村田 あやこ
お散歩する人/記事を書いた人
村田 あやこ / Murata Ayako
ライター
お散歩や路上園芸などのテーマを中心に、インタビュー記事やコラムを執筆。著書に『た のしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。「散歩の達人」等で連載中。お散歩ユニットSABOTENSとしても活動。
藤田 泰実
お散歩する人/イラストを描いた人
藤田 泰実 / Fujita Yoshimi
落ちもん写真収集家
グラフィックデザイナー/イラストレーター/落ちもん写真収集家。茨城生まれ、埼玉育 育ち。多摩美術大学造形表現学部卒。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍しながら、路上に落ちているものから人間の背景や余韻、人間味を感じ取り、そこから妄想してタイトルをつけストーリーを作り出す「落ちもん写真収集家」として活動。落とし物は人間ドラマという発想が注目され、テレビやラジオなどにも出演。
細野 由季恵
編集した人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

#10 中野編

まちのミカタ、10回目となる今回訪れるのは、JR中央線沿いのまち・中野です。マニアックな専門店が軒を連ねる中野ブロードウェイがあり「サブカルのまち」とも呼ばれる中野。嗅覚だけで歩いてみたら、植物を愛でる暮らしの息づくまちでした。

昼間の飲み屋街を歩く

▷レッツゴー!

村田:よっちゃんとゆっくりお散歩するのは久しぶりだね。

藤田:久しぶりだよね。あっという間に6月になっちゃって。

村田:ほんと、あっという間。中野はよっちゃんのおばあちゃんが住んでいるんだよね?

藤田:そう。小さい頃からお世話になっているまちで。あやちゃんは中野は?

村田:何度か飲みにきたことはあるな。駅周辺に飲み屋さんがいっぱいあって楽しいよね。

JR中野駅北口を出て、飲食店が軒を連ねる細い道を探検気分で進んでいきます。
人の少ない昼間の飲み屋街、歩きはじめると色々と気になるものを発見しました。

▷村田「これ、すごい。お店のオリジナルでつくったのかな」

▷藤田「かわいい猫。キャバクラの名刺かな?」村田「猫カフェの猫の名刺だったりして」

▷肌色の石が落ちていました

▷酒樽を鉢にした園芸

村田:中野いいなあ、住んだら楽しそう。お酒が外で飲めるようになったら、夜にまた来てみたいな。

藤田:ビールが美味しい季節だもんね。普段ならお散歩の途中でビール飲んでるよね。

村田:いやー、ほんと。ビールは外で飲むのが一番美味しいよね。

蒸し暑かったこの日。いい雰囲気の飲み屋街を歩いていると、キンキンに冷えた生ビールが恋しくなります。
すぐそばには、中野駅前から続く大きなアーケード商店街「サンモール商店街」。その突き当りに「中野ブロードウェイ」があります。

▷中野ブロードウェイ(東京都中野区中野5-52)

藤田:中野ブロードウェイは小さい頃から来ていたな。ブロードウェイに美味しい漬物屋さんがあって、そこのキュウリの古漬けが好きで。

村田:え、ブロードウェイに漬物屋さんが入ってるんだね。

藤田:そうそう。小さい頃はそれをよく買いに来てたな。お菓子じゃなくて、古漬け(笑)。

村田:味覚が渋いね。

藤田:切らないで一本食べちゃってたな。好きなんだよね、漬物が。

ブロードウェイまで、漫画でもお菓子でもなく「漬物」を買いに来ていたというSABOTENSよっちゃん。
それを体現するかのように、二人の足はブロードウェイの正面ではなく、自然と脇道へ向かいます。

▷中野ブロードウェイの裏側を鑑賞

藤田:わ、ここ見上げるとすごいよ。ブロードウェイの建物から植物がはみ出してる。

村田:電線スポットでもあり、室外機マニアも大喜びのスポット。ブロードウェイの裏側はこんな雰囲気なんだ。

▷自転車置き場の脇でひっそり育てられる(?)鉢植え

村田:あ、中野の園芸スポット発見しました。

藤田:ちょっとおしゃれ。

村田:植えられた植物と野良とが混合してる。鉢植えのオリーブが、もはや雑草状態。

▷壁のはじっこに根ざしたシダ

藤田:壁からはみだす緑も発見!

村田:シダだ。いい隙間があったのかな。

植物を愛でるまち

ブロードウェイのある商店街エリアをはずれると、閑静な住宅街が広がっています。
住宅街は路上園芸の宝庫でした。

▷ベゴニアがお揃いのプランターに植えられ、ずらり!

▷壁のブロックからモシャっ

▷隙間から生えて大切にされているナンテン

▷紫陽花が満開

村田:植物を愛でているお宅が多くていいな。木が大きいおうちも多い。園芸のまちって感じがするな。

藤田:一駅隣の高円寺とはまた違った雰囲気だね。より生活感があって。

しばらく歩いていたら、立派なサボテンのあるおうちを発見しました。

▷立派なサボテン!

先端にはたくさん蕾がついています。おうちの方に伺ったところ、なんと30、40年くらい育てているサボテンだとか。夏になると10センチ以上にもなる白い花を咲かせるそうです。開花したら、またぜひ見に来てみたいものです。

新井薬師で疲れた心と体を癒やす

閑静な住宅街をしばらく進むと、新井薬師(梅照院)が見えてきました。1586年に創建された新井薬師は、江戸幕府2代将軍徳川秀忠の五女が眼病治癒を願ったところ回復したことから「目の神様」としても信仰を集めてきました。最近、目も体も精神も酷使しているSABOTENS。新井薬師にお参りすることにしました。

▷新井山梅照院(東京都中野区新井5-3-5)

藤田:新井薬師でお清めよう。久しぶりだな。

村田:桜の木かな。枝が立派!

▷境内を力強く横切る見事な木

村田:久しぶりにおみくじを引こう。今年はじめてだ。

藤田:私は友だちに会えない分、神社の神様に会いに行ってるから、おみくじ引きまくり。

村田:……やった、大吉だ!

藤田:私は吉! 吉と大吉じゃ最強じゃん。「このおみくじに会う人は、驚きごとあるけれど、慌てず謹んでいれば幸いとなり」だって。軽はずみなことはしてはいけないってことだね。

▷おみくじを結ぶSABOTENSよっちゃん

新井薬師の裏手には、聖徳太子の像も建っていました。

▷聖徳太子の像

村田:聖徳太子の16歳の姿だって。本当にこんな顔してたのかな。

藤田:実際に会ったら銅像とか肖像と全然違う顔の人もいるんだろうね。

村田:イケメンに描かれてたけど、実はその時の権力を使ってイケメンに描かせていただけだったり。

藤田:反対に、銅像では大したことないような人がイケメンだったりね。

人の暮らしがあるまちはSABOTENS的・お宝満載

不謹慎な会話をしながら(聖徳太子さん、すみません)、新井薬師を後に。静かな住宅街が広がる新井薬師周辺でも、人の暮らしの隙間でたくましく自生する植物の姿をそこかしこで発見。

▷隙間からはみだして、開花

▷ブロックの周りをにぎやかすシダ植物やカタバミ

川沿いでは、桜の木が柵をくぐり抜けて枝を伸ばしていました。

▷柵をくぐり抜ける木

藤田:この木、すごいね

村田:柵の隙間から川に向かってせり出してる! 川のほうが明るいから、光に向かってくぐり抜けたのかな。

藤田:面白い。

▷緑に覆われた電柱。お隣の建物ももじゃもじゃでした。

村田:この電柱は上のほうまでもじゃもじゃ

藤田:ライトだけ出てるね。

一見なんてことなさそうな、でも確かに暮らしが重ねられてきたであろうまちこそ、SABOTENSにとってはお宝満載です。

▷藤田「『シロタエギクさしあげます』だって!」村田「いいね」

▷プランターを護る狸

▷「信州」と書かれた年季の入った鉢。元は何のための容器?

▷村田「隙間からホタルブクロが生えてる!」藤田「抜かないで取っておいてるんだね」

道のあちこちに目を走らせながら歩いていくと、沼袋の氷川神社が見えてきました。七福神もお奉りされている氷川神社。ご利益にあやかりたいSABOTENSは、再びお参りすることにしました。

▷沼袋氷川神社(東京都中野区沼袋1-31-4)

▷平成21年に境内に奉斎されたという中野七福神

藤田:七福神みんないるね!

村田:勢揃いだ。

藤田:商売繁盛……

村田:無病息災……

藤田村田:よろしくおねがいします!

お参りに熱を込めすぎたせいか、すっかりお腹が減ったSABOTENS。沼袋の駅周辺を歩いていたところ、雰囲気の良いイタリアンを発見。吸い込まれるように入店しました。

▷イタリア料理店「Trattoria La panda gialla」(東京都中野区沼袋1-34-​2 イワタビル1F)

ぷりぷりした歯ごたえの甲イカを使ったパスタに、ふかふかのパン。ふたりとも夢中で平らげ、すっかり体力が回復しました。

▷甲イカとチンゲン菜のペペロンチーノ。甲イカ、はじめて食べました。

村田:ご飯食べて復活したね。お店の方もとても温かくて。

藤田:ほんとうに。回復した〜。

元気を取り戻した二人は、再びスタート地点の中野駅を目指します。

▷不動産を包み込むツタが隣の松屋にも進出

▷隙間から生えるタマサンゴ

藤田:中野、園芸はめちゃくちゃ多いね。

村田:植物の勢いも感じた。

藤田:綺麗に手入れしているおうちと、植物にまかせているおうちと。

村田:色々あって楽しいね。

▷パイロンのてっぺんに造花のバラが一輪

藤田:見て、バラ。

村田:かわいい!

藤田:心遣いって感じだね。

村田:単に「この先、行き止まり」っていうより粋だね。

▷ガードレールに吸い付く木

村田:この木はガードレールにちょっと吸い付いてるよ。かわいい。

▷根元はカタバミの住処になっていました

村田:中野に住むなら、マンションか一戸建て、どっちがいい?

藤田:古い一戸建てをリノベーションして住みたいな。

村田:いいね。今日もいい雰囲気の一戸建てがたくさんあったな。駅から少し離れるだけで静かだし、神社もお寺もあって住心地が良さそう。

本日の一コマ漫画

イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)

まちのミカタ 心に残る逗子の風景

村田のミカタ:「人生は色々」と書かれた看板の上で佇む鳩

藤田のミカタ:不法投棄であろう座椅子は公園のベンチのふりをする

お知らせ 

SABOTENSちゃんねる」では、過去の「まちのミカタ」の取材中に撮影した動画を少しずつアップしています。ぜひお暇な時にでもご覧ください!

▷最新の「まちのミカタ(三鷹編)」

●取材/SABOTENS
●執筆/村田 あやこ
●編集/細野 由季恵

SABOTENS
路上観察ユニット

SABOTENS / SABOTENS

2016年結成。「落ちもん写真収集家」の藤田 泰実(よっちゃん)と、「路上園芸学会」の村田 あやこ(あやちゃん)による路上観察ユニット。室外機やアロエ、選挙ポスターなど、組み合わせると路上あるあるな風景が作れる「家ンゲイはんこ」をはじめ、路上をテーマにしたグッズ制作や国内外での作品展を行う。会」の村田 あやこ(あやちゃん)による路上観察ユニット。室外機やアロエ、選挙ポスターなど、組み合わせると路上あるあるな風景が作れる「家ンゲイはんこ」をはじめ、路上をテーマにしたグッズ制作や国内外での作品展を行う。

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