Tokyo Birthdays  

リクツで説明するのはむずかしい、
けれど「至福」を感じる場所と時間がある

私たちを芯からぐっと強く、
時に優しく包み込み、引きとめてくれる風景。

東京で日々生まれるエントリエ的な一瞬を
言葉と写真でお届けします。

#23 リア充家族

大好きだった家族とのドライブがつまらなくなったのはいつだったかな。多分、高校生くらい?

最後に家族4人で出かけたとき、黙々と運転する父と助手席で眠る母の背中を眺めながら、横に座る姉とはしばらく口をきいていなくて居心地が悪かった気がする。

そんなことを思い浮かべながら、32歳になったわたしは助手席に座っている。後ろから間髪いれずに話しかけてくる3歳児と6歳児の甲高い声に、若干うんざりしながら「うんうん」とスマホをいじりながら空返事をする。つい、家族とは縁のなさそうな(“リア充”ってやつ?SNSのタイムラインと所帯染みた自分の世界を比べてしまう。なんとも言えない気分だ。

到着した公園では、土の中から少しだけ出ている根っこを掘り返す子どもたちをただただ見守る役。子どもたちが迷子にならないか、危ないことをしないか、なにもせずにそこにいるだけの存在だ。

––アタシはねぇ! 多動なんだよ。ジィーッとしていられないんだから!

とかなんとか思いながら、やらなきゃいけない仕事を思い出してしまってソワソワしてきた。子どもたちは、根っこをちぎりきるまで諦めなさそうだ。

––しばらくここから動けそうにないな……。

日が落ちはじめた頃、ようやく帰ろうとすると公園から駐車場までの道のりに疲れた3歳児が「抱っこ」とせがむ。

「アタシだって疲れてるよ!!」

と言いつつも、娘を抱き上げてほっぺたにキスをする。お餅みたいでおいしい。

車に乗り込んで早々、後部座席の子どもたちは遊び疲れてすぐに眠ってしまった。静かになったらなったで、ちょっかいをかけたくなる。助手席から後部座席に手を伸ばし、子どもたちのふくらはぎをニギニギする。

ああ、でも、家に帰ったら、子どもたちの夕ご飯をつくって、お風呂に入って、歯ブラシをして……。

なんとも言えねえや。

Ιスポットデータ
東京都 八王子〜立川 / 立川昭和記念公園

■プロフィール■
文、写真 / 細野由季恵