ひとの手で、丁寧に、ひとつずつつくられていくものたち。工場で大量に製造されたモノにはない独特のオーラやぬくもりが、私たちの暮らしに彩りや安らぎを与えてくれます。
エントリエでは、こだわりをもった手仕事作家さんに注目。ものづくりや作品への想いをお聴きします。
布作家 / 538cm(ミウラチエミ)
お客さまの希望を形にする、538cmの手仕事
ハンドバッグデザイナーとして勤めていた頃、どうしても「売れるもの」をデザインしなければならないことが、辛い時期がありました。わたしはデザインするよりも、つくる方が純粋に好きだなあと気づいたんです。
だから、会社を辞めてからは純粋に「つくりたいもの」をつくりました。
自分でつくったものを使っていると、それを見た友人たちから「
徐々に知人の繋がりから、新ブランド立ち上げのサンプル制作や特注などの依頼がくるようになり、わたしはモデリスト(デザインを受けて、実際に型紙を引き、縫製し、形にする人)という仕事の魅力に気づきました。
具体的には、お客さまからデザインをいただいた後、イメージや縫製のしやすさ、適切な素材などを熟慮。それを提案して、近いものを自分で探したり、お客さまから生地をいただいたりして、つくることもあります。
熱中と客観を大切に制作に向き合う日々
制作は、休日の朝。明るいうちの方がやる気も出るし、夜な夜なやるより頭がすっきりしているので、ミスが少ない(笑)。ほどよく休憩も挟むようにしています。
制作に集中するとびっくりするくらい早く時間が経っていて、根を詰めてしまうのです。制作時間と制作量で自分の限界値はわかっている。だから、ある一定値まで疲労が溜まったら、中途半端でもそこから無理はせず、別日に続きを制作します。
常に客観的な判断をするのも、わたしの仕事です。
お客さまが見えていない部分を伝えること
最初に書いたように、わたしはモデリストです。
それは、お客さまのイメージにより近づけるように心がけなければいけないということ。
生地の選択から、縫製方法、ミシンの糸の色や太さ、使い心地など、デザイン画を見て、いくつかの縫製パターンとそれぞれの仕上がりの違いについてお伝えします。
また「きっとこうなるだろう」という懸念点があれば素直に伝えてみる。じっくり相手と話すことで、「もしかしたらこういう縫製の方がいいかな」とか「ここのデザインはアレンジできますよ」とかこちらが提案できることも増えてきます。
あとはお客さまの答えを待ち、そしてつくる。つくって、相手にお見せして、また話しあう。
その繰り返しです。つくっているときは、一人でミシンに向かっているようで、実は相手に向かっている。いつも頭には打ち合わせの時のお客さまが浮かんでいます。
今後は、モデリストとして、いろんなサンプルや一点物のオーダーをもっと受けられるようになりたいです。「こんなのつくりたい」、「つくって売りたい」という人がいれば、その方の願いを実現したい。
先月、生まれて初めて裁縫のミニワークショップを開催したのですが、これを継続して手 づくりの面白さや難しさも伝えていければと思います。「技術を伝える」ことも、前々からしたかったこと。
あと、今はネットで受注生産のみしていますが、商品をつくってイベントに出してみたり……。
やりたいことがいっぱいです。
● 布作家 / 538cm(ミウラチエミ)
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