リノベーションをしたいけれど、わからないことがたくさん……そんなみなさまに向け、entrieがリノベーションの基礎知識をお伝えするコーナー「リノベをマナブ」。
中古住宅(戸建・マンション)を購入して、間取りや内装、水回りを一新して、好みのスタイルの住まいを実現するというのが急増しています。弊社のリノベーションは「断熱」にもこだわっているという点についてお伝えします。
なぜ断熱リノベが必要なのか?
我が国の新築住宅の断熱・気密性能が他の先進国に比べて、とても劣っているということは、今までも触れてきました。現状の省エネ基準は先進国中最低水準ですが、それでも、国の定める省エネ基準は、昭和55年基準、平成4年基準、平成11年基準(≒平成28年基準)と段階的に、要求水準は高まってきています。
つまり、図に示すように、中古住宅を購入するということは、断熱性能については、非常に低いレベルにある住宅を購入するということです。中には、そんな低い断熱性能の家の薄い断熱材をはがしてしまって、さらに低い性能にしてしまうフルリノベを行っているケースもあるようですので、注意が必要です。
それを断熱リノベによって、最低でも現在の省エネ基準レベル、できればそれ以上の性能を確保できるようにしようということです。
高断熱住宅は、居住者の健康に良い
断熱性能の低い家が居住者の健康に良くないことは、今までもご説明してきています。
まず、ヒートショックリスクです。家の中の室温差により、脳や心肺機能に負担がかかることを言いますが、消費者庁の発表によると、このヒートショックで、年間19,000人もの方が亡くなっています。また、命は取り留めても、その何倍もの方が半身不随等により、健康寿命を縮めています。我が国は長寿国ではありますが、決して健康寿命はそれほど長い国ではないんです。つまり、人生の最後の時期を寝たきり等で過ごしている期間がとても長い国なんですね。その理由の一つが、住まいの性能の低さなんです。
たとえ比較的若くして住宅を購入する方にとっても、そこで長い期間住む可能性があるのであれば、将来のヒートショックリスクは、十分に考慮するべきです。
つまり、中古住宅を購入する際は、そのリスクを十分に考えて、断熱リノベを行い、家の中の室温差を極力少なくするべきなんです。
結露は、アレルゲンの発生になりうる
また、断熱性能が低い家は、どうしても結露が生じます。ちなみに我が国の住まいでは、結露が生じるのが当たり前ですが、欧州では結露が起きると施工者は責任を問われます。つまり、結露が起きない断熱性能が要求されているんです。それくらい、住まいに要求されている性能レベルが日本と他の先進国とでは違うんですね。日本では、そのことを知っている方が極めて少なく、日本の住宅の性能はとても優れていると勘違いしている方が多いことも大きな問題の一つだと思っています。
さて、それで、結露が起きると、そこにカビが生えます。カビはダニの餌になるため、カビ・ダニが発生し、それがアレルゲンとなって、喘息やアトピー等を引き起こしているんです。
住宅の断熱性能を高めると、喘息やアレルギー等の症状が出にくくなることも近畿大学建築学部長の岩前教授等の研究で明らかにされています。
高断熱住宅は、圧倒的に快適だから
住まいの断熱性能を高めると、暮らしがとても快適になります。家中の温度差が少なくなることや、頭と足元の温度差がなくなるので、冬に足元が寒いということもなくなります。
また、室内の壁の温度が外気温の影響を受けにくくなるので、輻射熱の影響がとても少なくなります。これについては、別な機会に詳しく説明しようと思いますが、壁からの輻射熱の影響が少なくなると、穏やかな冷暖房の設定温度でも快適に過ごせるようになります。
詳しくは別の機会に譲りますが、断熱性能が高い住まいでの暮らしは、クオリティ・オブ・ライフ(quality of life)が間違いなく高まります。つまり、住まいの性能で、人生の質が変わるんです。
断熱リノベを後から行うのは大変だから
家を新築した方々の2大不満項目(建てた後に後悔している項目)は、温熱環境(=気密・断熱性能)と省エネ性能なのだそうです。でも、後から性能不足に気づいても、断熱リノベを追加で行うのは大ごとで、費用もかなり掛かります。
ユニットバスやキッチンのリフォームに比べると、断熱リノベは、かなり大変です。ですから、後悔しない住まいづくりのためには、最初の段階では、設備系にこだわるよりも、断熱や気密性能にかかる基本性能の向上に、優先的にお金をかけるべきなのです。
高断熱住宅は経済的にも得だから
高断熱住宅は、冬の暖房や夏の冷房に必要な光熱費が大幅に安くなります。日本では、クルマは燃費性能で選ぶのが一般的なのに、住まいに関しては、「住まいの燃費性能」という概念が普及していません。
EU加盟国では、住宅の燃費性能を表示する制度を国ごとに作ることが義務付けられていて、不動産広告にも、その住まいの燃費性能が表示されているのが一般的です。消費者の方々も燃費性能を見ながら住まい選びをしています。
住まい選びをする際は、初期コストだけではなく、ランニングコストを意識することが大切なんですよね。その視点を持つと、住まい選びの基準が全く変わると思います。
そして、例えば、中古の戸建住宅でも、断熱・気密性能にきちんとこだわれば、6畳用のエアコン1台で家中の冷暖房を賄うことが可能な性能を確保することも可能です。そうすると、通常の家では各部屋にエアコンがあるのが当たり前になっていますが、1台のエアコンだけの設置で済ますこともできます。
エアコンは、通常、15年くらいで更新時期を迎えますが、その際に各部屋のエアコンをすべて買い替えるのと、1台だけ買い替えるので、どちらが経済的なのかは、計算するまでもないですよね。
高断熱住宅では、家事が楽になる!
高断熱住宅では、家事がとても楽になります。一般的には、高気密・高断熱住宅には、ご主人の方が反応するケースの方が多いように感じます。でも、実際の暮らしでは、奥様の方が高気密・高断熱住宅のメリットをより享受するように思います。
もちろん、家事は奥様の仕事という時代ではなくなりつつあるかもしれませんが、そうは言っても、どうしても奥様の方に負担がかかります。
なぜ、家事が楽になるのかは、色々ありますが、例えば、冬の朝、暖房をつけていなくて室温がさほど低下しないので、すっと起きられてパジャマのままで家事に取り掛かれるということ。また、冬にキッチンの換気扇をまわしても寒くないことなどがあります。
つまり断熱性能が高いということは外気温を室内に直接受けないため、掃除なども楽になる傾向があるようです。
防災対策にもなる
近年、大きな災害が増えてきています。災害によって、電気・ガス・水道等のインフラが止まってしまう被害も増えています。エネルギーの供給が止まると、特に冬の暖房ができなくなると、大変ですよね。でも、高気密・高断熱住宅の場合、暖房を止めても、長時間にわたり、室温が一定以下には下がりません。つまり、最低限の生活ができる環境が確保できるんです。
もちろん、これに太陽光発電や蓄電池なども導入して、エネルギーの自立ができるとなお安心ですが、少なくとも、十分な断熱性能を確保して、最低限の室温が維持できる性能に住んでいるということの安心感は大きいと思います。
地球温暖化対策にもなる
我が国では、地球温暖化対策の中でも、家庭部門の省エネ・省CO2が大きな課題になっています。高断熱住宅にすると、普段意識せずに快適に暮らしながらも、光熱費を大幅に削減し、地球温暖化対策にも貢献できるんです。
ぜひ、高断熱住宅をご検討くださいね。わからない事があればリエントリエのスタッフまでお気軽にお問合せ下さい。