村田 あやこ
あやちゃん/記事を書いた人
村田 あやこ / Murata Ayako
ライター
お散歩や路上園芸などのテーマを中心に、インタビュー記事やコラムを執筆。著書に『た のしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。「散歩の達人」等で連載中。お散歩ユニットSABOTENSとしても活動。
藤田 泰実
よっちゃん/イラストを描いた人
藤田 泰実 / Fujita Yoshimi
落ちもん写真収集家
グラフィックデザイナー/イラストレーター/落ちもん写真収集家。茨城生まれ、埼玉育 育ち。多摩美術大学造形表現学部卒。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍しながら、路上に落ちているものから人間の背景や余韻、人間味を感じ取り、そこから妄想してタイトルをつけストーリーを作り出す「落ちもん写真収集家」として活動。落とし物は人間ドラマという発想が注目され、テレビやラジオなどにも出演。
細野 由季恵
ゆきえちゃん/撮影・編集した人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

現在、中目黒にあるアート喫茶 フライにて、個展『妄想路上採集』を開催中のSABOTENS。アート喫茶フライは、喫茶でありながら月替わりでアーティストの個展を開催しています。今回は番外編として、会場となるフライで作品を鑑賞しながら、店長である佐野 翔さんにお店についてのお話を伺いました。そしてもう1軒訪れたのが、SABOTENSの藤田 泰実さん(よっちゃん)が長年通っている美容院Taviさん。よっちゃんと中目黒の“あるご縁”に触れるお散歩となりました。

目黒は馬のまちだった!?

村田:今日は中目黒をお散歩! 7月末まで、中目黒にある「アート喫茶フライ」さんで、SABOTENSの展示を行っているんです。よっちゃんも中目黒にご縁があるとか?

藤田:昔、中目黒で働いていたことがあって、駅周辺にはよく来てたよ。20歳からずっと通っている美容室も、この近くなんだ。

村田:馴染みのまちなんだね!

駅前で早速落ちもんを発見。「指輪」でした。持ち主さんのところに無事に戻れますように……

中目黒駅近くにある目黒銀座商店街から、お散歩スタート。約900メートルの商店街に、雑貨店やクリーニング店、電器店など、様々なお店が軒を連ねています。

細野:いいねえ、この商店街。駅周辺の商業施設には行ったことあったけど、この商店街に足を伸ばしたのは初めて。

村田:昭和な雰囲気がちらほらと残ってるね。商店街の周辺には住宅地が広がっていて、生活感もある。

藤田:あ、観音様だ。

村田:行ってみよう。

商店街のビルとビルの細い路地の入口に「目黒馬頭観音」と書かれた提灯を発見。異世界へといざなう小道のようで、ワクワクしながら路地を抜けていくと、神社が現れました。

細野:馬の頭の観音さま……?

村田:(案内板を読みながら)大正時代、目黒には乳牛牧場や馬力運送業者が多かったりと、馬にゆかりが深い土地柄だったんだって。牛馬の息災を護るために観音様が設置されたみたい。へえ〜。

藤田:だからなんだね。

かつて競馬場があったりと、実は馬と縁の深い目黒区。区内に馬頭観音が十数基あるとのこと。かつて馬が身近にいた頃の風景を想像しながら、無病息災と開運を祈り、ご挨拶しました。

月替わりの展示と昔ながらの洋食メニューを楽しめる
アート喫茶フライ

目黒銀座商店街を後にした一行は、目黒川沿いを歩きながら、アート喫茶フライへ。

気持ちいい緑の小道が続く、目黒川沿い
アート喫茶フライ(東京都目黒区東山1丁目3−6 クレール東山 201)

2022年にオープンしたアート喫茶フライさんは、月替りの展示を楽しみながら、オムライスやナポリタンといった昔ながらの洋食メニューをいただける喫茶店。7月31日まで、SABOTENSの展示『妄想路上採集』を開催中です。

店長・佐野 翔(さの つばさ)さんに、お話を伺いました。

店長・佐野さん

村田:お店をオープンしたきっかけは?

佐野さん:以前は中目黒にある別のカフェで、長いこと働いていました。この場所はもともとラウンジバーだったんですが、物件が空くと聞いて、見に来たんです。前のお店でも店内の一角で展示をすることがあったけれど、徐々に手狭になってきて。このお店は広々した壁やピクチャーレールがあるのが気に入って、「今しかない」と独立を決めました。

喫茶店といえばこれ、メロンクリームソーダ

村田:昔ながらの喫茶店メニューをいただけるのも嬉しいです。お店のメニューにはどういったこだわりがあるんでしょうか?

佐野さん:かっこつけていない話と、かっこつけた話と、両方してもいいですか(笑)。

まずかっこつけていない話としては、僕自身が喫茶店に行くのが好きで、落ち着くから。かっこつけた話としては、コロナ禍で老舗の喫茶店がバタバタと閉店していったんです。有名なお店でも、後継ぎが見つからず閉店するという場合が多いようです。今風のおしゃれなカフェは、放っておいてもどんどんできますし、実際に僕が以前働いていたのも、おしゃれなカフェと呼ばれるようなお店でした。

一方で、日本で生まれたオムライスやナポリタンといった和製洋食を出す喫茶店は、誰かがやらないとなくなっていくかもしれないと思っていて。フライでも、昔ながらの喫茶店にあるようなメニューを中心にお出ししています。

少し前にレトロブームが訪れましたが、一時のブームとしてなくなるのではなく、ちゃんと美味しい洋食があって、展示を通して若い子たちにも来てもらえたらいいな、と思いながらやっています。

卵がふわふわのチーズオムレツに、ギザギザした形が懐かしいフライドポテト
夏限定のレモンケーキに、見た目に涼しいノスタルジックサイダー

村田:普段はどういったお客さんが多いですか?

佐野さん:平日はご近所の会社で働く方、土日は家族連れの方が多いですね。

村田:私自身、何度かお店に来る中で、お客さんの年齢層が幅広いなと思いました。夜はひとりで仕事したり本を読んでいる人がいたり。

佐野さん:昔は喫茶店って、そういう場所でしたよね。おじいちゃんやおばあちゃんと行けたり、家族で行けたり、恋人の待ち合わせ場所にしたり。喫茶空間に展示スペースを作ることで、間口を広げたいとも思っています。毎月展示内容が変わるので、ご飯を目的に来た人にも楽しんでもらえたらいいな、と。

村田:確かに、「ご飯を食べがてら展示を見に来てください」と言えると、誘いやすいですね。

村田:ちなみに、SABOTENSの展示の感想はいかがですか?

佐野さん:「やられたー!」と思いました(笑)。スタッフも設営後に出勤したら、「違うお店みたい」ってびっくりしていました。カラフルで夏っぽくて、写真もあればコラージュもあるのが楽しいですね。スタッフやお客さまからも「かわいい」と好評です。

こうやって、毎月アーティストさんの世界観でガラッとイメージが変わるのが、うちの強みだとも思っています。撤収後に何もなくなると寂しくなって、次の月はまた違う色に染められて。恋多き女みたいですね(笑)。

村田:毎月、心をかき乱されて。

佐野さん:「おかわり」待ってます。

藤田村田:ぜひお願いします!

SABOTENSの二人が路上で見つけたものをモチーフに、イラストや写真、コラージュなどを展示。手前は、店長・佐野さんに文字を入れていただいたコラボ作品。

心のリフレクソロジー・美容室Tavi

アート喫茶フライさんを後にした一行は、美容室「Tavi」さんへ。ここはSABOTENSよっちゃんが、20歳から切ってもらっているという美容室です。

富田さん(Tavi店長):こんにちは〜。

藤田:担当の富田さんは、私が東京一かっこいいと思っている美容師さんです。

富田さん:3番目くらいかな(笑)

富田さんはお客さま対応のため、お店のスタッフ・るいちゃんに、お話を伺いました。

村田:お店ができて長いんですか?

るいちゃん:中目黒に移転してからは13年くらい。その前は、原宿にありました。

藤田:私は原宿にお店があった頃からお世話になってます。

村田:お客さまはどういう方が多いですか?

るいちゃん:藤田さんのように、長く来てくださっている方が多いですね。ご本人だけでなく、ご家族やお子さんと一緒にいらしたり、お友だちを紹介してくださったり。

村田:人の縁が広がっているんですね。

藤田:Taviにいて、るいちゃんや、もうひとりのスタッフ・あいちゃんとおしゃべりしている時間は、心のリフレクソロジー状態で。ふたりは、私の過去の恋愛事情も全部知っています(笑)。

村田:よっちゃんの歴史を見守ってるんですね。

昨年2月に結婚したよっちゃん。なんと旦那さまとの出会いも、このお店のお客さん同士だったことがご縁だとか。

村田:結婚のニュースを聞いた時は驚きましたか?

るいちゃん:びっくりしましたけど、ふたりのことを知っていたので、「きっとうまくいくんだろうな」って、心配はなかったです。

藤田:結婚が決まった後に、夫婦でお店に行ったら、るいちゃんとあいちゃん、富田さんが、3人で「おめでとう」と書かれた横断幕を掲げて待っていてくれました。

村田:温かい!

藤田:あいちゃんは旦那さんに、「絶対に、絶対に幸せにしてくださいね」って念を押してくれました(笑)。本当に、お世話になっているお店です。

お店の一角では、アクセサリーや海外の古着なども取り扱っています。洋服をきっかけに来店するお客さまもいるとか。

細野:居心地がいいお店ですね。

村田:確かに、不思議と落ち着く。

るいちゃん:私自身、美容室って緊張してしまうので、「ザ・美容室」みたいに、きちっとしすぎた感じにならないようにしています。

藤田:今いるメンバーが素晴らしいから、こういう空間が作れたんだなと思います。いつも本当に、ありがとうございます。

実はアート喫茶フライさんも、よっちゃんの旦那さまにご紹介いただいたお店。「Tavi」さんからいろいろな縁が広がっていた……! Taviさん、ありがとうございました!

おしゃれなイメージがあり、勝手に「とっつきづらいまちなのかな?」と思い込んでいた中目黒。しかし蓋を開けてみたら、目黒川沿いには気持ちいい緑の道が続き、ちょっとレトロなマンションも多く、昔ながらの商店街があり、ふらっと立ち寄れる喫茶店や美容室もある。ひとりでも家族連れでも、過ごしやすそうなまちなのでした。

本日の一コマ漫画

イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)

こころに残る中目黒の風景

村田のミカタ:意外にも路上園芸をいたるところで見られた中目黒。七夕の短冊をたくさんつけたアロエの鉢植えが、インパクト満点でした。
藤田のミカタ:ぎゅっと詰まったミニ植物園

<お知らせ> SABOTENS EXHIBITION 妄想路上採集

記事でも訪れたアート喫茶フライにて、7月末までSABOTENSの展示を開催中!

7月27日(土)13時〜18時、31日(水)11時〜16時には、SABOTENSも会場に在廊予定。

ぜひ遊びにいらしてください!

———

SABOTENS EXHIBITION 妄想路上採集

期間:2024.7.2(tue)-7.31(wed) ※最終日は16:00まで
会場:アート喫茶フライ
住所:東京都目黒区東山1-3-6クレール東山 2F
営業時間:11:00〜24:00
お散歩ユニットSABOTENSが、中目黒のアート喫茶フライに初登場。道端の落としものや、隙間から顔を出す草。視界に入っているかもしれないけれど、気にすらとめない「路上のはみだしもん」を愛でる二人組。それぞれの視点で切り取り、「妄想」をミックスさせた路上の風景を展示します。

ご来場お待ちしています🌵🌵