第42回目のゲストは、静岡県浜松市でいちご狩りのマルタ農園を管理する平松観光アグリス浜名湖 社長 渥美 要司(あつみ・ようじ)さんのインタビューです。


渥美 要司(あつみ・ようじ)さん
平松観光アグリス浜名湖 社長。静岡県浜松市生まれ。7年間の会社員経験を経て、15年前に祖父母が築き上げた農園を継ぐ。現在では、周辺地域でも一番規模の大きい農園になるまで育て上げた。

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「家族とエントリエ」をはじめ、ロゴやその他デザインを手がけるイラストレーター 山本 麻央(やまもと・まお)さんが、静岡県浜松市にあるいちご農園のオンライン販売のパッケージ制作を手がけられたと知ったエントリエ編集部。さらに、静岡出身のエントリエスタッフも多いため、一方的に縁を感じた編集担当 細野は、平松観光アグリス浜名湖内にあるマルタ農園の渥美社長を尋ねました。

「いちごには、夢がある」。祖父母から継いだ農園は浜松一大きな農園に!

――ハウスで育つ苗、きれいですね! 実っているいちごは大きくて、とってもみずみずしいです。農園で育ついちごの特徴を教えていただけますか?

渥美さん:このハウスの品種は「紅ほっぺ(べにほっぺ)」です。

――紅ほっぺは、スーパーでもよく見かける品種ですね。

渥美さん:そうですね。でも、ここに来て食べてもらうとわかるのですが、とても甘くて、コクがありますよね。スーパーに流通しているものは、酸味が強いと思います。僕も最近市場に出しますが、これくらい(完全に赤く色づく前の状態)で採るんです。

▷流通にのせるいちごは、まだ熟しきる前。白い部分が残り甘味も完全ではないもの。

完全に熟しきったものだと、流通しているうちに傷んじゃうので。なので、スーパーに並ぶ紅ほっぺとは、味が変わっちゃう。

――たしかに。こちらでいただいたものはすごくコクがあり、ジャムのようで、ただただ驚きます! この農園は、いつから?

渥美さん:僕がこの農園を祖父母から引き継いだのは15年前ですね。僕が営む『平松観光アグリス浜名湖』にあるいちご農園のひとつがマルタ農園ですが、ここを含めて6カ所のハウスを管理しています。

――そうすると農業についても、もともとよくご存知だったのでしょうか?

渥美さん:小さい頃から食べさせてもらってはいたけれど、農業は全然。最初は継ぐ気もなく、「俺は農業なんて絶対いやだよ」っていってました(笑)。だから、18~25歳までの約7年は業種も全く異なる企業の会社員として働いていたんです。

――では本格的に「継ごう」と思われた、きっかけは?

渥美さん:じいちゃんが病気を患い、農園をやめようかなとなったタイミングですね。いちごだったら夢がありそうだなとひらめいて。自分にしかできない場所があるというか、なんか、いいなあって思ったんですよね。

――夢がある……いいですね。栽培方法も一から勉強していった?

渥美さん:やりながらですね。だから、最初の5年間くらいは苦労しました。植えては枯れて、植えては枯れて。静岡の農協が行っているいちごの勉強会も、ずいぶん通いました。継いだタイミングで、ハウスや設備も直して。もともとは直接、土にいちごの苗を植えて栽培していましたが、今では、ご覧いただいているような「高設栽培」を取り入れ、温度管理や水やりも全部スマホで管理しています。

――自動化だ! 進んでいますね。

渥美さん:ただ今のような形のハウスを一気につくることはできなかったので、1〜2年おきにだんだん増やしていきました。いまでは浜名湖周辺で一番大きな農園です。

――そうなんですね! 浜松界のいちごスターですかね?

渥美さん:いやぁ……あはは(笑)。

幼馴染の提案がきっかけ。コロナ禍の新たな取り組みは「いちごのオンライン販売」

▷オンライン販売のために制作されたパッケージ(※今シーズンの受注は、終了となりました)。

――今回、新たな取り組みとしていちごのオンライン販売をされましたね。そのきっかけを教えてください。

渥美さん:そうですね、やはりコロナの影響が大きくて。例年、約9万人の来園者がありましたが、そこから7割ほど減ってしまったんです。

――それは過酷な状況でしたね……

渥美さん:どこも大変でしたよね。(緊急事態宣言があった)2020年は4月第2週から5月下旬までは、1ヵ月ほど営業を停止していました。そんな状況を知って東京で美容院を営む幼馴染が、「よかったら、うちの美容院でチラシを置いて注文とってみるよ」と声をかけてくれたんです。それで、彼経由で東京のデザイナーさんとイラストレーターさんへ発注が決まったんです。

――発送用の写真を拝見しましたが、粒が大きく、立派なのですごく高級感があります。贈答用にも、良さそうですよね。

渥美さん:そうですね、ひとつの苗からできる一粒目は、大きいんです。そういったいちごを厳選しています。同じ苗から実れば実ほど、だんだんと小ぶりになっていくので。

――パッケージもすごくおしゃれに仕上がりましたね。デザイナーさんからも「いちごのパッケージとしては他にないものができたら。そしてSNSなどを通して、買ってくれる人が増えるようにとデザインした」とお話を伺いました。その点のこだわりも、渥美さんが?

渥美さん:その辺は僕自身にはなく、幼馴染に任せましたね。このイラストでTシャツもつくってくれて、美容室ではそれを着て髪を切ってくれているらしくて。

▷美容院 coneroma(東京都墨田区)の様子。美容院経由で、あっという間に100箱ほどの注文が入ったそう。

――渥美さんの人望とご友人のやさしさを感じました。オンライン販売をおこなったことで、「これまでとは違うお客さまに届いたな」という感覚などはありますか?

渥美さん:どうなんだろう。なかなかオンラインだと顔を見ることができないので、正直なところどんな方が購入してくださっているかは見えないです。ただ、美容室には額にいれた絵も置いてくれたので、それを見たお客さまがいちごを買ってくれたこともあったそうなんです。嬉しいですよね。

「待っていただいているお客さまがいるなら」。不安を抱えながらも、再開したいちご狩り

――緊急事態宣言から1年程、経ちましたね。現状、いちご狩りは再開されていますか?

渥美さん:はい。最初はやらないほうがいいのではという不安もありました。でもそこは、「待っていただいているお客さまがいるなら」と、今シーズン(2020年12月〜2021年5月上旬)のいちご狩りもなんとか再開させました。

――お客さまは増えていらっしゃいますか?

渥美さん:2月に入ってからは、増えてきましたね。対策としては、換気やペーパーシールドを配っています。また、1回にハウスに入っていただく人数も25名と以前の半分にして、グループごとに列を決めています。来年も、以前のように100%のお客さまが戻ってくると思えないので何かやらなければなというのはあるのですが……

――安心して、来園してくださる方が増えるといいですね。加工品などもつくられているんですか?

渥美さん:うちでは、いちごジャムにして販売をしていますね。あと、市内ではうちのいちごを使ってくださっているお店もありますよ、プリンの「浜松プリン(浜松市西区)」さんやかき氷の「カフェ&バーKiKi(浜松市中区)」など。また、(静岡県磐田市をホームタウンとする)サッカーチーム「ジュビロ磐田」のホームゲームのときに「いちご団子」をつくるよと、買ってくれる方もいて。

▷ 左:浜松プリン (いちご)、右:カフェ&バーKiKi 自家製シロップのかき氷

――今回のように新しい取り組みをすることで、まち全体の活気に繋がっていくといいですね。

渥美さん:そうですね。浜松は意外といちご狩りをやっている仲間も多くて、20箇所くらいありますよ。旅行のコースに組み込んでくださる方もいます。

――そうなんですね! 浜松でのいちご狩り、ぜひ楽しんで欲しいですね。

渥美さん:そうですね。やっぱりここに来て、食べていただく。それがいちばんですよね。

――本当にこんなに甘い紅ほっぺがあるのかという驚き、みなさんにも味わって欲しいです! いちご狩りのあとは、周辺の観光もできそうです。今日はありがとうございました。


平松観光アグリス浜名湖 いちご狩り情報

12月初旬から5月上旬までの間、お楽しみいただけます。「普段なかなか食べられない完熟いちごを食べていただきたい」というコンセプトのもと、いちご狩り・直売所で完熟いちごを提供しています。

▼時間
9:00~16:00(最終受付)

▼Tel
053-487-0541

▼Access
静岡県浜松市西区平松町2014-1

  • 新東名浜松いなさI.Cより舘山寺方面へ車で50分
  • JR浜松駅より車で40分
  • 東名高速浜松西I.Cより舘山寺方面へ車で20分
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●インタビュー・文 / 細野 由季恵