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『はみだす緑 黄昏の路上園芸』 刊行記念インタビュー | SABOTENS まちのミカタ 番外編

自由で独特な視点を持ち、路上観察を通して出会った“心が動く瞬間”を捉え、さまざまな表現方法で発信するユニットSABOTENS(サボテンズ)の村田あやこ(むらた・あやこ)さんと藤田 泰実(ふじた・よしみ)さん。ウェブマガジンエントリエでも知らないまちを歩く企画『まちのミカタ』を連載してくださっています。そんなふたり初の共著となる『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)が2022年3月19日に刊行となりました。今回は刊行記念インタビューとして、制作の経緯や裏話、そしておふたりが本書に込めた想いを伺いました。

『はみだす緑 黄昏の路上園芸』著者データ

文・写真 村田 あやこさん(あやちゃん)

路上園芸鑑賞家/ライター。福岡生まれ。2010年頃より街角の園芸活動や植物に魅了され、「路上園芸学会」を名乗り撮影・記録。書籍やウェブマガジンへのコラム寄稿、イベントなどを通し、魅力の発信を続ける。著書に『たのしい路上園芸観察』(グラフィック社)、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』(雷鳥社)。寄稿書籍に『街角図鑑』『街角図鑑 街と境界編』(ともに三土たつお編著/実業之日本社)。「村田あやこの路上園芸探訪」(さんたつ by 散歩の達人)、「かながわ路上園芸さんぽ」(神奈川新聞)などを連載中。

Website : https://botaworks.net/
Instagram : @botaworks
Twitter : @botaworks


デザイン・イラスト 藤田 泰実さん(よっちゃん)

グラフィックデザイナー/イラストレーター/落ちもん写真収集家。茨城生まれ、埼玉育ち。多摩美術大学造形表現学部卒。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活躍しながら、路上に落ちているものから人間の背景や余韻、人間味を感じ取り、そこから妄想してタイトルをつけストーリーを作り出す「落ちもん写真収集家」として活動。落とし物は人間ドラマという発想が注目され、テレビやラジオなどにも出演。

Instagram : @fujitayoshimi
Twitter : @f_yoshimix


SABOTENS

SABOTENS

2016年結成。路上に落ちているアイテム(=落ちもん)に着目する「落ちもん写真収集家」の藤田泰実と、街角の園芸や育ちすぎた植物の魅力を「路上園芸学会」名義で発信する村田あやこによるお散歩ユニット。室外機やアロエ、選挙ポスターなど、組み合わせると路上あるあるな風景が作れる「家ンゲイはんこ」をはじめ、「路上のはみだしもん」をテーマにグッズ制作や国内外での作品展を行う。ウェブマガジン・エントリエで「まちのミカタ」を連載中。YouTube「SABOTENSちゃんねる」で散歩の様子を動画で公開中。

Website : https://www.sabotens.com/
Instagram : @sabotens_tokyo

『はみだす緑 黄昏の路上園芸』 刊行記念インタビュー | SABOTENS まちのミカタ 番外編

――ウェブマガジンでもお散歩記事『まちのミカタ』を連載してくださっているSABOTENS初の共著ということで、とてもうれしく感じています! まずは、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』刊行はいつ頃決まったのでしょうか?

村田さん:ありがとうございます。この本の企画を練りはじめたのは版元である雷鳥社さんとの出会いがきっかけです。2019年、平井の本棚(東京都江戸川区)さんで行われた鈴木 純(すずき・じゅん)さんの著書『そんなふうに生きていたのね まちの植物のせかい』(雷鳥社、2017)の刊行記念イベントに、ゲスト登壇させていただいたことがありました。

雷鳥社の編集者さんが登壇者であるわたしのTwitterアイコンを見たとき、「なんだ、この人は」と思ったそうなんです。それがまさに本書の登場人物にもなっている、よっちゃんが描いてくれた「おじさん」のイラストでした。

村田さんのTwitterアカウントホーム画面

――「しげる」ですね!

村田さん:そうなんです。イベントで知り合ったご縁で、後日雷鳥社さんに「もし出してみたい本があったら、企画書を出してください」と声をかけてもらえたことから、本書の企画がはじまりました。

藤田さん:あやちゃん、当時はすごい量の企画を出していたよね。

――今回の本が出るまでに村田さんは、初の著書となる『たのしい路上園芸観察』(グラフィック社、2020)も刊行されましたよね。この間、どのような構想があったのでしょうか?

村田さん:雷鳥社さんの本は、身近なまちかどに存在する“はみだす緑”の風景を気軽に楽しむ方法を、イラストと文章で多数紹介した本にする、というところから企画がスタートしました。

藤田さん:ちょうどその頃、『たのしい路上園芸観察』の執筆もして。

村田さん:そうそう。一冊目の『たのしい路上園芸観察』は、過去に撮影した写真をテーマごとに分類して、路上園芸の見どころを解説した本です。雷鳥社さんで出す本は趣向を変え、よっちゃんのイラストの力を借りて、路上園芸をテーマにしながらも新しい切り口や見せ方にしたいなと思っていました。

――「路上園芸」というテーマは同じでありながら、異なる切り口を模索していたんですね。

村田さん:レベル別にまちの緑や園芸の楽しみ方を紹介するような手帳サイズのノウハウ本や、おじさんが路上観察を通してロールプレイングゲームのように仲間と出会いレベルアップする本という案もありました。どれもよっちゃんにラフまで起こしてもらって。

使われなかった企画のラフデザインを見せていただきました

――最終的に今の形になるまでには、紆余曲折あったそうですね。

村田さん:そうですね。例えば後者は「路上園芸を知らないおじさん「たむら」が、まちの路上園芸に出会うことで、人生が楽しくなる」というストーリー仕立ての設定にしたんです。

いざ文章を書きはじめると、まず(頭の中で)わたしは路上園芸を知らない架空のおじさんになり、おじさんの視点を通して路上園芸の見どころを伝えつつ、さらにストーリーも考えなければならない……となると、どんどん訳がわからなくなって。「路上園芸」自体マイナーなものなのに設定が何段階も込み入ってしまうと、本来伝えたい路上園芸の見どころがぼやけてしまうので「本を読む人も混乱してしまうのでは」と悩み、よっちゃんや編集者さんに相談しました。

妄想と共に増えていったという登場人物の設定やストーリーの一部

藤田さん:途中であやちゃんが「わたしはおじさんではないし、わたしはわたしだけど、主人公がおじさんなら、どこまでわたしはおじさんとして書いたらいいかわからなくなってしまった」って(笑)。

そこで「あやちゃんはおじさんじゃないんだから、あやちゃんとして書いたらどうなの」って伝えたんだよね。さくらももこさんの『もものかんづめ』(集英社文庫,1991)のようなエッセイにするといいんじゃないかって。

――おじさんの設定によって、混乱……! ただ、要素として結果的におじさんは残っていますね。

村田さん: そうですね。最終的に編集者さんのアドバイスで、主人公「たむら」の設定を“初心者”から“ある程度プロ”に。また、構成もストーリー仕立てではなく、コピーとイラストをメインにして、路上園芸の面白さをはっきりと示すことにしました。文章のトーンも、たむらの個人的な日記風にして、哀愁や黄昏感を醸し出すことにしました。

主人公である「たむら」の設定がいまの自分に近づいたことで、ぐっと書きやすくなり、ようやくペースをあげて進んでいきましたね。

ふたりの妄想と現実が入り交じる、『はみだす緑 黄昏の路上園芸』

――改めて聞かせてください。『はみだす緑 黄昏の路上園芸』は、どのような本ですか?

村田さん:主人公「たむら」の住む架空のまちで繰り広げられる路上園芸を、イラストとともに解説した本です。架空のまちが舞台ではありますが、本の中で描かれた路上園芸の様々なシーンは、実際に見た風景がもとになっています。

わたし自身、これまで路上園芸を見ていると「どんな人がこの園芸をしているのかな」という妄想が膨らむことがありました。そこで本書では、路上園芸の背後にいる個性豊かな住人たちの姿も描きたいと思いました。いつものまちも、そこに住む人たちを想像して妄想を交えながら見てみると、もっと面白くなるかもしれないよ、という提案ができたらと。

――「たむら」以外の登場人物にはモデルがいるのでしょうか?

村田さん:具体的なモデルはいないものの、今まで出会った個性豊かな人たちの要素が散りばめられています。ちなみに本書の登場人物「しげる」や「はなこ」は、SABOTENSでつくってきたハンコの作品に登場した人物です。

「じつは『はなこ』は、私のおばあちゃん フジコさんがモデルになっています」(藤田さん)「家ンゲイはんこ(制作年:2016年)」

――わたしが取材に同行している「まちのミカタ」で一緒に見たような風景もあり、妄想と現実の境目がわからず、“ヤバい”本を見てしまったという気持ちになったのですが(笑)。実際にあったことはベースにあると伺いましたが、おふたり自身、この本をつくっているときに現実と妄想の区別はついていましたか……?

村田さん:ないよね。

藤田さん:夢みたいだよね。

本書では「SABOTENS まちのミカタ#13 新大久保編」で見かけた棒なめ太郎も登場しています

――(笑)。 だからなのか、たまに怖くなる。でも、そのヤバさが先を読み進めてみたくなるような気持ちになりました。

村田さん:そうなんですね。どの割合で妄想と現実なのかっていうと、わたしたちもわからないよね。

藤田さん: だから、見た人をパニックにさせるのかな。 知り合いの方に持って行った ら「これ、どういうこと!?」って(笑)。訳わかんなくなって混乱していたんだよね。

――SABOTENSやそれぞれの活動のなかで捉えてきた世界を伝えることのできる本ですね。

村田さん:わたし自身、正直(読者に)楽しんでもらえるのかなという不安が強かったんです。この設定をどうやって伝えるかというときに、私の文章だけでは難しくて。だからこそよっちゃんのデザインとイラストは、本当に心強かったですね。

――この妄想と現実が入り交じった世界にイラストがあるとないとでは伝わり方が変わりそうですね。1ページごとに添えられたイラストは、どのように描いていたのでしょうか?

藤田さん:まず、あやちゃんから1ページ分の原稿と「これを元に文を書いてるんだよ」という参考写真を各5〜10点程もらって描いていました。イラストを起こしながら考えていたのが「たむら」……というか、あやちゃんをどうやって入れるかっていうところだよね。

普段、どういう目線であやちゃんは散歩しているのか。これを見たときにどういう行動を取っていたのかということを思い出しながらの作業でした。あやちゃんの心に響いたものを引き立てるために描き込みすぎずに描く、というところの塩梅はすごく気を使って描いたかな。

――現在、BOOKSHOP TRAVELLER(下北沢)さんで行われている刊行記念展示 「はみだす緑 解体新書 」では、藤田さんの原画も見ることができますね。イラストは全て手描きだと伺っています。

藤田さん:最初はiPadを使って描こうと思っていたんだけれど、レトロな雰囲気を出したくて2Bの鉛筆でひとつひとつ手描きにしたんだよね。質感が残る感じがいいかなと思って。編集者さんは「怪しい昭和感を出したい」ということもいってくれていたよね。

手持ちの本の中で、赤瀬川 原平(あかせがわ・げんぺい)さんの『妄想科学小説』(河出書房新社,2015)という本の装丁が雰囲気にぴったり合ったので、印刷会社さんと相談してカバーと表紙、本文にも同じ紙を使っていただいて。

村田さん:改めて、よっちゃんしか描けない絵でした。SABOTENSとしてお散歩を何度も一緒にして私の視点をすごく理解してくれているし、よっちゃん自身も路上の「落ちもん*」を観察し続けているからこその、視点や妄想がかけ合わさった本なのかなって思います。

*落ちもん……道に落ちている「落としもの」のこと

「はみ出したもの」から得た生きるための力

――周囲の反応はいかがでしょうか?

村田さん:ありがたいことにいろんな方から感想をいただいて……先日、わたしたち二人が大好きな内海 慶一(うつみ・けいいち)さんという文筆家の方が、とても嬉しい感想をご自身のブログに書いてくださったんです! 何度も読み返してしまった一説を紹介させてください。わたし自身うまく言葉にできなかった部分を言語化してくださって「そうそう、これ!」って。

“「はみだす緑」を鑑賞することは、「はみだしていてもいい」状況に出会うことでもある。本書のタイトル『はみだす緑』には、私たちの生きるこの世界が「はみだす」を肯定する場所であってほしい、という願いが込められているのかもしれない。

内海 慶一 ,『はみだす緑 黄昏の路上園芸』,ぬかよろこび通信L, http://pictist.sblo.jp/article/189398402.html(2022/3/18 閲覧)

藤田さん:本っ当に、嬉しかったね。

――この本はSABOTENSとして、そしてふたりがそれぞれに活動してきたことのすべてが詰まっているんですね。

村田さん:SABOTENSの活動は「Out of Control(=制御不能)」をコンセプトにしています。例えば、鉢からはみ出してしまった根っこやポケットから落ちたものなど、枠からはみでたりコントロールできないものにこそ、魅力を感じてきました。

「路上からはみ出す植物に魅力を感じて」路上園芸学会 村田 あやこさん | エイミーズトーク #13より

社会の枠に入れないというコンプレックスを持っていたからこそ、まちのはみ出したものを見ていると「私もいていいんだ」「はみ出してもいいんだ」と安心できるんです。

――最後に、読者へのメッセージをお願いできますか?

村田さん:一見、汚いもの、うわって思うものも、見方を変えたり視線を変えたり言葉をつけてみたりすると、実は味わい深い風景かもしれません。もっと自由にまちを楽しんでみてはどうでしょう。

会社員時代、仕事が大変なとき、昼休みに会社の周りをぶらぶらしながら、そこで見つけた植物や園芸を通して脳内でちょっと妄想すると、仕事の辛さやストレスが紛れるときがあって。どこにいても、視点ひとつで周りの景色は違って見えてくると思うんです。

藤田さん:今回は、「路上園芸」がテーマだけれど、本当は対象物はなんでもいいんです。それこそ「落しもの」でも「恋人」でも、余白を意識して妄想してみると「きっとこんなことあったかもしれない」と視点を変えられる。

整合性が取れてない所こそ、人間味があったり、実は一番おもしろかったり、愛らしかったり、キラッとするものがあったり。そこを覗いてみると、何かが発見できるかもしれないから。

――ありがとうございました!!

村田さん:こちらこそ、ありがとうございました。本書の感想もお待ちしております! SNSでは「#黄昏の路上園芸」をつけていただければと思います。


お知らせ① 『はみだす緑 黄昏の路上園芸』刊行記念展示 “はみだす緑 解体新書”

■期間 2022年3月14日(月)〜27日(日)
■営業日 月・火・金~日 12:00-19:00 (休業日:水・木)
■場所 BALLOND’ESSAI ART GALLERY 3F (本屋のアンテナショップ「BOOKSHOP TRAVELLER」隣) 世田谷区北沢2丁目30-11北澤ビル3F

お知らせ② SABOTENS 初の書籍 刊行!

『はみだす緑 黄昏の路上園芸 』 著:村田あやこ イラスト:藤田泰実 2022/03/19 発売 雷鳥社 ISBN:978-4-8441-3785-6

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お知らせ ③ お散歩動画公開中!

SABOTENSちゃんねる」では、過去の「まちのミカタ」の取材中に撮影した動画を少しずつアップしています。ぜひお暇な時にでもご覧ください!

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