家族とエントリエ - LIFE STORY - #83

建築士が自分のためにつくる〝家具を愛でる〟家。 | リノベーション事例 #83

二見 奈々絵
設計した人
二見 奈々絵 / Futami Nanae
設計営業
幼い頃からモノづくりが大好きで自分の生み出したものが長年残る仕事がしたい!と建築 を志す。1989年生まれ 神奈川出身。法政大学 デザイン工学部 建築学科卒業。建築を学ぶ中でより身近な住宅設計に興味を持ち、大学卒業後は大手リノベーション会社に就職。お客さまと直接関わりながら設計・施工を一貫で行う大規模なリノベーションを経験する。型にハマった提案だけではなく、より自由でワクワクする住まいを設計したいと思っていた矢先、エントリエと出会う。好きなものを詰め込んだ空間づくりが得意。リノベーションで住まう人にとっての最高の住空間を提供することに幸せを感じている。
細野 由季恵
記事を書いた人
細野 由季恵 / Hosono Yukie
WEB編集者、ディレクター
札幌出身、東京在住。フリーランスのWEBエディター/ディレクター。エントリエでは 副編集長としてWEBマガジンをお手伝い中。好きなものは鴨せいろ。「おいどん」という猫を飼っている。

マンション購入を決意したエントリエの建築士 セブンこと二見 奈々絵。これまで多くのお客様の住まいを設計してきたセブンが、自らの理想を詰め込んだ自邸のリノベーションに挑みました。これまでの経験や知識を活かしながら「自分の好きな空間」をひとつひとつ形に。建築士だからこその、作り手として細部までこだわり抜いた〝SEVEN HOUSE〟が完成しました。

物件について

所在地横浜市
建物種別マンション・RC造
リノベ面積54㎡
費用1200万(解体費・各種工事費用・デザイン費込み)
時期2024年

暮らす家族

二見 奈々絵

話し手

二見 奈々絵

担当スタッフ

二見 奈々絵

今回のリノベーションのテーマはありますか?

セブン:今回は自分の好きなインテリアを先行して選定しながら、お気に入りの家具たちをひとつひとつ組み込んだリノベーション計画をしています。例えば〝リビングの中央に160センチのリビングボードを置きたい〟〝ベッドサイドにペンダントライトを吊したい〟など、家具レイアウトを含めたプランの計画をしました。

お気に入りの家具や購入したい家具がリノベーションの計画時にある場合には、それに合わせて床や壁などの素材や間取りを含めた全体のコーディネートをしていくことができます。

建築家のアルヴァ・アアルトの建築や家具が好きで。新居にはアアルトの家具を置くことが夢でした。今回のリノベーションで実現したいテーマとして〝アルヴァ・アアルトのデザインや世界観を取り入れる〟という軸があります。

リビングの扉を開けると、アールの壁が目に飛び込んできますね。

アアルトが設計した大学図書館の内装を参考にしたタイル。腰壁まであしらわれた半円タイルのデザインが印象的で、取り入れたいと思ったことがきっかけ。

セブン:リビングは一番長く過ごす空間なので、中央にフォーカルポイントとしてアールの壁(曲線)を取り入れました。廊下から入るとちょうど正面に見えるのでタイルで仕上げることで質感も持たせています。リビングボードには季節ごとにインテリアを飾る予定です。

Before

After

Before
After

回遊できる導線が過ごしやすそうですね。

セブン:身支度動線を整えたかったのがきっかけで、間取りを計画しました。寝室からクローゼット、洗面脱衣室へアクセスできるようになっています。もうひと部屋の洋室も、キッチンへ直接出入りができるのでパントリーやクロークのような役割も果たしています。各室を回遊できることで、風通しもよく、自然光を取り入れられるようにデザインしました。

コストを抑えるために、物件選びでも水廻りの位置を大幅に変更せず計画できるか配慮しました。また、玄関からリビングが直接見えない間取りや既存の建具も気に入っていたので、再利用することにしました。コストバランスを調整できたり、もとの建物の魅力を活かせることがリノベーションならではの良いところだと感じています。

WICは収納家具や、既製の収納ケースがぴったり収まるように設計
寝室からWICを通り抜け、脱衣室にアクセスできる身支度導線

特徴的なカラーの床、空間ごとに印象が異なりますね!

セブン:部屋ごとにカラーを分けてデザインしました。水廻りの排水計画上、床に段差のあるリビングなのですが、そのお陰で空間ごとに素材や色を切り替えやすいことも後押しになりました。
結果的に赤と青がアクセントになったそれぞれの空間ですが、全体の配色のまとまりがなくならないように配慮しています。アクセントカラーを引き立てるために、木種を揃えたりモノトーンの配色をベースにすることで全体的にバランスの取れた空間を目指しました。実際にご提案しているお客さまのお家でも、やりたいことがごちゃ混ぜにならないように心掛けてコーディネートしています。

ブルーグレーを中心にカラーリングした、清潔感のある洗面スペース
寝室にはタイルカーペットを採用、鮮やかな青を選定。あえて障子を残した和の雰囲気に馴染むように、壁紙はリネンのような質感に。

細部まで「好きな素材」が詰まっていますね。その中でも、1番のこだわりを教えてください。

セブン:玄関〜ホールにかけての内装です。北欧モダンを代表するインテリアブランド「artek(アルテック)」の店舗に使われている床材や壁の色がすごく素敵で「この雰囲気を取り入れたい」と思ったのが始まりでした。

レンガタイルと同色のリノリウムシート(床材)
床と同色のアクセントウォールとブラック天板のテーブルセット

フロアに同じタイルを使いたかったのですが、全く同じものは手に入らなくて。それでも「この空間の雰囲気を再現したい」という思いが強かったので、素材選びに時間をかけました。結果的に自分の理想に近い形で仕上がったので満足しています。

実際に住んでみて、いかがですか?

セブン:実際に自分で設計した空間で生活してみて特に実感したことは、照明計画の大切さです。
自分なりに住みたい空間の理想は持っていましたが、そこに照明計画を丁寧に設計することで、自宅で過ごす時間がより豊かになりました。過ごし方や気分に合わせて照明の照らし方を変化させることで、空間に表情が生まれます。特に夜の時間はゆっくりと過ごすようになりました。

一般的に和室に使われる「目透かし天井(板材の継目に隙間を開けて張る方法)」をリビング天井に採用。間接照明の光が柔らかく広がるよう設計。アアルト設計のマイレア邸の天井デザインをオマージュしたもの。

照明の色や明るさ、照らし方を変化させることが住み心地を格段に良くするための工夫のひとつだと改めて思いました。これまで以上に、照明計画の重要性を実体験として伝えられるようになったと思います。

ベッドサイドに吊り下げたアルテックのペンダントライト。
柔らかい光が手元を照らしてくれます。
リビングボード上には北欧のヴィンテージランプを。
温かみのある雰囲気に魅了されインテリアとして取り入れました。

ご自身でリノベーションを経験したことで、その価値や魅力について新たに感じたことはありますか?

セブン:リノベーションって、「暮らし方や過ごしたい空間」を見つめ直す時間になるんですよね。今回、自分の家をつくるにあたって「どんな暮らしがしたいのか?」を改めて考える時間がすごく楽しかったです。そうして見つめ直した理想の暮らし方を叶えることができるリノベーションの仕事って、改めて良い仕事だなと感じました。

もともとインテリアが大好きなので、リノベーションの過程でいろんなお店を巡ったり、InstagramやWEBで情報を集めたりするのも楽しくて。「自分の好きなものに囲まれて暮らせるって、最高だな」と改めて実感しました。 これからも、もっといろんなお家やインテリアに触れていきたいし、SNSやこの仕事を通じて同じくインテリア好きな方との繋がりが増えたらいいなと思っています。