

SABOTENSのお散歩。今回は、年末の東京・麻布十番へやってきました。クリスマスが近づくまちの空気に触れ、“港区女子”気分を少しだけ味わいながら、2025年を振り返りました。
落ちもんを交番へ届ける
村田:麻布十番なんて、お散歩自体はじめてかもしれない。ちょうど学校が終わる時間なのかな。このへんの学校に通っているらしき子たちが駅の中を歩いていて。みんな、品が良さそうな子たちだったよ。
細野:コミュニティが違いそうだ。今日はこれまでの散歩を振り返りつつ、港区女子気分を味わおう(笑)
藤田:仕事でも、ときどきこのへんに来るんだけど、仕事のときは常に“戦闘モード”だからな。
村田:そうか、ゆっくりお散歩するような余裕はないよね。
藤田:今日は楽しみ!

いつも散歩中、まちの神社を見かけるとお参りするSABOTENS。今回なんと、駅の出口のすぐとなりに神社を発見。商売繁盛などにご利益のある十番稲荷神社(港区麻布十番1丁目4−6)です。
村田:きれいな神社だね。
細野:さっきSNSを見てたら、ショート動画にDr.コパが出てきて、「今日は神社にいくといい日」なんだって!
村田:そうなんだ!
藤田:行こう行こう!

十番稲荷の入口には、大きなカエルが。江戸時代の大火の際、境内の「がま池」の大ガエルが水を吹きかけて火事を鎮めたという「がま池伝説」にちなんで、祀られているそうです。
村田:カエル好きな人におすすめの神社。そういえばよっちゃん、カエル苦手だったよね……
藤田:こんなでっかいカエルが実際にいたら、ちょっとやだな(笑)
村田:肌のブツブツも大きいだろうね。
藤田:怖い……

藤田:あ、七福神もいる!
村田:いい表情してるねえ。
「今年も無事に1年を終えました。ありがとうございました。2026年もよろしくお願いします。」それぞれお参りを済ませたあと境内を見渡したところ、お社のようなおみくじの箱を発見しました。

細野:お金を入れたらおみくじが出てくるのかな。ガチャガチャみたいだね。
村田:やってみようか。
藤田:今年最後のおみくじだ!
村田:散歩のたびにおみくじを引いて。
細野:何枚引くんだっていう感じだね(笑)

村田:私は吉!
細野:私は末吉!
藤田:あ、大吉だ!
村田:よかったね!
藤田:今日は仕事でメンタルがやられてたから、嬉しい……!
村田:年末まで大変だったね。今日はゆっくり散歩して心を整えよう。
さあ、お散歩だ……と歩き出したところ、神社の入口付近であるものを発見します。

村田:あら、スマホが落ちてるよ。
藤田:本当だ。
細野:どうして落としちゃったんだろう。
村田:急いで駅まで走ってたのかな。
細野:港区女子のスマホかも。これ、近くの交番に届けてあげた方がいいよね。
藤田:そうしよう。スマホを落としたら、悲しいもんね。
落とし主の方、今頃必死でスマホを探しているかもしれません。いつもは「落とし物には触らない」というポリシーのよっちゃんですが、今回ばかりは例外。これは急がねばと、すぐに近くの交番に届けました。
村田:まだまだ充電もあったし、さっき落としたばかりの感じがしたね。
藤田:ホーム画面がワンちゃんだった。
村田:飼ってる犬なのかな。
細野:無事に届くといいね。
このお散歩は12月末に実施したものです。持ち主の方に、無事にスマホが届いていますように!
麻布十番の子どもたちはすごい
日が暮れるのが早い12月。まだ16時台ですが、まちの建物や車には、早くも明かりが灯り始めています。

細野:麻布十番を走る車、“ベンツ率”が高い……(笑)
村田:公園には塵一つ落ちてないね。鳩に餌をあげてるじいさんもいない。
細野:このへんに民家はあるのかな。
藤田:確かに。住んでる人なんているのかな。
村田:想像もつかない。
学校の数も多い麻布十番エリア。学校帰りと思われる学生さんたちもちらほら見かけます。
藤田:学校帰りの子どもたちもいるね。キッズたち、一人でこんな街なかの学校に通っていて偉い。私が同じ年代だったらドキドキしちゃいそう。
村田:東京だと、電車を乗り継いで学校に行くのも一苦労だよねえ。すごいよ。
そんな話をしながら歩いていたら、向こうの方に商店街らしきアーケードを発見。
藤田:都会の商店街だ。
村田:あ、不動産の広告がある。家賃をチェックしてみよう……うわ、やっぱり高いな。
藤田:マンションの中にジムまでついてるんだって。
村田:すごいなあ。毎月いくら稼いだら、これだけの家賃を払えるんだろう。
藤田:このへんにはみだす緑、なくない?
村田:あ、よく見るとちっちゃいスペースに、ちんまりと生えてるよ。


藤田:すごい。あやちゃんの目にかかると見えてくるね(笑)
村田:このスペース分だけでも、だいぶ地価は高そうだ。でも、あまり無法地帯にははみ出してないね。

村田:あ、ここの写真館、表が緑でもりもりだ。有名人の方の写真もある。土地柄だね。
細野:こういう写真館で、プロフィール画像を撮ってもらいたいな。
藤田:いいねえ!
村田:ワンちゃんと一緒に写ってる方もいるよ。
藤田:前に、猫たちとスタジオで写真を撮ってもらったことがあったけど、大変だったよね。
村田:そうそう。うちのアロエちゃんはパニックを起こして、天井裏に逃げてホコリまみれになって。
藤田:うちのムーちゃんも、ずっと固まってたな。


村田:あ、仮囲いの中に鉢植え。麻布十番園芸だ。こういうまちでアロエを見つけると、落ち着くよ。
細野:いい感じの看板。

藤田:すごくいいね。
細野:メニュー名が英語で書いてある。
村田:さすが麻布十番。
細野:よく見ると気になるメニューだらけ。
村田:卵がたくさん乗ってるね。
チンパンジーがほしかった

村田:まちがクリスマスムードだね。
藤田:昔ながらの雰囲気のお店も結構あるね。
村田:あ、おもちゃ屋さんがあるよ。にぎわってるね。クリスマスプレゼントを買う人たちかな。

村田:「みんな大切な人達です。幸せを造りましょう」だって。なんだか、まちのいろんなところから余裕を感じるよ。
細野:ほんとだね。
店内は子どもたちで賑わっています。おもちゃを眺めていたら、童心をくすぐられた3人。クリスマスの思い出話に花が咲きます。
村田:よっちゃんは、何歳頃までサンタさん信じてた?
藤田:結構遅くて。小学校5、6年くらいまで信じてたよ。ちょっと大人ぶって、親に「サンタさんってほんとはいないんでしょ?ひろき(弟)には言わないから、こっそり教えて」って聞いて。
村田:自ら聞いたんだね!
藤田:「そうだよ、お父さんだよ」って言われたときは、ガーンって。強がった割には、ショックだった(笑)。うちは、プレゼントをベランダに置いてくれてたの。
村田:すごい!「外から来たんですよ」って。
藤田:「サンタさん、家の中に入ると帰れないから、ベランダに置いたんだよ」って。すっかり信じてたよ。
村田:リアルな演出だったんだね。
細野:優しさだね。
藤田:ゆきえちゃんちの子どもたちはどうしてる?
細野:サンタさんは去年、病気で死んだことになってる……。一昨年、夫がAmazonのラベルをつけたまま息子にプレゼントを渡して、子どもが「え?」って戸惑って。で、「もう!サンタさんなんていないから!」って、思わず叫んじゃった。
村田:え!子どもたちの反応はどうだった?
細野:「なんとなくわかってたけどね」って。
村田:落ち着いてる。

村田:私はよっちゃんと同じく、小学校高学年まで信じてて。小5の頃、テレビの動物番組でチンパンジーを見て、「サンタさん、チンパンジーがかわいくて、どうしてもほしいです。どうかよろしくお願いします」って手紙を書いたの。そしたらプレゼントは、ドンジャラ※だった(笑)
※ドラえもんのキャラクターの絵を合わせる、麻雀を簡略化したゲーム
藤田:うける(笑)
村田:次の年、急に母親から「サンタさん、いないから」って、ユニクロに連れて行かれて、「この中から好きなもの選んで」って言われた。ちょっとショックだったよ(笑)
藤田:演出もなくなったんだ(笑)
村田:しかも実用的なユニクロ(笑)
藤田:確かにチンパンジーはかなり難易度高いよね。
村田:実際にチンパンジーが家の中にいたら、怖かっただろうな。
藤田:人間ひとり増えるくらいのインパクトがあるもんね。もし飼ってたら、まだ生きてたかもしれないよね。あやちゃんの弟として。
麻布のはみだす緑
だいぶ日も暮れてきました。向こうの方には、夜空にきらめく何らかのヒルズの光。さすがは都心・麻布十番。

村田:「鳥居坂」だって。
細野:なんで「鳥居」って付いてるんだろう。
村田:鳥居があるのかなあ。(案内板を読みながら)江戸時代半ばまで、このへんに鳥居家のお屋敷があったんだって。すごいねえ。自分ちの名前が坂になるなんて。
藤田:すごいね。
村田:前に茅ヶ崎に住んでた時、加山雄三さんの家があったところに「雄三通り」っていう通りがあったな。似たようなもんかな。

細野:この照明、かわいい。
村田:あの下で読書したら、現代版・二宮金次郎になれそうじゃない?
藤田:やってみようよ。

藤田:新宿みたいなまちだと、「ここから奥は男と女の園だから、入っちゃいけませんよ」みたいなテリトリーとかグレーゾーンが至るところにあるのを感じて、それが人間味にもなってるけど、麻布十番はまた違った雰囲気だね。
細野:いろいろと削ぎ落とされて、洗練されてるね。
村田:あまり無法地帯な感じはないね。……あ、でも、見て。

村田:麻布十番の地に、アロエを植えてる人がいるよ。……あ、よく見るとゴムノキにリュウゼツランも。すごいすごい。
藤田:こういうの見ると、安心するね。
暮らしの延長線上としての、アート
コンビニで温かいお茶を買って、公園のベンチに座りながら一年を振り返ります。

細野:今日は49回目のお散歩です。
藤田:年明け最初のお散歩が、50回目になるんだね!
村田:節目だね。めでたいねえ。それにしても50回か。すごいね。ゆきえちゃん、よっちゃんのおかげだよ、本当に。一回のバズよりも、続くっていうことが一番うれしいよ。
藤田:続けるのって、結構大変な場合もあるけど、この3人だとまったく苦じゃない。ストレスゼロでできるから、ありがたいよ。
村田:毎回、楽しいおしゃべりの延長だもんね。
ここから、話題はそれぞれの仕事や、ものづくりの話へ。
村田:ありがたいことに秋に新しい本が出て。しばらくは販促のためのイベント続きでてんてこまいだったけど、ようやく一段落。これからどんな仕事を広げていきたいか、一呼吸おきながら考えてるところだよ。来年はもうちょっと丁寧に、考える時間や書く時間を取って、質の高いものを生み出していきたいなあ。
藤田:『緑をみる人』は、あやちゃんの人生の新たな扉を開いた気がする。アーティストとしての新たな扉。
村田:時間軸の長いブックライティングの仕事も、広げていきたいなあ。
藤田:私は今、クライアントワークの割合が大きくて。クライアントさんありきのお仕事はとてもありがたいけど、40代のうちに少しずつ、自分発信の仕事の幅も広げていきたいな。
村田:素敵だね。よっちゃんだったら、もう後は「いつやるか」というタイミングだけな気がする。ゆきえちゃんも、金継ぎのワークショップをはじめたりと、2025年はいろんな変化があったよね。
細野:そうだね。前は“アート”に対して勝手に崇高なイメージを持っていたんだけど、金継ぎを通して自分の中の敷居が下がって、“アート”や“作ること”に、どんどん抵抗がなくなっていった。
村田:そうだったんだ!
細野:「アートって、もっと身近なテーマでいいんだな」と思えたというか。DIYで棚を作ってみたりもして。
藤田:素晴らしい!
村田:前は作ることに対するハードルが高かったのには、なにか理由があったの?
細野:通っていた美術大学には周りにすごい人がいっぱいいて、勝手にアートのハードルを上げて、勝手に嫌いになっちゃった。その後、出産したらさらに、所帯じみていく自分とアートが遠く離れた存在に思えてきて。でも最近、ようやく取り戻した感じがして。
村田:前にゆきえちゃんの家にお邪魔したときも思ったけど、身につけるものや家に置くものなど、周りを取り巻くものを選ぶ審美眼も含めて、アートだなと思っていたよ。
藤田:ゆきえちゃんは、普段通り生きているだけで、見たり選んだりするものがアーティストっていう感じ。
村田:暮らしと地続きなのがいいよね。
細野:嬉しい。こちらこそ、いつも2人から学びを得ているよ。
村田:生活とアートが地続きみたいな感覚は、3人とも共通している感じがするよね。まちの中の石ころだって葉っぱだって味わい深いよね、みたいな感覚。
細野:本当にそうだね。
村田:私は美術の専門教育を受けたことはないんだけど、「なんで路上園芸が好きなんだろう」って考えた時、最近になってふと、20代の頃にアルバイトしていた旅館※を思い出して。
※エイミーズトークでも以前、取材させていただきました。
藤田:へー!
村田:今の五代目の方は、明治時代に建てられた旅館の雰囲気に合うように……と館内に民芸の調度品を並べていて。映画監督の小津安二郎もよく逗留していた旅館で、小津監督も民芸調の日用雑器を愛用していたみたい。
「生活の中で生み出された自然体の緑っていいな」って、街なかの緑に目が止まり始めたのも、ちょうどアルバイトをしていた時期で。仕事を通して見たり聞いたりしたことに、結構大きな影響を受けてたのかもな……とつながったよ。
細野:そうだったんだね。
村田:私にとってのアートや美しいものって、どこか別の場所に見に行くものというよりは、自分の生活や肌感覚と地続きなもの。2人との街歩きを通して教えていただくことは、すごく大きいよ。
藤田:3人それぞれ、惹かれるものは完全には一致していないけど、「おもしろい」と思うものの核は共通している感じがするよね。
村田:核が一緒でありながら、見てるものが少しずつ違うからこそ、思いがけない発見があるんだろうね。

公園で話し込んでいたら、あたりはすっかり真っ暗に。
2026年に50回目を迎える本連載。これからもいろんなまちで、いろんなものや人と出会っていきたいな。これからも、よろしくお願いします!
本日の一コマ漫画

こころに残る麻布十番の風景


書籍情報 『緑をみる人』(雷鳥社)

- 著者: 村田あやこ
- 発売日: 2025年10月6日
- ページ数: 384ページ
- サイズ: 17.8 x 11.2 x 2.3 cm
アスファルトのひび割れ、マンホール蓋のふち、側溝の奥底、室外機の下……。整備された都市空間の隙間で、人知れず芽吹き繁茂する植物たち。「路上園芸鑑賞家」として活動を続ける著者が、世界13カ国18人の”隙間植物愛好家”を約2年にわたって取材。日本、フランス、トルコ、メキシコ、韓国、台湾、イタリア、スウェーデン、ブラジル、シンガポール、アメリカ、オランダ、ニュージーランドの緑をみる人たち19人のストーリーと、総数800枚もの写真を通して見えてくる、日常にひそむ地球の「野生」を描いた一冊です。


