引っ越し先の住宅街は高台にあって、坂を上がった先に家が並んでいる、静かな場所です。
知人からは、過疎化が進んでいるエリアだと聞いていました。子どもの送り迎えが大変になったり、高齢で運転ができなくなったときのために、もう少し交通の便のいいエリアに移る方も多いそうです。
そういう、なかなか不便な場所。でも、「だからこそ、みんなが支え合っている住宅街なんだよ」というお話も、あわせて聞いていました。
「醤油は隣のおばちゃんから借りるもんだ」みたいな時代があったと思うんですけど(私の実家はそうでした)コロナ禍ではそういうのもほんとに遮断された中で子育てをしていて、ご近所との付き合い方も難しかったし、子どもを一緒に育てていくみたいなことも、私にはあんまりなかったなと思います。
挨拶回りでの出会い
前回のコラムにも書きましたが、この引っ越しは私にとって大きな選択でした。でも、この新しい選択をしようと決めてからは、毎日、本当に心が平和なんですよね。自分の足でちゃんと日々を歩めている、自分の意思がそこにあるみたいな感覚があります。
そして、嬉しい偶然もありました。
引っ越し先から三十秒くらいの距離に、コラムの編集を担当してくださっているYさんの、旦那さんのご実家があったんです。打ち合わせの日に判明して、「ご近所さんじゃないですか!」と大騒ぎ。
そしてその日は、そのままYさんと一緒にご近所へ挨拶回りに行くことになったんです。パワフルなお義母さんとお義父さんに繋げてもらい、おふたりにご近所さんも紹介してもらって。
集会所にも顔を出すことになりました。昔は美容室だった建物を、自治会のみなさんで改装した場所だそうです。そこで会ったおばあちゃんが、「みんなが支え合ってて本当にいい場所だよ」と教えてくださいました。「気づいたら、みんながなんかいろいろ持ってきてくれるんだよ」と。私が求めてたのってこれだな、と思いました。

帰り際、Yさんとお義母さんとお義父さんの三人が、こっちを向いて手を振ってくださって。あの光景が、私の中ではもうグッときてしまって、今も忘れられません。写真、撮りたかったな。
出会う人、出会う人がほんとにいい方ばかりで、今からもうワクワクしています。私もその一員になるんだから、私にできることが何かあるといいなと思います。
コーヒー当番のいる集会所
そんな本日の「暮らしのひとしな」は、1杯のコーヒーです。
実は、あの集会所でコーヒーをいただいたんです。毎週水曜日と土曜日、当番を決めて、みんなで交代に淹れているそうなんですよね。特定の誰かじゃなくて、当番。めちゃくちゃあったかいなと思って、聞きながらキュンキュンしていました。今日の当番はマダム。お代は貯金箱に100円を入れるんです。


私も一杯500円のコーヒーを売っていたことがあって、お豆によっては500円以上するものもあったんですけど、今日いただいた一杯は、そのどれとも違っていて。懐かしく、優しい味がして。
めちゃくちゃ体に、心に、染みました。やさしい時間をありがとうございました。



