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鈴木 栄弥が訪ねる『まちのエントリアンたち』
Amy’s talk ♯6 堀内愛月さん

エイミーことエントリエ編集長の鈴木 栄弥が見つけた気になる人を訪ねて、自分らしい暮らし方や生き方のヒントをいただいてしまおうというこのシリーズ。第6回目のゲストは、国立市でクラシック音楽専門の名曲喫茶『月草』を営んでいる堀内 愛月さんです。

古いものと新しいものから、
新しく生まれる雰囲気を

堀内愛月(ほりうち いつき)さん。ご実家が老舗喫茶店『カフェ・ガラス玉遊戯』だった影響で、幼少期から喫茶店やクラシック音楽に親しむ。國學院大学文学部卒業後、出版社に入社。退社後、お母様とともに生まれ故郷である国立市に『cafe flowers』を開店する。2012年夏、同店舗内に『名曲喫茶 月草』を開店。2015年、ワーナークラシックス・ジャパンからリリースされたヘルベルト・フォン・カラヤンの配信コンピレーションアルバム『カラヤン! カラヤン! カラヤン!』の選曲を担当。2017年は「名曲喫茶から始まる新しいカルチャー」を扱うweb出版社『月草編集室』を立ち上げた。

安寧の時を過ごす場所

とても落ち着いた雰囲気ですね。静かだし、普通の喫茶店とは違う感じ。

愛月さん:名曲喫茶に行かれたことはありますか?

なかったんです。なんだか敷居が高そうで……。

愛月さん:たしかに「いつでもクラシック音楽がかかっている」「大声でお喋りできないところが多い」っていう特質から、入りづらい印象を持たれている方は多いかもしれませんね。

僕は「名曲喫茶」っていうのは、基本的に、クラシック音楽を聴くための場所を通して、お客様の心に安寧をもたらすための場所だと思ってます。僕自身も「クラシックを聴くため」というよりは「静かな心持ち」を取り戻すためにふらっと名曲喫茶に入ることが多いです。

名曲喫茶には昔から行かれてたんですか?

愛月さん:たまたま、昔住んでいた家のすぐ近所に名曲喫茶があったんです。そこのマダムに子どもの頃から可愛がってもらったこととか、クラシックのレコードを聴かせてもらっていたことも凄く大きいです。10数年前にそこは閉店されて、マダムも亡くなられたんですけど、閉店する直前まで通っていました。

その名曲喫茶の影響を受けているんですね。

愛月さん:やっぱり意識はしています。当時のその名曲喫茶に来ていたお客様が、もうかなりご高齢の方が多いですけど、遠方からいらしてくださるので。そういう方たちにとっても、古き良き名曲喫茶の雰囲気を思い出してくれるような店でありたいなって。

 

名曲喫茶のファンから
名曲喫茶の店主に

愛月さんにとって、「名曲喫茶」というのはどういう場所ですか?

愛月さん:日常と離れた世界、みたいなところは確実にあると思います。老舗の純喫茶やバーでもそういう雰囲気はあると思うけど、やっぱり名曲喫茶はとくべつですね。扉を開けて中に入ったら即、時間や空間を越えて、もう生きていない作曲家や演奏者の魂と接続できる、みたいな感覚があります。

愛月さんはご自身が名曲喫茶ファンなんですね。

愛月さん:そうですね、よく通っていました。忘れられないのが、7年前のある日、某名曲喫茶のソファで自分がリクエストした曲を聴きながらうつらうつらしていたら、幼少期に初めて行った名曲喫茶の亡くなったマダムが夢の中に出てきて。「名曲喫茶をおやりなさい」って言われた——うん、たしかに言われた気がしたんです。

わああ、凄いですね。そのときリクエストされた曲は憶えてますか?

愛月さん:もちろん。久しぶりにかけてみましょう。ガブリエル・フォーレという作曲家の「ピアノ三重奏」という曲です。

この曲を聴きながら、愛月さんは今はなき名曲喫茶のマダムから啓示を受けたんですね。じゃあ、もしこの曲をリクエストしてなかったら、月草もなかったかもしれないですね。

愛月さん:そうですね。それでその翌日、夜にお店を開いている母に昼間に名曲喫茶をやりたいと相談しました。それから急ピッチで話が進んで……。『名曲喫茶 月草』を開店したのは2012年の7月ですけど、一気に準備して、半月くらいで開けましたね。

開店するとき、不安はありましたか?

愛月さん:1人で喫茶店をやるのは初めてのことだし、もちろん不安でいっぱいだったけど、「この街で名曲喫茶を開いたら、きっとお客さんは来てくれるだろう」って何処かで信じていた気がします。以前から、国立には名曲喫茶が必要って感じていて。

まさか、自分がやることになるとは思わなかったけど。でも、僕みたいな人はきっとこのまちにはきっと少しはいるはずだって。おいしいコーヒーがあって、大きな音でクラシックがかかる場所を求めている人たちが。

 

「国立」というまちについて

愛月さんにとって、国立はどんなまちですか?

愛月さん:ここ10年で目まぐるしいくらいの勢いで駅前も商店街も変わったけど、根底にある「古きよきものへの希求」みたいなものはそこまで変わっていないんじゃないかと。僕から見ると、国立はまだ『名曲喫茶 月草』みたいなニッチな店が存在する余地があると思っています。

あと、「多摩地区」特有のムードっていうのは確実にありますね。それはホームテックさんのある聖蹟桜ヶ丘とも共通しているんじゃないでしょうか。古くから在る自然や建物がもたらす「安らぎ」と新しく生まれる文化が混在してる雰囲気というか。

そうですね。国立と聖蹟に共通する雰囲気はたしかにあるなあって私も思いました。聖跡にも古くて素敵な建物とか喫茶店があるかもしれないですね。改めて探してみたくなりました。

愛月さん:そういえば、国立で名曲喫茶を始めた理由はもうひとつあって。
ここを開店する1年くらい前にイギリスに行ったんです。生まれて初めての海外旅行だったんですけど。イギリスという国は——ヨーロッパ全域に言えることかもしれないけど——古いお店や建物を凄く大切にするところがあります。

まちをぶらぶら歩いているだけで、その精神がびしびし伝わってくる。で、日本でそういう場所に近い場所はどこだろう?って考えてみたとき、それはやっぱり名曲喫茶だったんです。自分の中では。だから、1人でイギリスに行ったことも名曲喫茶を始めた要因としてかなり大きかったと、今は思います。

古いものを壊すのではなくて、活かして新しいものをつくること。残すべきものは残して、次に繋げていくこと……。そういう意味では愛月さんのされている「名曲喫茶」と私たちがしている「リノベーション」っていう仕事は何かしら通じるところがあると感じました。

最後に、「お店をやっていて良かったな」って思うのはどんなときでしょうか?

愛月さん:うーん……。月並みな答えかもしれないけど、やっぱり「お客様が喜んでくれた」って感じられたときですね。そう感じたことは僕の主観かもしれないけれど、そんな実感の積み重ねでこれまでどうにか続けてこられたような気がします。

仕事内容的にはとても地味だし、疲れるときもたくさんあります。でもわざわざいらしてくださったお客様がこの店を出るとき、入る前より、少しでも、ほんの少しでも、安らいだ気分になってくだされば、名曲喫茶冥利に尽きます。本当に。

愛月さん、ありがとうございました!

指揮者・ヘルベルト・フォン・カラヤンのベストアルバム。itunes music storeで購入可能。クラシック初心者の方も親しみやすい内容になるように、愛月さんが選曲したもの。

 

Ι営業日・営業時間
土/日/祝のみ PM12:00〜19:00

ΙHP
http://www.tsukikusa.jp/

Ιtel
042-575-4295

Ι住所
〒186-0004 東京都国立市中1-10-8 ノア国立ビル2F

Ιアクセス
中央線 国立駅南口より徒歩5分

●編集 細野 由季恵

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