先日、東京あきる野市にある金剛の滝を見に、友人と山歩きをしました。
自然の中に入ると心も身体もリラックスできて、少しずつ本来の自分に戻っていくような感覚があります。自然体のまま、心が向く方向を大切にしたい自分に気づくたびに思い出すのが、子どもの頃に眺めていた瀬戸内海の景色です
瀬戸内の暮らしから、都会へ
私は広島の田舎で生まれ、瀬戸内海を眺めながら育ちました。
親戚が米や野菜を育てる農家、祖父の海釣りの趣味のおかげでほぼ自給自足の生活を送っていました。小さい頃の遊びといえば泥団子づくりや、川遊びといった田舎ならではの遊びです。

そんな私が都会に憧れ、田舎から上京したのは18歳の時。自然の恵みに感動するような生活とは少し距離のある学生時代を過ごしていました。
私が「暮らしの中で、なるべく自然を感じていたい」という気持ちになったのは、この自然から遠い場所に身を置いた学生時代があるからこそ気付いたことでもありました。その分、「自然を感じていたい」という気持ちがじわじわと育っていったのかもしれません。
小さい頃に泥団子を作って遊んだこと、お夕飯でいただく野菜をお庭に取りに行くお手伝いをしていたこと。けれど、ダンゴムシやミミズを見つけては、お手伝いそっちのけで遊びはじめてしまったり(笑)。そんな幼い頃の記憶が蘇り、自分の「好き」や、「心地良さ」を思い出しているような感覚です。
心地よい暮らしをつくる仕事
「暮らしの中で、なるべく自然を感じていたい」と考えるようになった背景には、もう一つの大きな出来事があります。 母が癌で亡くなったことです。
自分の生活や習慣によって防げる病気もあるのではないか。そう考え、食事や生活環境、ストレスとの向き合い方などを調べ、できることは実践するようになりました。
「どうすればストレスの少ない生き方ができるのか」
その問いは、ずっと私の根底にあります。
振り返ってみると、整理収納との出会いも、家業である工務店で家づくりに関わるようになったことも、そうした想いとつながっていたのだと思います。

整理収納は、単に物を片づけることではなく、暮らしの流れを整え、日々のストレスを減らしていくための方法でもあります。家づくりもまた、そのままの自分でいられる場所をつくること。どちらも根っこにあるのは、同じ問いだったと気づきます。
心地よい感覚を見つめ直し、自分の手でも作っていけるように
気がつけば私が好きだと感じる場所には、共通点がありました。
本当の心の底から「これが良い」「心地良い」と感じるものは、外から与えられるものではなく、自分の中にすでにあるものなのかもしれません。だからこそ、作り手としては、それをいかに引き出せるかを大切に対話を重ねています。
たとえば、昔足を運んで心に残っている場所にもう一度行ってみて、何が心地良いと感じて覚えているのか、自分を探ってみる。そうした時間の中に、自分の感覚のヒントがあるように感じています。
生き生きとした植物、自然な香り、風の通り道、太陽の満ち欠けを生かした窓の設計、穏やかな光。自然に、争わず、その恵みを最大限に活かすような空間です。凪のように静かで、自然体でいられる場所が、いちばん心落ち着きます。それはきっと、子どもの頃に瀬戸内の山や川に囲まれて過ごした、あの静けさと同じものだと思っています。
だから「そのままの自分でいいんだよ」と、静かに語りかけてくれるような住まいをつくりたい。自分自身を大切にできる場所があって、そこから溢れた活力が、身近な人たちへの愛になっていくと思っています。

今日もそんなイメージを持ちながら、お家を拭いたり、植物のお世話をしたり、カゴを編んだり、今の暮らしの近くにある自然の中で見つけた魚と遊んだりしています。



