表す
最後は聖地巡礼気分で、さらば青春の光のYouTubeにもよく登場する、事務所が入るビルの前へ。今日の散歩を振り返ります。
細野:2時間くらいかけて、駅の周りをぐるぐる回るだけの回もあるけど、今日は移動範囲は広い方だったね。だいぶいろんなところを見られた気がする。
藤田:本当に。ただ歩いただけなのに。
小堺:それが散歩である。
村田:格言。
藤田:坂だったり歓楽街だったり迷路みたいな道だったり。
村田:猥雑なものと整然としたものが混ざってたね。
細野:今日は、SABOTENSとお散歩してみてどうでしたか?
小堺:やっぱり見るところが違うなって思いました。「そこ??」っていう。
村田:五反田のビル毛はどうでしたか?
小堺:すごかったですね。ビル毛を撮るとホテルが入ってくるのは、五反田ならではでした。ビル毛からその土地を感じられると、いいなと思います。
村田:ビルはより、そのまちの景観が表れそうですね。
ふと、足元をみると、何か手紙のようなものが落ちていました。
小堺:最後にすごい落ちもんにも遭遇しましたもんね。
藤田:すごかった。
村田:まさに五反田。
細野:最後に、五反田に住むなら一軒家、マンション、どういう家に住みたいですか?
小堺:階段を登った豪邸エリアに住んでみたいですね。鳥のさえずりを聞きながら。
村田:さえずってましたね。
藤田:いいですね。
村田:五反田は交通の便もいい上に、あんな豪邸に住めたら最高ですね。