自然が好き、刺繍が好き。
でも実は細かい作業はあんまり得意じゃない。糸も、こんがらがって発狂! さらに家の中では集中力が続かない。
──そんなある日、近所の裏山のハンモックの上や川辺近くの芝生で刺繍をしてみると、自然光の優しい明かりや心地よい風、野鳥たちのさえずりのおかげで集中できました。たとえ糸がこんがらがったとしても、空を見上げて目を休めれば「ま、いっか」と糸を解いて再度やり直すことができたんです。
これを機に、アウトドアで刺繍をすることの提案や初心者でも不器用でも自由にゆったり楽しみながらできることを広めていけたらいいなという想いが生まれました。
はじめての刺繍は、お気に入りの登山ザック。
ザックにバッチやキーホルダーなどで装飾をすると外れてしまったときに山を汚してしまうというリスクがあります。これが、「刺繍」を選んだきっかけ。当初は刺繍初心者だったので、悪戦苦闘しましたが、完成したときはもっとそのザックが好きになりました。
この“ちょっとしたひと手間”でモノの価値が変わる経験から、活動では“今あるものをもっと好きに。その気持ちが日々の豊かさに繋がる”というコンセプトを掲げています。オーダーメイド刺繍や刺繍のワークショップでは、新たに用意したものではなく持っている布製品に刺繍をすることをおすすめしています。
地域性を生かしたものづくりで人とつながる
制作する際は、自然の中に身を置く事を大切にしています。高尾山の麓にある自宅は、裏山や川沿いに出るのにぴったりな場所です。歩いたり走ったりする中で、季節の植物やいきものなどからひらめいたり刺繍にしたい題材や図案を見つけたりしています。
一昨年と昨年、高尾山麓でのイベントに出店し、八王子『高尾・陣馬エリア』でものづくりをしている作家さんとの繋がりが増えました。山の野草で草木染めをされている方と一緒に布や刺繍糸染めを行ったりもしました。
また、高尾山麓で行うワークショップには、自然と高尾山が好きな人、アウトドアや山が好きな人が集まります。たくさんの人との繋がりから、自分一人では生まれない製作のひらめきが増え、活動の原動力にもなっています。
自分にとって制作は、“自由に楽しく表現すること”。「うまい」、「へた」ではなく、楽しむことを大切にしています。手刺繍の良いところは、”温もり”と”味がある”ところなんです。今後も自由に楽しく刺繍をするきっかけづくりや、アウトドアアクティビティとしての刺繍を提案していきたいと思います。
今後は、プレママや子育て家庭向けの『親から子へ贈る刺繍ワークショップ(仮)』や誰でも気軽にアウトドアで刺繍がはじめられる 『山でチマチマちくちく刺繍キット(仮)』の製作。また、そのキットを持ってアウトドア刺繍のイベントを開いていきます。
作家 ヤマチタカオ @yamachima_takao |