村田 あやこ
あやちゃん/記事を書いた人
村田 あやこ / Murata Ayako
ライター
お散歩や路上園芸などのテーマを中心に、インタビュー記事やコラムを執筆。著書に『た のしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。「散歩の達人」等で連載中。お散歩ユニットSABOTENSとしても活動。
藤田 泰実
よっちゃん/イラストを描いた人
藤田 泰実 / Fujita Yoshimi
落ちもん写真収集家
グラフィックデザイナー/イラストレーター/落ちもん写真収集家。茨城生まれ、埼玉育 育ち。多摩美術大学造形表現学部卒。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍しながら、路上に落ちているものから人間の背景や余韻、人間味を感じ取り、そこから妄想してタイトルをつけストーリーを作り出す「落ちもん写真収集家」として活動。落とし物は人間ドラマという発想が注目され、テレビやラジオなどにも出演。
細野 由季恵
見守り人/撮影・編集した人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

SABOTENSのお散歩、今回は神奈川・綱島です。綱島・日吉は今後人気エリアになることが予想され、エントリエの中でも大注目。2023年3月には東急新横浜線「新綱島駅」も開業して新横浜駅から電車で一駅となって、新幹線へのアクセスもぐっと便利になりました。
駅前にはスーパーや八百屋、飲食店が軒を連ね、駅から少し離れると広々した公園のある綱島は、住環境も良く、お買い物も便利でとても住みやすそう。
そして意外にも「ダンスで足腰が鍛えられるまち」でした。

脳みそがキャパオーバー

細野:駅前の賑わいがすごいね。おもしろい個人商店も多そう。

村田:何年か前に来たんだけど、その時より人が増えてる気がする。そういえば、こういう「まち」のお散歩って久しぶりだよね。

細野:自然豊かな場所もいいけど、人の多い場所もおもしろいよね。

村田:綱島は、「綱島温泉(※)」があったことでも知られるまちだよね。

細野:いまも残ってるの?

村田:確かもうなくなっちゃったはず。

細野:歴史ある場所なんだね。

綱島温泉(つなしまおんせん)は、神奈川県横浜市港北区綱島・樽町(旧:琵琶畑下)・大曽根にある温泉。戦前・戦後は、“東京の奥座敷”と呼ばれ大きな温泉街であったが、現在は完全に東京・横浜のベッドタウンと化し、3軒の日帰り入浴施設や温泉銭湯が残り、郊外住宅街に埋もれる形でその名残を止めている程度である。

綱島温泉-Wikipedia

藤田:見て。体が柔らかすぎる銅像があるよ。できる、これ?

村田:絶対できない。エスパー伊東がカバンの中に入った時みたいな格好。

細野:エスパー伊東……!

村田:お、室外機の下に第一“はみだせ緑”発見!

細野:こんないい立地だと、室外機を置く土地代も高いだろうな。

藤田:見て、ツタが3本垂れ下がってる。

村田:いいね。看板が「無」だ。いまは空いているお店なのかな。

にぎやかな駅前をしばらく歩いていくと、落書きだらけの壁を発見しました。

細野:うわ、落書きがすごい。

藤田:治安が悪そうだ。

細野:高尾の「へのへのもへじ」と違っておしゃれだなあ。

村田:綱島の「へのへのもへじ」集団、いないかなあ。

藤田:この奥で集会してたりして。

村田:怖いな。

細野:あ、星だ。

村田:ちゃんと養生して周りにスプレー掛けたんだね。マメな手仕事。

藤田:ちょっと悪魔的で怖いね。でも組織のボス、意外とあやちゃんみたいな温和な人だったりして。

藤田:壁の奥は駐輪場とお墓なんだ。植物がモリモリにしげってる。

村田:ビワが大きいね。

藤田:ツタがネックレスみたい。きれい。

村田:いいねえ。

細野:どうしてこうなってるんだろう。

村田:ツタって、吸盤がついてるよね。カニの……いや、カニじゃない、カエルの手みたいな吸盤。やばい。言葉が出てこない。

藤田:脳みそのフォルダがぐちゃぐちゃ。

村田:キャパオーバー。

藤田:「海鮮系」っていうフォルダに、ひとまとめにされていたんだろうね(笑)。

藤田:カエルみたいな吸盤って?

村田:見て、カエルの手みたいじゃない?これ。

藤田:そういうことか。

細野:ほんと、カエルみたい。

村田:あ、これ落ちもん?

よーく見ると、錆びたネックレスが。

藤田:ファースト落ちもんだ!ネックレスかな。

村田:落とし物のネックレスをツタに引っ掛けてあげようっていう、優しい人がいたのかな。ツタとすっかり同化しちゃってるけど。

綱島の社交場発見!

駅の周りを歩いていると、窓辺にきらびやかな衣装が飾られたお店を見つけました。

『モヤモヤさまぁず(テレビ東京)』にも出たことがあるという、カラオケ・ダンスも楽しめる『ブティック峰(神奈川県横浜市港北区綱島西1-10-10)』さん

細野:ブティック峰。

村田:カラオケとダンスができるんだ!

村田:今日は土曜だから、カラオケの日だ。

細野:営業中みたい。気になる。

ブティック峰さん:こんにちは!

全員:こんにちは。

村田:いま綱島をお散歩中で、気になって見させていただいていました。

ブティック峰さん:どうぞどうぞ、中も見て行って。

全員:ありがとうございます!

村田:階段いっぱいに色とりどりの衣装!こんなの着たことない。

藤田:すごーい!いつかみんなで、こういう衣装を着てカラオケしてみたいね。

藤田:おじゃましまーす。

村田:中はこんなに広いんですね。シャンデリアもあってゴージャス!

ブティック峰さん:そうなの。カラオケとダンスと、両方できるんです。今日はミニパーティーがあるの。

村田:続々とお客さまが集まっていますね。

お客さま:これから歌手が来るんだよ。

村田:そうなんですね!皆さん踊ったりもなさるんですか?

お客さま:もちろん!

藤田:素晴らしい。

村田:生歌を聴きながら踊れるなんて最高ですね。

細野:普段は一般の方も利用できるんですか?

ブティック峰さん:一般の方も利用できますよ。もともとは老人会の人たち向けに、足腰を丈夫にするためにつくったんです。どんどん歌って足腰も丈夫にして、誤嚥や肺炎を起こさないようにね。

村田:皆さん、日々の運動で健康になっているんですね。

お客さま:今日はここに座っていかないの?あなたたちみたいな若い人がいないからさ、老人ばっかだから。

村田:いえいえ、皆さんダンスのベテランですから、素人が混ざるわけには。

お客さま:うんと宣伝してくださいよ。

全員:ありがとうございました!楽しんでくださいね〜。

藤田:よかったね。あんなに快く「いいわよ」って見せてくれるなんて思わなかった。

村田:いい場所だったね。年を取って、ああいう社交場に通えたら楽しいだろうな。

ブティック峰さん、ありがとうございました!

今日はなにかが起こる日

思いがけず、綱島の大人たちの社交場に出会えた一行。ふたたび駅周辺をお散歩します。

村田:いいなあ、綱島。大きなヨーカドーもあるし、商店街にもたくさんお店がある。買い物が便利そう。

細野:個人店も元気そうでいいね。横浜に近いから交通も便利。

村田:歩く人の雰囲気を見ると、いろんな年齢層の人が住んでそうだね。

藤田:住みやすそう。

村田:「ピーチ花壇」がある。昭和13年頃まで、綱島は日本一の桃の生産地だったんだって!

藤田:へー!

村田:こんな歴史もあるのか。

藤田:見て、ポップコーンみたいなのがついてる。

村田:ほんとだ!トゲトゲしてる。

藤田:喧嘩に使えそう。

SABOTENSよっちゃんの「喧嘩に使えそう」という言葉を聞いた瞬間、喧嘩のマネをするSABOTENS村田。パンチが外れて顔に当たり、眼鏡が取れてしまいます。

藤田:あやちゃん……距離感までわからなくなってきてるね(笑)。

細野:今日、大丈夫?

村田:さっきのダンス教室に通って、体を鍛えたほうがいいかも。

藤田:若いからモテモテになるかもよ。「私とダンスしてください」って、何人もから言われたりして。

年齢的に健康が気になる今日この頃。

村田:自律神経とホルモンバランスの調整ができるんだって。気になる。

細野:「脳洗浄」って怖い。

村田:脳を洗浄したようなスッキリ感だって。「腸アロマ」も。字面が激しい。

村田:お、これは。

藤田:落ちもんですね。

村田:かけられている。さっきのネックレスといい、綱島では介入型の落ちもん(※)を見かけるね。まちの優しさが出ているような。

※介入型の落ちもんとは……持ち主に見つかりやすいよう、拾ってどこかへ引っ掛けたり置いたりと、人が介入した落とし物のこと。

藤田:映画『GANTZ』に出てきそうな巨大石があるよ。

村田:どうする?中からなにか出てきたら。

藤田:なんでここに置いてあるんだろう。

細野:アーチがある。

村田:くぐってみよう。(調子に乗って、クルクル回りながらくぐるSABOTENS 村田)……だめだ、一回転したら目が回った。40歳を超えると三半規管に来るな。

向こうの方に、川に続く階段を発見。川を見にいくことにします。

村田:なにこれ?

藤田:お盆の精霊馬​​だ。

細野:お盆に帰りそびれちゃった?

藤田:多分これに乗せて、帰したんだと思うよ。

村田:川だー!

細野:いいねえ。川沿いのマンションは、見晴らしがいいだろうねえ。

藤田:私が「川だー」って言いながら、この草むらにズカズカ入っていったらどうする?

村田:「どうしたよっちゃん」って、ちょっとびっくりするかも(笑)。

村田:この階段、すべり台みたい!

藤田:ずっこけそう!

村田:怖い怖い怖い!意外と急だな。靴のサイズがちょっとでも違ったら、ずっこけるな。

細野:怖い!でも小学生の時、こういう場所ワクワクしたな。

川を後にしてしばらく歩くと、商店街の一角でなにかを配布しているコーナーを発見。

細野:あ、なにか配っているよ。

村田:生活クラブさんだ。

生活クラブさん:どうぞ、試食していってください。

全員:ありがとうございます!いただきます。

和菓子とほうじ茶をいただき、いざ食べようとした瞬間、お菓子がポーンと飛んでお茶に水没するSABOTENS村田。

村田:わー、飛んでいった!

飛んで行ったお菓子をお茶の中から救出する村田

藤田:あやちゃん、今日は自分で自分を殴るし、おまんじゅうは飛ぶし。気をつけてね(笑)。

村田:今日は何かが起きる日だ。健康体で帰ろう。

気を取り直して、お菓子をいただきます。

村田:美味しいです、お菓子!

細野:食べて復活した!元気が出た。

生活クラブさんでは、店頭でじゃんけんをして、買っても負けてもあいこでも、プレゼントをいただけるという嬉しい企画も。ホットケーキミックスとてんさい糖をいただきました。

生活クラブさん、ありがとうございました!

地獄階段を上り下り

駅近くのベトナム料理屋さんで腹ごしらえした一行。今度は駅の東口側を歩くことにします。

村田:東口側は、また雰囲気が変わるね。

細野:ご飯食べたら元気になった。

村田:ご飯って大事だね。

細野:ご飯食べてから来てるのに、いつもついたらお腹すいてる。

村田:あ、向こうに森がある。近づいてみる?

藤田:行ってみよう。

細野:(森につながる道を見つけて)わー……これはがっかりするかも。

村田:うわー……いってみようか。

藤田:すごい急だ。

村田:地獄階段。ひー。ダンスやっている皆さんだと、スイスイ登れるのかな。

村田:ようやく登り切ったぞー。風が気持ちいい!

細野:気持ちいい場所だね。

村田:古い家とマンションが混在してる。遠くの方に見えるビル群は、横浜かなあ。

細野:まさに今、変わろうとしているまちだね。

藤田:根っこが渦巻いてる。

村田:くねんってなってる。妖怪っぽい。根見スポットですな。

藤田:夜な夜な動いたりして。

村田:くねんってなった部分が、タコみたいに伸びたりしてね。

村田:石塔があるね。塩が盛られている。

細野:さっきもらった砂糖ならあるね。

藤田:私はホットケーキの粉ならある。

村田:みんなでいろんな粉をお供えしよう。

村田:ふもとを見下ろすと、向こうの方にも神社らしきものが見えるね。

藤田:赤い鳥居が見える。行ってみようか!

細野:冒険感があるね。

村田:さあ、地獄階段を再び降りよう。

細野:ここを降りたら、さっき食べた分がゼロカロリーだ。

村田:よっしゃ!って、なんの根拠もないけど(笑)。

細野:なんの疑いもなく喜んでたね(笑)。

階段を降りてしばらく歩いていくと、住宅地の一角に弁財天が現れました。

藤田:弁財天だ。

村田:池がある。

細野:ちゃんと管理されているね。

村田:池もきれい。お参りしてこう。

村田:お賽銭を入れる箱がお煎餅の箱でかわいかった。

村田:この辺は古い建物が多くて、いい雰囲気だね。

藤田:ほんとだね。

藤田:Yが落ちてる!よしみのYだ。

村田:ゆきえちゃんのYでもある。

細野:あやこのYでもある。

細野:さっき上から見えた神社、どこだろう。

藤田:近くにありそうな感じがするよね。

村田:向こうの方のこんもりしたところかな。近寄ってみる?

細野:行ってみよう。

細野:この足跡は、猫かな。

村田:かわいい!

藤田:これだけでかわいいって思えるね。

村田:どこにいるんだろう。

藤田:この中に住んでたりするかも?

村田:餌と水がおいてるだけでかわいいって思えるよね。

藤田:わかる。

村田:静かだね、このへん。

藤田:木が多くていいねえ。

村田:駅から割とすぐなのにね。

細野:反対側と雰囲気が違うね。

村田:まちも森もあって。

村田:あ、サボテン兄弟。

藤田:5兄弟かと思いきや、たくさんいる。

村田:意外と子沢山。

藤田:事件だ。

細野:傘で殴り合った末に。

藤田:根っこもむき出し。ドキドキする。

細野:お、階段発見。

村田:綱島公園だって。

藤田:登ってみようか。

村田:登ろうか。よーし、いくぞー!

藤田:広いね。

村田:向こうから電車の音がするのが不思議なぐらい、森の中だね。さっきの地獄階段で体力を奪われて、最後の力を振り絞っている。

村田:ゆきえちゃんは登るのが早いね。若手のホープだ。

藤田:森が似合うね。

村田:あとちょっとで頂上かな。

細野:もうちょいです。

村田:やったー!着いたー、頂上だ!

藤田:着きましたー!今日はいい汗かいてる。

細野:お寺が結構多いね。

村田:お墓だ。結構高低差があるね。おもしろい地形。

ふと見ると、お墓の上に乗ってこちらを振り返る猫を発見。

村田:あ、猫だ!

藤田:三毛猫だ。

村田:にゃー!

藤田:にゃー!

村田:おい!

藤田:こんにちはー!

村田:元気ー?

藤田:美人さんだね。

細野:お墓の守り神だ。

村田:かわいいな。みーちゃん。

藤田:勝手に名前つけてる(笑)。

村田:いろんな名前がついていたりしてね。

藤田:あ、向こうにもいた!

村田:にゃーにゃーにゃー!

藤田:安全なところから振り向いて、偉いね。賢い。

ダンスに始まりダンスに終わる

細野:あの自転車、ドラマティック。

村田:木漏れ日がきれいだね。

村田:お、人里に出てきた。森もいいけど、人里もほっとするね。

藤田:このへんは閑静な住宅地だね。

細野:つくりがおしゃれなおうちが多いね。

村田:あ、鳥居があった!

細野:綱島稲荷神社だって。

藤田:ここじゃない?!さっき上から見えた鳥居。巡り会えた!

村田:散歩のラストに、ご挨拶していこう。

藤田:とてもいいまちだったね。綱島、いいかも。住むのに。

村田:駅チカに大きな公園もあって、大きな公園も食べるところもあって。

細野:にぎやかなのが好きな人はエキチカで、落ち着いた雰囲気がすきな人は公園のほうで。

村田:商店街も、大きすぎないのがいいよね。いいお散歩でした。

藤田:ただ一つ、このまちは自転車が必須だね。

村田:それかみんな、ダンスで足腰を鍛えないと。

細野:最初につながる。

村田:ダンススタジオは、必要にかられて始まったのかも。

細野:あ、またダンススタジオがあった!

藤田:ダンスではじまり、ダンスで終わる。最後はみんなで踊って帰ろうか。

村田:サンバでも踊ろうか。

本日の一コマ漫画

イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)

こころに残る綱島の風景

村田のミカタ:郵便ポスト園芸が鉢植えの土台として大活躍。ポスト園芸。
藤田のミカタ:なりすましブロック石

イベントのお知らせ

SABOTENSの藤田泰実・村田あやこ、そしてもじゃハウス®プロダクツの干潟裕子の“道ばたのあれこれを愛する3人による観察と妄想の展示《妄想路上ラプソディー》開催!

日時:2023年12月2日(土)〜12月24日(日)13時〜19時
※不定休
※おやすみは前月10日前後にお知らせいたします。
場所:シカク(大阪市此花区梅香1-6-13)
アクセス:各線西九条駅から徒歩15分
阪神なんば線千鳥橋駅から徒歩3分
詳細:http://uguilab.com/exhibition/202312/

SABOTENS
路上観察ユニット

SABOTENS / SABOTENS

2016年結成。「落ちもん写真収集家」の藤田 泰実(よっちゃん)と、「路上園芸学会」の村田 あやこ(あやちゃん)による路上観察ユニット。室外機やアロエ、選挙ポスターなど、組み合わせると路上あるあるな風景が作れる「家ンゲイはんこ」をはじめ、路上をテーマにしたグッズ制作や国内外での作品展を行う。会」の村田 あやこ(あやちゃん)による路上観察ユニット。室外機やアロエ、選挙ポスターなど、組み合わせると路上あるあるな風景が作れる「家ンゲイはんこ」をはじめ、路上をテーマにしたグッズ制作や国内外での作品展を行う。

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