「人生は“毎日がドラマである”という気づきに寄り添う」をコンセプトに掲げるレディースアパレルブランド Kana Kawasaki(カナ カワサキ)。平凡な日々にファッションで色を与え、何者でもないと感じているあなたも、着る服によってどんな役にもなれる。装うことで見えてくる視点で、ありふれた日常もドラマとして楽しんでほしいという思いを込めて制作しています。
日常に“ドラマ”をもたらすコンセプトの誕生
姉とお揃いの洋服を作ってくれた母の影響で、ものづくりに興味を持ちはじめた幼少期。中学生になると、漫画家 矢沢あいの作品に出会い、ファッションデザイナーになる夢を抱きました。
しかし、いざブランドを始めようとすると、「デザイナーになる」という夢ばかり先行してしまい、作りたい服が思い浮かばず頭を抱える日々でした。
そんな時に人生を振り返ると、平凡な日常を過ごすなかでも、私の人生が楽しかったのは、お洋服の存在があったからだと感じました。「毎日、お洋服をちゃんと選んで、着て、装いを整える」。
そうすることで、いつも通っている道も着ているお洋服にあわせて見え方が変わってくる気がしていました。
可愛いワンピースを着ていれば、道に生えてる植物もキラキラしているように見えたり、かっこいいセットアップを着てれば、歩いてる道がランウェイのように感じたり。
実際にはドラマチックな出来事は起こってなくても、毎日女優のような気分で生きていたんだなと気づくことができました。
画像:ブランド始める前に自分で刺繍したノーマの像。
もうひとつ、コンセプトに影響を与えたのは“ノーマ”という彫刻の女性像。「ノーマル」という言葉からなぞらえて、「ノーマ」と呼ばれるその像は、1940年代に婦人科医のロバート・ L ・デッキンソン博士が15,000人のアメリカ人女性の体のサイズのデータをとり、その平均値で作られました。
そのため、ノーマと同じ平均値を持つ女性はたくさんいると思われていましたが、実際にはノーマの平均値に該当する女性は一人もいなかったそうです。
このエピソードを知った私は、平均的と思われていた人が唯一無二の存在だったこと、そして現実の世界に存在していないという事実をとても神秘的に感じました。
ごく普通の、ドラマのような展開のない人生を送ってきた自分をノーマに重ね、本当は自分も特別な存在で、私の人生もたくさんのドラマにあふれていたのかもしれないと思えるようになりました。
そして同じような感情を抱いている人たちに、私の作るお洋服を着てもらうことで、「あなたは、そのままでも十分特別な存在なんだよ」ということを伝えていけたらという思いが込み上げてきました。
カナカワサキのコンセプトは自分自身も含め、そういった思いを持つ女性たちに寄り添えるお洋服でありたいというところからきています。
品質、デザイン、機能性を兼ね備えた洋服づくり
ブランドは、私の販売、生産管理、デザイナーとしての経験に加え、「繊維製品品質管理士」の資格を持つなど、アパレル業界での多角的なキャリアを生かしています。
カナカワサキのお洋服は、奇抜さや尖ったアイテムこそありませんが、高い品質を維持し、デザイン要素を持ちつつ、しっかりと機能的である、という三つのバランスが取れたお洋服づくりができることが強みです。
例えば、2025年 春夏コレクションで発表した麻混素材のオールインワン。麻特有の清涼感を残しつつ、シワになりにくく、お洗濯後もアイロン不要です。トップスとボトムスをセパレートできる仕様で、従来のオールインワンの不便さを解消しました。
制作において重要なインスピレーション源は、テレビドラマです。
「朝」をテーマにした2023年 春夏コレクションでは、登場人物がカーテンを開けて朝の光が差し込むシーンから着想を得ました。何気ない朝のワンシーンから感じる“ドラマの始まり”と、“ブランドの始まり”の掛け合わせです。
はじめてのアパレル展示会がカナカワサキというお客さまに出会います。今まで服への関心が薄かったという方が、展示会でお洋服に袖を通した時に着心地のよさやシルエットに感激して下さり、「お洋服を着ることが楽しくなりました」と言って頂けたことがとても印象に残っています。
職場でも、お出かけにも、旅行にも持って行ってくださるということを伺った時は、“色んなシーンで着て頂けるように”という想いが伝わっていると感激した瞬間です。
今後も春夏・秋冬の展示会発表を軸に、百貨店やセレクトショップでのPOP UPイベントを通じて、多くの女性に洋服を届ける機会を増やしたいと考えています。
そして「あなたはそのままで十分特別」というメッセージを、洋服を通じて伝え続けていけたらと思います。
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