エイミーことエントリエ編集長の鈴木 栄弥が気になる人を訪ねて、自分らしい暮らし方や生き方のヒントをいただいてしまおうというこのシリーズ。第27回目のゲストは2019年に自身のブランド「KODAI YASUNO」を立ち上げたデザイナーの安野広大さんです!

ファッションを通して、関わる人を豊かにしたい

安野 広大(やすの・こうだい)さん。東京都出身。専門学校でデザインとファッションビジネスを学ぶ。WEBマーケティング会社での勤務を経て、アパレルショップ店長へ転身。自身のブランド「KODAI YASUNO」をスタート。

2019年に、シルバージュエリーや染色をオーダーメイドで受ける自身のブランド「KODAI YASUNO」をスタートした安野さん。ブランドを立ち上げるまでのストーリーや今後について、ファッションへの想いを伺いました。

「絵が下手だから」と諦めていたファッションデザイナーへの道

Instagramで日々さまざまな洋服を公開されている安野さん。 (https://www.instagram.com/kodaiyasuno/)

――25歳にして独自のブランドを立ち上げた安野さんですが、個人のInstagramでは着まわしを公開されているなど、とにかく洋服が好きなんだなと感じます。ファッションに興味を持ちはじめたのはいつ頃からなのでしょうか。

安野さん:中学生の頃、いとこが考えてくれたコーディネイトを周囲に褒められ、「ファッションひとつで変われる」と感じた体験がきっかけで洋服に興味を持ちはじめました。それからは自分なりに気を使ってはいたのですが、大学に入りさまざまな人に出会う中で「こんな着こなしがあるんだ!」という衝撃を受けて……。そこからいろんなものを見るようになりましたし、市場にある服だけでは飽き足らなく「ファッションデザイナーになりたい」と思うようになりました。

――それから、すぐにデザイナーを目指したのでしょうか?

安野さん:いえ。僕、絵が下手なんですね……(笑)。だから実は、デザイナーは無理だと諦めていたんです。でも大学4年のとき読んだ『天職』(鈴木おさむ, 秋元康 著、朝日新書、2013)という本に「やったこともないのにやる前から諦めるのはもったいない。やってみてうまく行くかもしれないし、もしダメだったらその時諦めればいい」というような言葉があり、感銘をうけました。諦める前にまずはチャレンジしてみようと思い、翌日にはデザインとファッションビジネスを学べる専門学校に申し込んでいました。

洋服を通じて、人との関わりが「楽しい」ものに変わった

――専門学校卒業後はどのような道を歩まれたのでしょう?

安野さん:卒業後は一度、自身のブランドを立ち上げたときを想定して、集客を強化できるようにとWEBマーケティングの会社に就職しました。そんなある日、自宅の近くでアパレルショップのオーナーに突然声をかけられたんです。そこで連絡先を交換することになったのですが「もしかすると将来一緒に仕事をすることになるかも」という不思議な予感がしました。


その半年後、自分のブランドをつくりたいという思いが強くなってきたとき、ふと声をかけていただいたオーナーのことを思い出したんです。連絡すると「うちのお店を手伝いながらブランドもつくってみれば」ということで店舗のマネジメントの傍ら、ブランド立ち上げの夢が実現しました。

――ブランドの立ち上げにはどのような想いが込められているのでしょうか?

安野さん:僕は洋服を通じて人生が変わったと思っています。以前は自分に自信がありませんでしたが、好きな服を着て自分を表現することで自信となり、人との関わりが楽しいなと思えるようになりました。

過去にも未来にもいない、唯一無二の自分をもっと服で表現したい……そう思えるようになった自身の経験をブランドを通して多くの人に伝えていけたらと思っています。

「その人がいちばん輝ける服」をつくる

yasunokodai

――では、安野さんのブランドについて教えてください!

安野さん:僕のブランド“KODAI YASUNO”ではシルバージュエリーや染物のオーダーメイドを受け付けています。「個性を表現し続ける」「服に永遠の命を吹き込む」というふたつのコンセプトがあり、”Breathe eternal life into the mirror of personality”というタグラインを考えました。

決まったテイストはなく、その方に合う形でオーダーで作成しております想像力を膨らましながら、あくまでもお客様一人ひとりに合うデザインを提案し「その人がいちばん輝ける服」を目指して製作に取り組んでいます。

――「捨てる代わりに染める」ということですが、エントリエもリノベーションをしているので「再生」という共通点があるように感じました! ただ、そこで新しくつくるのではなく、染めることを選んだのはなぜでしょう?

安野さん:ファッションは人を高揚させて、人にポジティブな影響を与えるためにあるものだと思います。でも今は大量生産の末に服の廃棄や労働環境の悪さが問題になっています。

ファッション業界は世界で2番目に汚い産業と呼ばれるまでになり、人と地球に負の影響を与えているように感じます。そんな現状を変えたくて、まだまだ小さい力ですが、できるところからやっていこうと思いはじめました。

洋服の染色をオーダーすることで「この服、シミがついたから捨てよう」ではなく「染め直して、また着よう」という循環をつくりたいなと思っています。

染めた洋服を広げ、「お!」となる瞬間が好き

――現在は、どのようなオーダーを受けていますか?

安野さん:「気に入っているのにシミがついちゃった」とか「形はいいのだけど……」とか、オーダーの理由はさまざまです。愛着があるから捨てたくはないけれど、ずっとクローゼットの奥で眠っている服の再生は少なくありません。

――思い入れのある作品や心に残っているお客さまはいますか?

安野さん:立ち上げ当初、はじめてオーダーしてくれた友人です。「古いシャツを着たいけれど体型が変わり今着るとマタニティ服のようになってしまう。だから、かっこ良くしてほしい」と(笑)。そこで、その人の個性に合わせて「どんなテイストにするのか」を考え、製作しました。

そのときは「これだ!」という感覚があり、実際に仕上がった作品もイメージとぴったり合っていた。友人にもすごく喜んでもらえて2倍の喜びがありましたね。

――安野さん自身は染色のどんなところが好きですか?

安野さん:全然イメージ通りにならないこともあるのでトライ&エラーですが、染物を広げた瞬間ってすごく感動するんです。そのときが、好きだなと思いますね。また染め方、色使いによって柄や表現の可能性が無限にあるのでお客様に合う染め方や色を考える時間がとても楽しいです。

――これから、ブランドは大きく展開されていく予定ですか??

安野さん:実は、ブランドをそこまで大きくするつもりはなく、あくまで個人対個人と考えています。こじんまりでも、求めてくれる方に合ったデザインをていねいに提供して満足してもらいたい。人間味を強く持ちたいんです。

それとは別軸で、先ほどお話ししたファッション業界が現在抱える課題(服の廃棄や労働環境)と向き合っていく事業も考えています。大きな問題だし解決には相当の努力と時間が必要となりますが、取り組んでいきます。

――なるほど。これからの展望を教えてください!

安野さん:既製品として販売する商品は日本の伝統的染色技法である「ろうけつ染め」を中心に、リングは大人モードのテイストを中心に作成していきたいと思っています。

技術的には、師匠がいるわけでもなく独学でやっているので、これから学び続けなればいけない。それに、今後は古着を回収して、リメイクもしていく。染めるだけじゃなく切り合わせ、柄や色だけじゃなくシルエットやデザインでも一人ひとりにあった提案の幅を広げていきます。

ブランドを広げるためにマーケティングなどの戦略も必要ですし、やることは盛りだくさんです!


安野さんにとっての至福のひとときは「仕事をしながらベランダで音楽を聴いて、ビールを飲んでるとき!(笑)」とお話ししてくれました。熱くブランドについて語る眼差しがとても印象的な安野さん、今後のブランドの展開、楽しみにしています!

「KODAI YASUNO」
【Online shop】https://kodaiyasuno.stores.jp/
【Instagram】https://www.instagram.com/kodaiyasuno_official/