ひとの手で、丁寧に、ひとつずつつくられていくものたち。工場で大量に製造されたモノにはない独特のオーラやぬくもりが、私たちの暮らしに彩りや安らぎを与えてくれます。
エントリエでは、こだわりをもった手仕事作家さんに注目。ものづくりや作品への想いをお訊きします。
《 ZINE『金沢民景』主宰 / 建築家 山本 周 》
金沢のまちが
手の中におさまるような楽しさを
石川県金沢市の住民がつくりだした独自の風景を収集し、『金沢民景』というZINE*にまとめています。
*ZINE……テーマや体裁は自由で、個人が制作する出版物のこと。
『金沢民景』のルーツとなっているのは、今 和次郎(こん・わじろう)*さんをはじめとする「路上観察」の視点。
*今 和次郎……昭和初期、大都市化する東京の街や人の生活の変化を観察・記録し分析した「考現学(こうげんがく)」の創始者
*路上観察……路上にあらわれる建物・看板・張り紙などの事物を独自の視点で観察すること
自分自身も路上観察を続ける中で、路上観察の観点から書かれたさまざまな本に出会い、「まちを記述する方法が無限にある」ということを知り興奮したことが、『金沢民景』の制作にもつながりました。
制作のきっかけは、10名ほどの知人と、金沢の路上で撮った写真を見せ合っていたこと。
撮りためた写真が溜まり、せっかくなので何か形にしたいと考えていたとき、簡単に製本できる方法を教えてもらえたので、本にしました。
金沢の路上で見つけた独特の「民景」を、「腰壁」や「私有橋」などのテーマごとにまとめた本は、現在17冊になりました。
『カラーブックス』(1962-1999, 保育社)*のように、「ZINEが集まると、金沢のまちが手の中におさまっているような楽しさ」が出るといいなという思いで、デザインにもこだわり制作しています。
*『カラーブックス』(1962-1999, 保育社)……保育社から出た文庫本シリーズで、909点出版されている。「日本の私鉄」といった乗り物から、「ねこ」「コーヒー」など毎回さまざまなテーマが深く掘り下げられ、今なおファンが多い。
何気ない風景に、特殊な条件が揃うことで生まれた
まちの愛らしさを綴る
現在の制作メンバーは、主宰の私・山本のほか、市役所職員や不動産屋、学生やデザイナーなど業種もバラバラの9人。
メンバー全員でLINEグループをつくり、テーマごとのアルバムで、お互いに撮影した写真を日常的に共有しています。写真がある程度溜まって面白そうなテーマがあれば、新しい号を企画。号のタイトルが決まったら、取材やデザインを含めて、一ヶ月程度で制作しています。
写真を撮影するときは、「旅行で金沢に来て、散歩しているような気分」を大切にしています。
掲載する際には、できる限り住人の方にお話を聞かせていただいて、どのような経緯や思いでつくられたのかを記録するようにしています。お話を伺うことで、何気ない風景や、その方の習慣や土地の特徴などの特殊な条件が揃うことで生まれたものだと知れることが、楽しいです。インターフォンを押して、お話好きそうな方がでてきたときも、ワクワクします。
今後もできる限り金沢のまちを路上観察し、たくさんのテーマで、『金沢民景』をつくり続けていきます。
● ZINE『金沢民景』主宰 / 建築家 山本 周
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