エイミーことエントリエ編集長の鈴木 栄弥が気になる人を訪ねて、自分らしい暮らし方や生き方のヒントをいただいてしまおうというこのシリーズ。第23回目のゲストは自分の手で安心・安全なものを手づくりしながら、日々の暮らしを発信しているmayamoonさんです。

手づくりの癒しを通して、もっともっと自分を大事にしたいから

mayamoon(マヤムーン)さん。学生時代に国際文化を学び、バックパッカーとして東南アジアを旅する。商社で働きながら子育てしていた最中、東日本大震災を経験。食の安全、暮らしのあり方について勉強をはじめる。家庭菜園や保存食づくりなど、昔ながらの手仕事で感じることを大事に暮らす。2019年「日々の芽」を立ち上げる。日々の小さな喜びの芽を育てる暮らしを発信するコラム連載や手仕事のワークショップ開催予定。

東日本大震災を機に、これまでの暮らしを見つめ直すようになったmayamoonさん。情報過多の現代に「大切なことは何だろう」と、自分の行動の意味を考えるようになったといいます。2018年には、entrieでのリノベーションを体験。「日々の芽=小さな喜びの芽を見つけ、育てる暮らし」をコンセプトに日々の暮らしを大切に生きているmayamoonさんにお話を伺いました。

「手づくり」は、カチカチに凝り固まった心をほぐしてくれる

――家庭菜園や保存食……繊細でいて自然体のmayamoonさんからは、 ありのままに生き、暮らす喜びを感じます。

mayamoonさん:震災を機にいろいろ自分を見つめ直す機会があって。それまでは「食の安心・安全」ということに、まったく興味がなかった。でも、あのときいろんな情報がとびかうなかでどれが正しいのか分からなくて「このままじゃダメだな」と強く思いました。そこから食べものだけじゃなく、生活や社会問題、環境問題を勉強するようになったんです。

――具体的に、どんなことをはじめたんですか?

mayamoonさん:まずは市民農園を借りて、肥料も使わない野菜の栽培に挑戦しました。普通に買うと、無農薬の野菜って高額ですよね。でも自分でつくるとなれば、思っていたよりも簡単で安くつきます。それから季節ごとに自分で保存食をつくるようになりました。

――保存食というと?

mayamoonさん:例えば春はイチゴジャムやぬか漬け、ふき味噌。夏は梅酒やらっきょう漬け、紫蘇ジュース、ジェノベーゼに自家製ハーブティー。夏はいちばん種類が多いですね(笑)。それから秋はりんごジャムやレバーペースト、冬は干し野菜や金柑シロップ煮、味噌づくり……。

――季節を感じられる食材って、豊かですね。

mayamoonさん: 1年を通してパンを焼いたり、焼き菓子をつくったりしますし、食べものだけでなくドクダミから化粧水やミシンを使って手芸をすることも好きです。すごくおもしろいですよ。つくることで自分が癒されるというか、凝り固まっていた心が癒されていく気がします。

ただ、自家製にこだわっているというよりも、つくる過程が楽しいし、そこから充実感を感じられ、満たされているんですね。それをまわりの人や家族が喜んで食べてくれたら、ラッキー! って(笑)。

「変わらない好きなこと」をしようと思えば、まわりの目も気にならなくなる

――mayamoonさんは詩やイラストも描かれていますよね。

mayamoonさん:学生のときは詩を書いたり、文章や絵を描いたりするのが自分を癒す作業だったのかなと思います。産後は子育てに集中していましたが、子どもは大きくなりますよね。手が離れてきたときに「自分は何が好きだったっけ?」と。「本来の自分って何だろう」と、心が満たされなくなっていました。

――お子さんや家族を一生懸命に考えてきた暮らしの中で、本当の自分を見失っていた?

mayamoonさん:はい。それでもう一度「やりたいかも」と思うものに素直になってはじめたのがイラストや詩。でも、昔と同じことやっているなと感覚が戻ってきた瞬間があって……。「本質は変わらないんだな」と思いました。

――「好きなこと」の本質は、変わらない。

mayamoonさん:子どものことはもちろん大事だけど、自分も大事です。自分の心臓がとまっても、子どもの心臓はとまらない。もっと自分の心を大事にしたいなってすごく思います。

もしも環境的に難しいライフステージにいても、「自分の心を大事にしよう」と心がけるだけでいい。本当はやりたくないのに、誰かに気を使ってやっていることって結構ある。そういうことをなるべく減らしていくと、それに、これをやったら後々になって嫌な気分になるかもって、直感がはたらくようになるんです。その積み重ねで自分にも素直になれる。そうしていくと、周りにもいい影響を及ぼすようになると思う。

――他人の目線、気にしちゃいます。

mayamoonさん:そうですよね。でも人って、そこまでしっかり相手を見ているわけじゃないと思う。私、髪の毛を自分で切っているけど誰もそんなことに気づいていない(笑)。

あとは、例えば人から何か嫌なことをいわれたとしますよね。でも相手はさして気にしていないはず。それをずっと気にするのって、なんだかもったいない。

自分の想像力で、自分を傷つけることはやめた

――お話を聞いていると、揺るぎない信念を感じますが、過去には悩み苦しんでいた時期もあったんでしょうか?

mayamoonさん:もちろんありました。今も乗り越えてはいないです(笑)。問題の渦中にいるときって、自分の中で「どうしよう」となってそれしか見えなくなってしまうんですよね。

でも、そんな自分とは関係なく世界は動いているから、小さいところにいつまでもこだわらないで、自分は自分だからしっかり生きようと思えるようになりました。

――どうしてそう思えるようになったのでしょう?

mayamoonさん:それも震災を機に暮らしのあり方を見つめなおせたからだと思います。自然と一体になって手作業で何かをつくりあげていると、私たちはただ自然に生かされていて、それぞれが素晴らしい存在で、自分の人生は自分でしか生きられないと感じるようになる。

同じ出来事で「たいしたことないと思う人」もいるし「深く悩んでしまう人」もいる。どちらかというと感受性が強い方なのもわかっているので、「自分次第」なら自分の想像力で自分をいじめてしまうのはやめたいなって。

それに人っていつ死ぬか分からない。だから明日死んでもこれをやりたいかどうかを考える。好きなこと、やりたいことを追求して「自分とは何か?」をもっと知りたいと思うんです。人に何をいわれても、自分にもっと正直に生きていいんだよって思います。

mayamoonさんにとっての至福のひとときは、明け方のテラスでお花を見ること。まだ誰も起きていない、ほの暗い空の下。きれいな空気に身をおいていると「今日も生きている」と感じられるそうです!

mayamoonさん
【Instagram】https://www.instagram.com/mayamoon0000/

お話を聞いた人

●エイミー編集長

鈴木・栄弥(すずき えみ)。小さな頃から建築士に憧れ、建築模型つくりやチラシの間取りを見て生活を想像することが好きな暮らし妄想系女子。現在のホームテック株式会社では、2級建築士として働きながら『ライフスタイルマガジン エントリエ』の編集長を勤めている。

この記事を書いた人

●文 すだ あゆみ

1984年東京都生まれ、横浜市在住のママライター。活字中毒で図書館と本屋が最高の癒しスポット。すき焼きの春菊が苦手。ここ数年、筋トレにはまっている。

●編集 細野 由季恵