普段、私はインタビューの仕事をしている。人の話を聞くのは仕事だ。質問して、答えてもらって、また次の質問。そういうものだから、いただいている時間で私のことはもちろん話さない。けれど、インタビュー後に「今度はあなたの話も聞かせてください」これまでに何度かそう言われたことがある。
自分のことを話すと、人のことも聞きたくなる?
自宅のリノベーションをしたとき、建築士の鈴木栄弥さんには、ひたすら自分たちの話をした。 「こんな暮らしがしたい」「ここは絶対いや」「これが好き」「あれは嫌い」、愚痴のようなものまで。普段なら恥ずかしくて出さない部分も、暮らしの話となるとむしろ出さざるをえない。
当然そこに「インタビュアー」とか「ライター」みたいな肩書きが入り込む余地がなく、友人といるとき以上に素に近い自分だったかもしれない。
鈴木さんは「うん、うん」と相づちを打ちながら、ときどき、いつもながらのきれいな字でメモをとっていた(その字を見て「きっと勉強もできるんだろうな」なんて余計な想像までしてしまった)。
そうやって話した帰り道はやっぱり、「鈴木さんの暮らしも知りたい」と思い始める。
どんな部屋に住んでいるの?休日は?好きな音楽は?ただ、普段おしゃべりしない方なので、質問したら迷惑かなと、勝手に気をまわす。そもそも、打ち合わせでそんな雑談をしていたら鈴木さんが残業することになってしまう。
でも、聞いてもらうと、自然と相手のことも知りたくなるのかもしれない。

そういえば、つい先日のインタビューでも、また言われた。「わたしばかり話しちゃって。次はあなたの話を聞きたいです」。
単なる社交辞令かもしれないし、仕事だからと平静を保ちつつも、私は毎回その言葉にちょっと救われるような気持ちになる。やっぱり話すことは、一方通行ではないのではと。「仕事」という枠組みの中でもそんな人間的な関係が生まれると嬉しい。
わたしはいつでも、「話したい」「聞きたい」がぐるぐる回っていく人間関係が好き。肩書きとか役割を外して、ただの人として向き合える関係を、私はもっと増やしたいといつも思っている。名刺ではなく、話すことと聞くことの循環でつながっていけたらと思う。
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鈴木 栄弥 / Suzuki Emi
2級建築士、カラーコーディネーター、福祉住環境コーディネーター、ファイナンシャルプランナー
静岡県富士市出身、1990.7.27生まれ。
日本女子大学 家政学部 住居学科 卒業。…
小学生の頃から間取りやミニチュアが好きで、建築模型がつくりたい! と、建築士になることが夢に。
ビルや建物ではなく、人が住む家のことを中心に学びたいと思い、住居学科で学び、
「人が楽しく暮らす住まいをつくりたい」という思いで就職しました。
現在は、エントリエで設計営業 兼 マガジン編集長として所属。気軽に「エイミー」と呼んでください!
わたしの手掛けるお家は、どれも決まったテイストはありません。
住まい手の体温を感じられるテイストに仕上げることが得意です!
●全国ジェルコデザインリフォームコンテスト
2024年 玄関・ホール部門 全国最優秀賞 受賞
2023年 リビングダイニング部門 全国最優秀賞 受賞
2020年 一般社団法人住宅リフォーム推進協議会会⾧賞 受賞
2020年 個室部門 全国優秀賞 受賞
2019年 リビングダイニング部門 全国優秀賞 受賞
●ジェルコ関東甲信越支部リフォームコンテスト
2022年 デザイン部門 キッチン賞 受賞
2021年 デザイン部門 優秀賞 受賞
2020年 デザイン部門 優秀賞 受賞
●RoomClip全国理想の住まいコンテスト
2022年 1000万円以上部門 全国最優秀賞 受賞
2021年 500万円以下部門 特別賞 受賞
2020年 500万円以下部門 全国優秀賞 受賞