SABOTENSがお届けするまちのミカタ。今回は、この連載の見守り人・ゆきえちゃんこと細野さんが住む高尾へ行きました。都心から中央線で一本。ミシュラン三つ星にも選定され、各地から多くの登山客が集まる高尾山……ではなく、高尾駅周辺をSABOTENSの嗅覚でお散歩しました。
豆まきの芸能人気分で、鯉にエサをやる
村田:今日は高尾のお散歩!
細野:高尾駅南口からスタートします。
村田:レッツゴー!
藤田:ゴーゴー!
地元民・ゆきえちゃんの案内で駅の高架下を歩いていたところ、気になる落書きを発見しました。
村田:なにこれ!へのへのもへじだ。一個は「へめへめくつじ」。
藤田:なんで?へのへのもへじ自体久しぶりに見た。今の子って知らないんじゃない?
細野:確かに。あまり書かないよね。
村田:高尾のギャング「へのへのもへじ集団」?
謎めいた「へのへのもへじ」と「へめへめくつじ」を後にし、駅近くを歩いていると、かわいらしい園芸を発見。
村田:かわいい!多肉の花がみんな同じ方向を向いてるね。
藤田:こんなにかわいい花が咲くんだね。
村田:サボテンの植え方も几帳面だな。秩序のある園芸。お人柄を感じるな。
藤田:素晴らしいね。
几帳面な園芸の一方で、すきまから威勢よくはみだす植物たちの姿も。
村田:すきまからホタルブクロ。
藤田:こっちもすごいね!
村田:ゼニアオイかな。すきまワンダーランドだ。
しばらく歩いていくと、こんもりした木々の中に不思議な形の建物が現れました。産業災害で殉職された方々の御霊が眠っているという「高尾みころも霊堂」です。
村田:すごい形の建物だ。
藤田:日本っぽくない。アジアを感じる。
村田:ネパールとか。
藤田:シンガポールとか。
村田:森の中にこんな形の建物が佇んでいるなんて、不思議な雰囲気だね。
藤田:近くに寄れば寄るほど大きい。
霊堂の前には池が広がり、覗き込んでみると鯉や亀が泳いでいます。
村田:鯉がいる。
藤田:亀もいる。
村田:ほんとだ!でっかい。亀じゃん。
藤田:「亀じゃん」って、ギャルみたい(笑)
細野:エサもあげられるんだよ。
藤田:あげてみたい!
村田:あげよう!
敷地内の事務所で鯉のエサを買い、池の鯉たちにあげることにしました。
藤田:みんな、ご飯だよ〜!
村田:口パクパクしてる。
藤田:鯉たち、「イエーイ、パーティーだ!」って感じだろうね。
村田:生きていくために、必死で食らいついている。
藤田:みんな、食べられるときに食べろ。
ひとたび池にエサを投げ入れると、鯉たちがもみくちゃになって、一斉に寄ってきます。遅ればせながら亀もやってきます。
村田:ぎゃー、パニック状態だ。
細野:亀が遅れを取ってやってきた。
村田:亀にもご飯をあげよう。うわ、ボスみたいな鯉がどんどんくる。
藤田:ちっこい鯉たち、がんばれがんばれ。
村田:ボスキャラがすごい寄ってくる。
藤田:小さいのは不器用なんだな。
村田:弱肉強食の世界だ。
藤田:がんばれ、戦いだ。
細野:神社で豆まきする芸能人気分。
村田:鯉たちは、群がるファン。お金持ちになってビルの上から1万円札をばらまいたら、こんな気分かな。
藤田:怖いね。理性を保たないと、人間が鯉みたいに見えてきてしまいそう。
村田:バーゲンとかスーパーにいる自分って、この鯉みたいな感じなのかもな。
細野:商品を取り合ってね。
藤田:口をパクパクさせて。
ツバメが帰ってくるまち・高尾
エサに群がる鯉を見て、人間の業にも思いをはせつつ、再び高尾の路地を歩きます。
藤田:あ、神社だ。ゆきえちゃん、この神社には行ったことある?
細野:たまにトレイルランニングで走ってるよ。
藤田:すごい!
村田:かっこいい!
藤田:この間あやちゃんと「なんで私たち、こんなに痩せないんだろうね」って話になって。まちのミカタの取材をマラソンとかアスレチックと組み合わせるのはどうだろうって話してたよね。
村田:走りながらまちを巡るとか。
藤田:でもSABOTENSは速攻脱落しそうだよね。
村田:私たちだけ、すぐに電動自転車を借りたりして(笑)
藤田:最終的にゆきえちゃんしか走ってない、みたいな状態になりそう(笑)
細野:体を動かしながらお散歩するの、いいね!そういえばこのあたりはゴミ収集が家の前なんだ。ごみ収集作業員の人たちは、走りながらゴミを車に積んでいくから、すごく痩せてるよ。
村田:走りながらゴミをピックアップしてトラックに積んで、またトラックに登っていくって、相当な運動量になりそう。
藤田:SASUKEに出られそう。
住宅地のすぐ向こうに迫る山や、路傍の草花。都心と比べてもいたるところで植物の密度が濃く、勢いよく繁っています。
村田:ゆきえちゃん、いいところに住んでるね。
藤田:緑があって水があるところは落ち着くよね。
細野:このへん、すごくいいんだよ。引っ越してきた当初は、もっと都心に住みたいと思ったこともあったけど。
村田:ゆきえちゃんは高尾に住んでどれくらいになるの?
細野:もう10年くらいになる。住んでいるうちにコロナ禍も経験して。遠出しなくても自然を楽しめる場所が多いよ。
村田:高尾山もすぐそばだしね。
藤田:私、まだ高尾山に登ったことなくて。今度登ってみたいな。
細野:登ろう、登ろう!
藤田:この橋。いいねえ。
村田:うわー、いいねえ。橋と向こうの階段の組み合わせもいいなあ。
藤田:なんでここだけ錆びてるんだろう。
村田:模様みたいになってるね。雨がここだけ当たったのかな?
村田:これは、シールが剥がれたところが地図みたい。
細野:こういうのを集めるマニアもいるのかな。
藤田:いそう!
細野:剥げマニア。
村田:地図マニア。
藤田:剥げ地図。
村田:剥げ地図……!?
藤田:ネーミングセンスゼロ(笑)
藤田:わ、またあった!
村田:「へめへめくつじ」と「へのへのもへじ」が2個並んでる!
藤田:なんだろう、これ。高尾の七不思議だ。ギャングチームの中に「へめへめ」派と「へのへの」派がいるのかな。
村田:「へめへめ」派と「へのへの」派がついに合併したのかも。
ふと見上げると、駅の高架下に等間隔にツバメの巣が並んでいます。
藤田:見て、仕切りごとにツバメの巣がある。
村田:マンションみたい。
細野:高層マンションだ。高尾にはツバメの巣もいっぱいあるんだよ!
藤田:ツバメが帰ってくるおうちは幸運の家っていうよね。
村田:高尾はいいまちだ。
藤田:私のお隣さんちにもツバメがよく帰ってくるんだよ。ツバメシーズンになると全てがツバメ優先になるから、カラスがこないようにCDぶらさげまくってるの。
細野:そのときだけなんだ。
藤田:その時期は完全にツバメ優先。
村田:素敵だね。愛だ。
すぐそばのマンションの入口でも、再びツバメの巣を発見。雛たちが並んで巣から顔を出しています。
細野:見て!
藤田:かわいいー!ひなだ!待ってるんだね、お母さんを。
細野:せまくないのかな。肩凝りそう。
村田:幸運のマンションだ。
藤田:かわいいな、4兄弟。頑張れよ。
しばらく歩いていくと、とあるお店の軒下でまたもやツバメの巣を発見。巣のためなのか、巣を支えるように板が設置されています。
細野:見て、ここにもツバメの巣がある。
藤田:板をつけてあげたんだね。
村田:いい場所を選んだね。
藤田:空を飛んでるツバメもいるね。
村田:高尾はツバメのまちですな。
和菓子が染みるお年頃
南口から出発した一行は、反対側の高尾駅北口へ。北口の駅舎は社寺建築風。駅周辺には昔ながらのお漬物屋さんやお土産屋さんなどが並び、南口側とは異なる、歴史を漂う雰囲気。すぐそばには甲州街道が通っています。
細野:これが甲州街道。新宿まで続いてるんだよ。
藤田:昔の人って新宿まで歩いたりしてたのかな。
村田:この道を通って、旅したり修行したり。
藤田:飛脚もこういう道を走って荷物や手紙を届けてたのかな。すごい仕事だよね。
村田:途中で疲れたから帰るってわけにもいかないもんね。
藤田:途中でお腹痛くなった人もいただろうね。
村田:お腹空いたり、怪我したり。
藤田:うっかり届けるものを落としてパニックになった人、一人くらいはいそうじゃない?
甲州街道をしばらく歩いていくと、アジサイが満開のお団子屋さんを発見。ちょうど小腹が空いたので、お団子をいただいていくことにしました。
藤田:わー、お団子屋さんだ!
村田:植物に包まれてる。
藤田:お団子食べたい。
細野:お団子、美味しそう。
藤田:水まんじゅうも美味しそう。迷う。
村田:私は焼団子のタレにしよう。
藤田:私もそうしよう。
藤田:食レポをお願いします。
村田:みたらし団子、つやつやしてます。……美味しい!おこげと甘いタレの組み合わせが絶妙です。
村田:お次はよっちゃん、お願いします。
藤田:……最高。美味しい。焼いたお団子にタレがついていて。焦がしたお醤油ってなんて美味しいんだろうね。
村田:甘じょっぱい美味しさだね。
細野:これで少し胃が落ち着く。
藤田:年を重ねると、不思議と和菓子の美味しさが分かってくるよね。昔って、あんみつとかあんことかあまり食べなかったよな。
村田:分かる。小さい頃は和菓子類にあまりテンションが上がらなかった。なんでドラえもんは、あんなにどら焼きが好きなんだろうって不思議に思ってたもん。今は真逆。
藤田:和菓子は日本人の胃袋にちょうどいいよね。
歯痛にご利益のある神社
甲州街道沿いのお団子屋さんで、昔の旅人気分でお団子を味わった一行。甲州街道を脇道にそれ、住宅地の中をしばらく歩いていくと、川を発見。水辺には自然体な草っぱらが広がり、見ていて心地いい川です。
細野:前はこの川でよく川遊びしてたよ。この橋がちょうど影になるから、下で飲み物を飲んだりして。
村田:いい川だねえ。
細野:この近くに神社があるよ。
藤田:ご挨拶しよう!
鳥居をくぐり階段を登っていくと、草花があふれる境内が現れました。
藤田:お邪魔します。きれいな神社だ!
細野:アジサイがいい感じ。
境内で「歯の神様(歯苦散)」という案内を発見。ここ白山神社は、「白山(はくさん)」と「歯苦散(はくさん)」をかけて、歯痛平癒にご利益のある神社だそう。お守り売り場では歯の病を鎮めるという「歯苦散守」も売られており、各々買い求めます。
境内一角には、厄落としができる場所も。それぞれ日々の鬱憤を胸に「厄落玉」をぶつけ、厄落としを願いました。
藤田:はー、すっきりした。
村田:よーし、これでみんな厄が落とされたぞ。
細野:昔からみんないやなことが色々あったから、「厄落とし」の概念ができたんだろうね。
藤田:縄文時代から変わらないんだろうね。
村田:「お参りお疲れ様でした」だって。優しい。
藤田:思いやりって大事だよね。いい神社でした。ありがとうございました。
村田:植物にあふれた気持ちいい神社でした。
川床の憩いの空間
神社で厄落してすっきりしたら、そろそろお腹が空いてきました。お昼ごはんを目指して移動する道中、ゆきえちゃんが顔見知りの八百屋さんにご挨拶。優しそうなご主人と奥さまが店頭に立つ八百屋さん。それぞれ買い物を済ませたところ、なんとおまんじゅうまでお土産に持たせてくださいました。
細野:店主さんはいつもまちの子どもたちに優しくしてくれてね。近くにある畑には大葉がいっぱい生えてて、「いつでもここから取っていいよ」って言ってくれたこともあるよ。
村田:ハートウォーミングだ。
細野:たまに近所のおばあちゃんたちが座っておしゃべりしてるよ。
藤田:最高じゃん。
村田:柴崎編*で出会った、ご近所のお仲間が井戸端会議していた自転車屋さんを思い出すね。
八百屋さんを後にして歩いていくと、川沿いの草っぱらに長机やイスが並ぶ不思議な空間がありました。
村田:なんだろう、ここ。川床で和むための場所かな。
細野:不思議な場所だよね。
藤田:このイス、すごいよ。
村田:朽ちて自然に還りつつあるね。
藤田:鏡もあるよ。身なりをちゃんとしなさいってことかな。
村田:温度計もついてる。気温を見て服装をチェックできるね。
藤田:神様もいる!
村田:イエス・キリストと恵比寿様が同じイスに乗ってる。
実はここ、ゆきえちゃんが長年不思議に思っていた場所だそう。秘密の休憩スペースのような空間を前にあれこれ話していたら、ご近所さんらしき方がおもむろに近づいてきました。
ご近所さん:高尾山に登るの?
村田:今日はお散歩してるんです。ここ、川を見ながら休めていい場所ですね。イスと机、持ってこられたんですか?
ご近所さん:そうそう。
藤田:お父さんがやってらっしゃったんですね。
村田:神様も?
ご近所さん:うふふ。
藤田:キリスト様と、恵比寿様と。
村田:この鏡はなんのために?
ご近所さん:いらないから持ってきたの。
村田:そうだったんですね!
ご近所さん:気をつけてね。
一同:ありがとうございました!
細野:10年もの間解決しなかった謎が、二人のお陰で一瞬で解けた。すごい。
藤田:神様みたいなおじいちゃんだったね。きっと高尾山に行くのに迷った3人だと思って、声をかけてくれたんだね(笑)
高尾山に登らずとも、結構歩きました。ゆきえちゃんおすすめのお蕎麦屋さん「蕎麦と杜々」へ入り、お蕎麦をいただきながら今日のお散歩を振り返ります。
藤田:自然も多くて、人も優しくて。おうちの外観を見ていてもカラフルな建物が多くて、それぞれ好みの家に楽しんで住んでる感じが伝わってきたな。
村田:確かに、暮らしを楽しんでいる雰囲気がしたね。
藤田:都心よりもゆったり時間が流れていて、住みやすそう。
村田:木と水がいっぱいあってよかった。なにかあれば森にいこう、みたいに心を落ち着かせられる場所がすぐ近くにあるのはいいね。ものづくりしたり、子供をゆったり育てたいみたいな人に良さそうだね。
藤田:川も多くて。
村田:ゆきえちゃんは、住んでる立場からどうだった?
細野:ツバメがたくさんいたな。ツバメ好きな人がいるまちはいいなって思ったよ。久しぶりに八百屋さんにも行けてよかった。人とのつながりはいいよなあってあらためて思ったよ。
村田:いいお散歩でした。
本日の一コマ漫画
こころに残る高尾の風景
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