

「スーホルムランプ専門店 soon」は、デンマーク製スーホルムのヴィンテージランプを専門に扱い、オリジナルシェードとの組み合わせで理想の灯りを提案しているブランドです。今回は、アトリエにお邪魔して「1日の終わりに“自分だけの時間”をつくる灯り」をコンセプトに展開するsoonの店主としての想いについて伺いました。
*スーホルム……1835年にデンマーク・ボーンホルム島で創業した陶器ブランド。家庭用陶器を幅広く手がけましたが、特に1950〜70年代に作られた陶器製ランプは、温かみのある釉薬や北欧らしいシンプルな造形で高く評価されています。現在は閉業しており、ヴィンテージ品として根強い人気があります。
スーホルムのヴィンテージランプに、ぴったりと似合うシェードを組み合わせて販売

──soonのランプについて、あらためてご紹介していただけますか。
soon 店主:スーホルムはデンマークの陶器ブランドです。ブランド自体はもう閉業してしまったので、今出回っているのはすべてヴィンテージ品です。なかでもランプに特化して扱い、オリジナルのシェードを組み合わせて販売しています。
もちろんシェード付きで売られているものもあるのですが、電気系統は海外仕様になっていて、それを日本向けにつくり直す必要があるんですね。そうなると、海外の既製品を含めて、付け替えたソケットにぴったり合うシェードがないんです。だったらシェードをオリジナルでつくって販売しよう、と始めたのが今のスタイルになっています。
──必要だからつくろう、と始まったオリジナルシェードなんですね。スーホルムの土台もさることながらシェードがとても素敵で、こだわり抜いてデザインされているなと感じます。
soon 店主:大きさや生地の質感、プリーツのサイズ、光の透け具合など、細かに検討して決めています。それから、電球にシェードをはめる金具があるんですけど、実はこの金具の位置がけっこう大事で。ソケット部分が見えすぎても、深くはまりすぎてもバランスが悪いんですよ。この100点の位置を探るのが、いってみれば最大のこだわりですね。
──このフォルムの美しさは、そういった絶妙なバランスによって成り立っているんですね!大人気なのも納得です。
スーホルムとの出会いと、職人との二人三脚

社会人になってからは、事務職として仲間と働く日々を大切にしてきたという店主さん。一方で、内装業を営む父の手がけた家で育った原体験から、インテリアへの関心をずっと抱き続けていました。 就職後もその思いは消えず、“どうすればインテリアに関われるか”と模索する中で、自らショップを立ち上げるという道を選び、スーホルムランプ専門店 soon をはじめることになったといいます。
──スーホルムランプに着目されたのはどんな経緯があったのでしょうか。
soon 店主:スーホルムに出会ったのは偶然なんですよ。自分の家のためのインテリアを探していたときに見つけて。リサーチのために北欧雑貨フェアに行ってみると、スーホルムの陶器の扱いはたくさんありました。
これだけファンが多いとライバルも多いのではとは思いましたが、ランプに関しては先ほどもお話ししたように、スーホルムに合うシェードは見つけられなかったんですよね。それでオリジナルシェードをつくって、仕入れたスーホルムと一緒に販売するというスタイルにしました。

──目の付けどころが素晴らしいですね……。シェードをいちからつくるのも簡単なことではなかったのではないでしょうか。
soon 店主:シェードについては、自分でいくつかリサーチしていく中で、いまお付き合いしている工房さんに出会えたのは幸運でしたね。少ない人数でやられている工房さんですが、大手の家具屋さんとも取引をしているくらい、クオリティが素晴らしいんです。
そんな工房さんが、まだお店をオープンしてもいない、右も左もわからないようなわたしにも丁寧に向き合ってくださって。シェードのデザイン画の描き方さえわからなかったので、教えていただきながら一緒に図を描いて、たくさん話し合いをして決めていきました。
──いい工房さんとの出会いがあったのですね。
soon 店主:はい。はじめの頃は義両親に子どもを預けて、車で2時間かけて工房まで行き直接打ち合わせをする、その繰り返しでした。そのプロセスは大変ではありましたが、思えばオンラインでデータのやり取りをしていたのでは、ここまで密に議論を交わすのは難しかったと思います。膝をつきあわせて一緒につくっていくことができて、こちらにお願いできて良かったなと思っています。
──soonさんがそうやって足繁く通ったことで、情熱も伝わったのでしょうね。工房さんとのやり取りで特に印象に残っていることはありますか?
soon 店主:いつもは口数も少なくて、しょっちゅう褒めてくれるみたいなタイプの方ではないんですが、電話で「これだけ売れましたよ」と報告すると「どうやってそんなに売れるの?」とか、イベントの様子などを気にかけてくださるようになったのは嬉しかったですね。
職人さんで、作品をつくった後の売れ行きなどはあまり気になさらないのかなと思っていたのですが、そうやってsoonというお店に興味を持ってくださる言葉を聞くと、ああ、少しずつ認めてくださってるのだなとしみじみ感じました。
お客さまと一緒に「理想の一品」を見つける販売スタイル

──soonさんがクリエイター、オーナーではなく「店主」と名乗っているのが、なんともいい雰囲気ですよね。
soon 店主:ありがとうございます。これはもうシンプルに、わたしが手を動かしてつくったものではないからです。つくり手はスーホルムのデザイナーさんであり職人さんであり、シェードをつくる工房の職人さんであって。わたしはそれをお客さまにつないでいく人だという思いが常にあるので、一歩下がった存在としての「店主」なんです。
──その「店主」としてのsoonさんの存在も、お客さまにとっては重要で。購入にあたっては、単にお客さまがランプとシェードを選んで購入するのではなく、soonさんと相談しながら決めていくスタイルだとうかがっています。
soon 店主:それもわたしが決めたルールというよりは、お客さまが皆さん、相談してくださるからなんですよね。もちろんお客さまがあらかじめ買うものを決めていれば、オンラインショップでポチっと買うことはできます。でも、ショップを運営していてわかってきたことですが、ランプとシェードの組み合わせが幾通りもあるからこそ、迷われることも多いんです。
オンラインショップの写真だとこの組み合わせだけれど、こっちにしたらどんな感じになるのかな、ご自分の部屋のこういうインテリアに合わせるにはどうしたらいいだろう、と悩まれる要素はいくつもあって。そういったご質問に応えると、次の質問が生まれてご相談になって、お客さまが納得できるものを選んでゴールになる、という感じです。
──多くのお客さまとお話しする中、印象的だったことはありますか?
soon 店主:実は、「soon」がオリジナルシェードの販売を開始する直前、これから販売しますと告知したタイミングでお問い合わせをくださったのが、エントリエの建築士二見 奈々絵さんなんですよ。

──オリジナルシェードの初めてのお客さまだったんですね。
soon 店主:そうなんです。二見さん、すごく悩んでくださったんですよ。そもそも二見さんのお部屋はすごく素敵で、そこに「soon」のランプを加えたいとおっしゃっていただいたのがすごく嬉しくて。「この部屋のここに置きたいんだけどどれがいいですかね?」と相談してくださって、一緒にシミュレーションしながら決めていった初めてのお客さまでした。今の相談スタイルが定まっていったきっかけの一つになったという意味でも、特別なお客さまですね。

忙しい夕暮れの時間、ランプの明かりでほっとする。そんなひとときを提供していきたい
──一つひとつ、お客さまの暮らしに似合うスーホルムランプを選んでいただく「つなぎ手」として活動しているsoonさんですが、「soon」のランプを通じてどんな暮らしをお届けしたいですか?
soon 店主:やっぱりランプという“モノ”を手渡して終わりというよりは、「soon」のランプがあることで、お客さまの暮らしにちょっとでも楽しみが加わるといいなと考えています。ランプってただの置物ではなくて、光が灯る、というところに意味があって。

夜、家に帰ってランプをつける時間が楽しみになったり、仕事から帰って夕食や家のことをするバタバタとした時間が、ランプの光で少しでもなごやかになったらいいなと。
「soon」というブランド名は、太陽の「sun」と月の「moon」を掛けあわせてつくったんです。太陽と月が入れ替わる薄暗い時間にランプを灯して、ちょっと一息ついてほしい。そんな時間を提供できるお店でありたいという思いを込めています。
──そんなあたたかい思いがブランドの名前に込められているんですね……!soonさんも本業のお仕事や子育てで、ほんとうにお忙しい日々を過ごしているのではないでしょうか。
soon 店主:そうですね、まだ子どもが小さいですし、保育園や家族の協力あって成り立っています。朝、夫が出勤する前の時間に子どもたちの支度を任せて、ちょっと2階で商品の撮影をしたり。まとまった時間をとることが難しいので、日々の10分、20分の積み重ねでなんとか乗り越えている感じですね。
大変ではありますが、 だんだんとお客さまとのやり取りを楽しめるようになったり、デンマークのセラーさんとの信頼関係ができてきたりと『楽しむ』ことができるようになってきたと実感しています。
インテリアの仕事をするのは夢だったので、今やるしかないという気持ちですね。
──今後は「soon」の展開を含め、挑戦したいと考えていることはありますか?
soon 店主:今は個人向け販売のみの展開ですが、ありがたいことにインテリアショップからのご要望も増えてきました。今後はショップへの卸しも見据えて、オリジナルシェードの展開を広げていきたいですね。
あとは、この仕事を続けてきて気になる窯元さんをたくさん知ったので、スーホルムにもテイストが合う、オリジナルの陶器をつくってみたいですね。それが今のわたしの夢かな。
──暮らしを豊かにするランプやインテリアの展開、楽しみにしています!今日はありがとうございました。


soon 店主さんの至福のひとときを伺いました。
「よく早朝から車で遠出をする我が家。 朝陽がのぼっている景色と、 後部座席で寝ている子どもたちを見ながら 車で朝ごはんを食べる時間が大好きです。だいたい食べてる時に子どもたちが起きてきて、『パン食べるーー!』と言い出すのですが(笑)、それもまた旅の始まり感があって好きです!」