エイミーことエントリエ編集長の鈴木 栄弥が気になる人を訪ねて、自分らしい暮らし方や生き方のヒントをいただいてしまおうというこのシリーズ。第25回目のゲストは間借りバー「Bar Moray」を営む、バーテンダーの近藤沙織さんです!

地元八王子で、
みんなに愛される店づくりをしたい

近藤沙織(こんどう・さおり)さん。東京都八王子市出身。高校卒業後から、都内のオーセンティックからカジュアルまで、さまざまなスタイルのバーで経験を積む。2018年11月には八王子にある「BAR Dionysos」を間借りして、自身のバーをオープン。八王子市内で開催されるイベントにも積極的に参加し、完全独立に向けて精力的に活動中。

2019年7月に八王子で開催された「ディアヴィーナスマルシェ 2019」で、バーテンダーのユニフォームを着て、凛々しくブースに立つ近藤さんに出会いました。現在、イベント出店だけでなく、間借りでバーを営むユニークな働き方をしている近藤さん。どうしてバーテンダーになり、なぜ八王子で活動しているのか? その理由を伺いました。

女性バーテンダーへの憧れを仕事に。猪突猛進の6年間

近藤さんが働く「Bar Moray」

――若干26歳にして、正統派バーテンダーの品格が漂う近藤さん。この道を目指したきっかけは?

近藤さん:中学2年生のときに見た、フレアバーテンディング(※)の世界大会で日本人の女性フレアバーテンダーが優勝したというニュースでした。パフォーマンスがかっこいいのはもちろん、そもそもバーテンダーは男性の職業だという固定概念があったこともあって「女性でもバーテンダーができて、世界で評価されるんだ!」と、衝撃を受けたんです。そこからバーテンダーの仕事に憧れを抱くようになりました。

※エンターテイメント性を重視したカクテルをバーテンダーがつくり、提供するスタイルのこと。

――その頃からバーテンダー一筋?

近藤さん:バーテンダー以外にも、メークアップアーティストにも憧れがありましたね(笑)。でも、ずっと「バーテンダーはかっこいい」と言葉にしていたからか、興味もどんどん強くなっていって。バーテンダーの世界について調べていくうちに、仕事としてやってみたいと思うようになりました。

――いつからバーテンダーに?

近藤さん:高校を卒業してからずっとバーテンダーをやっています。私が通っていた高校は、進学も就職も応援してくれる学校。私はすぐに働きたくて、最初から就職を考えていました。学校に来ている求人にはバーテンダーの募集なんてもちろんなくて、飲食企業の面接を受けたこともありました。でも、興味がない仕事はやっぱり熱意が伝わらないのか、ことごとく落ちちゃうんですよね(笑)。

やっぱりバーテンダーが一番やりたいんだなと思って。求人が来ないなら自分で探せばいいと思ったので、自分で面接先を探して銀座のオーセンティックバーに就職しました。そこから約6年間、それぞれ特徴の違う4軒のバーで経験を積みました。

働きながら能動的に学び、夢を明確に

――専門学校などへの進学は考えなかったのですか?

近藤さん:飲食店のバーテンダー専門スクールもあったんですけれど、進学をしようとは思わなかったです。座学は苦手だし、好きなことだけに集中したい。与えられて学ぶよりも、働きながら自分が興味あることを深めていくのが私のスタイルですね。

――たくましい! ちなみに、職業柄、お酒の勉強はしなければいけないと思いますが、未成年だと試飲はできませんよね?

近藤さん:そうですね。最初に就職先に選んだお店がウィスキー専門のバーだったので、先輩方がテイスティングをしているときに私は嗅覚を鍛えるところからはじめました。同じ銘柄のウィスキーでも香りが全く違ったりしますので、その違いを香りの違いから説明出来ないとお客さまにはオススメできないと教えて頂き、香りの違いを自分の言葉で表現出来るように勉強していました。

――18歳の頃からウィスキーって、渋いですね。

近藤さん:本当はカクテルづくりの勉強をしたかったんですけれどね(笑)。やっぱり未熟な頃はウィスキーなんてどれも一緒だと思っていて、嫌々嗅いでいました。でも、細かい違いがわかるようになっていくうちに、すっかりウィスキーの魅力にハマってしまったんです。

――その後は、どんなバーで働いたのでしょうか?

近藤さん:茅場町の方にあるダーツやビリヤードができるカジュアルなバーで働いたものの、カクテルがメインなんですよね。そこで、「私はウィスキーが好きだな」と思ったんです。ウィスキーの歴史や製法も勉強していたので、蒸留所にも興味があったから、3社目の中目黒のウィスキー&ワインバーで働いているときに、スコットランドへ行ってウィスキーの蒸留所を12箇所巡りました。それが21歳の頃です。

――本場に行って学ぶ。行動的ですね!

近藤さん:現地へ行ったことで、本を読んだり、講義を聞いたりするだけではわからないことも知れて、深く学べたと思います。4社めは六本木にある憧れのオーセンティックバーに就職。そこもウィスキーが有名なところでした。カクテルづくりも好きですが、やっぱりウィスキーが好きですね(笑)。

――そこからなぜ独立をしようと?

近藤さん:興味がある方に向かって能動的に学ぶのが自分のスタイルだからか、勤めていたバーと自分がやりたいこととの間にできた差が大きくなっていきまして。地元の八王子で自分の力でやりたいと思うようになり、独立に向けて会社を辞めました。

地元でカフェ&バーを開くために、地域のことを知る

――完全独立する前に、間借りで「Bar Moray」を営業しようと思った理由は?

近藤さん:最初から完全独立するのは、リスクがあると思ったからです。八王子のメルシーフラワー(散田店)というお花屋さんの店長に今の店舗を紹介していただいて、まずはリスクの少ない間借りでやろうと思いました。並行して八王子のイベントにも出店して、まちや人の雰囲気に触れられるように活動しています。ちなみに、店の名前は大好きなシングルモルトのウィスキー「Glen Moray」から取っています(笑)。

――この店に入ったとき、女性バーテンダーだからこその雰囲気の柔らかさを感じて、ホッとしました。しかも、リーズナブル!

近藤さん:どの方も利用しやすいように、チャージなしで1杯のお値段も抑えて、色々なお酒を楽しんでいただけるようにしています。お客さまの中には、60歳近くになってはじめてバーを利用したという方もいらして嬉しく思いました。

――中学時代の憧れからスタートして、バーテンダーの夢を叶えた近藤さん。今と昔で変化は?

近藤さん:最初は技術のある女性バーテンダーを尊敬していましたが、経験を積むうちに、性別関係なく“人として魅力があること”を大切にしようと思うようになりました。コミュニケーションや雰囲気づくりができて、お客さまにいい時間といいお酒との出会いを提供できるバーテンダーになりたいですね。

――今後どのようなバーをやっていきたい?

近藤さん:古民家を改造したカフェ&バーを目指しています。バーと聞くと敷居が高いイメージがあると思いますが、八王子でやるからにはさまざまな方に利用していただきたい。カフェタイムを設けてファミリー層にも利用していただける店がいいなと思っています。逆に、夜はガラリと雰囲気を変えて、本格的にお酒を楽しめる場、自分へのご褒美に飲める場として利用できるようにしたいです。

――古民家カフェ&バー! 気になります。

近藤さん:まさに今、絶賛物件探し中です(笑)。お店をつくる期間も1年くらい設けたいと考えていて、プロに頼むところは頼みつつ、お客さまや友人、地域の方々と一緒に、みんなにとって思い入れのあるバーになるようにつくっていきたいです。

――近藤さんのカフェバーづくり、協力したくなりました!


近藤さんにとっての至福のひとときは、カフェ巡り。カフェバーをオープンするため、大の仲良しのお姉さんと一緒に、勉強もかねて気になるカフェへ訪れているそう。地道な努力と「コーヒーが好き」という楽しみを両立させている近藤さん。「オリジナルスープも考案中で、カフェメニューに絶対取り入れようと思っています」と、目を輝かせていました!

Bar Moray (バー マレイ)
[営業日]水曜日〜金曜日
[時間]17:00〜24:00(L.O23:30)
[場所]東京都八王子市明神町3-14-8 1F
https://www.facebook.com/Bar-Moray-1839036902832264/
https://moray1112.amebaownd.com/