子どもの頃から絵を描くことが好きで、社会人になってからも油彩画を続け、陶芸の器を少しずつ集めてきたという浅川さん。現在は、snowball工房として「お母さんの『好き』で日常を彩る」をコンセプトに、北海道ならではの原風景をモチーフとした作陶を続けています。お母さんたちへの思いを込めた器づくりを始めたきっかけや、制作への思いを伺いました。

お母さんが楽しむ姿は、子どもの心に残る

「お母さんが楽しんでいい。その姿こそが、子どもの目にはいちばん魅力的に映るはず。」わたし自身の親子関係や体験、そしてこれまで小学生親子に関わる仕事を10年以上続けるなか、そういった思いが少しずつ育まれてきました。

仕事のうえで間近にみ続けてきた、お迎えに来るお母さんたちの姿。くたくたになりながらも、笑顔で子どもを迎え、愛情をもって安心感を与える姿は、とても印象に残っています。

そして、わたし自身も母になりました。

仕事と家事、育児に追われる毎日が始まり、自分のために時間やお金を使うことへ、どこか後ろめたさを感じるように。

そんな日々にもあった、ママ友との食事や、たまに足を運ぶ展示会は、大切な息抜きの時間。他にも、子育てサロンや親子写真撮影会、手づくり体験会、親子キャンプ……「お母さんが楽しむこと」を歓迎してくれる空気がありました。

「お母さんも自由でいいんだ。」というエネルギーをたくさんもらい、「わたしも何かしたい」という思いが少しずつ膨らんでいったのです。

それから思い切って学生時代の恩師や先輩、後輩が制作をする共同アトリエの仲間に加わることに。子育てと仕事を繰り返す毎日に、グループ展へ向けて作品をつくる時間が加わるだけで、不思議と心が満たされていきました。新鮮で、ふわふわと、ドキドキするような感覚です。

転機は、2020年。

コロナ禍で仕事を辞め、主人の後押しもあり、snowball工房を開業しました。お母さんたちに向けたコンセプトは、開業後、「大好きな陶芸を通してできることがあるなら」という思いから自然と形になったものです。

今になって、ふと原点を思い返すことがあります。小学生の頃、わたしが陶芸クラブへ入ったきっかけである母のことです。PTAの陶芸体験に参加した母が、とても楽しそうに作品を持ち帰ってきたのです。母が楽しそうにしている姿そのものが、わたしを陶芸へ導いてくれたのだと感じています。

▶︎「食卓に華やかさと会話のきっかけを、おやつ時間に一点ものならではの特別感を添えられたらという思いで、発色の良いブルーのお皿、シマエナガやペンギン、シマリスのモチーフを考えています」

窯出し前夜は、遠足を待つ子どものように

数ある作品の中から「これが良い」と、snowball工房の作品を手に取ってくださる方の存在を思い浮かべることを大切にしています。

そのうえで新しいデザインを考える時は、色の組み合わせなど完成した姿をできるだけ鮮明にイメージします。思い通りに焼き上がる時もあれば、予想外の面白さに出会えることも。窯出し前夜は、遠足を待つ子どものように胸が踊ります。

これから出会ってみたい、たくさんの四季折々の風景や生き物。それらに思いを寄せるたびに作品として残したいものが増え、陶芸への意欲はこれからも無限に広がっていくのだろうと思います。

また、作りたいモチーフが決った次は、どの粘土を使い、どんな色付け(釉薬・下絵の具)にして、どんな形や絵柄にするかを考える時間がとても好きです。頭の中で色彩のパズルを組み立てながら、静かな期待が膨らんでいく、わくわくする時間です。

2022年から制作している『ガーデン』シリーズ。チューリップやラベンダー、じゃがいもや蕎麦、山の花を思わせる白い花に、グリーンや青の層を重ねたデザインです。小さい頃から北海道各地で見てきた花畑を、陶芸ならではの色で表現しています。

わたしにとって「つくること」は、飽くなき楽しみ。美しい、愛おしい、残したいと思う景色や花、生き物を、自分なりの表現で楽しんでもらえることです。それは究極の自己満足でありながら、言葉を越えて共感し合える喜びでもあるのかなと思っています。

器の前で生まれる、それぞれの時間

イベント出店時は、就学前のお子さんから大人まで、幅広い世代のお客さまが来てくださいます。親子やお友達同士で、お互いの好みを尊重しながら器を選ぶ姿や、その時間そのものを楽しんでいる様子がとても印象的です。

可愛らしい絵柄を選ぶ大人の、乙女のような表情。渋みのある器のガラス質の底を、真剣な眼差しで見つめる子ども。

以前、高学年のお兄ちゃんが「お母さんも選んだら?」と優しく声をかけていた場面もあり、心の中でじんと感動していました。

一点ものの魅力と、日常使いの器という身近さがあるからこそ、手で触れ、自分で選ぶ楽しさを感じてもらえるのだと思います。それが、陶芸をつくる醍醐味でもあります。

これから挑戦したいのは、北海道のガーデン柄シリーズをさらに広げていくことです。花の種類を増やしたり、動物を組み合わせたり、新しい着色方法にも挑戦したいと思っています。対面販売は北海道が中心だからこそ、この土地で暮らす方々が北海道の魅力を日々の暮らしの中で楽しめる作品づくりを続けていきたいです。

陶芸作家 snowball工房
☑ Instagram :@snowballkoubou
☑ 取扱店:小樽天狗山山頂ショップ(シマエナガ・シマリスの豆皿、箸置き)