革を使った帽子やバッグ、アクセサリーを制作する Fish Born Chips(フィッシュボーンチップス)。ユニークなブランド名の由来は、3人の創業メンバーの頭文字“Y”をつなげると魚の骨のように見えたことから“Fish Born”とし、さらに「フィッシュ&チップス」に語呂を寄せることで親しみやすい名前に仕上げたそう。現在は夫婦で活動し、帽子をメインに、ハンドペイントとハンドクラフトを軸にしたエンターテインメント性あふれる作品を生み出しています。
“ムダなもの”から生まれる豊かさ
活動当初は革のキーホルダーやバッグを制作していましたが、もともと趣味で帽子をカスタムしていたことから、次第に帽子をベースにアートワークを施すようになりました。

Fish Born Chipsが掲げるコンセプトのひとつに、“ムダなもの”という言葉があります。ムダに大きかったり、使い勝手がいいわけではありません。しかし、そんなムダな部分こそが生活や気持ちを豊かにすると考え、あえて日常を“ジャマする”ような作品を作り続けています。
最近、私たちの中でしっくり来ているのが「言い訳をつくってあげる」ということ。普通のファッションや量産品では物足りないけれど、個性的なものを身につける勇気がない。そんなお客さまに言い訳を作ってあげるのが私たちのお仕事。たとえ、ユニークで変わったデザインに何か言ってくる人がいたら『Fish Born Chipsが作ったんだから仕方ない』と堂々と身に付けていただけたら本望です。
大手企業とのコラボレーションが実現するまで

現在では、国内外のさまざまな企業とのコラボレーションの機会をいただいています。
幼少期から大好きだったキャラクターとのコラボレーションのお声がけをいただいた時は、それはもう、光栄で感激でした。ただ、はじめはハンドメイド作家として小さくスタートした私たち。大手エンターテインメントブランドとコラボレーションをするには、いくつものハードルがありました。
海外企業とのやりとりの中では、英語が不得意な私たちは、大間違いの英語でデザイン画を提出し、悪戦苦闘したことも(笑)。簡単な道のりではありませんでしたが、大好きな作品やキャラクターとのコラボレーションだったからこそ、乗り越えられたのだと感じています。


Fish Born Chipsの強みはハンドペイントです。そのため、コラボレーションにおいてもこの手法を大切にしています。
ブランドとのコラボレーションでは、個体ごとのわずかな違いも味わいとして受け入れられますが、キャラクターデザインとのコラボレーションでは、一貫した仕上がりが求められます。そのため、一定の品質を保つために、安定したクオリティを維持できるよう、事前に複数のサンプルを制作し、慎重に仕上げています。
お客さまを楽しませられるか、そして自分たちが楽しめるか。
Fish Born Chipsはハンドメイドイベントに出店し、直接お客さまと交流する機会を大切にしています。嬉しいことや心に染みるようなお話は山ほどあるのですが、印象的だったのは、涙を流しながら喜んでくれたお客さまの存在。
デザイナーと握手して涙ぐまれる方や、1点ものが売れてしまって悲しんで泣いてしまう方もいらっしゃいました。最近では、お買い物に来てくださるだけでなく、素敵な差し入れやプレゼントをいただくことも増え、愛をたくさん感じています。


活動を続けて12年。夫婦と子どもたち、そしてこの仕事だけで生計を立てていることに幸せを感じています。今後も“お客さまにどれだけ還元できるか”、“どれだけ楽しんでいただけるか”。そしてそれを私たち自身が楽しめるか、そこに重点を置いて活動していきたいです。
この活動と、ゆとりある生活とのバランスを何十年も継続することこそが、私たちのチャレンジです。そう心掛けていることで、自然と仕事の方から来てくれる気がしています。
