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SABOTENS まちのミカタ#15 大森編

sabotensのまちのミカタ

SABOTENS まちのミカタ

落ちもん写真収集家の藤田 泰実さん(よっちゃん)と路上園芸鑑賞家の村田 あやこさん(あやちゃん)によるユニット・SABOTENS。路上にはみ出す不思議なものを切り取り、写真やグッズ、メディア露出など、さまざまな手法で発信するふたりが、「知らないまち」を嗅覚だけで歩いてみた!お散歩見守り役:entrie 細野 由季恵

#15 大森編

まちのミカタ15回目。今回は初のゲスト登場! SABOTENSのお散歩仲間である、片手袋研究家の石井 公二(いしい・こうじ)さんと一緒にお散歩しました。石井さんは、路上に落ちている片方だけの手袋=片手袋を長年記録・研究し続けている「片手袋研究家」。石井さんとご一緒したのは、大森貝塚でも知られる大田区の大森です。

▷SABOTENSとゲストの石井さんプロフィールはこちら

おもしろすぎるものが辛い石井さん

今回の目的地は、大森。かつて明治時代に、人類学者であるエドワード・S・モース​​によって貝塚が発掘された地でもあるまち。「その時代の人にとってはどうでも良いことも、のちの人には貴重な情報になる」という“貝塚理論”を提唱している石井さんは、ゆかりの地である大森を一度歩いてみたかったといいます。大森駅前からいざ、散歩スタートです。

村田毎回このお散歩のたびに片手袋に遭遇するので、いつか石井さんの解説を聴きながらお散歩したいと思っていたんです。

石井:あたたかくなってきたけど、せっかくだから一枚見つけたいな。

藤田:大森に来たことはありますか?

石井:実はないんです。もっと谷中(東京都台東区)みたいな雰囲気かと思っていたら、全然違った。

村田:駅前は大きなビルばっかり。

石井:横浜とかと変わらないくらい。

村田:貝塚のある場所を目指しつつ、気になる小道があったら入ってみましょうか。

石井:小道があるような雰囲気じゃないですね。

村田:今のところ大都会ですね。

大きなビルが林立する大森駅周辺。ビル街の一角にある、謎めいた細いゲートに目が止まります。

藤田:これはなんだろう? 真ん中を通ったらなにかが起こる……。石井さんが通ったら光ったりして。

とりあえず間をくぐり抜けてみる

通りすがりの方:(ニコニコしながら近寄ってきて、)これは照明よ。

藤田:あ、照明なんですね(笑)。

村田:ありがとうございます。

細野:やさしい。

藤田:大の大人が照明で遊んでいるのを見て、さっきの人もいいたかったんだろうね、照明だって。

細野:お腹すいた。

石井:この散歩は、食うか占いするかですもんね。

村田:それか神社にいくか。

藤田:神社にいくとすぐに「気持ちいい」とかいって。スピリチュアル的な。

村田:お守りとか石とか買っちゃってね。

藤田:歳を重ねるごとに、石への魅力が増している。

10メートル移動する間に何度も立ち止まり、路上観察をするSABOTENSと石井さん
同じ格好で木を観察する3人
根っこを観察する3人

石井:最近、おもしろすぎるものが辛いんですよ。

藤田:名言ですね。

石井:『アメトーーク!(テレビ朝日)』ですらおもしろすぎちゃうんですよ。

藤田:ぐったりするんですか?

石井:老化だと思うんですけど、1時間番組を1時間見てられなくなっちゃうんですよ。爆笑してるのに、20分くらいで本を読みはじめたり。

村田:おもしろいものって、情報過多なんですかね。

石井:『出没!アド街ック天国(テレビ東京)』もおもしろすぎますからね。

藤田:それは自分の中でのおもしろいハードルが下がってるんですか? 持久力?

石井:多分、感情が揺れ動くのにも体力を消費してるんだと思う。だからあんまり揺れ動いちゃうと、いい方でも体力は使うから、疲れちゃう。

今日も妄想が止まらない

ものいわない路上の様々な事物について、想像力を重ねて味わうことは、情報が溢れる今の時代だからこそ、ことさら楽しくやめられないのかもしれません。

フォークに札代わりに植物の名前が書かれた鉢
猫を入れないぞ、という意志を感じる家
「信号待ちしている兄弟みたい」(石井)

路上のあちこちに目を留めながら歩いていたら、ちょっとレトロなビルがありました。

村田:この建物かわいいな。

藤田こういうマンション、もらえたらいいね。

村田:いいね。

石井:……「このマンションもらえたら」って(笑)。

藤田:すぐ、もらえたらって妄想しちゃうんです。

村田:「このアパートもらえたら、みんなで隣同士で住もう」とかね。

藤田:人のものを勝手に(笑)。

石井:でも、寝る前ってそういうことばっかり考えません?

藤田:考えます。

村田:私も四六時中考えちゃう。

目に留まったものからすぐに妄想を広げてしまうSABOTENS。しばらく歩いていくと、公園の一角に一脚だけイスが佇んでいました。

石井:あ、キングが座るイスだ。

村田:一脚だけだ!

藤田:作品なのかな?

村田:「しながわお休み石」って書いてありますね。木だけど。

藤田:人間が石ってこと? 座った瞬間にわかるのかな、目をつぶったら石が見えてくる、みたいな。

村田:石みたいな気持ちになれるのかも。

村田:よっちゃん、どうですか? 座り心地は。

藤田:……そわそわする。

石井:石は浮かんでこないですか?

藤田:浮かんでこないですね。でもたしかに、この公園を牛耳った感じがします。

公園の中を歩いていると、かわいい洋服を着た白いふわふわのトイプードルがいました。

※写真はイメージです。

藤田:あ、かわいい〜。こんにちは。

村田:かわいい! ふわふわ。

飼い主さん :「かわいい」っていわれてよかったね。

村田:なつっこい。

藤田:お人形さんみたい。

村田:お名前なんていうんですか?

飼い主さん :「ホルン」っていいます。

村田:ホルンちゃん!

石井:人懐っこいですね。

村田:よかったね、お散歩できて。

飼い主さん :うれしくてしょうがない。人が好きなんですよ。よかったね。

藤田:ありがとうー。いやされたー。

村田:ありがとうございました。

石井:ありがとうー、ホルンちゃん。

ホルンちゃんと触れ合った後、「こわい」といいつつパンダの遊具に座る石井さん

貝塚の気配が出てきたぞ……!

ホルンちゃんに別れを告げ公園を出ると、すぐ脇に金魚が泳ぐ小さな池を発見しました。

石井:ビオトープ的なのがありますね。あ、カエルがいる!

村田:金魚も!

藤田:うわ、カエル! 

村田:でっかい!

細野:……3匹いるよ。

藤田:げー、ふるえる。

小さい頃、カエルに触ったら全身にブツブツができてしまったという苦い思い出のあるよっちゃん。どうやら今でも、カエルがちょっと苦手のようです。

まちの人と一緒にビオトープを眺める3人

石井:鳴いてる。怒ってるのかな。

藤田:交尾してるのかな。

カエルげっげっ

石井:鳴いた。

藤田:取り合ってる、メスを。

石井:中に40匹ぐらいいたりして……

藤田:ギョエー! でもありえる……。

石井:もっといそうな感じありますよね。

村田:ぬめぬめ動いている。

細野:こっちにもいるよ。

石井:……いっぱいいる!

村田:めちゃめちゃいる!

カエルげっげっ

藤田:気持ち悪い……

石井:気持ち悪いっていいながら、めちゃくちゃ見るタイプですね。

藤田:そうなんですよ(笑)。

カエルの池のすぐ横は、線路の下を横切るトンネルの小道。壁にはなんと、貝塚の模型が埋め込まれていました。ついに貝塚に遭遇!

貝塚の復元模型

村田:「大森貝塚の復元模型」だって! 貝塚感がでてきた。ここは縄文の道っていうんだ。

石井:(案内板を読みながら)縄文って、「Cord marked」っていう英語を翻訳したものなんだ。へー。

村田:なるほど! モースが名付けた英単語を訳して縄文になったんですね。

小道沿いには縄文時代の様子がイラストで描かれています

犬の名前なんだっけ

ここでよっちゃんからみんなに、突然クイズが出されました。

藤田:はい、みなさん、さっきのワンちゃんの名前を覚えてる人!

村田:なんだっけ

石井:マルコポーロじゃなくて……3文字でしたよね

村田:ラッキーちゃん。

石井:全然違う! ポトフ、みたいな感じでしたよね。

藤田:惜しい。正解は、ポロンちゃん。

石井:ポロン? え??

村田:ポロンちゃん?

石井:ポロンじゃなかった気がするな。

村田:なんだったっけ。コロンちゃん? ポプリ?……違うか。

藤田:ポロリ……?

石井:ポロリちゃん?

藤田:服からついつい。

石井:やばい、めちゃくちゃ気になってきた。

藤田:あやちゃんの「ラッキー」はひどいとおもう。

石井:ラッキーはひどい。

村田:なんか……前向きな言葉だったと思う。

石井:「ポ」ではじまるんだったら、「ポロン」しかない気がしますね。ポルカじゃないしな。

藤田:ポロンな気がするんですが。

石井:でも、ポロンってきいて「あー」ってならなかったんですよ。

村田:ポプラ?

藤田:ポンタ?

石井:洋風でしたよね。

なんと、カエルや貝塚、路上で出会ったもので上書きされ、誰ひとりついさっき出会ったばかりの犬の名前を覚えていませんでした。

名前を思い出しながら、各々に路上観察を続けます。「模様がカエルの卵みたい」(村田)
金属を飲み込む木の根っこ

石井:ポ、ポ、ポ、ポ……

村田:石井さん、犬の名前を思い出そうとしてる。

石井:なんだっけ。ポからはじまるんだけど、柔らかい感じで。

細野:ポンヌフ……。

藤田:ポロンだよ。

石井:ポロンかなあ……でもしっくり感がないんですよ。

村田:ジャスミン……ラッキー……。

藤田:ジャスミンは絶対ない!

村田:フィリピンパブの源氏名みたいになっちゃった。

藤田:あやちゃんだけ時空が歪んでたのかな。

石井:申し訳ないけど、ラッキーはない。

藤田:その時だけ違うこと考えてたんじゃない。

村田:そうだろうね、きっと。

品川区高齢者クラブの鉢

石井:もしかして「ポ」から離れたほうがいいのかな。

藤田:いや、離れちゃだめ。唯一の手がかりです。私は「ポロン」に1票。こんなに賛同が得られないとは思わなかった。

石井:俺も覚えていると思っていたんですけど。たしか具体的な名詞だったと思うんだよな。

藤田:でも3文字だった気がしません?

村田:ポで、3文字で、名詞。

石井:ポロンなのかな。「ポロンちゃん、じゃあね」っていった気もするな。

正解は「ホルン」ちゃんですよ、みなさん!

ついに大森貝塚の遺跡に到着!

村田:うわ、遺跡みたいなペットボトルがあるよ。

藤田:ほんとだ。

石井:これをモースが見て「ペッ景*」に気づいたという……。そうやって、全部モースが電車から見つけたことにしたいですね。

(ペッ景とは……都市鑑賞者・内海慶一さんが提唱する言葉。住宅の軒先などにペットボトルが並んでいる​​風景のこと。 https://www.hiroshima-moca.jp/rojo/column_vol2.html

村田:貝塚も、モースが気づくまでは誰もなんとも思わなかったのが不思議ですね。

石井:やっぱり外から見つけないと、当たり前過ぎて気づかないんじゃないですかね。

村田:あ、大森貝塚遺跡庭園だ!ついに。

石井:縄文感がでてきましたね。

藤田:ここなんだ。

ついに、モースが発見したという貝塚の遺跡がある場所に辿り着きました。

貝塚が埋まる地層をモチーフにした回廊

村田:あ、貝が埋まってる! これがモースが電車から見つけた貝塚?

細野:シジミの味噌汁を混ぜてたりして。

村田:みんなが持ち寄った貝の味噌汁でできた壁。

こちらが実物の貝塚でした

長年、路上の片方だけの手袋を記録し続けている石井さん。石井さんは貝塚を片手袋と同じような存在と捉えています。

石井:落ちもんも、片手袋も、路上園芸も、たまたま集積していて何千年か経ったら、貴重な資料になる。今の自分は、現代の貝を集めてるようなもの。意味のないものも、長い目で見ていくと色々わかる手がかりになるかもしれないなって。そのもの自体もそうですし、背後に写っている民家とかも、その時代を知る一つの手がかりになるじゃないですか。今は意味がないかもしれない。でも、意味がなくてもいいんですよ。誰かがそれを集めてとっておくと、将来の人から見たら価値が、出るかもしれない。貝塚だって、当時の人にとってはどうでもいいものですよね。

藤田:ゴミですもんね。

村田:日本人にとっては1800年の間、ゴミみたいな存在だったってことですよね。でも外から来て見た人にとってはすごいものだった。我々が路上で目にするささやかなものも、貝塚と近いかもしれないですね。貝塚、無事に見られてよかったです。

公園内のベンチに、誰かが拾って袋に入れた落としもの

貝塚の地でついに発見! 片手袋

そろそろ本格的にお腹が空いてきました。公園を後にし、お昼ご飯を食べようと歩き出したところ、ガードレールになにかが被せられているのを発見……!

石井:あった! 介入型の片手袋!

藤田:ほんとうだ、すごい!

村田:あったー、初・片手袋。石井さん、この片手袋は何タイプ*ですか?

(*石井さんは見つけた片手袋を分類し、分析しています)

石井さん作の片手袋分類図

石井:これは、「ファッション防寒類介入型ガードレール系」です。

細野:落ちているのを誰かが見つけて、目につきやすいようにかけてあげてるのかな。

石井:いいやつだからでしょうね。

村田:おしゃれな手袋ですもんね。

石井:そこに選別があることが悲しいですけどね。

藤田:でも、ビニールの手袋が拾われて刺してあったら、ちょっと怖いですよね。

石井:市場では、ああいうのも拾われています。商売道具だから。

村田:そうか、市場では大事な存在ってことか。

無事にお昼ご飯にありつきお腹を満たした一行。店を出てすぐのところにあった神社を訪れてみると……

大森山王日枝神社(大田区山王1丁目6−2)

村田:梅が満開!

細野:きれいだねー。

石井:あ、手袋の墓場だ!

村田:ほんとだ!

藤田:引き寄せられましたね。HAPPYって書いてあるのに悲しい。

村田:お参りするときに落ちちゃったのかな。

石井:「ファッション防寒類介入型落とし物スペース(私設)系」ですね。スーパーの落とし物置き場とかじゃなくて、街中に勝手に生まれる落とし物置き場があって。

村田:私設落とし物センター。一個置いたら集まってくるみたいな。

石井:ハンドタオルとか帽子とかがどんどん増えていくっていう。呼んでる気がしましたもんね、ここ。

村田:片手袋に呼ばれましたね。

本日の一コマ漫画

イラスト/藤田 泰実(落ちもん写真収集家)

心に残る大森の風景

村田のミカタ :物置に落ちた葉っぱの影が「緑ののぞき窓みたい」(by 石井さん)
藤田のミカタ:神社の境内の隅でお互いの境遇を励まし合う手袋たち

著者プロフィール

SABOTENS(さぼてんず)

2016年結成。「落ちもん写真収集家」の藤田 泰実(よっちゃん)と、「路上園芸学会」の村田 あやこ(あやちゃん)による路上観察ユニット。室外機やアロエ、選挙ポスターなど、組み合わせると路上あるあるな風景が作れる「家ンゲイはんこ」をはじめ、路上をテーマにしたグッズ制作や国内外での作品展を行う。

石井 公二(いしい・こうじ)

1980年、東京生まれ。片手袋研究家。玉川大学文学部芸術学科卒。

幼少の頃にウクライナの絵本『てぶくろ』を読んで以降、まちに片方だけ落ちている手袋が気になり始める。2005年からは「片手袋」と名付け、写真を撮ったり発生のメカニズムなどを研究し始める。

写真や研究成果の発表は主にネットで行ってきたが、2013年に神戸ビエンナーレ「アートインコンテナ国際展」に入選、奨励賞を受賞して以降、作品制作やメディア出演、原稿執筆などを通じて片手袋の魅力を広めている。現在までに撮影した片手袋の写真は4000枚以上。片手袋研究は15年目に突入している。

2019年11月、『片手袋研究入門 小さな落しものから読み解く都市と人』(実業之日本社)上梓。

お知らせ  お散歩動画公開中!

SABOTENSちゃんねる」では、過去の「まちのミカタ」の取材中に撮影した動画を少しずつアップしています。ぜひお暇な時にでもご覧ください!

「まちのミカタ(新大久保編)」

●取材/SABOTENS
●執筆/村田 あやこ
●編集・お散歩見守り役/細野 由季恵

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