村田 あやこ
あやちゃん/記事を書いた人
村田 あやこ / Murata Ayako
ライター
お散歩や路上園芸などのテーマを中心に、インタビュー記事やコラムを執筆。著書に『た のしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。「散歩の達人」等で連載中。お散歩ユニットSABOTENSとしても活動。
藤田 泰実
よっちゃん/イラストを描いた人
藤田 泰実 / Fujita Yoshimi
落ちもん写真収集家
グラフィックデザイナー/イラストレーター/落ちもん写真収集家。茨城生まれ、埼玉育 育ち。多摩美術大学造形表現学部卒。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍しながら、路上に落ちているものから人間の背景や余韻、人間味を感じ取り、そこから妄想してタイトルをつけストーリーを作り出す「落ちもん写真収集家」として活動。落とし物は人間ドラマという発想が注目され、テレビやラジオなどにも出演。
細野 由季恵
ゆきえちゃん/撮影・編集した人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

季節は少しさかのぼり、8月。今回SABOTENS まちのミカタで訪れたのは、埼玉・西浦和。猛暑のなかのお散歩は厳しいため、今月は川でも見ながら夕涼みしよう! ということで、荒川河川敷に広がる荒川彩湖公園へやってきました。暮れゆく空の下、静かに揺れる湖の水面を見ながら話していたら、この夏の出来事から中高時代の思い出まで、いろいろな話に花が咲きました。(今回も、ほとんど歩いていません!)

お詫び:今回の記事に関しまして機材不調により、一部の画質が荒くなっております

「◯◯浦和駅」ありすぎ問題

SABOTENSまちのミカタ_まち歩き_西浦和編_エントリエマガジン

待ち合わせはJR西浦和駅。……おや、よっちゃんの姿が見えません。LINEを確認したところ、「南浦和駅にきてしまいました」とのメッセージが……!

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調べてみたところ、浦和・東浦和・西浦和・南浦和・北浦和・中浦和など、埼玉には「浦和」がつく名称の駅がいくつもあるようです。浦和で待ち合わせる方はご注意を!よっちゃんとは、公園付近で待ち合わせることにしました。

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松屋 西浦和店(埼玉県さいたま市桜区田島5丁目10−20)

西浦和駅に降り立ったとたん、嗅覚を掴んで離さなかったのが、改札前にある焼き鳥屋さん。鳥を焼く炭火と、焦げたタレの香ばしい香りが、高架下に充満しています。思わず空腹を刺激されて、「はじからはじまで全部、3本ずつください!」と大人買い。おつまみや飲み物も買って、準備万端で公園を目指しました。

病み上がりのターザン

公園の近くの駐車場で、よっちゃんと無事に合流!歩きながら、水辺を目指します。

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藤田:おそくなっちゃってごめんなさい。私、よくやっちゃうんだよ……

村田:「浦和」がつく駅があんなにたくさんあるなんて、初めて知ったよ。浦和って広いんだねえ。

公園を目指して歩きだすと、さっそく気になるスポットが。フェンスにもたれかかるマットレスを発見。

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藤田:これ、落ちもんにしようか。

村田:巨大な落ちもんだね。粗大ごみのシールも貼られてない。

藤田:不法投棄……

村田:セミダブルくらいのサイズがあるね。別れたカップルのどっちかが、怒りにまかせて窓から投げ捨ててたりして……「こんなもん捨ててやる!」って。

藤田:いいスポット発見!

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村田:このイスは、ここで夕涼みしたい誰かが置いたのかな。横のビロードモウズイカがサボテンみたい。

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村田:ビロードモウズイカは、触るとビロードみたいで気持ちいいんだよ。

藤田:ほんと!動物に触ってるみたい。

細野:今日は涼しいねえ。

藤田:風が気持ちいい!

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村田:いいねえ。風が吹いてくる方が川かなあ。ほっとする。

藤田:夕暮れの空がきれいだねえ。

細野:今年一番、夏らしいことをしてる。

藤田:私も夏らしいことが全然できてなかったから、嬉しいよ。

実は少し前に、体調を崩し入院していたよっちゃん。元気で再会できた嬉しさをしみじみ噛み締めます。

村田:あ、鉄塔がある。下に入れるようになってる。

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藤田:みんなであの真下に行ってみない!?

細野:いいね!

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村田:見上げると幾何学模様だ。

藤田:うわー、これはいいね!目が回る。

せっかくなのでタイマーモードで撮影をしてみました。

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細野:下から写真を撮ろう!

村田:鉄塔の真下なんて、なかなかくぐれないもんね!貴重な体験。

藤田:いい写真が撮れた!

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藤田:あ、ターザンごっこができる遊具がある!

村田:よっちゃん、大丈夫?

藤田:病み上がりだけどターザンやろうかなあ。

細野:「病み上がりのターザン」。語呂がいい。

村田:私もやってみようかなあ。

藤田:いっせーの、せ!

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猛スピードが出るターザンロープに乗り切るよっちゃん

村田:ぎゃー脱落したー!

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藤田:あやちゃん、大丈夫??

病み上がりながらパワフルにターザンするよっちゃん。一方、村田はあっさり脱落。気を取り直してリベンジターザンです。

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それぞれの夏を振り返る

しばらく歩いていたら、広々とした水辺が見えてきました。彩湖という湖を含む、荒川第一貯水池。水辺を囲むように、広々とした公園が整備されています。

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藤田:うわー、いいじゃん!

村田:湖の水が、静かに打ち寄せてるね。風が涼しくて、夏の終わりを感じるなあ。

あたりはすっかり日が暮れていました。暮れゆく空の下で静かに揺らぐ水面を眺めながら、さっき買った焼き鳥を広げ、小さな宴会スタートです。

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全員:かんぱーい!

細野:今日はよっちゃんの快気祝いだ!

村田:大変だったねえ。

藤田:ありがとう。……今回の「まちのミカタ」も、すぐ座って食べてるね。

村田:根津編も、ほぼカフェの中での会話だったよね。歩かない散歩でおなじみ。

藤田:こういう回もあっていいね。暑いし。

村田:今日は身体をいたわる回だね。

細野:そうだよそうだよ。

藤田:2週間の入院中、時間があったから、今まで考えてこなかったことも考えるようになって。思ったが吉日で、やりたいことをどんどんやっていかないとって思ったよ。時間はあってもこうやって点滴につながれていたら、どこにも行けないし、何もできないなって。元気な状態で休みがないと、意味がないもんね。

村田:本当に、考えちゃうよねえ。身にしみる。私も最近、パーソナルトレーニングを始めて、「身体が大事」ってあらためて気づいたよ。食べるものと代謝に気をつけると、やっぱり体調がよくなって。食べたものが身体をつくるんだなって痛感してるよ。

藤田:素晴らしいね。あやちゃん、来年は全身ムキムキになってたりして……(笑)

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藤田:今年は「断捨離」「リセット」「浄化」のような一年だったな。胃腸を壊して入院したし、歯が折れてインプラントを入れたし、パソコンまで壊れて……。インプットというよりは、今は出すものを出してデトックスして、仕事もプライベートも整理する時期なのかもしれない。

村田:私もまさにデトックスと整理の年だった。年明け早々、20年ものの粉瘤を手術して取ったし、身体だけじゃなく、生活空間を整えたり、お金周りも整理したりした一年だったな。

でもそうやって不要なものを整理すると、家に置くもの一つ一つちゃんと選ぼうとか、食事も1日に摂取するカロリーの中で一回一回を大切にしようとか、暮らし全体を見直すようになったよ。選んで取り入れたものが、自分の生活を作って、身体と精神を守ってくれるという感覚。

フリーランスとしての仕事も、スキマを埋めるように仕事を詰め込むんじゃなくて、より自分が挑戦してみたいことに、躊躇なくリソースを集中できるようになってきた気がするよ。うまくバランスを取りながら、自分が生み出すものを濃くしていきたいな。

フリーランスであり、プライベートのことも共有してきた3人。夕暮れを見ていると自然と、いつもはできない真面目な会話が。

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藤田:本当に。仕事に押しつぶされるんじゃなくて、自分のやりたいことをやる時間を確保しないといけないね。40代になると、今みたいに動けるのは、いよいよあと20年切ったなっていう感じがする。

村田:確かに。周りも自分も元気な状態で、フルで動けるのは、正直50歳までだなっていう感じがしてる。

藤田:何に時間を使うか、ちゃんと選んでいかないとね。

細野:私も仕事の案件がストップしたり、湿疹が出たり、パソコンが壊れたり……最近いろいろ停滞してたんだけど、みんなそれぞれリセット期だったんだね。痛みを伴うデトックスもありながら。去年に比べると、仕事はのんびりだったんだけど、ゆっくり考えるいい機会になったな。不思議な月だなあと思ってたよ。

村田:なにかが変わるときは、痛みを伴うのかもしれないね。みんなそれぞれデトックスして、きれいな身体で秋を迎えようとしてるんだね。

ゆきえちゃんは、自分自身で金継ぎ*のワークショップをはじめたりと、金継ぎをテーマにしたご活動も広がってるよね!すごい。金継ぎってどういうところが楽しい?

▶︎金継ぎとは、割れたり欠けたりした陶磁器を漆で修復し、金粉を蒔いて仕上げる日本の伝統的な修理技術

細野:なんだろう。結構、瞑想に近い感じかな。これまで、何も考えずに手を動かせる時間がなかったし、壊れたらなんでも捨てちゃってたんだけど、今は全部直して使ってて。ずっと自分の表現ってなんだろうって模索してきたんだけど、日常の中で何かを直すために手を動かすのも、「作る」ことの一つだよなと思ったら、ぐっと「作る」ことへのハードルが下がってきたよ。

村田:金継ぎは、きっと元の器ともまた違うものになるんだろうね。要素と要素をつなげて、新たなものを生み出すって、ゆきえちゃんの編集のお仕事とも通ずるものがありそうだね。

藤田:本当に。ただ直すっていうよりも、生き返らせる感じがする。むしろそれこそが大切で尊いことなんじゃないかと思っちゃう。

村田:ね、欠けている状態がネガティブじゃないって思えるね。

藤田:ちゃんと循環して。

細野:前まで「アートはすごい人がやるもの。勉強や下積みが必要なもの」って、自分の中でハードルを上げてしまって。それでアートから離れてしまっていたんだけど、こんなふうに身近でよかったんだって、最近ようやく気付けるようになったよ。

青春時代の甘酸っぱい思い出

話題は流れに流れ、SABOTENSの中高時代の思い出話へと、トピックが移っていきました。

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気がつくとあたりは真っ暗に(iPhoneの夜景モードで撮影)

藤田:あやちゃんは何部だったんだっけ?

村田:吹奏楽部でトロンボーンを吹いてたよ。でも強豪校でもなんでもないゆるい雰囲気だったから、楽器ごとに集まっての練習時間でも、ろくに楽器を吹かないで、くだらない話ばっかりしてたよ。「こないだお父さんが読んでた雑誌に、こんなこと書いてあったんだけどさ……」ってヒソヒソ声で(笑)よっちゃんは高校時代、何してた?

藤田:私は高校生の頃、謎のバンドの追っかけしてたよ。

村田:ええー!そんな過去が!どういうバンドだったの?

藤田:ロックなのかビジュアル系なのか……なんとも言えないバンドだったな。原宿かどこかで声かけられて、ライブに行ったが最後、2−3年通ってたよ。

村田:推しがいたのかー!いいなあ。ライブはどこまで見に行ってたの?

藤田:原宿のライブハウス。

村田:かっこいい!!

藤田:しかも、頭を死ぬほど振るの。首が次の日痛くて上がらなくて。

村田:えーと、ヘッドバンキングじゃなくて……

藤田:バンキング(笑)。銀行みたい

村田:頭ばっかり並ぶ銀行を想像しちゃったよ。ヘッドバンギングだ。よっちゃんもあれ、やってたんだ!

藤田:親には見られたくない光景だったよ。

村田:いいなあ。学校帰りにライブ見に行ったり?

藤田:そうそう。

村田:うわあ。漫画の中の世界みたい。いいねえ。出待ちなんかもしてたの?

藤田:そうそう、出待ちしてたよ。

村田:ええーー!そうなんだ!

藤田:出待ちするとメンバーが覚えていてくれて。でもファン同士の上下関係が厳しくて、新しいファンの子が来ると「邪魔だよ」って文句言う子もいて。ヘッドバンギングで迫ってきたりもされたよ(笑)

村田:頭を振りながら……怖い(笑)。それにしても、これだけ何度も話してるのに、知らない話が聞けるとは!新鮮だったよ。

焼き鳥を片手に、湖を眺めながら約2時間。最近のことから昔のこと、これからのことまで、3人でたっぷりと語らうことができました。ここには書けなかったオフレコ話もたくさん。きっとこの彩湖周辺のゆったりとした空気が、そうさせたのでしょう。

村田:暗くなると、虫の声がよく聞こえる。静かでいい場所だったね。

細野:今日は語らえたな。たまにはこういう時間、いいね。

村田:いい夏の思い出ができました。みんな、気持ちと心を第一に、乗り切ろう。

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気持ち新たに帰路につきました

本日の一コマ漫画

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イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)

書籍情報 『緑をみる人』(雷鳥社)

SABOTENSまちのミカタ_村田あやこ_書籍情報 『緑をみる人』(雷鳥社)_エントリエマガジン
  • 著者: 村田あやこ
  • 発売日: 2025年10月6日
  • ページ数: 384ページ
  • サイズ: 17.8 x 11.2 x 2.3 cm

アスファルトのひび割れ、マンホール蓋のふち、側溝の奥底、室外機の下……。整備された都市空間の隙間で、人知れず芽吹き繁茂する植物たち。「路上園芸鑑賞家」として活動を続ける著者が、世界13カ国18人の”隙間植物愛好家”を約2年にわたって取材。日本、フランス、トルコ、メキシコ、韓国、台湾、イタリア、スウェーデン、ブラジル、シンガポール、アメリカ、オランダ、ニュージーランドの緑をみる人たち19人のストーリーと、総数800枚もの写真を通して見えてくる、日常にひそむ地球の「野生」を描いた一冊です。