村田 あやこ
お散歩する人/記事を書いた人
村田 あやこ / Murata Ayako
ライター
お散歩や路上園芸などのテーマを中心に、インタビュー記事やコラムを執筆。著書に『た のしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。「散歩の達人」等で連載中。お散歩ユニットSABOTENSとしても活動。
藤田 泰実
お散歩する人/イラストを描いた人
藤田 泰実 / Fujita Yoshimi
落ちもん写真収集家
グラフィックデザイナー/イラストレーター/落ちもん写真収集家。茨城生まれ、埼玉育 育ち。多摩美術大学造形表現学部卒。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍しながら、路上に落ちているものから人間の背景や余韻、人間味を感じ取り、そこから妄想してタイトルをつけストーリーを作り出す「落ちもん写真収集家」として活動。落とし物は人間ドラマという発想が注目され、テレビやラジオなどにも出演。
細野 由季恵
見守り人/撮影・編集した人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

#09 逗子編

まちのミカタ9回目。「知らないまち」を歩くこの企画ですが、今回の舞台は、SABOTENS・村田さんの暮らすまち・神奈川県逗子市です。桜満開の3月末。花見をしながら浜辺をのんびり散歩でもしようと思ったところ、よっちゃんことSABOTENS藤田さんから着信。なんと飼い猫のミーちゃんが窓から脱走してまだ戻ってこないとのこと。

そのため、今回はSABOTENS村田と見守り役細野の二人でお届けします。みーちゃん、果たして無事に戻ってきてくれるのか……?

普段のまちを地味〜に案内

車で逗子へやってきた見守り役・細野さんと落ち合い、お昼を食べてお散歩スタート。
この日は3月末の週末。京急・逗子葉山駅すぐ近くを流れる「田越川(たごえがわ)」沿いでは桜が咲き誇っていました。この川沿いの桜並木、「逗子景勝十選」にも選ばれるほど、逗子ではちょっとした名所となっています。

▷逗子景観十選にも指定されている、田越川沿いの桜

細野:めちゃくちゃいいな〜、桜!

村田:いいよね〜。

▷村田「きれい〜」

村田:この川沿いははみだす緑スポットでもあって。護岸から植物がもしゃもしゃとはみ出てるんだよ。

細野:本当だ!

▷護岸の穴からはみだす緑

▷こちらも護岸の穴から生えた木

村田:川のすぐそばにあるこの木は、心のシンボルツリー。塀と駐車場のわずかなスキマからすごい姿勢で生えていて。根元をもり立てるようにわしゃわしゃ茂った植物もいいよね。

▷村田・心のシンボルツリー

細野:すごい! こういう身近な場所の植物も写真に撮るの?

村田:普段色んなまちの写真を撮っているくせに、近所だと気が引けて。あまりバシャバシャ写真は撮らないかな。

細野:いつも歩いている道だと、いつでも見られると思っちゃうしね。心なしか都内よりも植物が元気な気が。

村田:そうそう、この赤い橋の脇も「はみだせ緑」スポットで。芙蓉(フヨウ)がすごい姿勢で生えてるんだよ。夏にはピンクの花が咲いて、ものすごく綺麗!

細野:ほんとだ、すごい!

▷夏の様子。掲示板を囲むようにピンクの花が開花!

そして海へ

普段暮らすまちをこうやって人と歩くのは新鮮で、どこかソワソワします。「ここはスーパーに行く時にいつも通る道で……」「ここはいつも缶とペットボトルを捨てるゴミ捨て場……」と、信じられないほど地味ぃ〜なまち案内を続けます。薄手の上着で十分なくらいの陽気。路上の緑の芽吹き具合からも、春を感じます。

▷舗装のスキマで開花するスミレ。春です

細野:わ、あそこ何?

村田:欅の木が立派だよね! あそこは平清盛のひ孫にあたる「六代御前」のお墓っていわれている場所だよ。

細野:トトロのいる木みたい!

村田:ちょっと行ってみようか。

▷トトロがいそうな「六代御前の墓伝説地」(逗子市指定史跡)

▷上に登ると風が気持ちよく、逗子のまちが見渡せます

「六代御前の墓」から徒歩5分ほどで、逗子の海。「海沿いは上半身裸で自転車を漕いでいるおじさんが多い」「海沿いに暮らす人は肌が健康的でロングヘア」など、とりとめもない話をしながら歩いていたら、海にたどり着きました。

▷真ん中に小さく見えるのが江ノ島

村田:海だ―! あれが江ノ島。薄〜く富士山も見えるね。

細野:こりゃあいい。海のアクティビティも気持ちいいだろうな〜。こういうのが好きな人だったらたまらなくいいだろうね。

村田:前に茅ヶ崎に住んでいた時も、朝サーフィンをしてから都内まで出勤してる人がいたな! 朝一分でも長く寝ていたい私からすると、仕事の前に運動するバイタリティが信じられない……。

▷スタンドアップパドルを楽しむ人たち

▷記念撮影してもらいました

みーちゃんが帰ってきた!

ゆるゆるとお散歩した後は村田邸へ。実はこの日、もう一つイベントが。SABOTENSが毎回参加しているイベント「マニアフェスタ※」に合わせて、生配信を行ったのでした。よっちゃんこと藤田さんと、オンライン上で再会しました。

※マニアフェスタとは……合同会社 別視点(べつしてん)さんが開催する多種多様なジャンルのマニアや研究者、専門店が出展する展示即売会。「落ちもんマニア」「路上園芸マニア」としてSABOTENSも過去に何度も出展し、ふたりにとってもご縁の深い展示即売会です。

▷オンライン上で再会

細野村田:よっちゃ〜ん!

藤田:すみません、今日は合流できず。(飼い猫の)みーちゃんが今、脱走しておりまして。むーちゃん(もう一匹の猫)が縁側の窓をスッと開けたところから、サッと出ていった。最近、人間が自粛生活で家にいるから、猫がひとりでいる時間が減って鬱病になっているっていう話を聞いたことがあって。みーちゃんも、私にイライラして脱走したのかもしれない……。

村田:ひとりの時間がほしくて路上に行ったのか……近くにいるといいけど。

みーちゃんの安否を心配しながら配信を開始して9分ほど経った頃。

藤田:……あ!!! 帰ってきた、みーちゃん!!!

▷みーちゃんが帰ってきた瞬間

なんと、みーちゃんが突然帰ってきました。あーよかった!!!

細野村田:よかったー!

藤田:ほんと、心ここにあらずだった。

▷みーちゃん「ミャー」

いやー、何事もなく無事に帰ってきてよかったです、みーちゃん。生配信後半では、これまでの「まちのミカタ」取材の裏話を写真とともに振り返ったり、これから行ってみたい場所を話したりしました。動画もぜひ、ご覧ください!

これからもよろしくおねがいします

配信が終わった後は、見守り役・細野さんを見送りがてらお散歩。

▷亀が祀られた亀岡八幡宮。神社のある場所が亀の甲羅に似たなだらかな丘だったことが、名前の由来だそう

▷神社のすぐ裏にある、果物屋や八百屋が並ぶ風情ある路地

逗子駅ほど近くの神社・亀岡八幡宮や、そのすぐ裏の路地を歩きながら、話はSABOTENSが知り合った頃の話へ。

細野:あー、今日は楽しかった。そういえば、よっちゃんと知り合ったきっかけは何だったっけ?

村田:5年くらい前に、共通の友だちが紹介してくれたんだよ。

細野:最初はお互い、どんなふうに紹介されたの?

村田:お互いそれぞれ「変わったやつおるで」って紹介してもらって(笑)。紹介してくれた友だちもミュージシャンで、面白い人なんだけどね。

細野:第一印象はどうだった?

村田:最初は「可愛いな〜」って。あんなに可愛くて、しかもデザイナーとしても活躍していて、自分とは違う世界の人に見えるのに不思議と話が合うのはなんでだろう、と思ったよ(笑)。

細野:最初はどこに行ったの?

村田:はじめて一緒にお散歩したのは東向島。「プランツ・ウォーク」っていう、まちの植物を見ながらお散歩する企画を、私なんかよりもはるか前からやっていた方たちがいて、そのメンバーと一緒に歩いて。私とよっちゃんをつなげてくれた友人も、その企画に携わってた一人なんだよ。

その時は、まさかこんなふうに長く一緒に活動できるなんて思ってもみなかったな。いやー、感慨深い。

この「まちのミカタ」シリーズも次でいよいよ第10回。次は山? まち? はたまたサイコロの旅?
毎回お散歩のたびに何かが起こる珍道中、これからもゆるくお付き合いいただければ幸いです!

本日の一コマ漫画

イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)

まちのミカタ 心に残る逗子の風景

村田のミカタ:パイプの穴からはみだす緑。かれこれ数年見守っていますが、ずっとこの状態。

お知らせ 

SABOTENSちゃんねる」では、過去の「まちのミカタ」の取材中に撮影した動画を少しずつアップしています。ぜひお暇な時にでもご覧ください!

▷最新の「まちのミカタ(三鷹編)」

●取材/SABOTENS・細野 由季恵
●執筆/村田 あやこ
●編集/細野 由季恵

SABOTENS
路上観察ユニット

SABOTENS / SABOTENS

2016年結成。「落ちもん写真収集家」の藤田 泰実(よっちゃん)と、「路上園芸学会」の村田 あやこ(あやちゃん)による路上観察ユニット。室外機やアロエ、選挙ポスターなど、組み合わせると路上あるあるな風景が作れる「家ンゲイはんこ」をはじめ、路上をテーマにしたグッズ制作や国内外での作品展を行う。会」の村田 あやこ(あやちゃん)による路上観察ユニット。室外機やアロエ、選挙ポスターなど、組み合わせると路上あるあるな風景が作れる「家ンゲイはんこ」をはじめ、路上をテーマにしたグッズ制作や国内外での作品展を行う。

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