猫を飼う前の私は、「猫がいる家は毛がすごそうで嫌だな」と思っていた。リノベーションした真新しい家に、ふわふわした毛玉がころころ転がっている光景を想像すると、掃除がめんどくさそうだし、やっぱりうちには無理かなと思っていた。
ところが今では、家のあちこちで毛を発見するたびに「あ、ここで幸せそうにしていたんだな」と嬉しくなってしまう。掃除機をかけながら、おいどんの一日の動線を想像したりする。さらには外出中に服についた毛だって、どこかに捨てるのはどこか“おいどんのカケラ”を置き去りにしてしまうような気がしてつらい、と思うほどになった。
猫の毛について、最近気が付いたことがある。家の中でも毛の多い場所ほど、おいどんの「お気に入り度」が高いのである。おそらく、一番毛がフワフワと浮いているのは私の部屋だろう。4人暮らしの我が家で、おいどんが一番長く過ごすのはここなのだ。それが私の自己肯定感を上げてくれる。「おいどんに選ばれている」という、根拠のない優越感。
私の部屋なかでも日中のお気に入りは、ベッドと窓の間の絶妙なスペースのようだ。丈の長いカーテンにハンモックのように寄りかかって、半分隠れるようにくつろいでいる姿をよく見かける。

そんなおいどんを見ていると、猫は家の「心地よい場所を見つける感覚」を教えてくれるのだなと思う。
夏は外気温の影響をもろに受ける灼熱の2階には近寄りもしないけれど、反対に、冬になれば1階よりも暖かい場所を求めて2階の家族の部屋にいる。
おいどんは季節によって、自分の居場所を的確に変えている。その判断基準は人間には理解しきれない部分もあるけれど、確実に「今日はここが一番いい」を知っている(ようだ)。

猫と暮らすと、家の中に「猫の時間」が流れるのだなと思う。人間の都合とは全く関係なく、陽だまりを追いかけ、気まぐれに。私もおいどんのように、猫っぽく、もっともっと直感的に暮らしてみたいものだ。
今日もおいどんは、新しい居場所を開拓中である。きっと私がまだ知らない、家の心地よいスポットを発見してくれるだろう。
時々、おいどんの真似をしてベッドと窓の隙間で寝転んでみることがある。私にとっては、あまり快適ではない。やはり猫と人間では、心地よさの基準が違うのだろう。
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鈴木 栄弥 / Suzuki Emi
2級建築士、カラーコーディネーター、福祉住環境コーディネーター、ファイナンシャルプランナー
静岡県富士市出身、1990.7.27生まれ。
日本女子大学 家政学部 住居学科 卒業。…
小学生の頃から間取りやミニチュアが好きで、建築模型がつくりたい! と、建築士になることが夢に。
ビルや建物ではなく、人が住む家のことを中心に学びたいと思い、住居学科で学び、
「人が楽しく暮らす住まいをつくりたい」という思いで就職しました。
現在は、エントリエで設計営業 兼 マガジン編集長として所属。気軽に「エイミー」と呼んでください!
わたしの手掛けるお家は、どれも決まったテイストはありません。
住まい手の体温を感じられるテイストに仕上げることが得意です!
●全国ジェルコデザインリフォームコンテスト
2024年 玄関・ホール部門 全国最優秀賞 受賞
2023年 リビングダイニング部門 全国最優秀賞 受賞
2020年 一般社団法人住宅リフォーム推進協議会会⾧賞 受賞
2020年 個室部門 全国優秀賞 受賞
2019年 リビングダイニング部門 全国優秀賞 受賞
●ジェルコ関東甲信越支部リフォームコンテスト
2022年 デザイン部門 キッチン賞 受賞
2021年 デザイン部門 優秀賞 受賞
2020年 デザイン部門 優秀賞 受賞
●RoomClip全国理想の住まいコンテスト
2022年 1000万円以上部門 全国最優秀賞 受賞
2021年 500万円以下部門 特別賞 受賞
2020年 500万円以下部門 全国優秀賞 受賞