Tokyo Birthdays
リクツで説明するのはむずかしい、
けれど「至福」を感じる場所と時間がある。
私たちを芯からぐっと強く、
時に優しく包み込み、引きとめてくれる風景。
東京で日々生まれるエントリエ的な一瞬を
言葉と写真でお届けします。
#18 まちに依存する
好奇心ばかりで生きている。
毎日決められた場所に同じ時間にいくのを諦めたら気が楽になった(多分、自分が思い描いていた“社会”から脱落したなって思っている)。
朝起きると「ああ、今日はどこに行こうかな」……くらい気まぐれに生きている(でも、多分、なんとか生きていると思う)。
毎日転々とできるようになったのは「必ずそこに行けば安心するまち」がたくさんあるから。自分にとって、まちは依存先だ。
国立、渋谷、聖蹟桜ヶ丘、御茶ノ水、大森……他にもたくさんあるけれど、私のめちゃくちゃな気性を受け入れてくれた(ような気がした)出会いがたくさんあったのが日本橋(多分、人生の転機ってやつだった)。
それぞれのまちに思い描く人たちがいる。人だけじゃない、カレーも鴨せいろも。「来ちゃった」といえる場所や人は、私の好奇心を満たしてくれる。そういうまちがあればあるほど、いい。
(でも、同じ場所にずっといると飽きちゃう。だから今日も違う依存先を探してる。不義理かな……なんて思う時もあるけれど、多分、お互いにとってそれがいいと思う。←恋人風)
「そうだなぁ、今日は日本橋に行くことにしよう」
JR高尾駅からほぼ一直線、東京駅までだいたい一時間。中央線ホームから続く長いエスカレーターを下る。八重洲側(八重洲何口から出ればいいのか、まだ覚えられない)を出て、15分ほど歩いた場所にあるビルの下にある珈琲屋さん。窓側から店内をのぞくとだいたい知った顔をみつける。ホッとして、手を振る。
東京都日本橋周辺
■プロフィール■
文、写真 / 細野 由季恵
札幌出身、八王子市在住の編集者。蕎麦とカレーと牛乳が好き。