村田 あやこ
あやちゃん/記事を書いた人
村田 あやこ / Murata Ayako
ライター
お散歩や路上園芸などのテーマを中心に、インタビュー記事やコラムを執筆。著書に『た のしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。「散歩の達人」等で連載中。お散歩ユニットSABOTENSとしても活動。
藤田 泰実
よっちゃん/イラストを描いた人
藤田 泰実 / Fujita Yoshimi
落ちもん写真収集家
グラフィックデザイナー/イラストレーター/落ちもん写真収集家。茨城生まれ、埼玉育 育ち。多摩美術大学造形表現学部卒。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍しながら、路上に落ちているものから人間の背景や余韻、人間味を感じ取り、そこから妄想してタイトルをつけストーリーを作り出す「落ちもん写真収集家」として活動。落とし物は人間ドラマという発想が注目され、テレビやラジオなどにも出演。
青木 真咲
ゲスト
青木 真咲 / Masaki Aoki
株式会社Otono代表取締役
大阪府高槻市出身、静岡市在住。前職の転勤で赴任した静岡の「空が青くて広いちょ うどいい」まちの魅力に魅了され、住み着いて8年余り。静岡の人気観光地・三保松原に会社をかまえ、地域の素敵なお店や人を発信しています!
増田 彩香
ゲスト
増田 彩香 / Ayaka Masuda
株式会社Otonoまちの光発掘ディレクター/松葉を食べる人
静岡市清水区出身、静岡農業高校・静岡大学卒。高校生の時から、三保地域で伐採・ 廃棄される松葉を美味しく食べることを考え始めて10年目。松の聖地・三保松原で「松を食べる人」として松オタクライフを楽しんでします! Otonoでは松に限らず、まちの光を発掘すべくシェアスペースの運用・松葉を活用した商品開発を行っています。
細野 由季恵
見守り人/撮影・編集した人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

今回のお散歩は遠征バージョン! 舞台は静岡市清水区三保のまちです。なかでも景勝地として知られる三保松原は、海、松林、そして富士山を一望できる富士山世界文化遺産の構成資産です。海、松林、そして富士山を一望できる、風情ある豊かなまちです。

実は7月末から、三保松原にあるミュージアム「みほしるべ(静岡市清水区三保松原1338-45)」でのポップアップショップを開催中のSABOTENS。期間中は、コラボレーションスペース「Otonoma(静岡市清水区三保1303-3)」でのイベントも同時開催しています。

今回は、このOtonomaを運営する株式会社Otonoの青木 真咲(あおき・まさき)さん、増田 彩香(ますだ・あやか)さんをゲストにお迎えし、三保をお散歩しました。真っ青な海に空、静かな路地の向こうに見える富士山。心穏やかになれるまちでした。

松林を抜けると真っ青な海。海岸からは富士山!

コラボレーションスペース前から出発の記念撮影。ファイティングポーズで気合を入れます!

村田:今日は三保松原をお散歩だ!

藤田:よろしくお願いします!

青木:今日は富士山が見えるらしいので、浜にいってみましょうか。

コラボレーションスペースと三保松原は、目と鼻の先。松の知識が豊富な増田さんにお話を聞きながら、松林のなかを歩き浜へ向かいます。

村田:三保松原といえば、松林。増田さんは、学生時代から松を研究されたり、松の葉を素材にした「松葉飴」や「松葉風呂」などの商品開発もされたりもしていますよね。松に興味を持ったきっかけは?

増田:農業高校に通っていたとき、松の葉の栄養素を研究している先輩がいると聞いたんです。「研究」という響きに憧れたのと、おもしろい人たちだなと思って会いに行ったら、巻き込まれてしまったのがきっかけです(笑)。

村田:そうだったんですね!植物を研究しているとは、さすが農業高校。

藤田:松って、どんな栄養素があるんですか?

増田:カルシウムやビタミンC、カリウムなどが含まれています。緑茶のカテキンと似た抗酸化作用がある成分も含まれているので、お茶のように煎じて飲む方もいらっしゃいますね。

村田:へえ〜! ところで、増田さんのピアスは「松」の葉がモチーフなんですね!かわいいです。

静岡で看板やネオンの事業を展開する企業「アオイネオン」さんがつくるネオンアクセサリー。

増田:左右で形が違うんですよ。

村田:本当だ!細やかなお仕事ですね。

青木:この松林が世界遺産・三保松原の象徴的な場所です。眼の前にあるのが「羽衣の松」(写真中央)といって、枝に天女が羽衣をかけたといわれる羽衣伝説に由来する松です。この松は、羽衣の松の三代目。代々、羽衣をかけやすそうな松が選ばれています。

増田:羽衣の松の中でも、歴代で一番大きな松だそうです。

村田:「樹齢300年」と書かれていますね。すごい。地名に「松原」が入っているくらいだから、昔から松が有名だったんでしょうか。

増田:日本最古の和歌集『万葉集』に三保松原を詠んだ歌が残っているので、当時から松林があったんだろうなと思います。

村田:すごいですね。2000年も前から。外は暑いのに、松林の中は涼しい。

増田:松の保全活動に参加する方も、「暑いのを覚悟したけど涼しかった」といって帰っていかれる方がいます。

松林の向こうに、海が見えてきました。

藤田:わー、海がきれい!

村田:真っ青だ!

青木:心が開きますよね。

村田:オフィスの目と鼻の先でこんな風景を味わえるなんて、うらやましいです。

青木:贅沢なことですよね。

海岸の一角には、絵馬の代わりにさまざまな形の石に願い事が書かれ、お供えされている神社が。

羽車神社(静岡市清水区三保1287)

村田:石がたくさんお供えされていますね。海岸で拾った石が並んでいるんでしょうか。

増田:もともと、はちまきを巻いているような線の入った「はちまき石」に、お願いごとを書く風習があるんです。

村田:はちまき石!地元ではおなじみなんですか。

青木:割と見つかりますよ。はちまきを巻いていることにちなんで、合格祈願をお願いする人が多いですね。

羽車神社の前には、コバルトブルーの海が広がっています。

村田:海だー!

青木:空も海も、最高だな。これで人が幸せになれるんです。

藤田:本当ですね。

細野:みんなで手をつないでジャンプします?

青木:雑誌の女子旅のページとかでありそうなやつですね(笑)。

村田:青木さんや増田さんは、日々どんなときに海岸にいくんでしょうか?

増田:学生時代は夜明け前に目が覚めると、このへんを散歩していました。今それをやってしまうと、夜まで持たないですが(笑)。

青木:夜にドライブがてら、ぼーっとたそがれに来る人も結構いますね。

増田:夜は視覚情報がないから、波の音だけ聞こえていいんですよね。

村田:いいですね。真っ暗だと静かな気持ちになれそうです。

海岸から向こうを見ると、快晴の空の中に富士山のシルエットが綺麗に見えます。

青木:冬のほうが空が澄んでいるし、雪も積もっているので、富士山がくっきり見えやすいんです。夏にこんなにくっきりと見えているのは、珍しいです。SABOTENSパワーでしょうね。

村田:富士山を見たいという執念が伝わったのかも。

藤田:嬉しい。このお散歩のとき、不思議と晴れるよね。

村田:今日も晴れたね。富士山が見えてラッキー!それにしても、あんなに高い山を登る人がいるんだな。

青木:実は静岡の人はあまり登らないんですよ、あれは見るもんだって。静岡の人にとって富士山は、方角を知るための方位磁針の代わりです。

村田:東京でスカイツリーを目印にするようなもんでしょうか。

藤田:風と波で浄化された感じです。これだけ雄大な景色があると、悩みも「まあ、いっか」と思えますね。

青木:広い海を見るとリセットされますよね。毎日水平線が見える中で生きていられると、カリカリした自分がばかみたいに思えてきて。自然って大事ですね。

オリジナル無人販売システムに、狸御殿
お庭を楽しむ暮らしの片鱗

海ですがすがしい気持ちになった一行は、来た道を戻り、住宅地を歩きはじめました。

村田:向こうに富士山が見えますね。富士山に向かっていける道だ!

細野:いいなあ。ここに住みたいなあ。

青木:いいですよ〜、三保松原。気をつけてくださいね、ガチで勧誘しますから(笑)。

村田:新しそうなおうちもちらほらありますけど、他の地域から移住して来られる方もいらっしゃいますか?

青木:土地が安いので、新婚さんが移住してきたりと、新しく引っ越してくる方もいますね。

村田:庭木として松が植えられたおうちも、ちらほらと見かけますね。支柱が当てられて、立派な樹形をした松の庭木もありますね。

増田:松って、支えを頼りにして伸び続けちゃうんですよ。ただ、支えがなくなるとデロンって倒れてしまいます。

藤田:松は、過保護に育てないといけない植物なんですか?

増田:そうかと思えば、海岸の風が強いところも平気なので、よくわからない植物ですね。わがままなのか、そうじゃないのか。

青木:ツンデレですね。

増田:甘やかすと途端に甘えてきて。

藤田:猫みたい。

青木:松は猫だった。

しばらく歩いていると、道沿いに切られたナスが積んでありました。

村田:これは……ナス?

青木:なんでだろう。

増田:病気になっちゃったのかもしれませんね。

細野:食べ切れなかったのかも……食べ切れナス?

村田:あはは。

青木:突然のオヤジギャグ。名言が出ましたね。

村田:あの木陰、いいなあ。

藤田:絵になるね。

増田:柑橘系の実がなっていますね。「この木なんの木」の木に似てますね。

村田:この看板、文字が立体的だ。色が抜けてもちゃんとわかるようになってますね。

青木:考えられている。

村田:猫のうんちも描かれてる。

藤田:かわいい。

村田:猫を飼ってると、猫にまつわるものはなんでもかわいく見えちゃうね。

増田:猫好きの方って、そういう方が多いですよね。

村田:毛が一本落ちていただけでも「かわいい」って思っちゃいます。

青木:無人販売コーナーもありますね。

村田:この入れ物は、冷蔵庫か何かだったんでしょうか。横に「お金入れ」の筒がついてますね。

青木:お金が落ちた先が、南京錠のついた蓋になっていますね。考えられている。

村田:すごいシステム!

増田:みなさんと一緒に歩くと、知らなかったことに気づけますね。

広々したお庭があり、菜園や園芸など思い思いの庭活動を楽しんでいそうなおうちが多い、三保。

青木:小人だ。

村田:7人揃ってる。

藤田:揃ってるけど、なんだか様子がおかしいぞ。

村田:左の二人だけ、テイストがちょっと違うね。

村田:わー、このおうちは狸御殿だ!

藤田:素晴らしいね!狸がカップルになってる。

村田:狸好きな夫*にも教えなきゃ。

*狸好きの夫……「むらたぬき」さん。「日本たぬき学会」会長。「タヌキ大学」副事務局長。#街角狸 で世界中に散らばった狸達をSNS上で一堂に集めている。詳しくはツイッター(@tetsuro5)へ。

キャラクターたちだけでなく、落ちもんも色とりどりです。

青木:見て、たこ焼き器。

村田:よっちゃん、これは落ちもんでしょうか。

藤田:これは落ちもんなのか、働きもん*なのか。

青木:かなりレアですよね。

村田:触ったら、たこ焼きがつくれるくらい熱そう。

*働きもん・・・・・・一見落ちているように見えるが、実は目的を持って置かれているもの

村田:あ、柵の中にパソコンがある!

青木:レッツノートだ。

村田:何かのメッセージ?

藤田:これは落ちもんだ!

村田:スロープにサンダルをかませてる。働きもんの可能性もあるね。

村田:見て!サボテンが隙間から生えてる!

藤田:かわいい!

村田:はみだしてる!

青木:絵に描いたようなきれいな形のサボテン。

村田:植えたのかな、生えちゃったのかな。

村田:かわいいマンホール!はじめて見ました。

藤田:サッカーだ。

村田:そうか、清水エスパルスもありますもんね。

青木:サッカーのまちにちなんでますね。

村田:うんちだって。

藤田:うんちっち。

村田:近くの中学生が、学校帰りに書いたのかな。

藤田:きっと書いたな。

増田:濡れ衣を着せたい大人たちがいる……。

気候も人も、穏やかな静岡

しばらく歩いていると、閑静な住宅街の中にお店を発見。青木さん・増田さんおすすめのお菓子屋さん「bougiee」さんです。

おかしとおくりもの bougiee(静岡市清水区三保1710-2)

動物をかたどったアイシングクッキーや、おみくじ付きのお菓子など、かわいくてアイデア満載なお菓子を製造・販売しているbougieeさん。

富士山の形のアイシングクッキーは、うれしいおみくじ付き。

「誰にあげようかな」と、このお菓子を見てほしい人の顔が浮かびます。それぞれ家族や友人へのお土産に、お菓子を選びました。

ゾウにキリン、シロクマ。子どもが喜びそうな、動物型のアイシングクッキー。

おいしそうなクッキーを前にしたら、そろそろお腹が空いてきました。Otonomaからも近い和食店『はぐるま』さんへ向かいます。

村田:壁からニチニチソウがはみ出してる。

村田:このかわいい松は、生えたやつですか?

増田:これは植えた子です。

青木:植えたものではなく、こぼれ種から実生で生えてきたものもありますね。

青木:強そうなアロエがいますよ。

村田:ムキムキですね。

まぐろダイニングはぐるま(静岡市清水区三保1330-2)

村田:ついた〜!

藤田:ご飯を食べるぞ!

昨年オープンしたというはぐるまさん。肉厚で新鮮なお魚を使った定食をいただけます。

写真は、本まぐろ丼(税込2,310円)。希望すれば半分あぶっていただけるという嬉しいサービスも。

細野:いやー、すごい!

藤田:つやつやしてる。

村田:フライと煮付けが両方ついてるなんて、贅沢。

食事をいただきながら、今日のお散歩を振り返ります。

村田:空も海も色が濃くて、高い建物がないから空が広く感じました。

藤田:狸や小人を置いたりと、大切に自分の世界観を表現したお庭が多くて。静岡の方の人間性が現れているような、穏やかさを感じたよ。

村田:青木さんは以前、静岡は気候も人も穏やかだとおっしゃっていましたよね。静岡ご出身の増田さんから見て、静岡の人たちはいかがですか?

増田:よくも悪くも、おっとりして争いごとがきらいな人が多いですね。

村田:まさしく「ちびまる子ちゃん」のような世界ですよね。

増田:まさに。ちなみに清水には、ちびまる子ちゃんに出てくるお店が残っていますよ。私自身は、知っているお店がアニメに出てくるのが不思議な気分でした。

はぐるまさんには、ウーパールーパーもいます。

村田:ピンクのニチニチソウが隙間から生えていたり、アロエが大きく育っていたり。のびのび育ってましたね。

青木:四方八方へと自由に伸びる植物たちから、南国っぽさも感じました。

増田:隣のおうちにアロエが侵食しても切らないのが優しいですよね。

村田:そういうゆるやかさも感じました。

青木:普段は車で目的地に一直線に向かうことが多いので、じっくり歩くことがあまりないんですが、視点を変えてみるとまだまだ三保には掘り出し物があるなと思えましたね。

増田:寄り道せず歩くと15分くらいの距離でも、こんなに見どころがあるんだなと思えましたね。

SABOTENS&細野:ありがとうございました!

本日の一コマ漫画

イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)

こころに残る三保の風景

村田のミカタ:羽車神社にお供えされていた石。確かにしんちゃんの顔の形にソックリ……!
藤田のミカタ:松の大蛇

イベントのお知らせ SABOTENS × 三保松原

7月末より2ヶ月間、静岡市三保松原文化創造センター「みほしるべ」でSABOTENSのPOPUP SHOPを開催中です。
会期中、オリジナルグッズの「家ンゲイはんこ」を使ってポストカードを作るワークショップや、三保のまちを歩くまち歩きイベントを開催します。
ご来場お待ちしています。

三保のまち探検ワークショップ

SABOTENS と三保のまちを歩いて何気ないまちの風景に潜む「お宝」を探す まち歩きイベント。
お散歩の後は見つけた「お宝」を紹介したり、オリジナルハンコでポスト カードを作る体験も。

・開催日:8月27日(日)、9月30日(土)
・開催時間:14:00〜17:00
・場所:コラボレーションスペースOtonoma(静岡市清水区三保1303-3)
 https://otono-otonoma.studio.site/
・料金:500円(資料代・材料費・お土産込)
・定員:10名程度
・お申し込み:https://forms.gle/ZZ1SFRbhMJHBCmT67

はんこを押して三保の風景を作ろう!(共催:みほしるべ)

■はんこ体験コーナー
SABOTENSと一緒にオリジナルグッズ「家ンゲイはんこ」を使って、三保の風景を作ろう!
SABOTENSがはんこの遊び方をご案内します。

・開催日:8⽉26⽇(⼟)
・開催時間:14:00-16:30
・場所:みほしるべ(静岡市清水区三保1338-45)
・料金:無料
・定員:材料がなくなり次第終了
・お申し込み:不要

■はんこ体験コーナー(常設)
SABOTENSのオリジナルグッズ「家ンゲイはんこ」を使って、三保の風景を作ろう!
会場一角に設置した用紙に、自由にはんこを押していただけます。

・開催期間:7月29日(土)〜9月30日(土)
・開催時間:9:00-16:30
・場所:みほしるべ(静岡市清水区三保1338-45)
・料金:無料
・お申し込み:不要