第44回目のゲストは、陶芸家のささき ようこさんのインタビューです。


佐々木 陽子(ささき・ようこ)さん
東京都 府中市在住。夫と中学生の息子、保護猫の豆太(マメタ)と暮らしている。陶芸家としての顔の他に、アロマセラピスト、カウンセラーとして子育て支援、沖縄石垣島出身の母と共に、いまはサーターアンダギーのお店も。ブロックや外壁エクステリアの職人である父や、親戚には鳶職人、弟は人が集う場所を作りたいと居酒屋の経営するなど、ものづくりや、人に接する仕事を間近に見て育つ。

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以前「愛しいものたち」で、作家活動や作品についてお話を聞かせていただいた陶芸家のささき ようこさん。「作品を手に取った方の心が動くようなものづくりをしたい」と語ってくださったことが印象てきでした。いつもさりげない言葉がけややさしさで周りにいる人を笑顔にしてくれる佐々木さん。今回は、そんな佐々木さんに陶芸との出会いやご自身のことをもっと教えていただこう!と、お話を伺うことにしました。

陶芸との出会いは、30年前。お母さまと訪れた近所の陶芸教室

――以前お話を聞かせていただいたのは2018年でした。佐々木さんが陶芸と出会ったのは、10代の頃でしたよね。

佐々木さん:学生時代に母と近所の教室に体験陶芸に行ったんですよね、もう30年くらい前。そのときから、社会人になっても、ずっと通っているんです。趣味として続けていたので、まさかものづくりに携わる日が来るとは思わなかったですね。

佐々木さんが陶芸にはじめてふれた「花峰窯陶芸倶楽部(府中市若松町1-25-18)」にて、恩師である渡辺 襄先生と。いまでも自身の作品を焼くときは、こちらの窯を借りることもあるのだそう

――幼少期からつくることが得意だったのでしょうか。

佐々木さん:母には「毎日、砂場にいってなにかをつくっていた」ということは聞いたな。あまり記憶はないんだけれど、どこに行くにも砂場のセットを持って行くような子だったって。他の遊びもしていたみたいだけれど、自分が参加するより人が遊んでいるのを見ているのが楽しかったような。

▷はじめてつくったのがこちらの箸置きだそう。「この箸置きを見ると、初心に戻るんだよね」と佐々木さん

――佐々木さんは陶芸家としてだけではなく、作家さんを集めたマルシェを開催などもされますが、どことなく繋がるような気がします。陶芸家になる前は、どんなお仕事をされていたんですか。

佐々木さん:最初の仕事は、ショールームのスタッフで土日のイベントの飾り付けしたり、カタログをお客さまに配ったりする仕事でした。他にも、車メーカーの営業では、「毎月7台売ってください」みたいな仕事も。パソコンや秘書の資格も勉強していたんだけど、次の営業事務で入社したはずの会社も、入ってみると「専務秘書に」と……変化球の仕事ばかり(笑)。

――いまとは、全く異なる職種だったんですね!

佐々木さん:しかも本当は、事務を希望していたんだけれどね(笑)。ただ、恥ずかしかり屋だった私が飛び込み営業で度胸をつけたり、見積りや納品書を書いたり、その予想外の仕事が販売の知識や、マルシェを開催する活動に繋がっている気はします。

そして、また別のIT会社でやっと事務に就けて。ただ、同じ頃に結婚が決まった途端、夫の神戸への転勤が決まって。私は東京にいて仕事を続けたまま、遠距離結婚するか、仕事を辞めて神戸に行くか迷いました。

色水つくった小学校時代の記憶に、陶芸で窯を開ける前の「ワクワク感」を見つけて


――場所も環境も一変し、神戸での新生活がはじまったと。

佐々木さん:そう。でも引越後は、はじめて陶芸や仕事からも離れて、妊娠と出産もあって、全く知らない土地で……社会から切り離されたような感じというか。他にもさまざまな要因が重なって、子どもが生まれた後は誰かに会うのも嫌というくらいい時期でしたね。いろいろあったなぁ、神戸では。

――そうでしたか……慣れない環境で、大変な時期を過ごされていたんですね。

佐々木さん:その後、息子が幼稚園に入学する頃には東京に戻っていたんだけれどどこか行き詰まっていて。「心の仕組みを知れば自分でも解決できるかな」と、乃木坂にあるカウンセラースクールに通うことにしたんです。

そこである友人には、子育てのこと、今までの人生の辛かったこと、いろんなことを問いかけられて、とにかくこれまでに自分が蓋をしていたような感情にたくさん気づいて、いっぱい泣いて、諦めて、スッキリして……。その彼女から「子どものときに、ワクワクしていたことってなに?」って聞かれたことがったんです。

――子どものときに、ワクワクしていたこと?

佐々木さん:そう、「もっと自分の好きなことをしたが方いいよ」って。何かなぁって考えたときに、小学校の冬の図工の時間に、色水をつくったことを思い出して。翌朝、寒さで固まった色水が、色の氷の塊になるのだけどそれを見るのが好きだったなぁ! って。

ものをつくって、出来上がりを待つ感じは、陶芸で窯を開ける前のワクワク感とすごく似ているなって。「ああ、これだ。このテンション、いいな」って思えたんです。それからは、ずっとこの感覚を求めているんですよね。

▷佐々木さんの作品は、ブローチなどのアクセサリーをつくっています。最近では猫を飼い始め、モチーフにすることも増えたのだとか。

――それで、現在の陶芸家としての道に結びついたんですね。

佐々木さん:現在、つくっているものに関しては以前も「愛しいものたち」でお話した通り、友人の影響もあります。でも、「ワクワク」に気づいてからは、もう、寝ずにつくってた! つくりたくてつくりたくて、表現したくて。そうすると今度は買いたいっていってくれる人が現れ、子どもたちへのワークショップ開催をしたり、どんどん繋がっていくんですよね。

――素敵な問いかけをしてくださった、大切なご友人との出会いがあったんですね。

佐々木さん:彼女との出会いが、私をすごく変えたな。本当になんでもできるパワフルな人で、彼女に「人生救われた」って人はたくさんいて。5年前に病気で亡くなってしまって、いまは天国なので、困ったときは彼女ならなんていうかなってことを考えると、楽になるんです。

そのときの感覚を味わい、楽しみ、身をまかせるように生きていく

――これまで伺った話の間もですが、関わる作家さんなど、誰かのことを考えてお話してくださるとき、佐々木さんの表情はいつもすごく素敵だなと思って。

佐々木さん:そうかな?(笑)自分のことって恥ずかしいけれど、人のああいうところいいよな、ああなりたいな、とか想像しながら話すから……

――主催されるイベントも、いつも雰囲気が素敵ですよね。

佐々木さん:出てくれる作家さんたちも、それぞれが「ものをつくる」という共通点でジャンルは違うけれど本当に尊敬しあって過ごしているんですよね。

主催メンバーは私を含めて3人居ますが、みんな作家です。それぞれに広報や資料づくりなど分担していて、私はほとんどなにもしていないんだけど(笑)。

――そんなことはない気がしますが(笑)。

佐々木さん:なんだろう、すぐ脱線する係かなぁ? 思っていもいないようなことって起きるじゃない、人との繋がりって。私は、計画をたてて物事を進めていくより、計画以外のことが降ってくると楽しいんだよね。

▷今年2月に伊勢丹立川店でおこなわれた「こころ あたたまる バレンタイン展」の様子。佐々木さんは陶器のブローチと猫をモチーフにした花瓶を出品。

――現在はコロナ禍もあり、イベントなどもお休みされている状況ですよね。

佐々木さん:そうですね。でも今は、この自粛で体も休めているし、ゆっくりできたかな。「つくりたいものをつくれているかな」と改めて考えたり、ゆっくりお散歩したり。人と会ってしゃべる時間も貴重なんだなって、思えますよね。

――そうですよね。佐々木さんとこうやってお話しができてとても嬉しく思います。最後に、作家として描いている今後のイメージはありますか?

佐々木さん:えー……どうなるかな? どうなるかな(笑)。私は、常に幸せになって行くんだろうっていうことは思っているんだけど、「これが幸せの形」というイメージはそんなになくって。一見、困ったような、予測できない仕事や状況が来ても、1度受け入れて味わいながら過ごす。計画通りに行かないことをしている方が、遥かに違う面白い未来がやってくるから、それを楽しんで、その導く元がワクワクなんだなぁと!! そのときに、出会ったり、怒ったり、そういう感覚を味わいながら。

でも、ものはつくり続けて行くんだろうなっていうのはあるかな。身を任せて生きていくんですよね。これから発生して行くことを楽しんでいくんだろうなって。これまでも、出会いも全部が自分にとっての繋がりですね。

――ありがとうございました。

▷取材見学させていただいた後、最後に長年お世話になっている陶芸教室の渡辺先生と、その息子である元気先生とともに記念撮影をしました

「美味しいものを食べたり飲んだりしてるとき、家族で過ごしているとき、家で愛猫のマメタと過ごしているとき」と、たくさんの至福を教えてくださった佐々木さん。

取材協力店のご紹介


今回、取材の場所としてご協力してくださったのは「cafe星星峡(せいせいきょう)」さん。2羽ののふくろうがお出迎えしてくれます。こちらでは佐々木さんのお母さまがつくっているという、サーターアンダーギーを購入することもできます!

SHOP DATA / cafe星星峡(せいせいきょう)

住所:府中市若松町1-26-6
電話:042-334-8208
営業時間:11:30~21:00(L.O 20:00)
イベント、貸切等は23:00まで対応可
※2021年6月下旬まで休業中。詳しくは公式Instagramをご確認ください

●インタビュー・文 / 細野 由季恵