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「発信から、まちと暮らしを面白くする」 ズシレコ編集長 來島 政史さん | エイミーズトーク #40

エントリエ編集長のエイミーこと鈴木 栄弥が気になる人に、自分らしい暮らし方や生き方のヒントをいただいてしまおうというこのシリーズ。第40回目のゲストは、逗子のローカルメディア「ズシレコ」編集長の來島 政史(きじま・まさし)さんです。

來島 政史(きじま・まさし)さん

1983年横須賀生まれ逗子育ち。2007年面白法人カヤック入社。広告クライアントワーク・ゲーム事業部を経て、ちいき資本主義事業部でコミュニティ通貨「まちのコイン」のディレクターを務める。地元の逗子でローカルイベントや音楽フェスの企画運営に携わりながら、逗子・葉山のローカルメディア「ズシレコ」編集長として2019年よりPodcast配信を続けている。

▷ズシレコラジオ HPSpotify

昨年来、「おうち時間」という言葉が一気に身近な単語に。自宅周辺のエリアで過ごす時間が一気に増え、自分の住むまちを、あらためて見つめ直した方は少なくないのではないでしょうか。

面白法人カヤック*の「ちいき資本主義事業部」に所属する傍ら、地元である神奈川県逗子市で、日常や人の繋がりを記録する音声メディア「ズシレコ」を運営する來島 政史さん。地元の方へのインタビューからお店紹介、日々の生活でふと湧いた思いまで。MCお二人の自然な語りから、逗子というまちの多面的な魅力が伝わってきます。

どんなまちでも、來島さんのようにまちの魅力を掘って伝えるキーパーソンがいることで、そのまちがグッと魅力的になるのではないだろうか。

そんな思いから、「ズシレコ」を立ち上げた背景や、今いるまちをもっと楽しむヒントについて、來島さんにお話を伺いました。

*面白法人カヤックとは……神奈川県鎌倉市に本社を置くIT企業。ゲームアプリ開発や広告などのコンテンツ制作を手掛ける。「サイコロ給」をはじめとした給与制度や独特な人事・採用企画などでも知られている。

※緊急事態宣言中につき、この日の取材はオンラインにて実施いたしました。

地域を「音声」で記録するローカルメディア

 

――來島さんは、「ZUSHI RECORDS(通称:ズシレコ)」の編集長をされています。「ズシレコ」を始動した経緯についてお伺いできますか?

來島さん:以前から地元・逗子の様々な地域活動に携わってきました。活動を進める中で、誰かが立ち上げたものにコミットするより、自分主体でゼロから「逗子」というまちを編集してみたい、と徐々に思うようになりました。
そんな思いを抱えていたところ、ふと地元の友人から「逗子を記録する”ズシレコ”というローカルメディアって面白そうだよね」というアイデアが出たんです。

――「ズシレコ」という言葉が素敵ですね。

來島さん:「レコード」という言葉には音楽のレコードだけでなく、「記録する」という意味もあります。最初に友人からそのアイデアが出たとき、地域の素敵なものを記録していくメディア、という意味が込められた良いコンセプトだなと思いました。もともとはアイデアを出してくれた友人と一緒に立ち上げる予定だったのですが、彼らがお店をオープンするタイミングだったため、まずはひとりでメディアを立ち上げることになりました。

ただ、実は「ズシレコ」という名前は、逗子にもともとあった「逗子レコードショップ」の愛称でもあったんです。既に閉店された後だったんですが、地元の人にとってみたら「ズシレコ」は、そのお店を想起させる言葉。そこでメディアをはじめるにあたり、まずは店長だった小林 庄一(こばやし・しょういち)さんに取材しました。

▷ズシレコラジオvol.2 「逗子レコードショップ代表 小林 庄一さん(前半)

――メディアをはじめる際に、地元で既に馴染みのあった「ズシレコ」という言葉が偶然出てきたのはすごいですね。ちなみに文章や映像など色々な発信方法があると思うのですが、音声メディアにした背景はなんでしょうか?

來島さん:ローカルメディアというと、フリーペーパーやウェブメディアなど、テキストで発信するメディアがメインです。ものを書くのは好きな方でしたが、まだまだ覚えなければならないスキルがたくさんあると感じていました。

一方で音声であれば、もともとレコーディングエンジニアを志していたので録音や編集もすぐにできるし、文字だけだと伝わりきらないものが伝わると思い、音声配信にしようと決めました。執筆やチェックを含めた公開までのスピード感も、音声のほうが早いと思ったんです。

――音声だと、写真や映像がなく言葉だけな分、自分の思ったことをより正直に伝えられるようにも思いますね。

來島さん:ラジオがなくならない理由はそこだと思います。話し手の感情やノリといった気分が言葉に乗っかって現れるので、声のニュアンスによって印象が変わったりと、実はテキスト以上に多くのものが伝えられるんじゃないかと思っています。

あとは「顔を見たことはないけれど、話している人はこういう人かな」と聞き手の想像力を掻き立てます。MCの会話に自分も参加している、みたいな。

――たしかに。友だちの会話を横に座って聴いている感覚になれますね。

來島さん:その感覚が面白いな、と思いますね。話している人がそこにいなくても同じ風景を見ていることで親近感が湧く。友だちではないけれど、友だちみたいに寄り添う存在。そういう、人の存在感や気配を感じられるメディアにしたい、とは思っていますね。

――コロナ禍で、私の周りでも自分で音声配信する人が増えました。

來島さん:VoicyやStand.fmなどのアプリに加え、最近ではClubhouseの登場で、音声配信のハードルが低くなってきました。誰かの配信を聴くだけでなく、喋るという行為自体が重要だったんだな、と痛感します。出社せずリモートワークで仕事していると、声を出すという行為自体が減ってきます。声を出すだけで元気になれるな、と思いますね。自分を保つための健康法として続けてきた、というのは無意識にあるかもしれないですね。

日常と地続きのアウトプット
気軽に「会いに」いける友だちのような存在に

▷「ズシレコ ラジオ」が聞けるのは、Spotifyや各種Podcastプラットフォームに加え、noteでも

――当初は毎週、また今も隔週でアップされています。お仕事と並行して定期的に発信を続けられているのはすごいことですね。

來島さん:聴いている人が、その曜日・時間になったら思い出してくれる存在でいたい、と思い、定期的な配信にはこだわりを持ってやってきました。リスナーさんも、「毎週会いに行く」みたいな感覚で聴いてくださっているとしたら嬉しいですね。そのときあった出来事をテーマやテンションに反映していくと、実際の友だちでなくとも親近感が湧いてきます。

マラソンと同じで、毎週やっていると喋るのにも慣れてきて、自分の心地いいペースが分かってくるので、苦じゃなくなってくるんですよ。

――生活サイクルの一部となっているんですね。企画はどのように立てているんでしょうか?

來島さん:MCの三輪ひかりさんと2人で、Slack*上に気軽なやり取りをできるスペースをつくり、日々気になることや思っていることについて自由に投稿しています。つぶやきと同じで無視してもいいし、気になれば反応する。
その上で、収録の際に今後の企画を話し合っています。

*Slackとは……チャットツール。メッセージのやり取りの他、画像や資料などの共有も簡単に行える。

――企画の上で大切にされていることはありますか?

來島さん:「無理しないペースで続けていく」ということと、「日々暮らしている上で自然に入ってくるものをアウトプットする」ということは意識しています。

たとえば好きな音楽のプレイリストをつくって発表したり、知り合いが新しいお店をつくったら取材させてもらったり。

▷ズシレコラジオ#045「この夏に聴きたい、音楽プレイリスト対決。

――たしかに「情報」というよりは、生活や日常と地続きな思いや興味など、自然な語りがベースにあるから、より身近に感じて聴き入ってしまうのかなと思いますね。

來島さん:聴きやすくなる程度に台本はつくっていますが、途中で「そういえば、あの場所の隣にこれがあって……」と横道にそれたりもする。でも、ある意味そういった余計な情報が、地域を感じる上では魅力になるんじゃないかとも思います。

――リスナーさんの層は逗子の方が中心なんですか?

來島さん:6、7割は逗子の方ですが、配信先のアプリで偶然知った方など逗子以外の方も聴いてくれるようになりました。以前番組で紹介したお店に行ってみたら「ズシレコを聴いてきました」といったお客さまが偶然いらっしゃったことも。やってきた意味があったなと思えました。インスタのフォロワーも1,100人を超えて、ほとんど知らない人だったりと、反響の広がりを感じます。

▷ズシレコラジオ #049「夜明け直後の逗子海岸を実況してみた。

――これからやってみたい企画はありますか?

來島さん:コロナの影響でリモート収録が多いので、密にならない程度で、外を歩きながらロケをしてみたいですね。以前、早朝に逗子海岸を歩きながら収録をしたことがありました。家で聴いてみたら、海の音や車の音が聞こえて、逗子海岸にいるような気持ちになって、結構おもしろかったんです。そうやって、聴いている人も外の雰囲気を感じられる企画をやってみたいですね(*)。

▷*実はこのインタビュー直後に、この企画が実現!ライター村田がMC2人と、逗子のまちをお散歩した様子を収録しました。ズシレコラジオ #065 「『路上園芸鑑賞』の世界は、小さな宇宙だった。

住んでいるまちを面白くすれば、自分の暮らしも面白くなる

――「ズシレコ」をはじめるまでのご活動についてお話を伺いたく思います。本業のお仕事では何を?

來島さん:「面白法人カヤック」という会社に2007年から所属しています。もともとはスマホゲームの開発などに携わってきましたが、昨年4月から「ちいき資本主義事業部」に所属し、地域にまつわる事業、コンテンツをつくっています。いま僕がメインで担当しているのは「まちのコイン」というコミュニティ通貨サービスです。

導入地域では、たとえば参加スポット(お店・団体・企業など)のちょっとしたお手伝いやイベント参加などでコインをもらえたり、貯まったコインを別のスポットで特別な体験やお得なサービスにも使えます。使えば使うほど人と人がつながり、仲良くなっていくという仕組みなので、「コミュニティ通貨」という訳です。

僕はこの「まちのコイン」を利用するためのスマホアプリの開発ディレクションを担当しつつ、実際に地域内のお店や活動団体、企業にお声がけしたり運用サポートもしています。

――ライフワークと本業で取り組まれていることがリンクしているんですね。來島さんは、「ズシレコ」を立ち上げる以前から地元で様々な地域活動にも携わっていらっしゃいます。地域活動に興味をもったきっかけについて伺えますか?

來島さん:幼稚園からずっと逗子に住んでいましたが、20歳くらいまでは逗子の地域活動には全然興味がなく、むしろ逗子って田舎だな、と思っていたくらいでした。高校を出て都内にある音響の専門学校を卒業した後は、音楽活動しながらも出来そうだなという理由で、葉山に住んでいたデザイナーの知人のもとでWEB制作やDTPの仕事をはじめました。

その知人が逗子の亀岡八幡宮という神社で行われていた「こころのまつり」というイベントを運営していて、僕も音響の手伝いで関わるようになりました。そこから地元でイベントを運営している人たちと出会い、大きくなってからはじめて「あぁ、逗子って魅力あるまちなんだな」と思い始めました。

――地元の魅力を再発見するきっかけになったんですね。

來島さん:また当時、逗子出身の音楽ユニット・キマグレンが逗子海岸に立ち上げた「音霊」という海の家&ライブハウスが、一大ムーブメントになりました。実は姉がキマグレンのISEKIさんの同級生で、僕にとっては子どもの頃から知っている近所のお兄ちゃんであり、音楽活動の先輩のような存在で。自分にとっては身近だった人が、第一線で活躍する有名ミュージシャンを逗子に呼んで、外からも人がたくさん来て盛り上がる光景を目の当たりにして。

コンテンツ次第で、田舎だと思っていた場所だって盛り上がるし人も呼べるんだ、という体験をしたことが、地域活動に関わるようになった原体験にもなっています。僕も公式サイトのWEB制作やミュージシャンのアテンドのお手伝いなどで、数年間関わっていました。

――魅力的なコンテンツにたくさんの人が動員され、しかもそれが地元という。強烈な体験になりそうですね。

來島さん:家を出て10分歩けば有名な人のライブを毎日見れるという、刺激的すぎる体験でしたね。その後は、都内の会社に転職して本格的にWEB制作の仕事をはじめたこともあり、しばらく逗子を離れたのですが、2011年頃、結婚を機に再び逗子に住み始めました。ここに長く根を下ろして住むんだろうな、という感覚を持つと同時に「どうせ住むんだったら、自分の住んでいるまちを面白くすれば、自然と暮らし自体が面白くなるはず……」という思いが芽生えました。

その時に思い出したのが、以前携わった「こころのまつり」。神社でああいう雰囲気のイベントがやりたいなと思って、神社を掃除されていた氏子会の方に毎朝ご挨拶しに行って、顔を覚えていただいたかな……というタイミングで、その神社で開催していた別のイベントに実行委員として関わることになって。

その後も逗子のいろんなイベントに関わりたい、と自分から飛び込んでいくようになりました。「逗子アートフェスティバル」に広報や出展者として関わったり、「Kids meet Jazz!」という一流ミュージシャン達が演奏するコンサート企画を逗子に呼んで、市内で一番大きなホールに400人以上の親子を集めたり。

そういった地域活動を続けている中で、だんだんと強くなっていった想いがありました。それは、「この地域で暮らす人々にとって、音楽イベントをもっと身近なものとして根付かせたい」というものでした。

――思いを具体的な企画として成功させる実行力がすごいです。音楽イベントにスポットを当てた背景は?

來島さん:逗子で音楽ライブというと、海岸での騒音や治安についてなど、なにかとネガティブな話題や議論が多くて、ワクワクするような話題が少ないと感じていたんです。そういった主張や安心安全を第一に考える姿勢には共感しつつも、昔自分が体感した、「田舎だと思っていた地元が盛り上がる感覚」が強く印象に残っていて。

そんな原体験や想いがあったから、「Kids meet Jazz!コンサート in 逗子」を企画したり、自分が子を持つ親になったこともきっかけで、逗子のこども達にとって、音楽はいつも暮らしのそばにあるものになったら面白いな、という気持ちが強くなっていったんですよね。

そんなときに、逗子の野外音楽フェス「池子の森の音楽祭」でなにか新しいブースを考えてみない? という声をかけてもらって考えたのが、大人もこどももいろんな楽器と触れ合える「MUSIC FIELD」というワークショップテントでした。

――わー、楽しそう! お子さんたちが興味津々に楽器に近づいていっていますね。

來島さん:色んな種類の楽器、それも子供向けに選別したものではなくエレキギターやドラム、シンセサイザーにDJのターンテーブルまで置いてあって、全部好き勝手にさわっていいよ、と。
普段は大人が「さわっちゃダメ!」と言いがちな本格的な楽器に興味津々で触れる小学生や、こどもより熱中して演奏するお父さん。一心不乱にドラムを叩く我が子の姿に驚くお母さんもいましたね。

学校の音楽の授業ではなかなか出会わない楽器を体験できるこのブースは、2019年から始めたんですが、かなり大人気になりました。

気軽な発信からできる、まちとのつながり

――コロナ禍でリモートワーク中心となり、いまの暮らしや自分の住むまちを見直した方も多いのではないかと思います。一方で、今住むまちをもっと楽しみたいけれど、何からはじめたらいいのかわからない、という方も多いはず。
そういった方が一歩踏み出し、まちを楽しむコツがあれば、お伺いできないでしょうか?

來島さん:たとえばインスタグラムやTwitter、noteなど、自分が気軽に発信できそうな舞台で自分の暮らす地域について発信してみる、という方法はすごくいいと思います。
くだらないことやニッチなことでもなんでもいいので、自分と似たような価値観や同世代の人が見る場所でなにか発信していると、たまに反応が返ってくることがあります。そうやって価値観のすり合わせができた状態で「この地域には○○がないね」「あそこの道っていいよね」といった情報交換がはじまると、面白いんじゃないかと思います。

――発信からできる関わり方や楽しみ方もあるんですね。

來島さん:地域って、引っ越してきたてのときには真っ白なキャンバスに見えるようで、実はいろんな人たちが描き足してきた歴史がある。そうやって塗り重ねられてきたものである、という認識を持った上で、自分ができる形で発信をしていく、ということは、すごく気楽にできる楽しみ方だと思いますね。

ただし発信を続けていく中で、地域にフォーカスすればするほど「自分は分かっている」という感覚に陥ってしまう危険性もあります。そこはまっさらにして、新たに発信し始めた人に対してフラットな目線で応援してあげる、というスタンスが重要だなとも思っています。同じ地域で新しい活動やイベント、ビジネスを始められた方に対しても同じです。そこは自分自身陥りがちだし、まれにそういう目を向けられることもあるので、地域を自分のものだと思わない、という感覚は大事にしようと気をつけています。

そうすれば、新たな発信の担い手も増えていくので。

――他の多くの分野に対しても言えそうなメッセージですね。

 

週末に、2人のこどもを連れて地元の海や山に遊びに出かけているとき。兄弟それぞれの成長が垣間見えたり、見たことないものに触れさせたときや新しい体験をしたときに彼らが驚く表情をみるのが、至福のひとときですね。(來島さん)

●インタビュー・文 / 村田 彩子
●編集 / 細野 由季恵

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