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鈴木 栄弥が訪ねる『まちのエントリアンたち』Amy’s talk ♯19 矢嶋瑛美さん

エイミーことエントリエ編集長の鈴木 栄弥(すずき・えみ)が気になる人を訪ねて、自分らしい暮らし方や生き方のヒントをいただいてしまおうというこのシリーズ。第19回目のゲストは今年武蔵野美術大学を卒業し、この春よりデザイナー活動をスタートさせる矢嶋瑛美(やじま・えみ)さんです!

暮らしへのまなざしを大切に
モノが語る自分らしさ

矢嶋瑛美(やじま・えみ)さん。熊本県出身。武蔵野美術大学造形学部 視覚伝達デザイン学科学生。今春より地元熊本にてグラフィックデザイナーとして活動予定。個人ではイラストや絵画、アクセサリーなどの制作を幅広く行う。

人の営みの痕跡をたどる。変転の6年間で得た気づき

1月に開催された武蔵野美術大学の卒業・修了制作展。そこで偶然に見つけた「営むモノたち」と題された作品は、詩画集とともに、日常のアイテムが一つひとつ描かれた絵画が壁一面に展示されていました。共感したのは、暮らしを丁寧に見つめる視点と、そこから見えてくる人の営みの面白さ。作者である矢嶋さんがなぜこの作品を制作したのか、そして今後の活動についてお話を聞きました。

 

2019年1月に開催された武蔵野美術大学 卒業・修了制作展で展示された矢嶋さんの作品「営むモノたち」

――矢嶋さんの作品「営むモノたち」は、壁一面にずらりと絵が並び、とても印象的でした。

矢嶋さん:全部で150枚の絵があります。それに加え、描いた絵に言葉をつけてまとめた詩画集も展示しました。

――すごい数! 描かれているものは、日常を彷彿とさせる情景が多くありましたね。

矢嶋さん:そうですね、高校卒業してから卒業制作をするまでの6年間、生活に大きく影響する出来事がたくさんあったんです。2年間油画科で浪人したことや、地元の熊本に帰って通信教育でデザインを学びはじめたこと、そして大学3年生に進級するタイミングで武蔵野美術大学の視覚伝達デザイン学科に編入しました。

変わったのはそれだけではなくて、病気を患った母の看病や死別、父と2人暮らしをするようになったり、熊本地震を経験したり、東京で友達とルームシェアをしたり……いろんな経験をしました。

――それは大変でしたね。

矢嶋さん:生活の変化に伴って引っ越しをすることも多かったんですが、「新しい部屋はきれいにしよう」と断捨離しても、結局新しいモノを買ってしまう。住む場所が変わり、モノを捨てても、私の性質自体は変わらないからモノは増え続けて……。いつの間にか「私の部屋」に戻ってしまいます。

――確かに、そういう経験あります。

撮影:齋藤ちづか

矢嶋さん:モノを増やしてしまう自分自身の生活を振り返っていくうちに、「買ったモノには買った理由があったはず。生活に馴染んでいるモノの姿を見つめ直すことで、なにか新しい発見があるんじゃないかな」と思ったんです。

そこで日々のことをまとめたいなと思い、「生活と人の営み」をテーマに日常のモノを一つひとつ描いていくことにしました。

――どんな発見がありましたか?

矢嶋さん:描くモチーフは、使用されて消耗していたり、部屋に置いて鑑賞したりしているものばかりだと気づきました。例えば、よだれのついた枕とか、耳かきとか、トイレの便座とか(笑)。

「営むモノたち」よだれのついた枕

「営むモノたち」耳かき

生活感があるものを描いていると、人がいなくても人の気配を感じることがあったんです。それが「人の営みの痕跡」だと気づいて。モノを通して垣間見える人間味みたいなものを表現したいなと思いました。

身につけた描写力は、本質を伝える手段に

――作品を見ると、日常にあるモノたちがバリエーション豊かに表現されていますよね。

矢嶋さん:予備校時代はデザインではなく絵画を勉強していたので、毎日20枚はドローイングをしていました。たくさん描くことで、自分が得意な表現以外にも挑戦していました。その経験があったから、ひとつのテーマからたくさんのバリエーションを出すことには慣れていて、卒業制作にも活かされたと思います。

ドローイング作品

――絵画作品とデザイン作品では、向き合い方も変わってくる?

矢嶋さん:絵画をやっていたときは、自分と向き合って描くからか、暗めの絵が多かったです(笑)。でもデザインは感覚じゃない。他者とコミュニケーションを取ろうとしたときに、感覚だけじゃなくどうやったら伝わるかを論理的に考えてつくるので、テイストはかなり変わりますね。

熊本動植物園のお土産企画によるブランディングデザイン作品

――確かに「営むモノたち」は、絵画作品とは違う印象です。

矢嶋さん:デザインとして他者とコミュニケーションを取ろうとしたときに、もうちょっとハッピーで、生活への愛を感じる作品を制作しようと思ったんです。飾らない自分らしさを伝えられるように描いていたら、テイストは自然と決まりました。結果的に明るい作品が多くなりましたね。

――デザインの観点が入ることで、絵を描く意味も変わってくるんですね。

矢嶋さん:実際に絵を描きながら「私がやっていることはデザインなのだろうか? 絵画なのだろうか?」と悩むこともありました。そういった葛藤から、「人の営みとモノとの関係」を一歩踏み込んで伝えるために詩画集として言葉を添え、デザインすることにしました。

「営むモノたち」詩画集。矢嶋さんが一番気に入っている作品のひとつ

――絵画だけではなく、言葉がつくことでまた伝わり方が変わります。

矢嶋さん:そこがデザインの楽しいところだったなと思います。

――詩画集を読むと、クスッと笑えて、しみじみとして……柔らかい気持ちになりました。日常を大切にしていることが伝わってきます。作品を発表して、どんな反応がありましたか?

矢嶋さん:この6年間で、普通に過ごせるだけですごいことだと思うようになりました。見てくれた方に作品をつくるに至った経緯を伝えると、「経験自体はつらいけれど、絵からはポジティブな感情が伝わってくる。ネガティブをポジティブに変えて人の心を打つというのは素晴らしいと思う」という意見もいただいて、嬉しかったです。

私自身も、絵の表現にデザイン的な視点を加えて制作をしたことで、つらかった経験をポジティブに考えられるようになりました。人からもらった新しい発見でしたね。

 

これからの6年間は修行をしながら、
好きな作品もつくり続けたい

――卒業後はどうされるのですか?

矢嶋さん:父が暮らす地元の熊本で、デザイナーとして働こうと思っています。東京ほどクリエイターが多いわけではないので、ディレクションや制作、イラストなど、手がける範囲も広くなりそうです。自分の実力をつける修行期間として頑張りたいです。

――自主的な制作活動も続ける?

矢嶋さん:卒業制作を通して自分のことをわかってもらえたという確かな手応えがありました。だからこれからも描き続けて、「営むモノたち」をシリーズ化したい。SNSなどもうまく利用して、発信していきたいと思っています。

矢嶋さんがつくるハンドメイドのアクセサリー

矢嶋さん:作品づくりってやっぱり楽しくて。グラフィックデザイナーやイラストレーターとして肩書きを限定するのではなく、立体や絵画など、自分が好きな作品をつくっていきたいですね。アクセサリーづくりも好きで、今後はフェスタとかにも出店していきたいです。

――今後の活躍を期待しています!

 

撮影:福島桃子

矢嶋さんにとっての至福のひとときは、友人を自宅に呼んでおもてなしをするとき。料理をつくって人が喜んでくれたときに、達成感を感じるそう。人とコミュニケーションをとることが好きだという矢嶋さんの根底には「誰かの喜ぶ顔を見たい」という優しい思いがあるように感じました。

 

卒業制作優秀作品展
期間:2019年4月3日(水)〜27日(土)10:00〜18:00(土曜日は17:00まで・日曜休館)

会場:武蔵野美術大学美術館

◾️矢嶋さんの作品ページはこちら!
https://emiyajima.tumblr.com/

 

 

 

お話を聞いた人

●エイミー編集長

鈴木・栄弥(すずき えみ)。小さな頃から建築士に憧れ、建築模型つくりやチラシの間取りを見て生活を想像することが好きな暮らし妄想系女子。現在のホームテック株式会社では、2級建築士として働きながら『ライフスタイルマガジン エントリエ』の編集長を勤めている。

この記事を書いた人

宇治田エリ

東京都在住のフリーライター&エディター。趣味はキックボクシングと旅行。ここ数年の夢は、海外でキャンプすることと多拠点生活。毎朝ヨーグルトに蜜柑はちみつをかけて食べることが幸せ。

●編集 細野 由季恵

エントリエはあなたらしさを応援するリノベーション会社です

私たちは、お客さまひとりひとりにとって「何が大切な時間なのか」を一緒に考え、それぞれに合うリノベーションをご提案しています。

だから、このライフスタイルマガジン エントリエも、“自分らしさ”への気づきを与えることができる発信の場として盛り上げていきたい、そんな思いで­­­つくっています。