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鈴木 栄弥が訪ねる『まちのエントリアンたち』Amy’s talk ♯12 藤田 泰実さん(後編)

エイミーことエントリエ編集長の鈴木 栄弥が気になる人を訪ねて、自分らしい暮らし方や生き方のヒントをいただいてしまおうというこのシリーズ。第12回目のゲストは、まちの路上に落ちている「落ちもん」を撮り集める、グラフィックデザイナーの藤田 泰実さん(後編)です。

*前編はこちらから
鈴木 栄弥が訪ねる『まちのエントリアンたち』Amy’s talk ♯12 藤田 泰実さん(前編)

仕事も人も植物も
垣根をこえて関わっていく

藤田 泰実(ふじた よしみ)さん。茨城県出身、埼玉県育ち。多摩美術大学造形表現学部デザイン学科卒業。フリーランスのグラフィックデザイナー・イラストレーターとして活動しながら、路上に落ちているものから人間の余韻やその背景を感じ取り人間劇場を妄想する「落ちもん写真収集家」。その特異な視点が注目され、テレビやラジオにも出演。また、路上園芸観賞家・村田 あやこさんとのユニット「SABOTENS(サボテンズ)」としても活動の幅を広げている。

暗黙の決まり事
自分を縛らない

落ちもんのお話を聞いていると、藤田さんがどうして
そこまで自由な視点で世界を見ることができるのか気になります。

藤田さん:いえいえ・・・。でも、落ちもんもそうなんですが、自分に余裕がないと目に入ってこないんですよね。心にしっかり余裕を持つと、いろんな伸び代が広がる。例えば、水は水蒸気にも、雲にもなる。雨にもなるし、海にもなれる。私もそういうふうになりたいなと思っていて。

変化を恐れない自由さというか、環境によって自分の体や状況が変わっても無理せず楽しく、そのときの自分に合った形で生きるというか。

過去に大変な会社に入ったとか、スパルタな中学時代を過ごした経験があると伺いました。今の考えがあるのは、自由が縛られるような経験があった反動からなのでしょうか?

藤田さん:それはありますね、すごく。なんか、中学校って髪どめのゴムが黒じゃないといけないとか、キティちゃんが流行っているからといってみんなと同じもの持ってなきゃいけない・・・とかありましたよね。そういうのに苦痛を感じていて。

自分の人生の中にはいろんなキーパーソンがいるんですけど、そのひとりが高校2年生のときに美術予備校で出会った男の子で、セックスピストルズが好きなパンクロッカーでした。

真冬なのに着ている服がスタッズのついた革ジャンに、白のタンクトップだけだったんですよ。一見、すごく怖い人に見えたのに、震えながら「寒い」って言ってて(笑)。でもそのときに、「この人、冬だろうがなんだろうが着たいものを着てるんだ」って思えて、はじめて「自由でいていいんだ」って楽になりました。

今、その人とは会っているんですか?

藤田さん:まったく会っていないです(笑)。私にとって大きな変化を与えてくれた人だけど、きっと、そのとき私に必要な人だったのかな、と。

状況や環境、タイミングで友だちも家族も夫婦関係もいろいろ形が変わっていく。それで良いと思うんですよね。できるだけ自分が執着で縛られないように「楽しい」とか心に響いたことには敏感になっていられるように。「辛い」とか「苦しい」とか・・・人って、自分が傷ついてることをごまかしがちだったりするじゃないですか。

自分にウソをつくことに慣れてしまうと、それが平気になっちゃったりするんですけど人生は有限。そういうことはなるだけ省いていって、楽しいことに時間を割いていけたらいいなと思っています。

藤田さんにとって、自分の感覚に敏感でいることが今の活動につながる?

藤田さん:はい。

根本的に、「人と関わって何かを生みだす、形にする」っていうことをしたいんだと思います。そして、その方法はデザインでもアートでもいい。

絵を描いたり立体つくったり、「落ちもん」や「SABOTENS」といったマニアなライフワークも、お金がちゃんと入ってくるようなデザインの仕事も、本来は私にとっては全部一緒で、必要なもので。

結局は全部つながっていて、何やっているのか? と言われることもあるのですけど・・・「藤田泰実をやっています」っていう感じかな。

2人の個性が交わり
生まれたSABOTENS

落ちもん写真収集の一方で行われている、「SABOTENS」ではどんなことをしているんですか?

藤田さん:SABOTENSは、路上園芸学会の村田 あやこちゃん(以下、あやちゃん)とユニットを組んで、路上にはみだしているものをグッズにしたり、ワークショップをしたり路上アートな活動をしています。お互い孤独に散歩して写真を撮っていたんですけど、ある日共通の友だちに紹介してもらったら惹き合っちゃって(笑)。ユニット名の通り、最近では路上で偶然見かけた巨大化したサボテンなどを撮っています。

なぜサボテンを・・・?

藤田さん:路上で群をぬいて、人間のルールを無視して生えていてそれが痛快なんです! 例えばフェンスがあったら「フェンスの外に出ないように植物が生えてほしい」っていう人間側のエゴがありますよね。それを関係なく「知るか!」みたいに生えてるのがサボテンだったりして。そこにグッときます。人間がつくったルールなんてたいしたことないというか、とにかく、突き抜けています(笑)。

縛られない生き方に共感しているんですね

藤田さん:そう。自由でいいな、というのはあります。それと、食べようと思ったら食べられるけど、変な食感であったり幻覚を見るという作用があったり、摩訶不思議なものっていうのもよくて。

サボテンを撮り集めていて、人間の感覚を度外視したサボテンってめちゃめちゃあるなってわかったんです。今見せていいですか?

こういう巨大サボテンが日本全国あちこちにあるんですよ! おそらく、誰かが「鉢から出して育てよう」と思ってから、10年でこんなことになってる・・・。

サボテンを求めて「88カ所 お遍路の旅」と名付けて、写真を撮る活動もしています。現在(2018年9月)で10カ所目です。

まだ78ありますね。お遍路先はどうやって決めているんですか?

藤田さん:SNSが多いかな・・・。相方のあやちゃんはフォロワーがいっぱいいて、SNSで「どこかありますか?」と呟くと「こんなのはどうですか?」と、レスポンスも多いんです。すごいです。

他にも「お遍路の旅」では、お遍路さんの格好をして自分たちでハンコと御朱印をつくっています。

楽しいだけじゃない、
「やるならとことん」

すごいなぁ・・・。どれも、本格的ですね!

藤田さん:(嬉しそうに笑う)やるからにはとことんやらないと! 単なる悪ふざけになってしまうと、寒いというか・・・いちばんやっちゃいけない気がしています。

だから、やるならとことんやる。私はデザイナーだからハンコとか御朱印をつくる専門、あやちゃんはライターなので執筆専門です。他にも、マンガを描きSNSでアップして記事にしています。

今では、SABOTENSの活動って仕事でもあり遊びでもあるというのか境界線がなくて。やりたいと思ったことはなるだけイエスっていうことにしています。

今後なにか新しい展開を考えていますか?

藤田さん:今は、お話ししてきたように絶妙なバランスで「グラフィックデザイナー」、「落ちもん写真収集家」、「SABOTENS」の3つが同時に動いている時期で。

本当はきっと何かを重点的にやったほうが集中できて良いとは思うんですけど、ただ、共通していることに、「物をつくる」っていうことがあって。

一つの手法・技法で「その人だけの作品のテイスト」が確立されていること、それはそれですばらしいなって思ってるんですけど。私の場合はそういうのじゃなくて。目的に達成するためにいちばんいい手段を使えればいいと思っているんです。「物をつくる」ためなら、その手段は音楽でも映像でも光でも空間でも何でもいい。

もしそれができないことだったら、友だちなり、誰かの手を借りてやればいいし。何かをつくりたいんですよね。誰かがつくる前に自分がつくる。つくったもん勝ちだって思ってます。

 

ネコのむーちゃんと一緒に夕日を見る時間をつくっているという藤田さん。そんな時間のなかで「むーちゃんはネコで、私は人間だけど、それぞれできることとできないことがあるよね」と話しかけることもあるそう。むーちゃんが「ニャー!」と答えるからそれでいい。藤田さんの縛られない生き方に、勇気をもらえました!

 

この記事を書いた人

宇治田エリ

東京都在住のフリーライター&エディター。趣味はキックボクシングと旅行。ここ数年の夢は、海外でキャンプすることと多拠点生活。毎朝ヨーグルトに蜜柑はちみつをかけて食べることが幸せ。

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