エイミーことエントリエ編集長の鈴木栄弥(すずき・えみ)が気になる人を訪ねて、自分らしい暮らし方や生き方のヒントをいただいてしまおうというこのシリーズ。第20回目のゲストはGMOペパボのデザイナー・小林舞(こばやし・まい)さんです!

デザインで“関わり方“を考え抜き
作家が成長する場をサポート

小林舞(こばやし・まい)さん。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。広告制作会社を経て、2017年に様々な個人向けインターネットサービスを提供するGMOペパボに入社。国内最大級のハンドメイドマーケット「minne byGMOペパボ」のグラフィックデザイナーとして、ロゴやWeb用のバナー、イベントで配布するチラシなど、グラフィック全般のデザイン制作を行う。個人ではSNSでイラストや写真作品も発表。

デザインで大切なのは
ユーザーに伝わるかどうか

エントリエに登場する作家さんたちも利用する、ハンドメイドマーケットのプラットフォーム「minne」。2018年12月に開催されたイベント「DesignScramble」では、minneの運営会社GMOペパボも参加。イベントを通して、ハンドメイド作家たちとの連携を大切にしていることがわかりました。さらに「アワードロゴのデザインプロセス」という展示では、多くの人がデザインの仕事を理解しやすいよう、途中段階も細やかに見せてくれました。今回は、アワードロゴのデザインを担当した小林さんにデザインへの取り組み方を伺いました。

――このハンドメイドアワードのロゴを小林さんが担当されたんですよね。以前、完成に至るまでの制作プロセスを展示で見たとき、とても丁寧にデザインされていて、作家さんをサポートしたい気持ちやみんなでベースアップをしようとする意識を感じました。

小林さん:私たちが大切にしているのは、「伝えたいことがちゃんとユーザーに伝わるかどうか」。そこがブレないように気をつけながらデザインをしていきました。

――小林さんは以前からこのような制作スタイルだったのですか?

小林さん:前は広告制作会社にいて、その頃から制作過程は残すようにしていました。でも、丁寧にデザインを振り返ったのはGMOペパボに入社してからのことです。「学ぶ時間もゆくゆくは資産になるものだ」と考え、育成してくれる環境だからこそ、今回のロゴ制作もじっくり取り組めたのだと思います。

――今回アワードのロゴが変わることになった経緯は?

小林さん:元々のアワードロゴは王冠をモチーフにしていたのですが、minneがアワードでやりたいことは、作家さんを発掘したり支援したりすること。つまり、一番を決めるというスタンスではないんです。そこから「王冠ではないモチーフがいいのでは?」というディスカッションがあり、メインのモチーフを「宝石」と「手」にすることにしたんです。

余計なものを削ぎ落とし、
雑味のない表現に

――どのように制作が進みましたか?

小林さん:まず関係者全員が納得できるものをつくるために、参考となる画像を集めて、イメージのすり合わせをしました。ディレクターやデザイナーとして関わる制作チームも初期段階からプロジェクトに入ってもらい、コンセプトを詰めて。みんなで手を動かしながら、相談も重ねて、つくり上げていきました。

ロゴデザインがfixするまでには、数多くの案出しが行われました

――モチーフの意味は?

小林さん:「手」は、作家さんの手や購入者の手、私たちスタッフの手を表していて、「宝石」はこれから発掘される作品や作家さんのことを表しています。最初はモチーフの形をそのまま描いていましたが、先輩デザイナーの助言をきっかけに、強度のあるロゴをつくるためには、全て描き切る必要はないことに気づき、抽象化して今の形にしていきました。

――具象と抽象のバランスを取るのは大変ですか?

小林さん:大変でした(笑)。手を描くのが苦手で。性別に偏らないようにしながら、手の柔らかさをどの程度出せばいいのかと、試行錯誤しました。

「手」の角度や位置を微調整し、完成までに試行錯誤を重ねた小林さん

――こちらですね! 繊細な調整がこんなにも行われているんですね。一つのアイデアをいろんな角度から検討するのは苦しそうです。

小林さん:苦しいですけど、良い過程があることで私自身も満足できるので、手を入れた形跡は全て残すようにしています。そして残していったものを比較して、どのように見え方が変わるかを比べていきます。

――展示でもそのプロセスを見ることができましたね。

小林さん:通り過ぎたところにいいものが残っていたり、一周回って元に戻ったりすることもありました。意外と副産物が財産になることが多いなと思って。プロセスを残しておくことで、他の人のデザインの参考になるというメリットがあることも、GMOペパボで働いていて気づきました。

――デザインの良し悪しを決める基準はあるのですか?

小林さん:そこは難しいところなので、よく他のデザイナーに見てもらって客観的な意見をもらうようにしています。そのときに、なんとなくではなく、なぜ選んだか理由を言語化してもらうことで判断の参考にしています。

個人的には感覚的な部分も大きいです。デザインを詰めていく作業は、隙間や曲線など気になるところに手を入れていって、余計なものをひたすら取り除いていくようなもの。最終的に制作物に「雑味がなくなったな」と思えたら「ある程度できたもの」と判断します。

――制作期間は?

小林さん:昨年の7月頭からスタートして20日間くらいでしょうか。

――意外と早いですね!

小林さん:エントリーが昨年の8月1日からだったのでギリギリでした(笑)。それでも、「原石の発掘」であることやアワードが成長してほしいという思いを込めてデザインができたと思います。

デザインシステムで
よりminneらしい場づくりを

――最近こだわって取り組んでいることはありますか?

小林さん:「デザインシステム」づくりです。デザインをする上で大切なのは、私たちデザイナーの個性ではなく「minneらしさ」。デザインの力で場を盛り上げながら、作家さんの作品に注目してもらえる状態をつくるため、色数や要素を入れる判断基準などを言語化して、ルール決めをしています。

――グラフィックデザインとは違った難しさがありそうですね。これからのminneが目指していることはなんですか?

小林さん:現在、minneの作家さんは老若男女問わず、様々な方がハンドメイド作品をつくっています。多様性がある場として、より作家さんの作品を引き立たせる立場になれることを目指しています。数年前にはリブランディングもして、ロゴデザインも立ち上げ当初からだいぶ変わりました。

――比べてみるとかなり違いますね! 以前は手芸や女性的なイメージが強かったのですね。

小林さん:リブランディング後、それまで大半を占めていたアクセサリー以外のカテゴリーの展示・販売も増えました。ちなみにminneでは現在188カテゴリーの作品が販売されています。また近年では作家さんのブランド力が高まってきているので、minneという場の色はなるべく消して、作家さんの色を見せていきたいですね。

――minneはオンライン上の場だけではなく、オフラインでの場も設けていますね。

小林さん:毎年大規模販売イベント「minneのハンドメイドマーケット」も開催しています。作家さんを支援することを考えると、作家さんの活動を広げるためにはオフラインでのイベントも大切だと考えています。皆さんもぜひご来場いただきたいです!

 

小林さんにとっての至福のひとときは、バルドルとミーとメイという3匹の猫たちと戯れている時。そして、イラストや写真など個人制作をしているときだといいます。仕事に打ち込みながらも、自分らしさの表現も大切にする。そんなバランス感覚があるように感じました。

◾️小林さんの作品はこちら!
イラスト:https://www.instagram.com/sziaoreo_artworks/
写真:https://www.instagram.com/sziaoreo/

【2019.3.30-31「minneのハンドメイドマーケット」のお知らせ】

大規模販売イベント「minneのハンドメイドマーケット」が今年も開催されます。

今回は2019年3月30日・31日の月末最後の土日2日間で、さいたまスーパーアリーナで開催します。普段はminneのサイト上でしか販売していない作品も直接見て、触って、お買い物ができます。その他、ご来場者いただく皆さまに楽しんでいただけるようなイベントも多数ご用意しております。入場チケットはセブンチケットをはじめとした各プレイガイドで好評発売中です。

チケット情報を含め、詳細は特設サイトをご覧ください。

お話を聞いた人

●エイミー編集長

鈴木・栄弥(すずき えみ)。小さな頃から建築士に憧れ、建築模型つくりやチラシの間取りを見て生活を想像することが好きな暮らし妄想系女子。現在のホームテック株式会社では、2級建築士として働きながら『ライフスタイルマガジン エントリエ』の編集長を勤めている。

この記事を書いた人

宇治田エリ

東京都在住のフリーライター&エディター。趣味はキックボクシングと旅行。ここ数年の夢は、海外でキャンプすることと多拠点生活。毎朝ヨーグルトに蜜柑はちみつをかけて食べることが幸せ。 

●編集 細野 由季恵