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「未来をつくる、いまの子どもたちに無限大の可能性を」もののけアーティスト 谷村 紀明さん | エイミーズトーク #48

エントリエ編集長のエイミーこと鈴木 栄弥が気になる人に、自分らしい暮らし方や生き方のヒントをいただいてしまおうというこのシリーズ。第48回目のゲストは、もののけアーティストの谷村 紀明(たにむら・のりあき)さんです。

谷村 紀明(たにむら・のりあき)さん

1988年、京都生まれ。外資系広告代理店を経て、2019年11月 株式会社HONNOW(ホンノウ)を設立。ブランディング、プロモーション活動におけるコンセプト開発、コミュニケーションデザインなど、クリエイティブディレクション全般を得意領域とする。また、社会問題解決事業やパブリックヘルスケアコンサルティングなどのクリエイティブを担当。その他にも、日本発”もののけアーティスト”として、もののけや妖怪をモチーフとしたアート作品で活動中。国内・国外の広告賞多数受賞。 Lürzer’s ARCHIVE 200 Best Illustratorsworldwide に選出。

株式会社HONNOWホームページ
インスタグラム(@mononoke_artist)

ご自身の会社・株式会社HONNOWで幅広い分野でのクリエイティブディレクションを手がけるほか、「もののけアーティスト」として、もののけや妖怪、神獣をモチーフとしたアート活動を行う谷村さん。

2021年10月15日〜11月14日にかけて開催中の企画展「ウルトラ怪獣もののけ絵巻」​​では、「もしもウルトラ怪獣たちが 、555年前の日本にもあらわれ、その記録が絵巻として残っていたら……?」​​という空想を膨らませ、作品に登場する約80体もの怪獣たち​​を絵巻として描いています。

谷村さんに、「もののけアーティスト」としてのご活動の背景にある思いや、今回の展示についてお話を伺いました。

「もの」に宿るエネルギーを親しみやすく可視化する

――谷村さんは「もののけアーティスト」として活動されています。どのような活動でしょうか?

谷村さん:もののけの「もの」とは本来、人間ではない超自然的なすべてのものを表す言葉です。ある意味であいまいな言葉なので、神様と表現されることもあれば、妖怪や鬼として表現されることもあります。描き方や伝え方によって怖くもなれば、かわいくもなりますが、根源にあるものは、日本人がもともと持っているものに対する畏敬や憧憬の念。

――妖怪やおばけと同じような概念かと思いこんでいましたが、「もののけ」はもっと広いものを指す言葉なんですね。

谷村さん:「もののけ」は漢字で書くと「物の怪」。神様や妖怪、自然現象、いい感じ・嫌な感じといったものの総称が「もの」です。動くもの、動かないもの、食べもの、すべての「もの」に宿るエネルギーを、“怪=不気味”ということで終わらせずに向き合うことで、自分なりに咀嚼しわかりやすく可視化したり、親しみのある表現にしたいと思い活動しています。

たとえば、いまつくっている「てんぷら妖怪」では、“美味しそう”な妖怪を描いています。またリビングをテーマにした絵本では、テレビのリモコンの「もののけ」がエネルギーとして電池を食べることで動きます。そうやって楽しく描いて伝えると、ただの「もの」として見ず、新たな価値が生まれて生きた「もの」になると思うんです。

▷丸亀製麺の母体であるトリドールホールディングス本社にて展示した、「てんぷら妖怪」。

――「もののけ」という言葉で捉えると、見え方が変わる気がしますね。

谷村さん:「妖怪」という言葉には、なんだか悪いイメージがありますが、僕が描くもののけや妖怪は、そんなことないんですよ(笑)。人によって捉え方や印象は変わるものなのかな、と思っています。描き手が怖くしたり極端に優しくしたりするのではなく、その「もの」自体を描いて自由に捉えてもらうようにしています。

――作品はどのようにしてできていくんでしょうか?

谷村さん:「これを描こう」とはあまり決めず、現地にいって、空気感や地域に根づいている自然、環境、食べものなどに触れて、自身で体験しインスピレーションを受けたものを表現することが多いです。なので、表現自体は描かされている感じに近いですね。

たとえば、沖縄で『やんばるアートフェスティバル(2018年12月から2019年1月開催)』に参加したときも、まずはノープランで沖縄にいきました。現地にはガジュマルの木がたくさん自生しています。沖縄の人にとっては当たり前の存在ですが、普段目にすることがない僕にとっては、「すごいな、大きいな、生命力を感じるな」と思えて。

だからアートフェスティバルに出展する作品はガジュマルの木をモチーフに大きな龍を描き、上を大きく見上げる表現にしました。地元の人が見に来るアートフェスティバルだったので、大きく見上げることによって、当たり前の存在として身近にあるものが、崇め奉る特別な存在になります。そこから、身近にあるものを大切にすることにつながると考えたんです。

▷ガジュマルの樹をモチーフに描いた全長8mにおよぶ巨大掛け軸。沖縄のやんばるアートフェスティバルにて。

ウルトラ怪獣たちが日本古来の「もののけ」に姿を変えた!
企画展「ウルトラ怪獣もののけ絵巻」

▷絵巻に描かれたウルトラ怪獣たち。

――現在、ウルトラマン55周年を記念し、円谷プロダクションの協力のもと企画展「ウルトラ怪獣もののけ絵巻」​​ を開催されています。この展示のコンセプトを伺えますか?

谷村さん:「ウルトラ怪獣もののけ絵巻」では、「鳥獣戯画」のようにウルトラ怪獣たちが自由に飛び跳ね、遊び、取っ組み合いをするさまを描き、怪獣たちの怖さだけでなくユーモラスな雰囲気を表現しました。

▷放映当時テレビがモノクロからカラーになるのと同様に、作品の色彩も変化するところにも注目。

――いまにも紙を飛び出して動き出しそうな、生き生きした様子が魅力的ですね。

谷村さん:怪獣たちを描く順番も、ほぼ実際に放送された順番で描いています。最初のウルトラQは、テレビがモノクロの時代だったのでモノクロトーンで描き、ウルトラマンシリーズからテレビがカラーになったので、そこからはカラーで描いています。

そうやって、リアルタイムで見ていた人が「懐かしいな」と思える遊びを入れています。

――テレビがモノクロからカラーへ切り替わる様子を、怪獣たちの色味にも反映しているんですね!

谷村さん:主な画材は「泥」です。泥には微生物がたくさん含まれていて、いわば「生きた塗料」。そして古くから神事にも使われる真菰(マコモ)を使った和紙を、この絵巻のために一からつくりました。縄文時代から日本に自生している植物で、「神が宿る植物」と昔からいわれています。
和紙の表面に泥で光沢をつける作業なんて、幼い頃の泥遊びの延長かもしれません(笑)。

▷制作に使用された道具も展示されている。

――泥はどうやって採取したんですか?

谷村さん:真菰に付着している泥です。真菰には浄化作用があるので、泥が絵の具みたいにきれいなんです。真菰の泥を触ったとき、もしかしたらこれで描けるかもしれない、と思って。もともと付着していたものなので、真菰和紙にも映えるんです。
あとは、古代怪獣の深みを増すために、縄文土器の小片の細粒と表面に付着した泥も使っています。

――材料にもこだわっているんですね。

谷村さん:素材自体も、自然のものを使っています。「怪獣」というと、まちを壊すような悪いイメージがありますが、そもそも怪獣が生まれた理由は、人間が自然界に足を踏み入れたこと。そこで発生した災害を擬人化した怪獣も存在します。怪獣は自然やメタファーから生まれた、というところを大切にしたかったので、生命力の高い自然素材でつくっています。

泥やキッチンペーパーからだって、アート作品を生み出せる

――もののけアーティストの活動を通して伝えたいことはなんでしょうか?

谷村さん:未来をつくる子どもたちに、無限大の可能性を感じてほしいですね。僕が子どもだった頃は「勉強しなさい」「みんなと同じことをちゃんとしなさい」などといわれていました。
でも、みんな同じことをしたら同じような人が集まる世の中になってしまいます。そうじゃない視点もすごく大事。

キッチンペーパーに絵を描いたり、泥で絵を描いたりと、僕がやっていることって子どもがやっていたら怒られることだと思うんです。でもそういう大人がいてもいいよな、と思っています。遊びが仕事につながることもある。

ただ泥で絵を描いているだけ。お金がなくても身近にある材料を使って絵を描けるって知ってほしいです。小さい頃は、公園の地面に木の枝や足で巨大な絵を描いていました。
やりたいと思うことがあったら、これはダメとか、こうだからこうとか、そういう固定概念をなくし、新たな発想でたくさんのことにチャレンジしてほしい。それを伝えるために、自分なりに表現し続けたいなと思っています。

――それは谷村さん自身の経験の反動からきているんですか? たとえば「泥で遊ぶな」って怒られた、とか。

谷村さん:多分いわれていたと思うんですが、全然耳に入ってきてはいませんでしたね(笑)。実際食べたりもしてましたし、泥団子をつくるのもめちゃくちゃうまかったんですよ。歯ブラシとかで削って光沢を出すというノウハウも持っていて。
今回の展示にも、子どもの頃に自然と身に着けた泥遊びのノウハウが詰まっています。

――谷村さんの発信を通して、元気づけられる子どもが多そうです。

谷村さん:怒られてもやり続けたほうがいいんです。うちの子どもは、壁に落書きしまくっていて。やりすぎなくらいしまくっているから、もう拭けないんですよ。(涙)
そこまでやられると怒る気もおきない。逆にその集中力やパフォーマンス力がすごいとびっくりさせられてしまう。そのまま突き進むことも大事だな、と勉強させてもらうことも。まあ、まわりに迷惑さえかけなければ良いかと。怒られても、とにかくポジティブにやりきってほしいですね。

――今後、もののけアーティストとして挑戦したいことはありますか?

谷村さん:色んなところにいって、その土地のものを使って作品をつくりたいです。たとえば、いま取り組んでいる岐阜県の奥美濃カレーのプロモーションでは、食べ残ったり余ったりしたカレーを使って、食べものを残すと出てくるもののけを描いていこうと思っています。

そういうふうに、「もののけ」というコンテンツで、地方創生や日本文化の魅力を世界に発信していけたらいいなと思っています。

「アートはどこにでも落ちています。そんな発見をするのが普段の楽しみです。」という谷村さん。写真は、沖縄にて浜辺に落ちている珊瑚礁で遊んでつくった恐竜だそう。

ウルトラマン55周年記念
ウルトラ怪獣もののけ絵巻展

会場:shina Ginza gallery(〒104-0061 東京都中央区銀座5-5-6三平ビル)

日時:2021年10月15日(金)〜11月14日(日)
11:00 〜 18:00<月曜定休>
入場無料

●インタビュー・文 / 村田 彩子
●編集・撮影 / 細野 由季恵

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