2019年に作品発表を始めた chidori.さん。弱い自分を励ますように描いた花。誰かの背中をそっと押せたらという願いを込めた女性たち。作品には、自分自身の不安や揺らぎと静かに向き合ってきた時間が滲んでいます。
「つくること」は、仕事でも趣味でもなく、自分が戻ってこられる場所。今回は、絵を描き続ける中で見つけた居場所や、“好き”とともに生きることについて、お話を伺いました。

小さい頃から美術が好きで、「自分の好きなものはこれなんだ」と自然に感じていました。ある時期から、絵を通して何かを伝えてみたいと思うようになり、2019年から作品を公開し始めました。

何者でもない自分が、何者かになりたかったのかもしれません。自分にどんなことができるのか、まずはやってみよう。そんな気持ちでchidori.の活動を始めました。  

「小さな自分が開いていく」

シリーズ作品タイトル「小さな自分がたくさん開いていく花」の「小さな自分」という言葉には、当時の自分自身を応援する気持ちを込めていました。弱い自分を鼓舞するというか、そっと背中を押すような感覚です。

自分自身の力で少しずつでも切り開いていけるのだと、半ば思い込みのようにでも信じていたかった。

そうした、自分の弱さや不安に向けた作品だったように思います。 

「つくること」は、仕事でも趣味でもなく、そのどちらにも完全には当てはまらない、自分にとっての“場所”のようなものです。できれば常にあってほしいと願うものであり、自分自身が戻ってこられる居場所でもあります。

猫をモチーフにした作品も多いchidori.さん。「実際に飼った経験はないのですが、『猫と暮らしてみたい』という気持ちから気軽に描き始めたのがきっかけでした」

展示やイベントでは、人と人が自然に繋がっていく瞬間や、新しい出会いが生まれることにたくさんの喜びがあります。直接の知り合いでなくても、そこに作品があるだけで不思議と会話が生まれたり、気持ちが交わったりする。そうした経験を通して、「つくること」は自分の居場所であると同時に、誰かと誰かをゆるやかに繋ぐ場所でもあるのだと感じています。

自分自身を応援する思いを作品に込めて

女性のイラストを見ることは以前から好きで、自分でも描いてみたいと思っていました。

「カノジョの先にあるもの」

シリーズ作品タイトル「カノジョの先にあるもの」という女性の横顔を描いた作品は、最初はふと鉛筆を走らせていた中で生まれました。何かに向かって駆け寄っていくようなイメージです。強さとやわらかさの両方を持ちながら、自分も夢へ向かって進んでいきたいという思いが込められていたのかもしれません。

すべての女性がそれぞれに輝いている中で、自分もその中にいながら、少しでも自信を持って輝いていけたらいいな、という気持ちがありました。

私の場合、活動を始めたのは歳を重ねてからです。楽しんでいる自分、恥ずかしい自分、自信のない自分、嫌だなと思う自分など、いろいろな自分と向き合いながら過ごしてきました。生きづらさを感じることも多いのですが、生きるということは、悩みが消えることではないのだと思います。

「一番ワクワクするのは、作品が仕上がった瞬間です。形になった達成感や仕上がりを、まずは自分の中でじっくり噛み締めています」

人は単純なようでいて複雑で、面倒くさい生き物だなと思うこともありますが、それでもみんなそれぞれに日々を頑張って生きている。

この作品は、そんな自分自身へのささやかな応援であり、同時におこがましいかもしれませんが、どこかで誰かの背中もそっと押せるような、そんな作品であれたらなという思いがあります。

“好き”を我慢しないこと

今は「がむしゃらにやってみること」と「思いっきり休むこと」、そして「好きなことを我慢しないこと」を大切にしています。

大きな作品を一つ仕上げたあとには、エネルギーを使い切ってしまうことも多く、そのあとにはしっかりとチャージする時間が必要になります。作品に向き合う時間ももちろん大切ですが、旅行をしたり、ただだらだら過ごしたり、動物のように気ままに生きてみる時間も、自分には欠かせないものです。

「特に色を混ぜたり組み合わせたりする瞬間も大事。理屈より、そのときの感覚で仕上げていくことが多いです。なんといっても、もともと色そのものが好きなので、その時間は特に楽しさを感じています」

これまでの作品は比較的こってりとした表現が多かったので、今後はもう少し大胆に、抜け感のある仕上がりにも挑戦してみたいと思っています。

また、これまでとは少し違った表情や空気感を見せられるような表現にも取り組んでいけたらと考えています。

chidori.(ちどり)/art painter
2019年よりイラスト制作を中心に活動を開始。展示やイベント出店を通して、オリジナル作品やアイテムの制作・販売を行ってきました。現在は新たな土地へ移り暮らしながら、これからの活動や作品の構想をゆっくりと育てています。2026年内の活動再開に向け、少しずつ準備を進めています。
☑ Instagram @chidori_2019