「家族が家族じゃなくなる家」。3年前、我が家がリノベーションで建築士のエイミーさんと考えたコンセプトだ。
言葉だけ聞くと物騒だけれど、要するに、家族である前にひとりの人間でいられる家がほしかった、という話。だから間取りよりも先に「視線を区切ってほしい」と伝えた。
キッチンに立てばリビングは目に入らない。書斎にいれば声は聞こえるけれど、姿は見えない。リビングの隅のヌックも、同じ空間にいながらこもれる場所になっている。

そうして暮らしはじめて、3年ほどがたつ。
家がひとりでいることを許すようになってから、家のなかの空気はやわらかくなった。きっと、それぞれが大切にしたい時間を、ちゃんと大切にできるようになったからなのだと思う。
誰かが何かに夢中でも邪魔しなくて済むし、互いの機嫌を確かめ合う必要がない。それぞれの時間が、同じ家のなかで流れている。
遊びに来る子どもたちにとっても、それは心地いいらしい。「ちょっと親に隠れながら、子どもたちだけで遊んでいる感じがいい」。そんなふうに言ってくれた子がいた。
大人の目がまったく届かないわけではない。でも、常に見張られているわけでもない。子どもにとっても、このくらいの距離がちょうどいいのかも。そう言ってもらえたとき、なんだかより自分の家が誇らしかった。
この距離感のなかで、私たちはいま、まるで仲の良い家族のように家族をしている。(まあ、家族なのだけれど)。
そしてこの家には、家族ではない子どもたちもよく泊まりに来る。
今年の夏休みはいつにも増して多く、娘の友達だったり、息子の友達だったり、代わる代わる泊まりに来てくれた。
大人の3年はたいしたことがないけれど、子どもの3年は、体も心もぐんと大きくなる。
3年前のお泊まり会では、私はただのお世話係兼見守り役だった。それが今は、夜遅くまで食卓を囲んで、大きくなった子たちみんなで家族みたいに喋っている。よそのお子さんとゆっくり話せる、ご褒美みたいな時間になった。

家族じゃなくなることを目指したはずなのに、以前よりも仲の良い家族になった。そして気づけば、よそのお子さんまで家族みたいに思えるようになっている。
「家族が家族じゃなくなる家」は、3年経ったいまも、じわじわと私たちの家族を変えつづけている。
▷「家族が家族じゃなくなる家」を設計した人はこちら

鈴木 栄弥 / Suzuki Emi
2級建築士、カラーコーディネーター、福祉住環境コーディネーター、ファイナンシャルプランナー
静岡県富士市出身、1990.7.27生まれ。
日本女子大学 家政学部 住居学科 卒業。…
小学生の頃から間取りやミニチュアが好きで、建築模型がつくりたい! と、建築士になることが夢に。
ビルや建物ではなく、人が住む家のことを中心に学びたいと思い、住居学科で学び、
「人が楽しく暮らす住まいをつくりたい」という思いで就職しました。
現在は、エントリエで設計営業 兼 マガジン編集長として所属。気軽に「エイミー」と呼んでください!
わたしの手掛けるお家は、どれも決まったテイストはありません。
住まい手の体温を感じられるテイストに仕上げることが得意です!
●全国ジェルコデザインリフォームコンテスト
2024年 玄関・ホール部門 全国最優秀賞 受賞
2023年 リビングダイニング部門 全国最優秀賞 受賞
2020年 一般社団法人住宅リフォーム推進協議会会⾧賞 受賞
2020年 個室部門 全国優秀賞 受賞
2019年 リビングダイニング部門 全国優秀賞 受賞
●ジェルコ関東甲信越支部リフォームコンテスト
2022年 デザイン部門 キッチン賞 受賞
2021年 デザイン部門 優秀賞 受賞
2020年 デザイン部門 優秀賞 受賞
●RoomClip全国理想の住まいコンテスト
2022年 1000万円以上部門 全国最優秀賞 受賞
2021年 500万円以下部門 特別賞 受賞
2020年 500万円以下部門 全国優秀賞 受賞


