陶器の作品は制作過程で割れやヒビが入ることがあります。また、私のつくった器を使っている方から「欠けてしまったけど、気に入っているので直してもらえないか」という話をよく聞いていました。陶芸の制作を始めた頃から、伝統的な金継ぎは知っていたのですが、漆アレルギーがあるため作業が難しかったのです。

そんな割れた陶器たちを生かすために何か方法はないか探っていたところ、2010年頃に合成漆を使う方法に出会い、その素材を使用し金継ぎをはじめました。また、欠けた陶器の欠け部分を別の破片で補う技法「呼び継ぎ」は古くから存在しますが、自分の傷のある器を生かすことができると考え、呼び継ぎでお箸置きなどの制作を始めました。

転機は、ニューヨークのローニンギャラリーで東日本大震災のチャリティのための公募展が行われたときのこと。出品したのは桜色の壊れた器の破片と浜辺で拾ったシーグラスを繋ぎ、“再生すること”を表現した呼び継ぎの箸置きの作品。この作品はアメリカのWEBサイトなどでも紹介されて、たくさんの反響がありました。

金継ぎの「壊れてしまっても諦めずに、その傷を乗り越えていく」という考え方は海外の方からも共感してもらえると思えた大きなきっかけでした。

日常の記憶をかき集めて

陶器は、手にしてくださる方の日々の生活に馴染む作品であること。モダン金継ぎの作品は、陶器にガラスや石などを合わせることで、一つの素材では出せない様々な質感の魅力を楽しんでいただける作品にすること。そしてどちらの作品も、一つ一つを自分の手で制作し、色や形に自分自身が惹かれることが制作で大切にしていることです。

インスピレーションを受けるのは、日々の生活や旅先で見た空の色や植物、山、岩の色などの記憶。自然の景色の中にある色の組み合わせが好きです。陶芸の活動から始めたので、モダン金継ぎをするようになってからガラスの透明感と陶器の質感を合わせることで作品の表現が増えました。

私にとって作品作りは、常に考えていることです。作業している以外の時間も作品に生かせることはないかなといつも考えています。そんな中でアイデアが浮かぶ瞬間がとても楽しいです。陶芸とモダン金継ぎの制作をこれからもしていきつつ、直して使うことやモダン金継ぎの楽しさを知ってもらえるワークショップを国内外でも続けていきたいです。

イベント情報

モダン金継ぎの呼び継ぎワークショップを不定期ですが開催しております。

今後は3/25土曜日、4/29土曜日を予定しています。

そのほかの開催日程は決まり次第Instagramにてお知らせしています。詳細お問い合わせやご予約はhellofromteto@gmail.comにご連絡ください。

陶器・モダン金継ぎ作家 / 鴨下知美
■ WEBサイト

 https://rittau.jimdofree.com/
■ Instagram
 @tomomikamoshita