村田 あやこ
お散歩する人/記事を書いた人
村田 あやこ / Murata Ayako
ライター
お散歩や路上園芸などのテーマを中心に、インタビュー記事やコラムを執筆。著書に『た のしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。「散歩の達人」等で連載中。お散歩ユニットSABOTENSとしても活動。
藤田 泰実
お散歩する人/イラストを描いた人
藤田 泰実 / Fujita Yoshimi
落ちもん写真収集家
グラフィックデザイナー/イラストレーター/落ちもん写真収集家。茨城生まれ、埼玉育 育ち。多摩美術大学造形表現学部卒。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍しながら、路上に落ちているものから人間の背景や余韻、人間味を感じ取り、そこから妄想してタイトルをつけストーリーを作り出す「落ちもん写真収集家」として活動。落とし物は人間ドラマという発想が注目され、テレビやラジオなどにも出演。
細野 由季恵
見守り人/撮影・編集した人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

#11 西川口

まちのミカタはいよいよ11回目。今回の舞台は、埼玉の西川口です。駅前に中華料理や韓国料理のお店が軒を連ねる西川口で、ほんのり異国情緒を味わいながらお散歩しました。

中国に韓国にタイ。
異国情緒あふれる駅前風景

▷ポーズが決まっているよっちゃん。レッツゴー!

村田:よっちゃん、西川口には来たことある?

藤田:前に「落ちもん写真収集家」として出演したTV番組のロケで、一回来たことあるよ。その番組がご縁で「エガちゃんねる」のデザインを担当することになって。落ちもんからこんなに広がるのかっていう、期待の地です。

村田:よっちゃんの記念すべき思い出の地なんだね。

なんと、SABOTENSよっちゃんと縁の深いまちだった西川口。駅前には色んな国の居酒屋やレストランが軒を連ね、看板も中国語だったりと、異国情緒に溢れています。

▷韓国居酒屋にタピオカ。入ってみたいお店が軒を連ねています。

▷自動販売機や隣の看板が中国語

藤田:駅前は、中華料理に韓国料理に、ムエタイジム……

村田:エスニックな雰囲気だね。日本語併記もないくらい。自動販売機にも中国語で「可口可乐」(コカ・コーラ)って書いてある!

▷食べ物を見ては「美味しそう」を連発するSABOTENS。

村田:あのお店の前では、何かが回ってるよ。北京ダックかな?

藤田:すごーい、美味しそうだね。なかなか見ないよね、こういうの。

はみだす緑、そして石……プチ海外旅行気分で駅周辺をぶらついていると、繁華街の雑居ビルの隙間から、植物がはみだしてました。自然と繁茂している雰囲気がたまりません。

▷駅前のビルで第一「はみだせ緑」発見。ツタがもじゃもじゃです。

▷電柱の隙間からアカメガシワ

▷フェンスの下に苔大陸出現

村田:ここもすごい! 自然と繁茂してる雰囲気がいいな〜。

路上の一角で、なぜか積み上げられた石もよく見かけました。

▷建物と建物の間に、石

藤田:石がお供えされてるよ。

村田:通り抜け禁止用かな。もしくは道祖神みたいにこの通路を守ってる?

▷マンションの植え込みにも、石

藤田:あ、ここにも石があるよ。誰が置いてるんだろう。

村田:植え込みに石がゴロゴロあるね。西川口で、石を祀る宗教が静かに発生してる……?

味のある看板キャラもちらほら。

▷藤田「出前迅速」村田「かわいい」

▷パソコン教室に通う人。パソコンを打つ指がプルプル震えている。

藤田:見て、パソコン教室の看板。

村田:味のあるキャラだね。「初めてのパソコン」っていう本を持ってる。

藤田:初めてだと「パソコンを立ち上げる」とか言われてもわからないだろうね。

村田:たしかに。電源ボタンの入れ方もわからないよね。

「Take control」 vs 「Out of control」

しばらく歩いていくと目に止まったのが、鮮やかな自動販売機。なんと100円です。安さに惹かれ、吸い寄せられるように飲み物を買いました。

▷嬉しい100円自販機。ちなみに西川口ではここ以外でも、100円自販機をたくさん発見しました。

藤田:あの自販機、色が鮮やかで目立つね。

村田:ペットボトルも100円だって、安いね!

藤田:他であんまり見ない飲み物が売ってるね。あえて見たことないのを買ってみよう。私は「ミラクルボディV」。

村田:私は甘酒にしてみよう。

雨上がりで蒸し暑かったこの日、冷たくて甘い飲み物で元気をチャージしました。すぐ近くに、またもや気になる看板が……。

▷「TAKE CONTROL」

藤田:見て、あのお店の看板に「Take control」って書いてあるよ。

村田:SABOTENSのモットー「Out of control(※)」の真逆だね。

※Out of control……「制御不能」の意味。街中に落ちているものや、鉢からはみだした植物といった「路上のはみだしもん」を愛でるSABOTENSの活動モットーでもある。本来の姿や常識から逸脱する「Out of control」なものは、意外な美しさやおもしろみにあふれている。

▷花壇からはみだして自転車に近づくツルニチニチソウ

村田:こっちでは植物が「Out of control」状態だね。ツツジの植え込みにツルニチニチソウが覆いかぶさって逃げ出してる。

藤田:自転車がそのうち飲み込まれちゃいそう。

ジャッキーチェンが飛んで渡りそうな川に、
フジがうねる遊歩道

嗅覚の向くままにぶらぶらと歩いていくと、川が現れました。

▷住宅街の間を流れる「緑川」

藤田:あ、川があるよ。

村田:上の橋みたいなやつはなんだろう。

藤田:こういうのを見ると、ジャッキーチェンならどうやって渡るか考えちゃうな。

村田:手前はまだよくても、真ん中あたりに立つと怖そう。ジャッキーなら軽々と飛び越えそうだね。

▷こういうのを見ると、ついジャッキーチェンを妄想してしまうSABOTENS。亀有で大きな水車をみたときも同じようなことを話していました

▷水の軌道に沿うようにはみだす植物

▷護岸のほとりに集まって休むカモ

川に沿って歩いていたところ、川の支流の上が道になった「暗渠」に遭遇! せっかくなので、暗渠上の遊歩道を歩いてみることにしました。

▷川の支流が蓋をされ「暗渠」に

藤田:わ、この道はどういうこと?

村田:川の上が緑道になった「暗渠」だね。上を歩いてみようか。

藤田:どうしよう、わたし最近珍事件(※)を引き寄せてるから、どっちかが「ズコー」って川の中に落ちちゃったらどうしよう……。

村田:(笑)。

※最近、飼い猫2匹に引っかかれて、全身傷だらけになってしまったよっちゃん。

▷暗渠上の「南町桜並木遊歩道」。約1kmの緑豊かな遊歩道です。

▷遊歩道上には立派な藤棚も。大蛇のようにうねって柵からこぼれ落ちそう!

村田:すごい、川の上を歩いている感じがする。藤棚にいいベンチも。

藤田:フジの花、好きなんだ。「藤田」だし。

村田:まさに、よっちゃんにちなんだ植物だね。

藤田:家紋もフジ。お父さんもお母さんも、旧姓が「藤田」。おばあちゃんは「ふじたふじこ」で「ふじたふじ」っていうおばさんもいたよ。

村田:フジ祭りだ!

藤田:私に「よしみ」じゃなくて「ふじみ」っていう名前が付けられてたら、殺されても死ななそうだから、恐ろしいイジメにあってたかも……。

村田:不死身のふじみ……(笑)。

▷フジの幹に乗っかった靴下

藤田:あ、今日の散歩で、初「落ちもん」発見! 靴下だ!

村田:しかも、よっちゃんにゆかりのあるフジの木の幹の上!

藤田:この靴下、まさかフジに絡まって、この高さまで持ち上げられたんじゃないよね?

村田:フジと一緒に靴下も(笑)!?

西川口の「はみだす緑」スポット

暗渠を後にし、ブラブラと歩いていたところ、公園の一角に鳥居が! 公園と一緒になった神社のようです。お参りしてみることにしました。

▷三和稲荷神社・三和稲荷公園​​

村田:あ、神社だよ! お参りしようか。

藤田:嬉しい! 神社って引き合わせられるね。おじゃましま~す。気持ちのいい神社だね。

村田:大きくはないけど木がゆったり生えてて、いい場所だね。地元の中学生とか高校生は、この公園のベンチで好きな子と語らったりするのかな。

後日調べたところ、もともとこの神社は、地主が持っていた稲荷社で、農耕の神として信仰されていたとのこと。住宅ができてからは「三和稲荷神社」としてまちの守り神となり、戦時中は徴兵された多くの人々の壮行会場になったりと、様々な歴史を重ねてきた神社のようです。(参照:蕨市観光協会

▷石のお供えがここにも

藤田:あ、ここにも石!

村田:ひそかな石信仰、ここでも。

藤田:あの二人組、不審人物だっていう合図だったりして(笑)。

石だけでなく、なぜか焼酎ペットボトルもたくさん潜んでいました。

▷アジサイの葉陰に……

▷縛られたソテツの横に……

藤田:神社に焼酎のペットボトルがあるね。

村田:ひっそり公園で飲んでた人がいるのかな。

公園にあった遊具で遊び、三半規管の衰えをしっかり痛感したSABOTENSは、公園を後にしました。

▷あまり見たことのないデザインの公園遊具

しばらく歩いてお腹が空いてきたSABOTENS。再び西川口駅前へ戻り、駅周辺で中華料理を食べることにしました。駅へ向かう道中で目にしたものが……

▷街路樹のグレーチングの下に潜り込む根っこ

村田:わ、すごい根っこを見つけてしまいました!

藤田:すばらしい! いい根っこ。

▷なんとアジサイの根っこでした

村田:アジサイだ〜。何気なく鉢をここに置いたら、根を張っちゃったのかな。「水〜〜、水くれ〜〜〜!」って感じ。

藤田:健気だね。

▷タイルが印象的な建物の前で開花するオオケタデ

藤田:あ、もう一個すごいのを見つけた!

村田:すごいー! 何これ。この穴から勝手に生えてきたのかな。よくぞこんなところから。

▷根元をよく見ると、なんと3、4センチほどのひび割れから生えていました

藤田:すばらしいね。

村田:最高。西川口の「はみだす緑」スポットだ。

シメは蘭州ラーメン!

興奮冷めやらぬまま「はみだせ緑」スポットを後にし、少し歩くと再び本日の出発地点である西川口駅付近へ戻ってきました。目移りした結果、お昼は蘭州ラーメン(※)をいただけるお店へ。

※蘭州ラーメン…中国北西部にあるの甘粛省の省都・蘭州で古くから食べられているラーメン

▷中国料理・天下鮮(埼玉県川口市西川口1丁目2−7)

▷定番の蘭州ラーメン(800円)。麺は8種類の太さから選べます。さっぱりしてスパイスの効いたスープが美味しい!

▷ニラ混ぜ麺(1180円)。もちもちした太麺がボリューム満点!

▷甘辛さがたまらない、豚背骨の中華甘味噌煮。お皿いっぱい入って880円。

店内に漂う独特の香辛料の香りに、ちょっとした旅行気分を味わえます。ひっきりなしにお客さんが訪れるので、地元の人気店のよう。外出もままならず自炊が続く日々の中、家でなかなかつくれない料理こそ、外食の醍醐味。今日の散歩を振り返りつつ、いつものようにとりとめない話をして、お散歩お開きとなりました。

村田:あ、最後になっちゃったけど、川口だったら一軒家かマンションどっちがいい?

藤田:私はマンションがいいな。今日のお散歩中も、かわいいマンション見たしね。

村田:私もマンションかな。一階が中華料理屋さんだったら楽しそう。

本日の一コマ漫画

イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)

まちのミカタ 心に残る西川口の風景

村田のミカタ「これ、どうやって使うの……?」としばらく試行錯誤した公園遊具

藤田のミカタ:路上園芸を守っている三羽マットレス

お知らせ 

SABOTENSちゃんねる」では、過去の「まちのミカタ」の取材中に撮影した動画を少しずつアップしています。ぜひお暇な時にでもご覧ください!

▷最新の「まちのミカタ(蔵前編)」

●取材/SABOTENS
●執筆/村田 あやこ
●編集/細野 由季恵

SABOTENS
路上観察ユニット

SABOTENS / SABOTENS

2016年結成。「落ちもん写真収集家」の藤田 泰実(よっちゃん)と、「路上園芸学会」の村田 あやこ(あやちゃん)による路上観察ユニット。室外機やアロエ、選挙ポスターなど、組み合わせると路上あるあるな風景が作れる「家ンゲイはんこ」をはじめ、路上をテーマにしたグッズ制作や国内外での作品展を行う。会」の村田 あやこ(あやちゃん)による路上観察ユニット。室外機やアロエ、選挙ポスターなど、組み合わせると路上あるあるな風景が作れる「家ンゲイはんこ」をはじめ、路上をテーマにしたグッズ制作や国内外での作品展を行う。

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