村田 あやこ
あやちゃん/記事を書いた人
村田 あやこ / Murata Ayako
ライター
お散歩や路上園芸などのテーマを中心に、インタビュー記事やコラムを執筆。著書に『た のしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。「散歩の達人」等で連載中。お散歩ユニットSABOTENSとしても活動。
藤田 泰実
よっちゃん/イラストを描いた人
藤田 泰実 / Fujita Yoshimi
落ちもん写真収集家
グラフィックデザイナー/イラストレーター/落ちもん写真収集家。茨城生まれ、埼玉育 育ち。多摩美術大学造形表現学部卒。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍しながら、路上に落ちているものから人間の背景や余韻、人間味を感じ取り、そこから妄想してタイトルをつけストーリーを作り出す「落ちもん写真収集家」として活動。落とし物は人間ドラマという発想が注目され、テレビやラジオなどにも出演。
細野 由季恵
ゆきえちゃん/撮影・編集した人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

2019年冬に始まった「SABOTENS まちのミカタ」、まる5年を迎えました。2024年最後を飾るお散歩は、日本橋。日本橋に新たにオープンしたエントリエの新店舗「entrie times nihonbashi」を訪れた後、1年を振り返りながら年末の雰囲気漂う日本橋を歩きました。

シックな隠れ家・entrie times nihonbashi

entrie日本橋の表札

村田:今日は、昨年末にオープンしたエントリエさんの新店舗「entrie times nihonbashi」にやってきました!

藤田:オープンおめでとうございます!

エントリエ 大里(以下、大里):多摩、恵比寿に続いて、エントリエとしては3店舗目となります。東京東部のお客さまに来ていただきやすいよう、日本橋に新店舗を作りました。

ブルーを基調とした

村田:マンションの一室で、多摩や恵比寿とはまた雰囲気が違いますね。シックなインテリアが素敵です。

大里:日本橋店舗はエントリエの建築士小林めぐみが設計デザインをしています。恵比寿は外からも見える、開けたリビングのような空間ですが、日本橋は隠れ家のように落ち着いた雰囲気をイメージに。

村田:真ん中にはどーんとテーブルがありますね。

大里:天板を拡張できるテーブルで、2世帯住宅など大人数の場合でも広々とお打ち合わせが可能です。またお一組ずつの完全予約制なので、お子さまが居ても気兼ねなく過ごせるようにしています。

村田:大きなキッチンも印象的です。

エントリエ 鈴木(以下、鈴木):ここで打ち合わせするお客さまが実物に触れられるように、キッチンを設置しています。

大里:キッチンはお水やIH、食洗機、引き出しなど、実際に使いながら使い勝手を確かめることができます。キッチンのすぐ横は床が上がっているんですが、隣り合わせに設置したテーブルと天板の高さが合うよう調整しています。ハイチェアじゃなくても座れるんですよ。

村田:ご家庭で食卓を囲む時の参考にもなりそうですね。

藤田:確かに。段差があるせいか壁がないけれど空間が区切られて、雰囲気が変わるのがいいですね。キッチンの向こうの壁は、一面が芝生!

村田:遊び心が満載だ。

大里:パソコン作業の合間に顔を上げてほっと一息つけるように、都会の真ん中でグリーンを感じられる、目に優しい壁です。

藤田:触りたくなる壁ですね。猫たちが喜んで登っていきそうです。

大里:確かに。壁に猫のためのステップをつけてもよさそう。

鈴木:ここで猫、飼いましょうか(笑)

藤田:猫店長として、ぜひ(笑)

村田:このあたりは、オフィス街だけど古い街並みも残っているのが楽しいですね。お二人から見て、日本橋はどんなまちですか?

大里:美味しいごはん屋さんがあったり、提灯や法被など職人さんのお店も多いですね。人形町駅をはじめ、複数の駅へのアクセスもいいです。

村田:一軒家やマンションもちらほらとあって、意外と住んでいる人も多そうですね。

鈴木:昔からあるビルや、お店や工場が併設されたおうちに住んでいらっしゃる方が結構多いですね。日本橋ではぜひ、そうしたおうちのリノベーションを手掛けていきたいなと思っています。

大里:古い建物をリノベしたいなど、何かお困り事があれば、エントリエのスタッフがお力になります!

鈴木さん、大里さん、ありがとうございました!

急遽できたエントリエの「e」ポーズで記念の1枚

路上菜園に奇跡の落ちもん。年末の路上で感じる、誰かの余韻

村田:さて。いざ日本橋のお散歩へ。

細野:お、あやちゃんのカメラが新しくなってる。

村田:そう!コケ好きの方に教えていただいた「顕微鏡モード」がついたカメラで。コケを撮ると楽しいよ。

藤田:コンパクトでいいね。

村田:早速コケを発見!撮ってみよう。

村田:あ、こっちの建物の前では野菜を育ててるよ。白菜に大根に、イチゴまである!食べられるものがいっぱい……ハックション!

藤田:大丈夫?

村田:シャッターを押した瞬間、くしゃみが……

藤田:あはは。

村田:新旧いろいろな建物があるね。かわいいビルも多いなあ。

藤田:角が丸いのがいいねえ。あのビル、使わせてもらえないかなあ(笑)

村田:3人でワンフロアずつ使いたい……勝手に妄想が膨らむ(笑)

村田:いい雰囲気の路地も色々あるね。

藤田:見て、この路地は誰かの憩いスポットになってる。

村田:コーヒーの空き缶に、タバコに。「禁煙」の張り紙がいたるところに貼ってあるね。憩う人と、憩ってほしくない人との戦い。

藤田:定点観測していくと変化がありそうだね。

藤田:見て、空中の落ちもん!

村田:うわ。ベランダから洗濯物が落ちちゃったのかな。奇跡の引っかかり。すごいぞ。

細野:下着とかじゃなくて良かった。

藤田:本当に。よかったなあ。

藤田:見て、この根っこ、妖怪みたい。

村田:うわ!根っこの先端が隙間に入り込んでるよ。でも最後はブツッと切られてしまった。

藤田:反対側にも、ちっちゃい根っこ。

村田:本当だ。入口の両脇にシンボルツリーがあったんだろうね!日本橋のご神木。

藤田:あ、植物の横にクリスマスオーナメントが置いてある。

村田:うわ、しかも隙間から生えてる植物を活かしているんだ!最高だね。

藤田:優しい。愛だね。

神社で厄払いし、今年を振り返る

小網神社(東京都中央区日本橋小網町16-23)

藤田:実は今日は、日本橋の小網神社に行きたくて。

村田:(ネットで調べて)強運厄除けと金運にご利益のあるパワースポットなんだね。行こう。今年の厄を払おう。

藤田:うわ、神社の前にものすごい人の列。みんな年末に、厄祓いと財運を願いに来ているのかなあ。よーし、私たちも厄を落とそう。

神社での参拝を済ませた後は、2024年のお散歩を振り返ります。

藤田:このお散歩も5年目かー。エントリエさんとゆきえちゃんのお陰で、5年もこの連載を続けられているとは。ありがたいね。

細野:私、過去のサムネイルを一覧で見るのが好きなんだよね。

村田:なぜかファイティングポーズ率が高いよね(笑)5年分の記事は、まさに人生のアーカイブだよね。

細野:みんな色々あったよねえ。

名嘉山 直哉さんをゲストにお迎えした代田橋編。名嘉山さんに、「白昼夢のような時間」という感想をいただきました。

村田:2024年最初のお散歩では、富士そばライターの名嘉山さんをゲストにお迎えして、代田橋を歩いたよね。

細野:名嘉山さんと3人で前田あっちゃんの看板の前で撮った記念写真、好きだな。

イトウヒロコさんをゲストにお迎えした、町屋編。地元の美容室・サロン・ド・アリス店主さんと、お店の前で記念撮影。

村田:目白、五反田、中目黒、町屋、入谷、真鶴と、その後もいろんなまちを歩いたね。町屋は初めて訪れたまちでイメージがなかった分、思いがけない発見や出会いの連続で楽しかったな。

藤田:連載が始まった頃は、「ちゃんと取材しなきゃ」とちょっと肩に力が入っていたけど、年々素の状態に近づいていっているよね。

村田:確かに最初は、ちょっと緊張しながら歩いていたかもな。

まだ肩に力が入っていた(?)府中編。「なんとか撮れ高を作らねば」とプリクラを撮るも、最新機種に四苦八苦。

細野:無理やりプリクラを撮ったこともあったよね(笑)

村田:そうだそうだ、ラウンドワンに行って。

小堺丸子さんをゲストにお迎えした、五反田編。ビルの屋上に髪の毛のように生えた木=ビル毛を探し歩きました。

細野:今年、新たに気になったものはあった?

藤田:小堺丸子さんと一緒に「ビル毛」を探し歩いたのは楽しかったな。今まで下ばっかり見ていたけど、上も見るようになった。

井口エリさんをゲストにお迎えした、入谷編。「御朱印」や「御札」の味わい方を伝授いただきました。井口さんが御朱印の企画に携わる小野照崎神社も参拝。

村田:確かに。御朱印や御札に詳しい井口エリさんとの、入谷のお散歩も楽しかったな。街中の張り紙を「御札」的なものとして捉えるのが、新鮮だった!

細野:来年はどこに行きたい?

藤田:台湾とか行っちゃう?

村田:いいね!海外に行けたら夢のようだな。

昔の銀行が生まれ変わった!コーヒーと雑貨のお店「Coffeebar & Shop coin」

お散歩の締めは、日本橋兜町にあるコーヒーと雑貨のお店「Coffeebar & Shop coin(東京都中央区日本橋兜町6−7 兜町第7平和ビル B1F)」へ。実はここは、SABOTENSよっちゃんのお知り合いが働くお店。突然の取材にも、お店のみなさんが快く対応してくださいました。建物入口の立派なオリーブの大木に目を奪われます。

細野:おしゃれなお店だ!

村田:建物が重厚だね。入口のオリーブの木もインパクト満点。早速中に入ってみよう。

入口をくぐり地下一階にあるのが、「Coffeebar & Shop coin」。種類豊富なコーヒーのほか、食器やタオル、フレグランスなどの雑貨を販売しています。

お隣のフラワーショップ「Flowers fēte」には、色とりどりの生花やドライフラワーが並びます。

ドライフラワーと生花が並ぶ

「Coffeebar & Shop coin」スタッフの柴田欽章(しばた・よしあき)さんに、お店についてのお話を伺いました。

コーヒーを淹れる柴田さん。
コーヒーを淹れる姿が様になる、柴田さん。

村田:お店の名前が「coin」なんですね。金融のまち・日本橋兜町にちなんだ名前なんでしょうか。

柴田さん:ここは昔銀行だった建物をリノベーションして作られた「BANK」という複合施設で、「Bakery bank」、「Bistro yen」、「Coffeebar & Shop coin」、「Flowers fēte」という4つのお店が入っています。Coffeebar & Shop coinが入っている地下1階は、実は銀行の倉庫を改装した場所なんです。

村田:金庫!どうりでこんなに頑丈そうな作りなんですね。どんなコンセプトのカフェなんでしょうか?

柴田さん:Coffeebar & Shop coinは、アンティーク家具などを置いてシックなイメージにしています。コーヒーは、シーズンごとにさまざまな種類を取り揃えています。スイーツは、通年でお出ししているメニューの他、イベントごとに限定のメニューを出すこともあります。

談笑する3人

村田:お客さまはどういう方が多いですか?

柴田さん:平日の昼間は、この近くで働く方や海外の旅行者の方がたくさんいらっしゃいますね。夕方は、このあたりに遊びに来た方がブレイクタイムで寄ってくださいます。また、BANK自体を知って来られた方が、他のお店で買い物ついでにカフェに立ち寄る、ということも結構あります。

藤田:入口のオリーブの木、立派ですね!

柴田さん:シンボルツリーとして、BANKができた時に植えられました。Flowers fēteのスタッフが日々剪定や水やりなどのメンテナンスを担当しています。樹齢1000年以上だそうですが、未だに葉っぱがぐんぐん伸びています。オリーブオイルを使ったキャンドルなど、オリーブを使った雑貨も販売していますよ。

オリーブのキャンドル

ここで、「裏側、見てみますか?」という柴田さんの思いがけない一言。柴田さんのご厚意で、普段一般客は立ち入れないバックヤードに入れていただきました。バックヤードは会議室になっており、なんと部屋の一角には、かつて銀行時代に使われていた金庫のドアが!

昔実際に使われていた金庫

藤田:わー!映画でしか見たことないやつだ!

村田:初めて実物を見た。残して活かしているのが素敵だね。

細野:みんなで金庫を開けてみて(笑)

村田:ルパンみたいに、金庫破りに挑戦だ!

金庫をこじ開ける真似をする3人

藤田:生まれて初めて金庫に触った!

村田:貴重なものを見せていただいて、ありがとうございました!

藤田:いやー面白かった!

新旧さまざまなものが入り交じる日本橋。小網神社で厄除けと金運を願い、最後に銀行のお金を屈強に守っていた金庫まで触ることができました。
2025年は、みんな運勢爆上がり間違いなし! 今年もいろいろなまちを歩いていきましょう。

本日の一コマ漫画

イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)

こころに残る日本橋の風景

村田のミカタ:日本橋の「ビル毛」。屋上にひっそりジャングルが生まれつつある?
藤田のミカタ:でかい貝殻アクセをつけたハイセンスダヌキ