村田 あやこ
あやちゃん/記事を書いた人
村田 あやこ / Murata Ayako
ライター
お散歩や路上園芸などのテーマを中心に、インタビュー記事やコラムを執筆。著書に『た のしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。「散歩の達人」等で連載中。お散歩ユニットSABOTENSとしても活動。
藤田 泰実
よっちゃん/イラストを描いた人
藤田 泰実 / Fujita Yoshimi
落ちもん写真収集家
グラフィックデザイナー/イラストレーター/落ちもん写真収集家。茨城生まれ、埼玉育 育ち。多摩美術大学造形表現学部卒。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍しながら、路上に落ちているものから人間の背景や余韻、人間味を感じ取り、そこから妄想してタイトルをつけストーリーを作り出す「落ちもん写真収集家」として活動。落とし物は人間ドラマという発想が注目され、テレビやラジオなどにも出演。
細野 由季恵
ゆきえちゃん/撮影・編集した人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

SABOTENSのお散歩、2025年最初は東京・東村山です。志村 けんさんの生地・東村山。志村 けんさんゆかりのスポットを目指し歩いていたら、意外な落ちもんや名物料理など、思いがけない出会いと発見の連続でした。

駅前で「アイーン」!

村田:今日は東村山に来ています!実は東村山は、よっちゃんたっての希望だったんだよね。あらためて、東村山に来たかった理由を教えてください!

藤田:東村山には、志村 けんさんの銅像があるっていう噂を聞きまして。「加トちゃんけんちゃん」世代としては、ぜひ行ってみたいなって。

村田:志村 けんさんが東村山出身なんだよね。確か「東村山音頭」っていう歌も唄っていたよねえ。

藤田:あ、駅前に早速、銅像があった!

村田:うわー、立派な銅像だ。東村山駅の真ん前にあるんだ。愛されてるね、東村山に。

藤田:本人そっくりだね。似てる。「多くの笑いと感動をありがとう。」って、その通りだね。

村田:見て、銅像の後ろのイラストも、よく見ると写真が集まってモザイクみたいになってるよ。

藤田:志村 けんのことを好きな人たちで「志村 けん」ができてるんだ!すごいね!

藤田:せっかくだから銅像の前で、志村 けんのポーズをして撮ろうか、あやちゃん。

村田:やっぱり「アイーン」かな。

藤田:一番最初に、見たいものが見れてしまった。「最初はグー、じゃんけんぽん」も、言い始めたのは志村 けんだよね。

村田:そうなのか!

藤田:「カラス なぜ鳴くの カラスの勝手でしょ〜」もそうでしょ。

村田:普通に使ってるけど実は志村 けん発ってもの、いろいろありそうだな。

藤田:噂によると、東村山には『だいじょぶだァー饅頭』が売ってるらしいよ。

私たちのすぐそばに、銅像を見守る地元民らしき方がいたので、聞いてみることに。

村田:すみません、東村山には『だいじょぶだァー饅頭』が売っているんですか?

地元の方:売ってますよ。駅前の道をあっちの方にずーっと歩いて行くと、和菓子屋さんがあって、そこで売ってます。

村田藤田:えー、ありがとうございます!

藤田:実は志村 けんが好きで、銅像を見に来て。

地元の方:そうなんだ、わざわざ?

藤田:そうなんです(笑)

地元の方:おお、すごいね(笑)

優しい地元の方、ありがとうございました!

東村山は、片手袋のまち

いざ『だいじょぶだァー饅頭』を目指し駅前を出発。・・・・・・のはずが、駅前で早速足が止まります。

藤田:第一落ちもん発見!

村田:片手袋だ。

藤田:手招きされてるね(笑)

村田:確かに(笑)。こういう厚手の手袋って立体感あるから、手が入ってるみたいでドキッとする。

藤田:このタバコ屋さんもいいねえ。

村田:歌のポスターが貼ってあるよ。『いつか恋した女(ひと)の町』だって。地元の歌手の方かな。

藤田:YouTubeチャンネルもある!

村田:あとで聴いてみよう。

村田:あの駅前ロータリー、「無」の空間だね。

藤田:行ってみようか。

村田:近くで見るとなんだか遺跡みたいだぞ。

藤田:噴水なのかなあ?

村田:確かに!遺跡の正体は噴水でした。なかなか噴水の中って見る機会ないね。

藤田:ねえ、あのお蕎麦屋さんの屋上、良くない? もじゃもじゃしてる。

村田:ビル毛*だ!いいねえ。

ビル毛…ライターの小堺 丸子さんが名付けた言葉で、ビルの屋上に生えた木々が髪の毛のように見える現象のこと。小堺さんの登場回はこちら

藤田:見て、根っこの横にミニミニミラー。

村田:かわいい。反対側にもあるよ。

村田:車が出入りする時に使うのかな?

藤田:たしかに。

藤田:あ、また落ちもん発見。さっきのと似たような手袋だ。

村田:片割れだったりして。季節柄、片手袋の落ちもんがあるね。

村田:あ、また片手袋だ。こっちは素材がちょっと違う。

藤田:東村山は、片手袋のまち。

ひそかに繰り広げられる抗争……?

村田:あ、看板が倒れてる。

藤田:シルバー人材センターの看板が引っこ抜かれてる。

村田:何があったんだろう……シルバー人材の派閥同士の抗争か。

藤田:「シルバー撲滅派」と「長生き派」の戦い。

村田:このタオルや割れた三角コーンは、戦いの跡かもしれない……

藤田:ねえ、あやちゃん、実はさっきから「鬼ころし」が落ちてるんだよ。

村田:え、全然気づかなかった!本当だ、2パック連続で落ちてる。

藤田:あっちにも1個あったんだよ。酒を飲まなければやってられない人がいるのかも……。

藤田:あ、こっちにも落ちてる!

村田:鬼ころしと片手袋のまちだ!ここまでで片手袋は3枚で、鬼ころしは4つ。鬼ころしが一気に追い抜いた。

村田:「ゴミを捨てるあなたの心がゴミです」

藤田:怖い(笑)。「今日は何曜日ですか」って問いかけてる。

村田:決まった曜日以外に捨てちゃう人がいたんだろうね。

村田:この自転車屋さん。川柳が自転車にぶら下がってる。「お年玉 母が預かり 使徒不明」って、いいねえ(笑)

藤田:政治へのメッセージもあるよ。誰が考えているんだろう。

村田:どれもうまいね。

名作揃いの川柳にすっかり見入っていたところ、すぐそばに店主さんらしき方とお客さんがいらっしゃいました。

藤田:これ、お店の方が考えていらっしゃるんですか?

村田:どれもお上手ですね!

お客さん:ねえ。うまいわよねえ。川柳は自分で考えて書いたんですってよ。

藤田:おもしろいですね。最高です。

「写真撮っていいですか?」と店主さんにお聞きしたところ、「別にいいけど……」とはにかみながら許可いただきました。ありがとうございました!

藤田:お店の方からしたら、平日の昼間に散歩してるうちらこそ、怪しげな存在だろうね。

村田:どうする?後で川柳が増えていたら。「昼間から ふらふら歩く 謎女」。

自転車屋さんを後にし、歩いていたところ、またもやアイツを発見!

藤田:あ、ありました!鬼ころし。

村田:すごいすごい!何個目?

藤田:5個目だ。

村田:この道沿いに鬼ころしがたくさん落ちてるね。ヘンゼルとグレーテルがパンを落とすみたいに。

藤田:あ、また鬼ころし!

村田:鬼ころしストリートや!一見のどかで穏やかな感じだけど、なにかあるな、このまちには。

藤田:だんだん、鬼ころしを求めるようになってきちゃったな。

村田:茂みの間とか、電柱の陰とか、「鬼ころしがありそうな場所」をつい目で追っちゃう。

藤田:気づいたら、鬼ころしの虜。

村田:いくらぐらいで買えるんだろう、鬼ころしって。

藤田:金額的にはお酒の中でもお手頃な気がする。

村田:パックからストローで飲むっていうのがすごいよね。

藤田:確かに。酔っ払っちゃいそう。

東村山グルメを堪能

すっかり鬼ころしに目も心も奪われてしまった、SABOTENS。しばらく歩いていたら、向こうの方になにやら気になるのぼりが見えてきました。もしやこれは……!

藤田:あ、おまんじゅうやさんみたいな建物が見えてきた!……のぼりに『だいじょぶだァー饅頭』って書いてある!

村田:やったー、ついに到着!

東村山の和菓子どころ・餅萬さん( 東京都東村山市久米川町3-29-38)。店内には『だいじょぶだァー饅頭』や『だっふんだァーどら焼き』など、地元のスター・志村 けんさんにちなんだお菓子が並んでいます。自宅用に、お土産用に、それぞれお菓子を買い込みました。

藤田:よかったね。「だいじょぶだァー」って言われると嬉しいね。

村田:「だいじょぶだァー」って、いい言葉だね。

『だいじょぶだァー饅頭』の旗の前で記念撮影。すぐそばに、またもや気になる看板を発見しました。

藤田:「ソース作り体験中」の看板があるよ。

村田:いい香りがするね。工場直売所もあるみたい。ソースが売ってるのかな。

藤田:行ってみようか!

地元の調味料製造会社 ​​ポールスタア(東京都東村山市久米川町3丁目28−2 ポールスタア)さん。化学調味料を極力使用しないソースやタレを製造しています。工場の敷地内の直売所では、『メイドイン東村山ソース』を始め、タレやドレッシングなど、料理や食事が楽しくなりそうな調味料がよりどりみどり。「何を作ろうかな」と献立の妄想を膨らませながら、どっさり調味料を買い込みました。

藤田:いやー、爆買いしてしまった。

村田:レジでくじ引きさせてもらって、引いた数でさらにおまけを付けてくれて。

藤田:太っ腹だったね。ありがたい!

解散時間も近づいてきました。駅までゆるゆると歩きながら今日のお散歩を振り返ります。

村田:東村山は空が広いね。のんびり静かで、いい雰囲気。

藤田:ほんと。あまり高い建物がないのがいいね。

村田:東村山に住むなら、どんな家がいい?

藤田:庭付きの一軒家に、広々住みたいなあ。

村田:広い庭で野菜を育てて、無人販売でもしたいなあ。

藤田:いいねえ。副業でね。盗まれたら「見てるぞ」って貼り紙したりして。

村田:どういう貼り紙をするかで性格が出そうだね。

藤田:どんな貼り紙にする?

村田:最初は「防犯カメラを設置しています」で匂わせて、それでも盗む人がいたら、すっごい嫌な音を鳴らそうかな。

藤田:怖い(笑)。エスカレートするとご近所の名物おばさんになるね。

村田:お父さんが昔、実家の駐車場に猫よけのために、嫌な音が鳴る機械をつけてたな。

藤田:猫、いなくなった?

村田:いや、全然おかまいなしで来てたな。猫のほうが上手だった(笑)。

志村 けんさんゆかりの地・東村山。駅前に銅像があったり、ギャグにちなんだお菓子があったり、お店の中に写真やフィギュアが飾ってあったり。東村山で愛されているのをひしひしと感じました。最後になりましたが、今回散歩に同行し、散歩中の様子を写真に収めてくれたのは、SABOTENSよっちゃんの旦那さん・洋平君。本当にありがとうございました!

SABOTENSのおさんぽごはん

今日もすっかりお腹が空いたSABOTENS。「黒焼きそば」ののぼりに吸い込まれ、ラーメン本舗まるみ(東京都東村山市本町2丁目16−31)さんへ。なんとポールスタアのソースを味付けに使ったご当地グルメ・黒焼きそば(¥800)をいただけるお店でした。

濃厚なソースが絡んだ焼きそばに箸が進みます。美味しい!

本日の一コマ漫画

イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)

こころに残る東村山の風景

村田のミカタ:三角コーン2体に囲まれるトゲトゲのサボテン。赤鬼と金棒みたいでかわいい。
藤田のミカタ:!の位置が頭だっていいじゃないと言わんばかりのフリーダム感