Tokyo Birthdays
リクツで説明するのはむずかしい、
けれど「至福」を感じる場所と時間がある。
私たちを芯からぐっと強く、
時に優しく包み込み、引きとめてくれる風景。
東京で日々生まれるエントリエ的な一瞬を
言葉と写真でお届けします。
#1 山の器量
今や休日になるとたくさんの観光客が訪れる高尾山で育った。
私にとっては幼い頃から、ここは観光地というわけではなく、
かといって遊びまわる庭のような場所でもない。
「ただそこに山がある」、それだけだった。
ふたりの子どもが生まれてから、久しぶりに訪れたこの山は、
過去のイメージを覆した。
繊細で、綺麗で、雄大な山麓だった。
(何か目的をもって向かい合うから、そう感じたのかもしれない)
子どもたちと電車を見ながら
遠くに眺めるこの姿を、いつまでも忘れずにいたいと思った。
今度、子どもに一緒に「登ろうか」と誘ってみよう。
いつか彼らが大人になった時に、
昔ここに来たことがあると思い出してくれることを願って。
中央線高尾駅、京王線 高尾山口駅から徒歩約15分
小名路踏切
■プロフィール■
文、写真 / Kosaku Nango
1979年生まれ、東京出身。現在、会社員として働くかたわらで、写真家としても活動中。