村田 あやこ
お散歩する人/記事を書いた人
村田 あやこ / Murata Ayako
ライター
お散歩や路上園芸などのテーマを中心に、インタビュー記事やコラムを執筆。著書に『た のしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。「散歩の達人」等で連載中。お散歩ユニットSABOTENSとしても活動。
藤田 泰実
お散歩する人/イラストを描いた人
藤田 泰実 / Fujita Yoshimi
落ちもん写真収集家
グラフィックデザイナー/イラストレーター/落ちもん写真収集家。茨城生まれ、埼玉育 育ち。多摩美術大学造形表現学部卒。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍しながら、路上に落ちているものから人間の背景や余韻、人間味を感じ取り、そこから妄想してタイトルをつけストーリーを作り出す「落ちもん写真収集家」として活動。落とし物は人間ドラマという発想が注目され、テレビやラジオなどにも出演。
細野 由季恵
見守り人/撮影・編集した人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

#13 新大久保編

まちのミカタ13回目。今回の舞台は「新大久保」です。多国籍的な店が軒を連ね若者たちでごった返すまちの片隅で、たくましく生きる植物や動物たちの姿に目を奪われました。

働く園芸に、ハチワレ鳥

待ち合わせはJR新大久保駅前です。月曜日にも関わらず駅前は若者たちでごった返しています。年の瀬のにぎわいと異国情緒あふれる新大久保の雰囲気に心躍らせながら、お散歩スタートです。

村田:今日は旅行気分でお散歩だ!レッツゴー。

藤田:晴れてよかったね。

細野:「まちのミカタ」のお散歩のときは大体晴れてるね。今まで雨で中止にしたことあったっけ?

村田:そういえば、ないね。「どっちかな?」っていう微妙な天気のときも当日になると不思議と晴れて。

藤田:雨の予報のときは、別の理由で誰かが都合悪くなってリスケになったりね。

村田:そうそう。不思議だよね。

▷新大久保の治安を守る鉢植え

村田:……あ、第一「路上園芸」発見!

藤田:「ここに座らないで」っていう防止のためかな。

村田:たしかに、ちょうど座りたくなる空間だよね。

村田:こっちの園芸にも「駐車禁止」の看板。都会の園芸は働きますな。

藤田:働き者だね。

「見て、これ!」とSABOTENSよっちゃんが指差す方向を見ると、なんと鉢植えの植物に鍵が引っ掛けられていました。

村田:第一「落ちもん」発見! 秘密の鍵かな。「あの木にかけておくから」って。

藤田:暗号かもね。これを撮った私たちは目をつけられてしまう……。

村田:闇組織に消されてしまうかも……。

藤田:こわ!

妄想を膨らませながら足を進めると、すぐそばで小さな鳥がよちよちと歩いていました。

▷小さな鳥に目を奪われるSABOTENS

藤田:見て、かわいい鳥!

村田:かわいい!

藤田:ナニ鳥っていうんだろう。

村田:白黒だね、かわいい。

藤田:おいでおいでおいで。

村田:お、ついてきてる!? がんばって生きるんだぞ、新大久保で。

藤田:応援してるからな。ハチワレ猫みたいだから「ハチワレ鳥」っていう名前にしておこうか。

村田:勝手に命名(笑)。

藤田:野鳥の会からクレームが来たりして(笑)。

▷あとで調べてみたところ「ハクセキレイ」という鳥のよう

やっぱり気になるのは路上のアレコレ

駅周辺の道沿いには、各国の食材を売る商店や多国籍料理のレストランが軒を連ね、異国情緒と食欲を誘います。

▷韓国語のフリーペーパー

細野:あー、いい匂いがする。

村田:いいねー。タイ料理に韓国料理に……。お昼何食べようか(笑)。看板も外国語だらけだ。

細野:前回の柴崎とはガラッと違う雰囲気のまちだね。

▷海外の食材が店頭に並ぶお店。文字がかわいい。

非日常感ある新大久保のまちでも、SABOTENSがつい気になってしまうのは、路上の片隅のあれこれ。

▷「放置型」の片手袋が、冷えピタとともに……

村田:あ、片手袋だ!

藤田:横には冷えピタ。医療系だね。

細野:ここで施術が行われた……?

▷遺跡? 化石? ホコリ?

藤田:うわ、ここすごいよ! 化石化してる。

細野:なんだこりゃ。

村田:遺跡みたいだね。

藤田:遺跡ちりとり。

▷秘密のピザ窯……?

村田:ここも遺跡っぽいよ。

藤田:すっごい忙しいときに、ここでピザを焼くのかも。

はみだす植物たち in 新大久保

新大久保は、路上で植物がたくましく生きるまちでもありました。

▷縁石の隙間にグイグイ入り込む根っこ

村田:うわ、すごい! シェフレラ(ウコギ科)の根っこがはみ出してる。

藤田:鉢から脱出成功してるね。

▷壁のはじっこを登る真っ赤なツタ

藤田:わー、このツタかわいい!

村田:おしゃれ!

藤田:こういうアクセサリーいいんじゃない?

村田:ほんと。このままのデザインでもかわいいね。

▷なんと「発信源」は、舗装のひび割れ

村田:うわ、ツタの発信源発見!

藤田:すごい狭いところからがんばったね。

村田:こんなに小さなひび割れの隙間から伸びていったんだね。がんばれ……って、自分のうちの外壁にツタが伸びたら気が気じゃないくせに(笑)。

藤田:立場が違えば、いうことも変わる。植物も人間も、生きるためには容赦しないね。

村田:生えた場所が悪けりゃ、人に根こそぎ切られちゃう。

藤田:飼っている豚は食べないけど(スーパーの)豚肉は食べる、みたいなことだね。

▷ツタの行く末に思いを馳せるSABOTENS

歩いているうちにいよいよお腹が空いてきた一行。アジア各国の料理が食べられる「アジア屋台村」(東京都新宿区百人町1丁目11−28)で腹ごしらえすることにしました。

▷ベトナムのグリル料理「チャカーナヴォン」(1050円)
▷魚介と野菜をたっぷりいただけるベトナム料理「コムチエンハイサンセット」(850円)
▷ボイルチキンにソースをつけていただく「コムガセット」(790円)

お腹が満たされた一行は、再び路上に繰り出します。

▷「あ、お守りが落ちてる」、落ちもんハンター出動
▷「ご自由にどうぞ」界でも類を見ない大物・食器棚
▷幹の一部が口のように膨らんでいる木

藤田:うわ、この木……なにかくわえてたのかな。

村田:幹が柵を飲み込んで、柵だけ切られちゃったんだ。まだ中に柵が一部残ってるね。

細野:すごい! 柵を食べてたのか。

藤田:顔に見えるね。こういうキャラクターつくりたいな。

村田:なんていう名前がいいだろう……「もぐもぐ星人」。

藤田:「棒なめ太郎」……なんかちょっと違うね、気持ち悪いな(笑)。

年の瀬の新大久保で一年を振り返る

とりとめもない話をしながら歩いていると、ひときわにぎわう通りにたどり着きました。韓国料理やコスメ、占いなどさまざまな店がひしめくこの通りの名は「イケメン通り」。

▷買い物客でにぎわうイケメン通り

気になる店をのぞきつつぶらぶらと歩いていると、自ずと話題は年末年始らしいトピックに。

細野:二人は、2022年に挑戦してみたいことはある?

藤田:私は……めちゃくちゃいっぱいある。コンペに作品を出してみたいし、仕事でもどんどん新しいものを生み出していきたいな。仕事もブレイクしたいし、個人でもブレイクしたいし、プライベートもブレイクしたい。

村田:私も新しいかたちのアウトプットができるといいな。今、よっちゃんと一緒につくっている本が3月に出版予定で。夢は、本を原作にしたテレ東の深夜ドラマができること(笑)。阿佐ヶ谷姉妹の江里子さんに、ツタでモリモリの店の店主役をやってほしいな。

藤田:色々つくって、色々おもしろいことをしていきたいなあ。野心を復活させて30代ラストスパートを駆け抜けたいね。

細野:そうか、来年お二人は40歳。

村田:節目だね。

細野:40歳ってすごい楽しそうだよね。

村田:こんな40歳になると思わなかった……小6で精神年齢が止まってる40歳。

藤田:ほんと、全然変わらない。

村田:三つ子の魂百までって、言い得て妙な言葉だよね。

細野:大きくなったら雑誌の『CanCam』みたいなお姉さんになるかと思ってたよ。

村田:『VERY』みたいなね。一切無縁だな。

藤田:ああいうのって努力や意識の結晶だよね。

村田:自然体ではなれないよね。ま、なんなくていっか(努力したくないだけ)。

細野:違うところに力を注げばいいんだよ。

村田:そうだね。

藤田:来年もやるぞー!

村田:よし!

決意を新たにしたところで、路地に謎の壁と門を発見。

▷2021年と2022年をつなぐタイムトンネルか

細野:わ、なにこれ!

村田:秘密の門だね。

藤田:この前で写真撮ろうよ。

突如記念撮影タイムとなりました。

▷ラッパーよっちゃん
▷謎のコンテンポラリーダンス……?

人懐っこい動物たちに出会えるまち

一歩小道に入ると、静かな住宅地が広がる新大久保。さっきまであれだけにぎわっていたのが不思議なくらいです。鉢植えの花に包まれたおうちや、都心に生きる動物たちの姿もちらほら。

▷鉢植えで色とりどりの花が満開
▷窓辺に並ぶスズメたち

村田:あ、スズメが並んでる! かわいい。

藤田:見て、下に餌が置いてあるよ。

村田:よかったね。

▷塀の上にハチワレ猫

細野:あら、猫。

藤田:こんにちは〜。あ、触らせてくれた。

村田:かわい〜!

▷人懐っこい猫

藤田:おいでおいで。

村田:お利口さんだね。

細野:ずいぶん人懐っこいね。

藤田:あ、ついてきた。

村田:なに、案内してくれるの?

▷どこかへ案内してくれようとしている?

猫に誘われながら歩いていると、突然「猫ちゃん?」の声。振り返ってみると、声の主は自転車に乗った少年でした。「お魚食べたいのかな」「近所に友だちの家があるよ」「これからコンビニにいってくる」とひとしきり楽しそうにしゃべり、さっ爽と去っていきました。

藤田:気をつけてね、ありがとうー!

細野:かわいい。

村田:猫のような子どもだったね。

ふたたびにぎやかな通りへたどり着いた一行。楽しそうに買い物に興じる人たちを見ていたら、自分たちもフツフツと買い物欲が湧いてきます。人の波に誘われるように買い物タイムに突入。お互いに戦利品を報告しあって、2021年最後のお散歩はお開きとなりました。

▷戦利品報告タイム。牛肉だしの調味料「ダシダ」が人気でした。

細野:面白かった〜。

藤田:面白かったね。

村田:みんな新大久保にハマる理由がわかる。

藤田:これで好きな韓国アイドルができたら、楽しくてしょうがないだろうね。

村田:ほんとだね。

本日の一コマ漫画

イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)

まちのミカタ 心に残る西川口の風景

村田のミカタ:舗装の隙間でたくましく咲いていたスミレ。こんな寒い季節によくぞ!
藤田のミカタ:新大久保の酔っぱらいを支える野良椅子

SABOTENS 初の書籍 刊行決定!

2021年3月19日『はみだす緑 黄昏の路上園芸(雷鳥社)』が出版が決定しました! ふたりと一緒に架空のまちでの散歩を楽しんでくださいね。

『はみだす緑 黄昏の路上園芸 』 著:村田あやこ イラスト:藤田泰実 2022/03/19 発売予定 雷鳥社 ISBN:978-4-8441-3785-6

▷予約はこちら

お知らせ 

SABOTENSちゃんねる」では、過去の「まちのミカタ」の取材中に撮影した動画を少しずつアップしています。ぜひお暇な時にでもご覧ください!

▷最新の「まちのミカタ(柴崎編)」

●取材/SABOTENS
●執筆/村田 あやこ
●編集/細野 由季恵

SABOTENS
路上観察ユニット

SABOTENS / SABOTENS

2016年結成。「落ちもん写真収集家」の藤田 泰実(よっちゃん)と、「路上園芸学会」の村田 あやこ(あやちゃん)による路上観察ユニット。室外機やアロエ、選挙ポスターなど、組み合わせると路上あるあるな風景が作れる「家ンゲイはんこ」をはじめ、路上をテーマにしたグッズ制作や国内外での作品展を行う。会」の村田 あやこ(あやちゃん)による路上観察ユニット。室外機やアロエ、選挙ポスターなど、組み合わせると路上あるあるな風景が作れる「家ンゲイはんこ」をはじめ、路上をテーマにしたグッズ制作や国内外での作品展を行う。

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